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OSPFとは?特徴や仕組みを初心者向けにわかりやすく解説!
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OSPFとは何か
OSPFは「Open Shortest Path First」の略、日本語に訳すと「最も短い経路を最初に開く」となります。TCP/IPネットワークにおいて、ルータやレイヤー3スイッチングハブがパケットの転送先を決める際に用いるルーティングプロトコルの1つで、「リンクステート型」と呼ばれる方式を使って最適なルートを割り出します。従来用いられてきたRIPと比べると、ネットワークの変更にすぐに対応できるため不具合が発生しにくい、負荷分散が可能などのメリットがあります。主に大規模ネットワークで用いられます。
OSPFの特徴
特徴①IGPの一種
TCP/IPネットワークで用いられるプロトコルは、大きくわけて2つに分類できます。IGP(Interior Gateway Protocol)と、EGP(Exterior Gateway Protocol)です。
インターネットは中央集権的な管理者が存在せず、大小さまざまなネットワークが集まってできています。インターネットの中で、1つのルーティングポリシーに則って運営されているネットワークをAS(Autonomous System:自律システム)と呼びます。
AS内部で用いられるプロトコルがIGP、AS間で用いられるプロトコルがEGPで、OSPFはIGPの一種です。
特徴②リンクステート型
OSPFは、各ルータが接続されている回線の帯域幅といったネットワークの接続状況(Link State:リンクステート)を交換し、その情報をもとに1つのルーティングテーブルを作り上げ、全ルータで共有し、最適なルートを選び出します。
当初、IGPでは通過するルータの数(ホップ数)でルートを選ぶRIP(Routing Information Protocol)が用いられていました。ルータの計算能力がまだ低く、複雑な処理が難しかったためです。しかし今ではルータの性能が向上し、OSPFに必要な処理を実現できるようになっています。OSPFでは、ホップ数が多少増えても、より高速なルートを選ぶことが可能になります。
現在でも、小規模ネットワークではRIPが使われていますが、中〜大規模なネットワークではOSPFが主流になっています。
特徴③コスト
OSPFは「コスト」という考え方に基づいてルートを選択します。広帯域な回線ほどコストが小さいと考え、ルートを選ぶときには目的地点までのコストを加算していき、合計が最も小さいルートを最適なルートとみなして選択するという考え方です。
コストは帯域に応じてデフォルト値が定められていますが、一般的にはネットワークの設計方針や運用方針に基づいてネットワーク管理者が設定します。例えば、高速の回線には小さいコストを、低速の回線には大きなコストを設定して、ネットワークの最適化を図ります。
特徴④コンバージェンス時間が短い
OSPFは、AS内の全ルータが共通のルーティングテーブルを保有し、ネットワークに変更があったときには、変更があった差分情報のみを他のルータに伝えるトリガーアップデートを行います。そのため、ネットワークの変更が全ルータに伝わるまでの時間「コンバージェンス時間」が短くなっています。
一方、RIPは30秒ごとにルート情報を送信し、ネットワークの状態を把握しているため、ルータの台数が増えると、ネットワークに負荷がかかるうえ、コンバージェンス時間が長くなるという欠点がありました。小規模なネットワークでは、コンバージェンス時間はあまり問題にならないため、今でもRIPが使われているといえます。
特徴⑤ループが発生しない
OSPFは、コンバージェンスが高速に行われるため、ルーティングが正しく行われないループが発生する確率もきわめて小さくなっています。
RIPでは、コンバージェンスに時間がかかり、ネットワークの変更が正しく伝わらずにループが発生する可能性が高くなっていました。
特徴⑥負荷分散が可能
OSPFは「コスト」という考え方で最適なルートを選択しますが、同じコストのルートが複数存在した場合、複数のルートにパケットを分散して送り出し、負荷分散(ロードバランシング)することができます。
OSPFの「エリア」とは
RIPに比べ、いくつものメリットがあるOSPFですが、大規模なネットワークではルータの数が多くなり、リンクステート情報も大きくなって、ルータにかかる負荷が大きくなります。その結果、ネットワーク全体のスピードが低下してしまうこともあります。
そうした問題を解決するために、OSPFでは「エリア」という考え方が導入されています。ネットワークを分割して、効率的に運用・管理しようという考え方です。
エリアを分ける際には「エリア0」と呼ばれる中心となるエリア(バックボーン)を作り、他のエリア(エリア1、エリア2、エリア3…)は必ずエリア0に接続します。エリア0と、他のエリアをつなぐルータは「エリア境界ルータ(Area Border Router:ABR)と呼ばれます。
エリア内のルータが持つリンクステート情報は、エリア内の情報がメインになり、エリア外の情報は概要のみになるため、ルータにかかる負荷は軽減できます。
OSPFの仕組みについて
OSPFは3つの仕組み(ステップ)でルーティングテーブルを作成します。
仕組み①Helloパケットで接続確認
各ルータは隣接するルータにHelloパケットを送信します。各ルータがその存在を他のルータに知らせることは、ルーティングテーブルを作成するための基本となります。
Helloパケットは10秒間隔で常に送信されます。Helloパケットが通常の4倍の時間(40秒)届かなかった場合は、隣接するルータが何らかの理由でネットワークに存在しなくなったと判断されます。
仕組み②リンクステートメントの交換
隣接するルータとの接続が確認できたら、接続状況(リンクステートメント)を交換します。接続状況を送るパケットをLSA(Link State Advertisement)と呼びます。ルータはLSAを受け取ると、LSDB(Link State Database)と呼ばれるデータベースを更新し、隣接するルータと同期させます。この作業を繰り返すことで、AS(自律システム)内、あるいはエリア内のルータがすべて同じLSDBを保持することになります。
仕組み③ルーティングテーブル作成
LSDBをもとに、SPFアルゴリズムと呼ばれる計算方法を用いて、ルーティングテーブルを作成します。SPFは、Shortest Path Firstの略で、最もコストが低いルートを選ぶアルゴリズムです。OSPFの名称はここから来ています。
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OSPFで大規模ネットワークを効率的に運用
主に大規模ネットワークで用いられるリンクステート型ルーティングプロトコル「OSPF」は、コンバージェンス時間が短い、ループが発生しない、負荷分散が可能など、さまざまなメリットを備えています。IT化・デジタル化が進展する今、ネットワークの優劣はビジネスを左右する重要な要素になっています。OSPFで効率的なネットワーク運用を実現してください。