「耐震性能」「耐震等級」にこだわろう。日本で地震に強い家づくりをすべき3つの理由
ここ数年で、家づくり・住宅建設では「耐震」という言葉がよく使われるようになり、地震に強い家づくりを意識する人が増えているようです。
そのキッカケは、1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震といった巨大地震が日本を襲い、大きな被害をもたらしたからでしょう。
みなさんも「マイホームを建てたいなぁ」と思った時、気になるのはやはり、耐震性能や地震対策ではないでしょうか?
しかし、家を建てるときの「耐震性能」や「地震対策」について、具体的にご存じでしょうか。
ここでは、地震大国の日本で、住宅の「耐震性能」と「地震対策」が大切な理由をお伝えします。
「耐震」とは?
一般的に「耐震」という言葉は、「耐震設計」「耐震構造」といった使い方がされています。その建物がどれだけ地震に耐えることができるのかどうかが、「耐震設計」「耐震構造」の大きなポイントとなります。
住まいの耐震性能が低い場合、大地震に襲われたら、以下のような危機が想定されます。
- 家が倒壊して命の危険にさらされる
- 何千万円もの費用をかけた家が倒壊する……
- 家の建て直しには同額以上のお金と時間を要する
- 家=生活の拠点を失うためにダメージが大きい
「家づくりは人生最大の買い物」とよく言われます。それこそ何千万円と費用をかけて建てた家が、地震によって一瞬のうちに倒れてしまうこともあるわけです。
大きな地震が発生した際、多くの家屋が倒壊している様子がメディアで報じられることがあります。地震で倒れたマイホームを、もう一度建てようと思っても、費用的にも時間的にもなかなかすぐに建てられるものではありません。
日本は地震大国で、いつ大地震が来てもおかしくありません。だからこそ耐震、つまり地震に強い家を建てようという考えが広まっているのです。
耐震性能が日本の住宅に必要な理由
いまや日本の住宅に「耐震性能」「耐震設計」は不可欠なものです。
一方で、「そんなに大きな地震が頻繁に起こるものなの?」という疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
日本は世界的に見ても有数の地震大国であり、いつどこで大地震に襲われるか、なかなか予測できるものではありません。
そのため、「近々起こるであろう大地震を予知し、その時に住まいの耐震性能を強化する」というのは現実的に不可能です。
そこで、いつ、どこで、どんな場所に家を建てるにしても、日本の住宅に耐震性能は必要です。その理由をご紹介します。
- 日本は小さな地震が多い
- 日本全国どこでも地震が起こる
- 近い将来、大地震が起こると予測されている
理由1.日本は小さな地震が多い
日本はよく“地震大国”と言われます。
それだけ地震が多い国であると世界的にも知られているわけです。巨大地震は数年に一度、数十年に一度の割合で発生しています。
数十年に一度なら、「そんなに地震が起こっていないのでは?」と思うかもしれませんがそうではありません。
実は、日本は世界的に見て小~中規模の地震が、とても多い国なのです。
内閣府や気象庁が発表した、地震に関する以下のデータをご覧ください。
■マグニチュード6.0以上の地震回数
出典:アメリカ地質調査所(世界) 気象庁(日本)/国土交通省「河川データブック2022」より
■日本及びその周辺の地震回数(1年間の平均)
※2001年~2010年の気象庁の震源データをもとに算出 マグニチュード |
回数(1年間の平均) |
---|---|
M8.0以上 | 0.2(10年に2回) |
M7.0 – 7.9 | 3 |
M6.0- 6.9 | 17 |
M5.0 -5.9 | 140 |
M4.0 – 4.9 | 約900 |
M3.0 – 3.9 | 約3,800 |
■日本及びその周辺の地震回数(2011年)
マグニチュード | 回数(2011年) |
---|---|
M8.0以上 | 1 |
M7.0 – 7.9 | 8 |
M6.0- 6.9 | 107 |
M5.0 -5.9 | 665 |
こうして見ると、世界で発生しているマグニチュード6以上の地震のうち、11.9%が日本で起こっています。
また、マグニチュード8.0以上の地震は「10年に2回」という数字になっていますが、2011年にはその10年に2回しか起こらないはずの大地震、東日本大震災が発生しました。
2016年の熊本地震もマグニチュード7.3という巨大地震でした。
さらに数多くの小~中規模地震も発生している日本。これだけ見ても、住宅に耐震性能が必要な理由が分かります。
理由2.日本全国どこでも地震が起こる
世界的に見ても、日本は地震が多い国であることが分かりました。
ただし、怖いのは回数だけではありません。日本が地震大国と言われるもう一つの理由――それは、日本全国で地震が発生しているということです。
21世紀に入り日本国内で発生した、大規模地震の一部を見てみましょう。
年 | 発生日 | 発生場所 | マグニチュード | 名称 |
---|---|---|---|---|
2001 | 3月24日 | 広島県 | M6.7 | 芸予地震 |
12月18日 | 沖縄県・与那国島近海 | M7.3 | ― | |
2002 | 3月26日 | 沖縄県・石垣島近海 | M7.0 | ― |
2003 | 5月26日 | 宮城県沖 | M7.1 | ― |
7月26日〜27日 | 宮城県中部・北部、日本海北部 | M5.5~7.1 | ― | |
9月26日 | 北海道・十勝沖 | M8.0 | ― | |
2004 | 9月5日 | 三重県・紀伊半島 | M7.1 | 紀伊半島南東沖地震 |
10月23日 | 新潟県・中越地方 | M5.7~6.8 | 新潟県中越地震 | |
