海老名市様

GIGAスクール構想の実現に向け、全国に先駆けて市立小中学校のインターネット環境を整備

海老名市様は、公正なICT(※1)教育のための「1人1台端末」と学校における高速ネットワーク環境を整備する「GIGAスクール構想」の実現に向けて、海老名市立小中学校19校、375教室において、タブレット端末とインターネット環境を全国に先駆けて整備されました。今回、ICT環境の設備整備工事においての課題やご苦労された点について、海老名市職員様と施工を手掛けられた電気工事会社6社様にお話を伺いました。

※1 ICT:Information and Communication Technologyの略。情報通信技術の意味。「ICT教育」とは、教育現場で活用される情報通信技術そのものや取り組みの総称。プロジェクターやパソコン、タプレット、電子黒板等を用いた学習や、インターネットに接続して学習を行うこと。


廊下に設置されたスイッチングハブ

独自のICT環境を整備 いちはやくタブレット端末を導入

―海老名市様では、国の政策であるGIGAスクール構想の実現に向け、全国に先駆けて全ての市立小中学校の1人1台のタブレット端末の導入と高速ネットワーク環境の整備を終えられました。

  • 海老名市 石田様:海老名市では計画的に学校のICT環境を整備してきており、2018年から3か年計画でiPadのLTEモデル(セルラーモデル)を市立小中学校に1700台導入しました。 LTEモデルは携帯電話の通信システムで時間も場所も選ばずどこでもネット接続が可能で、「学びの保障」ができるため、最初に導入したわけです。2020年、緊急事態宣言で休校になった際には、児童生徒の家庭のネットワーク環境によって配布するなど、うまく活用することができました。その後、中学校にはChromebook、小学校にはiPad(Wi-Fiモデル)の導入を計画し、2021年3月に高速ネットワーク環境の整備を終え、6月には1人1台タブレット端末の導入が完了しました。
  • 海老名市 鈴木様:2019年12月に国からGIGAスクール構想が発表され、「公立学校情報通信ネットワーク環境施設整備費補助金」「公立学校情報機器整備費補助金」が制定されました。海老名市は2019年度に独自に予算措置をしていましたが、補助金が活用できることを踏まえて、迅速にWi-Fi環境の整備と端末の導入を行うことにしました。おかげで先に導入していたLTEモデルも有効に活用できており、今後もより進んだICT教育ができればと思っています。

高速ネットワーク環境整備のためスイッチングハブと無線アクセスポイントを設置

―事業の設計・企画段階で、高速ネットワーク環境の整備にあたり、特にご苦労された点や課題等はありましたか。

  • 海老名市 鈴木様:ネットワークについて何を整備したら良いのか全く知識がないところからのスタートであったため、まず設計・工事担当部署である営繕課と協力し、整備内容の検討を行いました。また、事業のスタートとほぼ同時にコロナ禍に見舞われたことにより、国の補助金説明会が中止されるなど、補助金の交付決定までの国・県との調整も大変でした。小中学校自体もコロナ禍で混乱に見舞われる中、営繕課と共に短期間で全ての小中学校と調整を行い、現場調査に回ったことも苦労した点でした。
  • 海老名市 伊東様:設計・工事担当者として、市、工事会社、メーカーのそれぞれの役割を明確にしたのが一番重要なポイントだったと思います。機器の確保に関しては、コロナ禍の影響を考慮して、市としても工事会社、メーカーに配慮した設計を行いました。各教室に機器を整備するにあたっては、通信工事が初めての電気工事会社様もいらっしゃることから、パナソニックさんと電気工事会社様任せにはせず、市の設計がしっかりしなければ、という意識を持つことを心掛けました。思い返すと、現場調査に行きたくてもコロナ禍で学校に立ち入れない時期が長く続き、全校を回って写真を撮って、すぐ図面を書いて…と作業時間が十分に確保できなかったこともありました。また、インフラ側の整備状況に対して、機器のスペックを含めた校内LAN構成をどこまで求めるかについても、とても悩みました。子どもたちが将来的にも使い続ける中、切り替えの時期が来た際にどうするのか?インフラ側の整備次第で能力が最大限発揮できる機器とし、そのまま使用可能な互換性を持たせ、5年後に無線アクセスポイントを更新してもスイッチングハブはそのまま使用でき、機器を更新してもケーブルは20年30年使えるような、将来も見据えた設計を考えることも工夫した点です。

