すまいの保険のコラム
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台風といえば9月をイメージする人が多いと思いますが、気象庁によれば日本に接近・上陸する台風の数は8月が最も多いのはご存知でしょうか。これからシーズンを迎える台風は「すまい」に様々な被害をもたらす可能性があり、そのリスクは日本のどこにいても低くはありません。年々増している台風の脅威について今一度考えてみましょう。
至る所に台風の脅威がある
気象庁によると、日本には毎年平均約12個の台風が接近し、そのうち約3個が上陸しています。台風というとどうしても沖縄や和歌山・高知などのイメージが強いですが、近年では大都市圏でも大きな台風被害が出ています。日本損害保険協会によると、大阪などで猛威を奮った2018年台風第21号では1兆円以上の被害、千葉を中心に立て続けに襲った2019年台風第15・19号では合わせて1兆円以上の被害が出ています。
実際、図表1のように地方別に年間台風接近数を見てみると、沖縄や伊豆・小笠原諸島ほどではないですが、本州でも広い地域で年平均3個程度は接近することが分かります。
また、台風による被害も年々増加しています。図表2は風水災などによる保険金支払額の推移を示しています。年々増加傾向にあるとともに、2011年以降は毎年1兆円を超えています。これには最近のゲリラ豪雨などによる被害も含まれますが、中小企業庁によると台風は、日本における自然災害の発生件数の57.1%、被害額は地震に次いで14.0%を占めます。
被害は戸建だけではない
至る所というのは、地域的な意味はもちろん地形や建物の形態に関わらず台風のリスクがあるということを意味します。図表3は「重ねるハザードマップ」で関東地方および近畿地方の一部について幾つかの災害リスクを示したものです。画像にある色や記号は、
- 左部(神奈川など)に多い茶色:土石流のリスクが高い地域
- 上部(埼玉など)に多い黄・水・紫色:洪水浸水のリスクが高い地域
- 中央部(東京など)に多い黄色の注意記号:道路冠水リスクが高い地域
を意味し、沿岸部でも山間部でも災害リスクは高い事を示しています。
大阪の中心部と兵庫南部は洪水リスクが高い地域(黄・水・紫色)と道路冠水リスクが高い地域(注意記号)が多く、京都・和歌山・奈良・滋賀は土石流のリスクが高い地域(茶色)が多くなっています。また、一見すると千葉は安全そうに見えますが、この地図は主に水害によるリスクを示したものなので、さらに風災リスクに関しても注意しなければなりません。
風災リスクとして代表的な例は、ガラスやアンテナの破損です。台風の被害と言えば建物の倒壊や浸水被害を想起しがちですが、実は圧倒的に件数が多いのはガラスやアンテナへの被害なのです。2018年台風第21号の後に、シェアリングテクノロジーが集めた7,443件のデータによる調査結果から、一戸建てではアンテナ、雨漏り、ガラスと台風による破損箇所が多様なのに対し、マンション・アパートなどの集合住宅では破損箇所の8割以上がガラスだということがわかっています。窓ガラスの修理コストは高くなることが多いので注意が必要でしょう。
上陸する台風が強力になっている
ここ数年は被害が甚大な台風が多い印象ですが、そのイメージ通り日本に上陸する台風は実際に強くなっています。図表4は日本に上陸した台風について、中心気圧960hPa以下の台風の上陸個数(左軸)と上陸時の平均中心気圧(右軸)を10年毎に示しています。台風は一般的に気圧が低いほど強くなるのですが、図表4からもわかる通り平均中心気圧は下落傾向にあり、強力な台風の上陸個数が長期的に増加していることが見て取れます。
台風が強力になっている背景の1つに長期的な海面水温の上昇が指摘されています。気象庁「海洋の健康診断表」によれば、日本に接近・上陸する台風が発生しやすい日本近海や北西太平洋の海面水温は、2020年夏は平年並みもしくは平年以上と予想されているため、今年の夏は特に注意が必要になるかもしれません。
参考文献
- 台風の統計資料|気象庁
- 過去の主な風水災等による保険金の支払い|日本損害保険協会(PDF)
- 水災害リスクに対する損害保険について|「水災害対策とまちづくりの連携のあり方」検討会
- 2019年版「中小企業白書」第3部第2章|中小企業庁
- 重ねるハザードマップ|国土交通省
- 【調査】台風21号の被害調査レポート。戸建ては「アンテナ」、マンションは「ガラス」にご注意。|生活110番(シェアリングテクノロジー株式会社)
- 熊澤里枝,筆保弘徳,久保田尚之(2016)「1900年から2014年における日本の台風上陸数」|天気(日本気象学会)63巻11号
- 台風位置表|気象庁
- 海洋の健康診断表|気象庁
- 火災保険 水災補償付帯率|損害保険料率算出機構
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