耐震等級3の家は本当に安全?メリット・デメリットや証明書の取得方法を解説
「耐震等級3」という言葉を耳にしたことはありますか?
マイホーム購入時、地震への備えは大切なポイントです。とくに近年の大地震を受けて、「地震に強い家が欲しい」と考える方が増えています。
「耐震等級3」は、高い耐震性能を持つ建物を指す言葉です。しかし、実際にどれほど優れた性能を持っているのか、その信頼性に疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、耐震等級3の基本的な説明から、実際のメリット・デメリット、計算方法による性能差についても触れ、住宅購入時に必要な知識を分かりやすく解説します。

耐震等級3とは?

耐震等級3を理解するためには、まずその基本的な定義と基準を押さえることが重要です。住宅の耐震性能を示す指標として、耐震等級3がどのような位置づけにあるのかを確認しましょう。
そもそも耐震等級とは?
耐震等級とは、住宅の品質確保促進法(品確法)に基づく「住宅性能表示制度」で評価される指標のひとつです。
この制度は、住宅の品質を客観的に評価するために設けられ、耐震性能を含む10分野34項目に対して等級が設定されています。
数値が大きいほど耐震性能が高いことを意味し、等級は1〜3の3段階で評価されます。
この等級は、建物の構造や使用材料、設計手法などを総合的に評価して決定されます。
また、この等級は第三者機関による客観的な審査を経て認定されるため、信頼性の高い指標として広く利用されています。
こちらの記事では、耐震等級について解説しています。日本で地震に強い家づくりが必要な主な理由も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
耐震等級の段階
株式会社NEXERとパナソニック アーキスケルトンデザイン株式会社が2025年10月に実施した「住宅の地震対策に関するアンケート」では、興味深い結果が明らかになりました。 全国の男女986名を対象とした調査によると、約9割の方が「住宅選びで地震対策は重要」と回答しています。
その一方で、「耐震等級についてどれほど知っていますか?」という質問に対しては、「まったく知らない」と答えた方が47.5%、「言葉だけは知っている」という方が40.5%にのぼりました。
つまり、地震対策への関心は高いものの、具体的な基準である耐震等級については、正確に理解している方が少ないのが現状です。
それでは、耐震等級1~3までの具体的な内容を見ていきましょう。
耐震等級1
耐震等級1は、建築基準法で定められた最低限の耐震性能を満たす建物です。
震度6強から7の地震に対して、倒壊を防ぎ人命を守ることが目的ですが、建物に大きな損傷が生じる可能性があります。 現行の建築基準法に基づいて建てられた住宅はすべて耐震等級1以上の性能です。
耐震等級2
耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍の地震力に耐えられ、修繕すれば住み続けられるレベルです。
長期優良住宅認定に必要な等級で、公共施設に求められる強度と同等で、地震後の安心度が向上します。 ただし、熊本地震では一部の耐震等級2住宅が損壊しました。
耐震等級3
耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の地震力に耐え、軽微な修繕で住み続けられます。
消防署や警察署が求められるのと同等の基準で、災害時にも機能を維持する必要がある建物に求められる耐震性能です。
認定を受けるには、第三者機関による審査が必要で、客観的な高い耐震性能が証明されています。
耐震等級を決める要素
建物の耐震性能は、いくつかの要素が組み合わさって決まります。ここでは、耐震等級を左右する主な4つのポイントについて解説します。
建物の重さ
建物の重さは耐震性能に影響を与え、重いほど地震力の影響が大きくなります。 とくに屋根材の重さが重要で、軽い屋根材を選ぶことで揺れを抑える効果が期待できます。
外壁材も軽量化することで、全体の耐震性が向上します。
耐力壁や柱の数
耐力壁は地震や台風の横からの力に抵抗するための壁です。
耐震等級が上がるほど、必要な耐力壁の量も増えます。
一般的に耐力壁の数が多いほど耐震性能は向上しますが、配置のバランスも重要です。
集中した耐力壁があると、手薄な部分に力が集中し、逆に危険を招くことがあります。
耐力壁や耐震金物の配置
耐力壁は建物全体にバランスよく配置することが重要です。
片側に集中した耐力壁では、地震時に弱い部分へ過度な負荷がかかり、倒壊のリスクが高まります。 基本的に四隅に配置されますが、間取りに応じて最適な位置が決まります。
また、柱と梁、土台の接合部には耐震金物を適切に配置することで、部材が外れたり破損したりするリスクを減らします。
基礎と床の強度
建物を支える基礎は耐震性能において重要な役割を果たします。
基礎が弱いと、地震時に建物が傾いたり沈んだりする可能性があります。 また、床の剛性が低いと、地震の横揺れで床がねじれ、壁や柱に過剰な負荷がかかります。
耐震等級と耐震基準の違い
「耐震等級」と「耐震基準」は、どちらも地震に対する強さを示しますが、その意味は異なります。
「耐震基準」は、建築基準法で定められた必要最低限の耐震性能を示す基準であり、この基準に適合しない建物は原則として建てることができません。一方「耐震等級」は、品確法にもとづく住宅性能表示制度における任意の評価項目です。
耐震等級3の家を建てるメリット

