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PoEとは?仕組みや規格種類、対応ハブの選び方を解説
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PoEとは?
PoEとは「Power over Ethernet(パワー・オーバー・イーサネット)」の頭文字。イーサネットケーブルを使って、通信データだけでなく、同時に電力を供給する技術のことです。電源がない場所でもイーサネットケーブルを使って電力を供給できるため、屋外や天井など、電源を設置しにくい場所にネットワークカメラ(IPカメラ)を導入するケースなどで活用されています。
PoEインジェクターとの違い
PoEスイッチングハブは、データ通信と電力供給を同時に行う複数のポートを持つデバイスです。これにより、ネットワークカメラや無線LANアクセスポイントなどのPoE対応機器を接続し、データ接続と電力を一つのEthernetケーブルで供給できます。一方、PoEインジェクターは、非PoE対応のスイッチやルーターに接続して使用し、単一のEthernetケーブルを通じて特定の機器に電力を供給するためのデバイスです。つまり、PoEインジェクターは既存のネットワーク構成にPoE機能を追加するために用いられます。
PoE規格の種類とは
PoEは、2003年に「IEEE 802.3af」として標準化され、2009年には「PoE+(IEEE 802.3at)」、2018年には「PoE++(IEEE802.3bt)」が標準化されました。簡単にいうと、PoE対応スイッチングハブの給電能力が高くなり、大きな消費電力を必要とする機器にも対応できるようになっていきました。
新しく登場した規格は下位互換性を持っているため、例えば、PoE++のスイッチングハブは、PoE++のPDはもちろん、PoE、PoE+のPDにも対応しています。各規格の最大供給電力と対応する主なPDは以下のとおりです。
- 最大供給電力 15.4W
- 主なPD ネットワークカメラ(IPカメラ)、IP電話など
- 最大供給電力 30W
- 主なPD PTZカメラ、ネットワークカメラ、IP電話、無線LANアクセスポイントなど
- 最大供給電力 90W
- 主なPD 4K対応カメラ、無線LANアクセスポイント、デジタルサイネージ、高解像度ディスプレイなど
PoEのメリットや効果
イーサネットケーブルで電力を供給できるPoE。具体的なメリットや効果を見ていきましょう。
メリット①電源が不要
PoEの最大の特長であり、最大のメリットが、イーサネットケーブルで接続された各対応機器(PD)には電源が不要なことです。例えば、防犯用や監視用にネットワークカメラを導入する場合、設置場所に電源が設置されているとは限りません。天井にカメラを設置する場合、併せて電源工事を行うとなると設置にかかる費用は大きくなっていきます。
PoEならイーサネットケーブルを使って電力を供給できるため、電源がない場所でもネットワークカメラなどを設置でき、工事費用を抑えることができます。
メリット②設置場所が柔軟に
同様にネットワークカメラを設置する場合は、天井、入口付近など、目的や用途に応じて、さまざまな場所にネットワークカメラを設置することがほとんどです。通常なら設置が難しいような場所でも、PoEならイーサネットケーブルさえ引くことができれば、希望するさまざまな場所にPDを設置することができます。
屋外で電源の確保が難しい場所にも、PoEならネットワークカメラなどを設置できます。
メリット③配線が簡単
ネットワークカメラやIP電話などには通常、イーサネットケーブルに加えて、電源が必要で、設置する際には電源の確保はもちろん、電源コードの取り回しにも配慮しなければなりません。
PoEのスイッチングハブとPDを活用すれば、必要になるのはイーサネットケーブルのみ。オフィスや工場などで使用する場合、配線が簡単になり、メンテナンスなどのコストも削減できます。特にオフィスでIP電話を使用している場合は、見た目もスッキリし、仕事環境の向上にもつながります。
PoEのデメリットや注意点
PoEには複数のメリットがありますが、もちろんデメリットや注意点もあります。
デメリット①高コスト
PoE対応スイッチングハブは、通常のスイッチングハブの機能に加えて、電力供給機能を備えているため、価格はどうしても高くなります。またPD側もPoE非対応のものに比べると高くなります。
単純に機器コストだけで比べた場合、PoE対応機器は高コストになります。
デメリット②給電能力や距離に制限
