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収納品 - 選定方法

選定の三大方針

1968年4月20日に門催された第1回選定委員会が立てた選定の三大基本方針は

  1. 現代中心
  2. 日本中心
  3. 現物中心

だった。ただし、現代中心といっても、今日の一時点という狭い意味ではなく、歴史的な流れの中の現代という点を重視すること。また日本中心といっても、日本に関連が深いものを世界的視野で選択すること。しかもその物品および記録が現代を代表すると考えられるならば、表面的な価値のあるなしにかかわらず残そう、という観点に立つことになった。この基本方針にそって、膨大な現代の文化所産の中から選定の具体的、系統的作業を進めるために、第1回選定委員会は、対象を自然科学分野、社会分野、芸術分野の三つに大きく分けた。そして、選定委員はそれぞれの専門分野によって、三つの分科会を構成し、そこで討議した結果を選定委員会にはかることにした。

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知名人アンケートの実施

なんと言っても、1970年の現代を代表する物品と記録を選定するという作業は、この事業の中での非常に重要、かつ、むずかしい仕事の一つであった。両主催者は、第1回選定委員会開催までに、すでに選定・技術両委員に対して、収納すべきであると思われる物品と記録をそれぞれ3件以内挙げること、また、知名人アンケートを実施するために、アンケート依頼先候補として、各委員がそれぞれ国内5人以上、海外5人以上を推薦するよう、回答を求めていた。

第1回選定委員会は、この方策を基本的に了承し、現代人の広範な英知を生かすために第一に世界の知名人500人以上(国内300人、海外200人)にアンケートを求めることに決定した。

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選定上の問題点

1968年9月7日、第2回選定委員会が開催された。この会議では、主として3分科会を通じて新しく提起された選定上の次のような諸問題について審議された。

1)経年変化に対する考え方

自然科学分科会の「変質する品物は避けたい」という意向に対し、社会分科会では「それが現代を示すものなら、多少の変質もやむをえない」という基準で収納品の選考にあたった。

しかし、同一の容器内に変質の可能性の強い品物を入れた場合、その物質の分解によって、他の収納品への影響が避けられないとなると、収納技術上、大きな問題が起こってくる。

このような懸念に対して、

  1. 病原菌など危険なものは避ける。
  2. 経年変化の起こらないような収納技術の研究、および経年変化が起こっても、他の収納品に悪影響をもたらさない収納技術の研究を技術委員会に委託する。
  3. 経年変化の程度およびその他の試験を、タイム・カプセル開発本部その他の小委員会に委託する

という3方針を決め、その結果を待って、最終的に収納品の決定を下すこととなった。(最終結論は実行委員で整理した後に、選定・技術両委員長の確認を得て決めることにした)

2)分野バランス

カプセル本体の容積は一定であり、自然、社会、芸術の各分科会が収納を希望する多数の品物をすべて入れるわけにはいかない。しかし、分野別バランスを考えて選考することも、作業上にかなりの難点か生じる。そこで、一応バランス調整は行わず、実行委員会事務局側で提案物の容積を確認し、その他の必要事項と合わせたうえ、選定委員との個別交渉によって決定することとなった。つまり、同一物件でも現物を入れるか現物の一部分をサンプルとして入れるか、サンプルの容積をどのくらいにするかまた記録も冊子で収納するか、マイクロフィルムその他の精密微細特殊記録手法を用いるか――など工夫を重ねて意見調整することにしたのである。

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収納品アイデアを公募

1968年9月7日、第2回選定委員会が開催された。この会議では、主として3分科会を通じて新しく提起された選定上の次のような諸問題について審議された。

1)国内一般公募

収納品(物品、記録)の選定については、選定委員や単に一部の知名人だけでなく、広く一般の人びとに呼びかけ、衆知を集めるところにタイム・カプセルEXPO'70の意義がある、という観点から、主催者は第2回選定委員会で国内公募原案の承認を得た後、1968年11月1日付け毎日新聞紙上に次のようなことを社告した。

収納する物 各自の生活の中から、また世界的な広い視野に立って収納可能な物を具休的に選ぶ。
応募の方法 郵便はがき1枚につき、収納する物を1件だけ書く。
1人何枚でも応募できる。
締め切り 1968年11月30日
選考 タイム・カプセルEXPO'70選定委員会の意見に基づいて、応募物件から適当な物を選び、抽選で入賞者を決める。
発表 1969年3月中旬の毎日新聞紙上。
商品 ダイヤモンド賞1人=ナショナル電化製品一式
金賞10人=ナショナルカラーテレビ
銀賞30人=ナショナル電子レンジ
優良賞1,000人=日本万国博覧会入場券