耐震等級3の住宅を選ぶことで、地震への備えという安心感だけでなく、経済的なメリットも得られます。
初期投資は必要ですが、長期的に見れば十分に価値のある選択と言えるでしょう。
地震のダメージを抑えられる
耐震等級3の最大のメリットは、大地震が発生した際に建物のダメージを大幅に抑えられることです。
耐震等級1の住宅では、震度6強から7の地震に対して倒壊は防げても、建物に大きな損傷が残る可能性があります。 その結果、住み続けることが難しくなり、大規模な修繕や建て替えが必要になる場合があります。
一方、耐震等級3の住宅では、同じ規模の地震に見舞われても損傷を小さくに抑えることができ、軽微な修繕で済むことが多いです。そのため、地震後も自宅で生活を続けられる可能性が高まるでしょう。
【実例】熊本地震では耐震等級3住宅の倒壊がゼロ
2016年の熊本地震では、震度7が2回発生し、耐震等級の違いが明確に被害状況に影響を与えました。
耐震基準(耐震等級1相当)の住宅では倒壊や大破が多く確認されましたが、耐震等級3の木造住宅では倒壊ゼロという結果が得られました。
これは、耐震等級3が実際の大地震でも等級2や等級1の建物よりも強いことを示すひとつの実例です。
住宅ローンの金利優遇を受けられる
耐震等級3の住宅を取得すると、住宅ローンの金利優遇を受けられる場合があります。
とくに「フラット35S」では、耐震性などの住宅性能に応じて、借入当初から5年間の金利が年0.25%〜0.75%引き下げられます。
たとえば、3,000万円を35年ローンで借り入れた場合、この金利優遇により支払総額が数十万円単位で軽減されることがあります。
借入額が大きいほど、金利優遇の恩恵も大きく、初期費用の一部を長期的に回収できる計算になります。
低い金利で住宅ローンを借りられることは、毎月の返済負担を軽減し、家計に余裕を持たせる効果があります。
地震保険料の割引が適用される
地震保険は、火災保険とセットで加入する保険で、地震や津波による損害を補償します。
耐震等級3の住宅では、この地震保険料に割引が適用されます。割引率は耐震等級によって異なり、以下のようになります。
| 耐震等級 | 割引率 |
|---|---|
| 等級1 | 10% |
| 等級2 | 30% |
| 等級3 | 最大50% |
たとえば、年間の地震保険料が4万円の場合、耐震等級3の住宅では2万円に割引されます。
30年間で計算すると、60万円もの差が生まれるため、初期費用の回収にも寄与します。
割引を受けるには住宅性能評価書や技術的審査適合証、適合証明書(フラット35S)などの提出が必要です。
住宅の資産価値を維持しやすくなる
住宅は家族が暮らす場所であると同時に、大切な資産です。
耐震等級3の認定を受けている住宅は、将来の売却時に有利に働く可能性があります。
また、リノベーションを行いたいという需要が高まっている中、耐震等級3という客観的な評価があることは売却時の強みとなります。
選んで後悔?耐震等級3の家を建てるデメリット