PoE対応スイッチングハブの給電能力は、前述したようにPoE、PoE+、PoE++ごとに最大供給電力が決まっています。そのため、どこにスイッチングハブを設置し、どのようなPDを接続するかを十分に検討する必要があります。
また給電できる距離は、規格上は最大100mとなっています。
デメリット③イーサネットケーブルの品質や取り回しに注意
イーサネットケーブルは規格が定められており、ほとんどのケースで「カテゴリ5e(CAT 5e)」以上のイーサネットケーブルをPoE機器の接続に使用します。とはいえ、イーサネットケーブルの品質はメーカや価格に左右されます。適切なイーサネットケーブルを選ぶようにします。
またケーブルの取り回しにも注意が必要です。イーサネットケーブルを配線する際には数本のケーブルを束ねることがありますが、PoEではデータだけでなく、電力も供給するため束ねると発熱するケースがあります。通信のパフォーマンスにも影響を及ぼすので、取り回しには十分注意します。
PoE対応スイッチングハブの選び方
PoE対応スイッチングハブを選ぶときのポイントを整理しましょう。
PoE給電ポート数は十分か
PoE対応スイッチングハブには、給電ポート数が4ポート程度の小型なものから、24ポート、さらには48ポートを備えた大型ものまで、さまざまな種類があります。どれくらいの数のPDを接続するのか、将来的に接続するPDが増えたり、ネットワークを拡張する可能性などを考慮して、PoE対応スイッチングハブを選びます。
給電能力はどうか
給電能力、つまり1ポートあたりの最大給電電力はPoEの規格ごとに定められており、前述したように、例えば「PoE+」なら、1ポートあたり最大30Wの電力を供給できます。ネットワークカメラなど、使用するPDの消費電力をカバーしているかどうか確認します。
給電電力はどうか
給電能力に加えて、スイッチングハブ全体の給電電力も確認します。スイッチングハブの給電電力は、給電ポート数✕1ポートあたりの最大供給電力ではないので、注意してください。
PoE対応機器に接続するLANケーブルについて
イーサネットケーブルは対応する通信速度などによって規格が定められていますが、PoE対応スイッチングハブとPoE対応のネットワークカメラやIP電話などの接続には、「カテゴリ5e(CAT 5e)」以上のイーサネットケーブルを使用します。最も古いPoE規格「IEEE802.3af」は、カテゴリ3のケーブルを使用できますが、すでに下位カテゴリのケーブルは販売されていません。PoE接続には「カテゴリ5e」以上を使用しましょう。
PoEの使用用途
PoE給電スイッチングハブを使用すると、例えばネットワークカメラを設置する場合、入口扉の上部や天井といった電源の確保が難しい場所でも電源工事をせずに、LANケーブルだけでネットワークカメラへの電源供給が可能になります。LANケーブルで通信と電源供給の二役が可能なため、カメラ端末まわりのケーブルによるごちゃつきを改善します。同様に、PoE対応の無線アクセスポイントであれば壁面や天井など、LANケーブルの配線が可能なエリアであれば柔軟な場所に設置できますし、オフィス内デスク上のIP電話もPoE対応の端末であれば、デスクサイドに適したPoE給電スイッチングハブを設置することで、デスク周りの配線をすっきりさせることが可能です。
PoEの使用用途「ネットワークカメラ」
カメラ自体がIPアドレスを持つ「ネットワークカメラ」。PoE対応のものが多くなっています。設置場所の柔軟性はもちろんのこと、電源とLANケーブル2本必要なところをPoE給電スイッチングハブを用いることで電源・通信をケーブル1本で済ませることができるため、電源工事が不要なうえ、配線をすっきりさせます。
PoEは規格で最大電力供給量が定められていますが、PoE機器の変化と共に、規格も進化しています。同様にネットワークカメラも性能や機能など広がりをみせています。例えば、PTZ(パン・チルト・ズーム)対応やヒーター内蔵、さらに高画質4Kカメラなど、カメラ性能・機能の進化により消費電力が大きい端末が増えています。消費電力が大きいカメラなどの端末に対応できる、1ポートあたり最大90Wまでの電力を共有するPoE++規格(IEEE 802.3bt)が登場。ネットワークカメラの設置時にはPoE給電スイッチングハブがますます欠かせない存在になっています。
PoEの使用用途「無線アクセスポイント」
「無線アクセスポイント」にも規格があり数年ごとに新しい規格が登場しています。新しい規格の登場と共に、消費電力量増加のみならず、高速通信の必要性まで求められます。
エンタープライズ向け無線アクセスポイントはPoE対応の端末が多くを占めており、ネットワークカメラ同様に、通信と電源を供給するPoE給電スイッチングハブは欠かせません。