この結果、現代人がトイレでどんな思考をしていたかを残すために“トイレの落書き”を、という奇抜なものから、盲腸、ヘその緒、水虫の薬、天気図、知恵の輪、学校の成績通知簿、風鈴、質札、義眼、そろばん、等々と身の回りの生活から浮かんだおもしろいアイデアが、続々と寄せられた。

この応募総数は、11月30日締め切り時に、116,324通にのぼったが、この中から、第2回選定委員会でほぼ固まった収納品候補と同一、またはそれと類似している提案15,016通、および全く新しい提案7,652通について、慎重に審査し、第3回選定委員会にはかった。その決定に従って、1969年2月、警察官立ち合いのもとに抽選を行い、入賞者1,041人を決めた。

一般公募から新しく採択された提案を挙げてみると、自然科学分野では、絶滅しつつある動物および鳥などの鳴き声のテープと生態フィルム・男女の頭髪・人間の歯・義眼・塩・かつおぶし・蚊とハエ・肥料・農薬のサンプル・胃カメラ・もぐさ(鍼灸(しんきゅう)用具に加える)・酒の製法・視力検査表などがある。

社会分野では、蚊取り線香・郵便はがき・年賀はがき・さいころ・そろばん・びっくり箱・大学入試問題・知恵の輪・旅券・本物の千円紙幣・にせ千円札・宝くじ・折り紙の本・手錠・出生届・婚姻届・日本国旗・和装用生地の見本・野点用茶道具一式・煎茶用道具一式・代表的職業の所得表・上位100人の個人所得表・社会的地位に関する意識調査・各国の税率・グループサウンズやのど自慢などのふんい気を伝えるもの・演奏会的なふんい気を伝えるもの・世界の断面を伝えるものなどが加えられた。

芸術分野では、世界の児童画が新提案であった。

2)主催者提案

一方、主催者側の毎日新間社、松下電器産業株式会杜内でも、それぞれ社内で収納品提案を募集し、実行委員会事務局で整理した。その結果を国内一般公募の新提案と合わせて、分野別に第3回選定委員会へ提出し、審査、決定を行った。

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最終選定確認

1968年12月7日、第2回の3分科会、および第3回選定委員会が開催された。

分科会では、

  1. 国内一般公募収納品の選定。
  2. 選定委員選定の収納品の確認と追加分の選考

行い、引き続いて開かれた選定委員会で全選定収納品の再確認を行った。

この時点での収納品総数は、物品が187件、759点、記録が103件、1,309点で、計290件、2,068点にのぼった。この2,068点の個々の選定経過は、わずかな字数では、とても表現し尽くすことはできない。しかしすべて慎重な審議を経て、しかるべき理由に基づき、膨大な現代文化の中から厳選されてきたものばかりであった。これを裏返して言えば、選定委員をはじめ関係者が、数多く挙げられた収納品候補の中から、たとえば、これはタイム・カプセルに収納しなくても、図書館に残されるにちかいない、といっだ予想のもとに悪戦苦闘して、ふるい落とした結果が、この数字となったのである。開発本部は、これら2,068点の選定品が、50万cm3という限定された本体(容器)に、うまく納まるかどうかを知るために、それぞれの選定品の容積計算を始めた。しかし、正しい容積計算は、実際に選定品を収蔵し、5,000年間保存に耐えられるかどうか、実験、研究してみなければわからない。中には、特別な保存策――別封や特別封入――しなければならないものもあって、正確な容積計算は、収集活動の進行に伴って行われた収納実験によって、しだいに明らかになっていった。収集活動も終わりに近づいた1970年の末、開発本部は、2,068点を本体に入れても、なお若干の空間が残されていることを確かめたうえ、実行委員会に追加の収納品を要望した。実行委員会は、直ちに繊維委員長および技術委員長の了解を求め、次の追加収納11品を決定した。それは、自然科学分野から、「電子管半導体ポケットブック」、チトクロームb5、社会分野から、手袋、くし、日本手ぬぐい、ふろしき、電子ガスライター、きせる、安全かみそり.飯茶わんとはし、国語辞典である。そして、収集された収納品すべてを、もう一度総点検し分類し直した結果、総点数2,098点と決定した。

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※本ページの内容は、タイム・カプセルEXPO'70記録書(1975年3月発行)を引用して掲載しています。社名や組織名など現在とは異なる場合がありますのでご了承ください。


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