イメージ図
座談会の様子。海老名市職員の皆様

コロナ禍での学校現場における通信工事の課題

―電気工事会社様にお伺いします。今回の工事において、通信工事という点やコロナ禍という点での課題やご苦労などについてお聞かせください。

  • 有限会社荒井電気 荒井様:私が工事を担当した学校では廊下壁面の塗料にアスベストが含まれていたのですが、これについてはあらかじめ市から、事前調査でアスベストが含まれていることがわかった際には専用の機器を用いてアスベストが飛散しないように工事するよう指導があり、これには大変手間がかかりました。また、スイッチングハブの現場での設置スペースが限られていたため、うまく納めるのに苦労しました。
  • 井上電気株式会社 波多野様:一番大変だった点は、ケーブルの敷設距離が大変長かったことです。ケーブルを敷設し終わって最後に通信テストを行って、エラーが出て初めて、ケーブルが傷ついていたことが判明し再度ケーブルを引き直す、ということが何回かありました。
  • 株式会社エス・エス・イー 一條様:通信工事は初めてでしたが、パナソニックさんに教えていただきながら施工することができました。一番注意したのは、コロナ感染対策ですね。触れたところは全部消毒をして回りました。また、工事の前日にキャンセルの連絡がきたこともあったり、工期が不安定だったことも大変でした。
  • 株式会社大塚工電社 朝比奈様:土日の工事がメインだったのですが、土日に校庭や体育館を一般開放されている学校があり、車で来られる保護者も多く、高所作業車で作業をしなければならない際には、前日や朝一番に作業車を止める場所の確保に行かねばならないなど、なかなか大変でした。
  • 有限会社オノザカ電工 三塚様:ケーブルの敷設を終えた後に、パナソニックさんに端末処理、機械を設置、最終試験をしていただいたのですが、当社もエラーが出てやり直しすることが何度かありました。ですが、電気工事会社にはその理由を特定できないこともあり、パナソニックさんには何度も足を運んでいただき有難かったです。ただ、工事スキルとしては良い経験になりました。
  • 株式会社深井電工 深井様:スイッチングハブと無線アクセスポイントの施工台数が多く、コロナ禍という状況もあって最初は不安だったのですが、無線アクセスポイントの差し込みにはやや苦戦はしたものの、他は施工しやすくて非常に作業効率も良かったです。

イメージ図
座談会の様子。電気工事会社の皆様

地元密着で活動できる電気工事会社様だからこそできた現場調整・施工管理

―海老名市様にお伺いします。今回の工事においての電気工事会社様やパナソニックの対応についてお聞かせください。

  • 海老名市 鈴木様:電気工事会社様にはコロナ禍での学校現場での作業ということで、時間の制約が多い中、感染症対策を講じた上で施工していただき、大変ご苦労があったかと思います。夜間や土日の作業も当然ございますし、中学校では部活動の時間帯もあり、いろいろとご不便やご迷惑をおかけしました。また、学校施設の一般開放などもあり、コロナ禍でも多くの人の出入りがあった中で、安全対策を講じた上で作業していただいたことなどきめ細かい施工管理に大変感謝しております。
  • 海老名市 伊東様:パナソニックさんには、無理を言って工期の終盤で急遽、機器の入替やシステムの変更を依頼しましたが、納期を間に合わせてくださるなど臨機応変に対応していただき満足しています。コロナ禍での厳しい施工条件の中でも工期全体を通して皆様のお蔭で無事故であったことは、非常に良かったと思っています。
     大手の工事会社1社に発注するという選択をせず、地元の工事会社6社に19校を分担して施工していただいたことは、正解だったと思っています。理由としては、1校1校事情も異なりますし、施工も夜間や土日となり、立ち会われる先生のご都合でも変動しますので、工事日程の調整作業だけでもかなり大変です。施工管理面のキャパシティで考えると工事会社1社につき3校くらいを担当していただくのが丁度良いのかな、と発注前に判断したからです。
     一般的には通信工事は弱電工事会社が行いますが、今回電気工事会社様に発注した理由は、こうした長い工期の施工管理や、壁や天井に穴をあけて盤を設置したり非常に長いケーブルを這わせたりという既存建築物の工事に慣れておられ、きちんとした工事全般を任せられ、信頼性が高いと判断したからです。電気工事会社様も触れておられたように、今回、設計段階で壁面の塗料にアスベストが含まれている校舎があることは予想していました。そのため、アスベストが飛散しないように特殊な機械をリースして施工する必要がありましたので、設計時に見込んでおり、その意図を汲んで、付帯工事としてうまく対応していただきました。

―今回のICT環境の整備後、端末をどのように活用なさっていますか。また、今後の課題などはございますか。

  • 海老名市 石田様:海老名市では5年前から全校の教室にプロジェクターを導入するなどICT教育に力を入れてきましたが、今回Wi-Fi環境が整ったことで、コロナ禍で難しくなった校外学習がオンラインで可能になりました。たとえば地元の苺農家さんとオンラインで繋げて、画面を通して直にお話を伺うなどしています。
     また、コロナ禍で始業式や終業式も1か所に集まることができないため、職員室や校長室と繋げてオンラインで行いましたし、その他の行事もオンラインで教室間を繋げながら行っています。今後の課題は、端末を授業の中でどのように活用していくかといった点です。また、家庭での活用については、幅広い視点で進めていくことが課題になってくるのではないかと思っています。

―最後に、全国の電気工事会社様にメッセージをお願いします。

  • 海老名市 瀬戸様:コロナ禍で大変な時期に、事故もなく工期を守り施工していただいた電気工事会社様には大変感謝しています。我々が小中学校に通っていた頃とは違い、今やプロジェクターが各教室に、端末が1人1台に整備され、教育環境は大きく変化しています。今後も教育のデジタル化や情報化は加速する傾向にあり、変化はますます大きくなっていくと思いますが、子どもたちが国際的な視点で深い学びができるような環境を維持・継続するためには、やはり地元の電気工事会社様のご協力が不可欠になるかと改めて感じています。ニーズは全国にあると思います。ぜひ皆様方の各地域を支えていただきたいと思います。

システム構成図

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