住居・店舗・公共施設・・・大規模建築に求められるデザインとは?
公共施設や福祉施設、医療施設、店舗、アパートやマンションなど、人が集まる大型施設では、目的に合わせた実用性と機能性を兼ね備えた設計が必要不可欠です。
そこで、国も推進する大規模建築に求められる設計・デザインについてご紹介します。
大規模建築物の景観形成指針
大規模建築物を建設する際に、重要視されるものの一つが「景観」です。
街並みの景観を損ねるような大規模建築は、国土交通省が定めている「景観法運用指針」内で、細かな基準によって規制されています。
たとえば、東京都内でも都市開発に伴う大規模建築物の壁面の位置や規模、外装の色彩や野外広告などで周りの景観を損なうことのないよう誘導するための指針が用意されています。
建築物の配置や、高さ・規模、形態・意匠・色彩・素材など、細かく基準が設定されているのです。
日本の住宅構造は木造がメイン
日本の住宅は、およそ8割が木造住宅です。
木造建築とは土台や壁、柱、梁など、建築物の強度を支える構造体が木材であるものを言います。
木材は、私たちの身近な住宅建材として多くの住宅で利用されてきました。
平成15年に内閣府が発表した『森林と生活に関する世論調査』によると、住宅を選ぶ時に最も重視される工法について以下のデータがあります。
- 在来工法で建てられた木造住宅:6割
- ツーバイフォー工法で建てられた住宅:2割
この結果から、私たち日本人が木造住宅を好んでいるのかが分かるでしょう。
木造住宅を建てる時の一般的な坪単価は、鉄筋コンクリートや鉄骨造に対して比較的安いと言われています。
また、木造建築は鉄筋コンクリートや鉄骨造と比べて、設計の自由度が高いところもメリットの一つです。
木造建築は、土台や基礎、柱、梁などシンプルな構造で出来ているので、法的な基準を満たしながら、自由度の高い設計をしやすいと言われています。
さらに、木材がもつ優れた断熱性や吸湿性能は、日本の気候にぴったりで、古くから建築資材として利用されてきました。
近年では、「省エネ」や「エコ」といった地球環境を考えた建築資材が求められるようになり、「リサイクルしやすい」、「再生産可能な資材である」などの理由からも、木造建築が再評価されています。
木造の大規模建築
日本の住宅のうち8割を占める木造建築は、今では住宅だけでなく、病院や幼稚園、店舗、会館など公共施設や福祉施設といった「非住宅」にも導入されています。
もともと住宅に多く取り入れられていた木造ですが、大きな非住宅に対しては「建物の強さ」や「耐火性」といった部分に不安がありました。
しかし、そんな木造建築物も技術が進歩しており、非住宅のような大きな建物でも対応可能になったことと、国が積極的に非住宅の木造化を後押ししていることから、非住宅に木造を取り入れる傾向が高まっています。
日本人が木造の建物を好む傾向は住宅でも非住宅でも強く、人が多く集まる非住宅のような建物を木造で対応できるというのは、特に高齢者施設や福祉施設、児童関連の施設など、温かみが求められる建物において、好意をもって受け入れられているようです。
大規模木造建築物のデザイン
ここまで日本の木造建築事情についてご説明してきました。
前述のとおり、木造建築は設計の自由度が高いという強みを生かし、住宅だけでなく非住宅にも取り入れられています。
賃貸住宅や店舗、高齢者住宅など、施設や用途によって求められるデザインや設計が異なります。
それをクリアできるのが、自由度が高い木造建築のメリットです。
では、施設や用途ごとに変わる、デザインや設計のポイントについて見ていきましょう。
- アパート
- 保育園
- レストラン
- 病院・診療所
- 高齢者施設
アパート
集合型住宅であるアパートは、店舗共有型や車庫併設型、独身向け・ファミリー向けなど、そのタイプはさまざまです。
子育て世代をターゲットにしたエリアの場合、1階部分に学童保育施設を設け、2・3階部分は住居として利用できるアパートにする、というケースもあります。
子供を安心して預けられる環境づくりも、大規模施設に求められるデザイン性のひとつです。
幼稚園・保育園
幼稚園や保育園には、子供たちが自由にのびのびと走り回れるよう、安全性を追求したデザインが求められます。
柱のない空間や段差のないフロアで、子供たちが安心して遊べる空間作り。
そして同時に、高い耐火性・耐震性のある十分な強度を確保した設計が必要です。
レストラン
店全体が明るく開放的な空間であることが求められる飲食店のデザイン。
入り口や窓を大きくとることで太陽光をたくさん取り込むことができます。
また、ひとつの空間を普段は間仕切りで個室のように使用しておき、イベントやパーティーでは広い空間として使うスペースを確保しておくなど、さまざまなシーンに対応できるデザインが求められます。
病院・診療所
体調に不安を抱えて訪れる病院や診療所では、できるだけ圧迫感を感じさせない開放的な設計が求められます。
壁や床などは落ち着きを感じられる木製タイプ、照明は明るすぎないような気配りと間接照明などが効果的とされています。
医療機器などの無機質な機械が多い病院や診療所では、温かみを感じさせる空間作りが重要といえるでしょう。
高齢者施設
高齢者が毎日の生活を快適に過す施設では、安心して施設の利用ができるようなデザインが求められます。
たとえば、廊下や階段には手すりを設置。
さらに滑りにくい床材を使用することや、バリアフリーであることなども重要なポイントでしょう。
また、介護施設などでは、車椅子が十分すれ違えるだけの広い廊下スペースの確保や、外光を取り込んで開放感あふれた空間作りも大切なデザインのひとつです。
木造の大規模建築で快適な時間を
温かみを感じることのできる木造建築は、小さなお子さんから高齢者まで安心と安らぎを感じられる空間です。
さまざまな人たちが集う大規模建築だからこそ、こうした木造建築を選ぶのもよいですね。
ゆったりとしたゆとりある空間でのびのびとした快適な時間を過ごすために、木造の大規模建築は有力な選択肢の1つです。