耐震等級3には多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットも存在します。
これらを事前に把握することで、後悔のない選択ができるでしょう。
建築コストが上がる
耐震等級3を実現するためには、より多くの耐力壁や強固な構造材、頑丈な基礎が必要となり、その分建築資材や工事の手間が増えます。
また、耐震等級3の認定には設計にかかる時間や人件費が増加します。建物の規模や設計内容によっては、さらに費用がかかる場合もあります。
しかし、このコスト増は長期的な視点で考えることが重要です。
地震保険料の割引や住宅ローン金利優遇により、初期費用の一部は数年かけて回収できる可能性があります。
また、大地震後の修繕や建て替え費用を考えれば、初期段階での投資は合理的と言えるでしょう。
間取りの自由度が下がる
耐震性を高めるためには耐力壁を増やし、バランスよく配置する必要があります。たとえば、一般的な在来工法では「柱のない広々としたリビング」や「大きな窓」の実現が難しくなることがあるでしょう。
耐力壁が必要な場所に窓を設けることができず、希望通りの間取りにできない場合もあります。
また、2階建ての場合、一般的な在来工法では1階と2階で壁の位置を揃える方が合理的に設計できることから、部屋の配置に制約が生じることもあります。
しかし、耐震等級3の耐震性能を確保しながら、希望に近い間取りを実現する方法もあります。
たとえば、パナソニックの「テクノストラクチャー」では、木と鉄を組み合わせた独自の構造体を使うことで、耐震性と間取りの自由度を両立させています。
間取りの自由度を重視する場合、契約前に複数の住宅会社に相談し、使用する構造技術を確認することをおすすめします。
同じ耐震等級3でも性能に差が出る?計算方法の種類

同じ「耐震等級3」の認定を受けた住宅でも、使用された計算方法によって実際の耐震強度に差が出ることがあります。
ここでは、耐震性能を評価する3つの主な計算方法について解説します。
許容応力度計算
許容応力度計算は、構造計算の中で精密な方法です。建物にかかるすべての力(自重、積載荷重、積雪、風圧、地震力など)を詳細に計算し、柱や梁、基礎などが耐えられるかを科学的に検証します。
建物の強度を最も厳密に検証できる方法です。 この計算を行うことで、実際の地震時にどのような力が各部位にかかるか、地震の力に耐えられるかを緻密に確認できます。
パナソニックでは、全棟でこの計算を実施し、より高い信頼性を追求しています。
性能表示計算
性能表示計算は、品確法に基づく住宅性能表示制度で使用される計算方法で、許容応力度計算より簡易的です。
この方法では、耐力壁の量や配置、床の強度などを評価し、必要な耐力壁の量が適切に配置されているかをチェックします。
計算の手順は比較的簡単で、短時間で評価を完了できますが、個々の部材にかかる力を詳細に検証するわけではありません。
そのため、同じ耐震等級3でも、許容応力度計算で設計された住宅の方がより高い安全性を持つと考える専門家もいます。
仕様規定
仕様規定は、建築基準法で定められた最も基本的な基準で、耐力壁の量や配置が一定のルールに従っているかを確認する方法です。
詳細な計算は不要で、2階建て以下の木造住宅では構造計算が義務づけられていないため、多くの住宅で採用されています。
ただし、仕様規定のみでは耐震等級2以上の認定は受けられません。
仕様規定は、耐震等級1相当の最低基準を満たすための方法であり、より高い耐震性能を目指す場合は、性能表示計算や許容応力度計算が必要です。
耐震等級3を検討する際は、どの計算方法で評価されているかを確認することが重要です。
とくに長期的な安心度やスペックを重視する場合、許容応力度計算による構造計算が行われているかが重要な判断材料となります。
耐震等級3の認定を受けるには審査が必要