11月29日 | 北海道・釧路沖 | M7.1 | ― | |
2005 | 3月20日 | 福岡県・佐賀県 | M7.0 | ― |
8月16日 | 宮城県沖 | M7.1 | ― | |
11月15日 | 北海道~関東・三陸沖 | M7.2 | ― | |
2006 | 4月21日 | 伊豆半島沖 | M5.8 | ― |
2007 | 3月25日 | 石川県・能登半島 | M6.9 | ― |
7月16日 | 新潟県・長野県 | M6.8 | 新潟県中越沖地震 | |
2008 | 5月8日 | 茨城県沖 | M7.0 | ― |
6月14日 | 岩手県・宮城内陸 | M7.2 | ― | |
7月24日 | 岩手県北部 | M6.8 | ― | |
9月11日 | 北海道・十勝沖 | M7.1 | ― | |
2009 | 8月9日 | 関東~東北地方南部 | M6.8 | ― |
8月11日 | 静岡県・駿河湾 | M6.5 | ― | |
2010 | 2月27日 | 沖縄本島近海 | M7.2 | ― |
11月30日 | 東京都・小笠原諸島西方沖 | M7.1 | ― | |
12月22日 | 東京都・父島近海 | M7.4 | ― | |
2011 | 3月11日 | 東北地方 | M9.0~9.1 | 東日本大震災 |
3月12日 | 長野県北部 | M6.7 | ― | |
3月15日 | 静岡県東部 | M6.4 | ― | |
4月7日 | 宮城県沖 | M7.2 | ― | |
4月11~12日 | 福島県 | M7.0 | ― | |
6月30日 | 長野県中部 | M5.4 | ― | |
7月10日 | 三陸沖 | M7.3 | ― | |
10月3日~12日 | 富山県・長野県 | M5.4 | ― | |
11月8日 | 沖縄県本島北西沖 | M7.0 | ― |
年 | 発生日 | 発生場所 | マグニチュード | 名称 |
---|---|---|---|---|
2012 | 1月1日 | 鳥島近海 | M7.0 | ― |
3月14日 | 三陸沖 | M6.9 | ― | |
3月14日 | 千葉県東方沖 | M6.1 | ― | |
12月7日 | 三陸沖 | M7.3 | ― | |
2013 | 2月2日 | 北海道十勝地方南部 | M6.5 | ― |
4月13日 | 淡路島付近 | M6.3 | ― | |
10月26日 | 福島県沖 | M7.1 | ― | |
2014 | 7月12日 | 福島県沖 | M7.0 | ― |
11月12日 | 長野県北部 | M6.7 | ― | |
2015 | 5月30日 | 東京都・小笠原諸島西方沖 | M8.1 | ― |
11月14日 | 鹿児島県・薩摩半島西方沖 | M7.1 | ― | |
2016 | 4月14~16日 | 熊本県 | M7.3 | 熊本地震 |
6月16日 | 北海道・内浦湾 | M5.3 | ― | |
10月21日 | 鳥取県中部 | M6.6 | ― | |
11月22日 | 福島県沖 | M7.4 | ― | |
12月28日 | 茨城県北部 | M6.3 | ― |
このように日本全国で、被害を及ぼした地震が発生していることが分かります。
気象庁の公式サイトにも次のように明記されています。
日本で地震が発生しないところはありません。小さな規模の地震は日本中どこでも発生しています。また、ある場所で過去に大きな規模の地震が発生していたとしても、地表に痕跡(活断層など)が残らないことがあります。このため「この場所は大きな規模の地震が絶対ありません」と言えるところはありません。
理由3.近い将来、大地震が起こる?
さらに、日本では近い将来、再び巨大地震が発生するのでは?と予測されています。
それは「東海地震」(南海トラフ地震)です。
駿河湾から静岡県の内陸部を震源域とする、マグニチュード8クラスの巨大地震になると予測されている東海地震(南海トラフ地震)。
その被害範囲(予測)は東海地域から近畿、四国、九州にまで及んでいます。
気象庁公式サイトでも、東海地震(南海トラフ地震)に関するニュース・お知らせは頻繁に掲載されていることからも、その危険度が分かるでしょう。
この東海地震(南海トラフ地震)以外にも、日本で多くの地震が発生する可能性は高く、これから家を建てようと考えている方にとって、耐震は絶対に考えておかなくてはいけないものと言えます。
■30年 震度5弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図
※引用:国立研究開発法人 防災科学技術研究所J-SHIS 地震ハザードステーション「確率論的地震動予測地図」より
耐震等級1・2・3の違いとは?
地震から、大切な家族を守るためには、耐震性能が高い住まいを考える必要があります。そこで、知っておきたいのが、「耐震等級」です。「耐震等級」とは、地震に対する家の強さを示す指標のことです。3つのランクがあります。
耐震等級1:建築基準法の耐震基準に従って建築された一般の住宅。「家は傾いても、その間に人が逃げられたらOK」というレベル。
耐震等級2:学校や病院など避難場所に指定される施設と同等の強度。
耐震等級3:防災拠点となる消防署や警察署を新築する際に採用される基準と同等。最も高いレベルの耐震等級。
耐震等級の数字が大きいほど、建物の耐震性が高くなります。
耐震性能の高い家で、末永く家族が幸せに暮らす
ここまで、日本の住宅建築において耐震性能が必要な理由をご紹介してきました。
地震が発生すると何より怖いのは、揺れによる家屋の倒壊です。それは、大切な家族の命や大事な財産に関わる問題でもあります。
地震大国の日本だからこそ、耐震等級にこだわり、家族で末永く安心した暮らしをしたいものです。
だからこそ、マイホームを建てるときには、耐震や地震について、しっかりとした知識を持ちたいですね。