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収納品 - 審議経過

分科会での審議経過

両主催者の事務局は、実行委員会の指導のもとに、選定・技術両委員の提案する収納品候補および知名人アンケートを、分類、整理して一覧表にまとめ、これを選定委員に送付し、分科会開催当日までに検討を依頼した。

第1回選定委員会の決定により開催された3分科会では、第1回選定委員会で確認された選定の三大基本方針を大原則とした。しかし、それぞれの分野における特殊性も考慮する必要があるので、さらに分野別の選定基準を設け、収納品の審議を行った。

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自然科学分科会

  1. 物品関係――病原菌および他の収納品に悪影響を及ぼす恐れのあるものは除く。
    物品はなるべく小形のもの、サンプル的なものとする。
  2. 記録物関係――科学技術の各分野の進歩を示す科学史と統計記録をまとめる。

以下に、この分料会で討議された話題をいくつか記述する。

「半導体素子」
最近は工業材料として多く使われており、今後どういう発展をするかわからないが、現在の水準を示すためにも、解説を付けて小形を残したい。
「純鉄」
単なる鉄ばかりでなく、高純度物質を入れるかどうかということだが、技術の水準を示すサンプルとして考えれば小さなものでよいから入れたい。
「建築」
標本となると大きすぎるので、建築材料の数と大きさを限定しで図面とかみ合わせ、現在の住宅の様式を残したい。
「最高記録」
現在、時間の単位としては、かなりのところまで測れるだろうが、家庭の朝のテレビでは分単位で時間が示されている。また、新幹線は数分遅れると「すみません」と言うが、数秒遅れてそう言う時代はまだ来ていない。最高記録にばかりこだわっていると、むしろ、より大事な現実の生活を見失うことにならないだろうか。もっとも、この問題は、社会分野と自然科学分野との間に生じる問題であって、自然科学分野としては最高記録を残すべきだ。
「農業技術」
児島湾の干拓についても数百年前からの記録が現在残っているし、今なら、たとえば八郎潟干拓の記録などをサンプルとすればよい。農地の改良されていく様子がうまく示されるし、それに5,000年たっても農産物が食糧の主体であろうから・・・・・・。農薬、肥料なども現物のサンプルを取っておきたい。
「総合地図」
産業、人口、交通量その他適当な項目についてそれぞれで何枚かの地図による総合地図を残したい。国境のことなど相当むずかしい問題もあるが。
「薬の成分」
栄養剤そのものを残したとしても、5,000年たってだれが飲むだろうか。そういったものが、その時代に使われていた、という歴史的事実に意味があるのだ。薬の場合も、現物で残したものを科学的に役立てようという考え方は無用で、むしろ、この時代にどういう病気や、どういう薬があったのかを伝えるのが重要なのだから、薬の成分は一覧表として記録にして残そう。
「現代最高頭脳の持ち主の精液」
5,000年後まで現代人の精子が生きておれば、人工受精をさせ、生まれた子がその時代でもけっこう通用する人間となるのではないだろうか。しかし、保存の点で相当低温の状態が必要となり、技術的に非常に因難であり、また、宗教上というか、人道的な観点からも大いに問題があるだろう。したがって、この件は技術的に不可能ということで見送ろう。
「植物の実と花粉」
はすの種子は、長寿であるから、5,000年後に花を咲かせるかどうか、おもしろい。と言って、はすだけにせず、ほかのものも残したい。殺菌して残すのはたいへんむずかしいとは思うが・・・・・・。それから花粉なども残すと、あとでかけ合わせたりできるかもしれない。栽培方法の解説も加えたい。
「合成樹脂、合成繊維」
一般家庭であまり危険視することなく合成繊維を使うようになったので、現在使われているものを残したいが、製品の形ではちょっと無理だろう。かなり家庭にも入っている合成ゴム、合成皮革、塗料なども加えておきたい。ただし、途中、カプセル内が非常に高温になった場合、危険なので、一番燃えやすいものとその温度、分解しやすくガスの出るもの、その他を調べておく必要がある。酸素がなければ、200°Cぐらいまでならだいじょうぶだろう。塩化ビニルは塩酸が出るので危険だから、別封する必要がある。途中のカプセルの温度がわかっていると保存の参考になるので、やはりタイム・カプセルの温度計が欲しい。