耐震等級3を正式に取得するためには、第三者機関による審査を受け、住宅性能評価書を取得する必要があります。
ここでは、その流れ、必要な書類、費用について解説します。
ただし、すべての住宅が正式な認定を取得するわけではありません。設計上は耐震等級3の基準を満たしていても、審査費用などの理由から認定を受けない場合もあります。
とはいえ、適切な設計と施工が行われていれば、正式な認定がなくても高い耐震性能を持つ住宅は存在します。
地震保険の割引や住宅ローンの優遇を受けるためには、正式な認定が必要となる場合がほとんどです。
ご自身のニーズに応じて、認定取得の必要性を判断しましょう。
耐震等級3の証明書を受け取るまでの流れ
耐震等級3の認定を受けるためのプロセスは以下のステップで進みます。多くの場合、住宅会社が代行します。
-
設計段階
住宅会社に耐震等級3を目指す旨を伝え、設計図書を作成します。 -
第三者機関への審査依頼
設計図書を国土交通大臣が登録した第三者機関(住宅性能評価機関)に提出し、審査を依頼します。 -
設計住宅性能評価書の交付
審査に合格すると、「設計住宅性能評価書」が交付されます。これは設計段階での証明書です。 -
工事と現場検査
工事開始後、評価機関の検査員が現場を訪れ、施工が設計通りかを確認します。 -
建設住宅性能評価書の交付
すべての検査に合格し、建物が完成すると、「建設住宅性能評価書」が交付されます。この書類が正式な証明書です。
完成後、建設住宅性能評価書を大切に保管し、地震保険の割引申請や将来の売却時に必要となります。
耐震等級3の申請に必要な書類
耐震等級3の認定を受けるためには、以下の書類を評価機関に提出する必要があります。
書類内容は評価機関によって異なることがありますが、一般的に必要なものは次の通りです。
-
設計図書
配置図、平面図、立面図、断面図、矩計図、基礎伏図、床伏図、小屋伏図、軸組図など
※これらの図面には、構造に関わる詳細な情報が記載されている必要があります。 -
構造計算書
許容応力度計算の場合:計算結果をまとめた計算書
性能表示計算の場合:壁量計算書や壁配置バランスの計算書 -
その他の書類
使用建材の仕様書や性能証明書、地盤調査報告書など
これらの書類は専門的な内容が多いため、通常は建築士や住宅会社が作成し、申請も代行してくれます。
耐震等級3の申請に必要な費用
耐震等級3の認定を受けるための費用は、主に2つの要素から成ります。
-
審査費用
設計段階と建設段階の評価を受けるための費用です。金額は評価機関や建物の規模によって変動します。 -
設計費用と構造計算費用
耐震等級3の基準を満たす設計や構造計算にかかる費用です。必要な計算方法や設計内容によって費用は大きく変わります。
総額で、耐震等級3の認定取得にかかる費用は数十万円程度です。この投資により、地震保険料の50%割引や住宅ローンの金利優遇が得られ、家族の安心も手に入ります。
具体的な費用は、住宅会社に見積もりを依頼して事前に確認することをおすすめします。
「耐震等級3」と「耐震等級3相当」の違い

住宅の広告やパンフレットで見かける「耐震等級3相当」という表現は、一見「耐震等級3」と同じに見えますが、実際には重要な違いがあります。
| 項目 | 耐震等級3 | 耐震等級3相当 |
|---|---|---|
| 認定方法 | 第三者機関による正式な審査 | 施工業者が独自に判断 |
| 審査内容 | 設計段階と現場検査の両方が実施 | 第三者機関によるチェックなし |
| 公的証明 | 建設住宅性能評価書の交付 | 証明書なし |
| 経済的メリット | 地震保険料50%割引や金利優遇あり | メリットを受けられない可能性大 |
「耐震等級3」は、第三者機関による客観的な評価と公的な証明があり、その性能は保証されています。一方、「耐震等級3相当」は、第三者機関の評価を受けていないため、本当に耐震等級3と同等の性能があるかは確認できません。
地震保険や住宅ローンの優遇を受けるためには、通常「耐震等級3」の正式な認定が必要です。
「相当」という表現は、評価費用を節約する目的などで正式な認定を受けない場合に使用しますが、実際に耐震等級3と同等の性能を持つ住宅も存在します。
ただし、メリットを受けるためには正式な認定を受けることが重要です。住宅を選ぶ際は、「耐震等級3」と「耐震等級3相当」の違いを理解し、確認することをおすすめします。
まとめ
耐震等級3の基本的な定義から、メリット・デメリット、計算方法の違い、認定取得の流れまで解説しました。
耐震等級3は現在の住宅性能表示制度における最高等級であり、熊本地震でも倒壊ゼロの実績を持つ高い性能です。 地震保険料の50%割引や住宅ローンの金利優遇などの経済的メリットもあり、初期投資は長期的に回収できる可能性があります。
しかし、同じ耐震等級3でも、計算方法によって実際の性能に差が出る可能性があることに注意しましょう。より高い安心度を求めるなら、許容応力度計算が実施されているか確認することをおすすめします。
パナソニックの「テクノストラクチャーEX」は、綿密な許容応力度計算のもとに認められた耐震等級3以上の性能を持ち、繰り返す地震にも耐えうる家づくりを追求しています。法律で定められた水準を大きく上回る388項目にもおよぶチェックをクリアすること──これがパナソニックの提案する「地震に強い家」なのです。
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