無線アクセスポイント用のPoE給電スイッチングハブは、給電量のみならず前述の通り通信量も重要なポイントになってきます。ギガ対応であることはもちろん、今後の通信量増加を見据えて新たな規格「マルチギガ(IEEE802.3bz)」に準拠した1G/2.5G/5GBASE-Tの速度に今から対応することもご検討ください。既存の配線を活用し、Cat5e・Cat6ケーブルでの高速化(2.5G・5G)を実現します。
PoEの使用用途「IP電話」
IP電話もPoE機器の一つです。電源供給と通信の二役を、PoE給電スイッチングハブが担うことで、オフィスのデスクまわりのケーブルのごちゃつきを抑えることが可能になります。IP電話の音声データは、ネットワークカメラや無線アクセスポイントのように消費電力量や高速通信に大きく左右されないものの、執務室内にPoE給電スイッチングハブを設置するからこその配慮が必要になってきます。たとえば、ファン音が気にならないようファンレス対応のPoE給電スイッチングハブが望ましいケースや、オフィス什器に設置しやすいように強力マグネット内蔵で什器への貼り付けが可能なタイプなどがあげられます。また、LANケーブルをループ状に誤って接続してしまい発生する「ループ接続」からネットワークを守る機能、ループ障害防止機能をPoE給電スイッチングハブが搭載しているとデスクサイドでも安心してご使用いただけます。
PoE給電スイッチングハブ納入事例
弊社の納入事例をご紹介します。
宮城県多賀城市教育委員会様は、GIGAスクール構想を契機に、市内の小中学校計10校に対し5,500台のChromebookを配備し、それに合わせて高速のWi-Fiネットワークを整備されました。その高速のWi-Fiネットワーク整備に、無線LANアクセスポイントと弊社製PoE給電スイッチングハブをご採用いただきました。
パナソニックセンター東京様は、パナソニックグループのグローバルな総合情報受発信拠点として、2002年にオープンしたコーポレートショウルームです。本館とスタジオ棟を備える同施設では、無線LANネットワークを中心とするネットワーク環境を見直し、お客様へより満足度の高いサービスを提供したいという思いがあり、弊社が提供する無線LANシステム「AIRRECT(エアレクト)」とPoE給電スイッチングハブをご採用いただきネットワーク環境を整備しました。
導入事例
よくあるご質問
PoE非対応機器・製品は接続できる?
- PoE対応スイッチングハブには、PoE非対応の機器や製品も接続できます。その場合は、通常のスイッチングハブと同じように使用できます。
100m以上先の端末へPoE給電したいときは?
- PoEパススルー(PoE延長器)を活用すれば、100mに限られているLANケーブル長を超えて、PoE給電が可能になります。
PoEスイッチとPoE+(PoE++)スイッチの違いとは?
- PoEはIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers:米国電気電子学会)にて標準規格が定められています。PoEスイッチは、PoE規格に対応したスイッチングハブ全体を表すこともあれば、規格としてPoE(IEEE 802.3af)に対応したものをさす場合があります。
PoE規格は、PoE+(IEEE 802.3at)、PoE++(IEEE802.3bt)が標準化され、PoE+に対応したスイッチングハブをPoE+スイッチ、PoE++に対応したものをPoE++スイッチといいます。
新しい規格は下位互換性を備えているので、PoE+スイッチにPoE対応のIPカメラの接続が可能です。
PoE対応スイッチングハブに関するお問い合わせはこちら
パナソニックEWネットワークスは、オフィス・学校・工場などお客様環境やニーズに合わせ、スイッチングハブの機器選定-ネットワーク構築・工事-保守に至るまでトータルでサポート。PoE対応スイッチングハブは、高温環境対応モデルや雷サージ耐性強化モデル、ファンレスモデルなど、さまざまな環境で安定した通信を確保できるラインナップを揃えています。PoE対応スイッチングハブに関するお問い合わせはこちら。
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PoE対応スイッチングハブで柔軟なネットワーク環境を
イーサネットケーブル1本で通信と電力供給を行うPoE対応スイッチングハブ。防犯・監視用のネットワークカメラやIP電話をはじめ、無線LANアクセスポイント、今ではデジタルサイネージなど大型機器の設置などにも活用できます。電源が確保できない場所でもPoE対応機器を設置できるメリットを生かし、柔軟なネットワーク環境を構築しましょう。