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社会分科会

第1回社会分科会は、1968年8月31日に開催された。重要な物品や記録は、ほとんど博物館、図書館などの公共施設に残る可能性が強いとの意見から、

  1. 現物中心に選び、現代生活を目で見る総合的な解説として絵巻物を制作する。
  2. 記録類は「毎日年鑑」で代表させる。

という案が検討された。

以下は、この分科会の審議状況の要約である。

「選挙投票用紙」
選挙という制度や、政府もおそらくなくなるだろうということでこれを選んだ。歴史的な記録は図書館には残るだろうから、投票用紙そのものを残したい。そして、印刷した用紙に実例的に名前を書き込んであるものがよいと思うのだが・・・・・・。
「現代日本の貨幣一式」
株券も、資本主義制度のあるうちだろうから残しておきたい。クレジットカードなんかもいい。
「辞書」
辞書も辞典も図書館に残るだろう。むしろ古語と現代語の字引がいる。それを今後100年単位ぐらいで次々作っていかなければ5,000年後にはことばがわからなくなるかもしれない。何でもいいから1か国語がその時理解されていれば、すべての国語がわかるので、「英独」でも「英和」でも、そういう宇引があればよいと思う。今の学生の使っているようなものは案外図書館に残らないだろうから、最高レベルの辞書ではなくて、安くて薄いコンサイスのようなものがよい。どういうふうに学生が勉強していたかもよくわかるし、たくさん使われていて妥当だろう。
「時刻表」
時刻表は駅の名前がわかるし、どこそこまでの間を、飛行機で行けば何時間、汽車なら何時間ということもわかるので必要だ。飛行機の離陸数なども伝えられる。乗り物の写真もその間へちょいちょいはさんでおいては・・・・・・。ついでに駅弁の写真もどうか。
「お守り、お札」
宗教の要素が入るが、神社のお守りやお札は後世に残らないだろうし、スペースも取らないからぜひ入れたい。「カプセルをつくった人間はこんなものを信じていたのか」と思われるのも愉快だ。お守り一式、お札、おみくじ、のたぐいからおもしろいものを選んで入れよう。交通安全や入学試験の合格願いは、現代を反映していて特に貴重だと思う。
「服飾品」
服飾は整理して絵にかき、下着やマニキュアを示す方がよい。着せ替え人形を作ったら、女性の衣類でもいっさい表せると思う。絵巻物と人形と両方にすればなおよい。くつ下なども、切れ端よりは一足入れたい。人形は八頭身はやめて平均的日本人の体格で作りたい。装飾品も加えよう。一般の庶民の程度を示すため、上等なものでなく、ごく普通の模造品がよいだろう。
「食生活」
現代人の食事などというのは絵巻物によってわかる。トースターや電気炊飯器などの道具も絵をかいておけばよい。さらに、婦人雑誌を入れておけば、そのような関係物はすべてわかる。それもあまり上品すぎず大衆的な雑誌で、写真を主にしたものにしたい。ぜひ、週刊誌、婦人雑誌を入れておくことにしよう。
「ハンドバッグ」
現代は動物製品を使っている時代ともいえるが、皮製品は将来なくなるだろう。残すなら草履、ハンドバッグなどがよい。ハンドバッグの中には、女性のもの全部が含められる。バッグに財布を入れ、その中にお金も入れておけばよい。名刺やコンパクト、つまようじなどもそこに入れられる。普通の女性が持ち歩くハンドバッグに入っているものにしたい。たとえは、ボールペン、小さい手帳やバスの回数券、自動車運転免許証もどうか。
「職業別電話帳」
職業別の電話帳についてはどうか?大きいものだが縮小できる。現代のいろいろな職業かわかるし、広告という見地からも意味がある。京都か岡山あたりのものはどうだろう。あまり大きい都市より、京都ぐらいの規模が適当だ。人口100万という一つの集団であるし、いろいろ豊富な職業かわかるし、やはり京都にしたい。
「1日の時間の消費の仕方」
これは絵巻物にも一応描かれると思うが、1日の時間の配分というのは職業によって違うだろう。たとえば、改治家の1日を追ったり、神風タレントのような特殊な生活の人はどうだろうか?平均的サラリーマン、政治家、ジャーナリスト、主婦、その他、四つ五つの類型に分ければよい。1週間というのが、現代人の生活の単位であるので、1週間の暦もぜひ入れたい。
「日本現代風俗絵巻」
現代人の家族構成は絵巻物で表現できる。1軒の家の中にこのような人びとか住んでいたとか・・・・・・。“夫婦”という、こんなおかしいものがあったとか・・・・・・。これは民法でもわかると思うが、もっと具体的に示せるだろう。昔の絵巻物を参考にし、「生まれてから、学校へ行って、恋愛して、結婚して、2人で暮らして、子供を生んで・・・・・・」といったふうに記していけばよい。もっとも、単に恋愛や家庭といっても、恋変の仕方、親と子の対立など、いろいろ含まれているが、それは文学で理解されるだろう。あれもこれもとたくさん寄せ集めるより「絵巻物」ということを一つの骨にして、そこから派生して説明するような構成の方かわかりやすい。しかし、絵巻物だけですべてをわからせようとして、あまり複雑にしすぎることもないと思うが・・・・・・。

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芸術分科会

第1回芸術分科会は、1968年8月17日に開催された。この分野においては、何を選ぶのかという評価のむずかしい問題があり、歴史的な価値のあるものは残るはずだが、一応日本を中心に進め、平均的な考慮を加えていきたい、という観点から検討していくことになった。

文学、美術、演劇、音楽、映画の各部門別に、担当委員が問題点を拾いながら煮つめていったが、結局芸術分野では、それぞれの部門でさらに小委員会を開いて慎重に討議し、結論を出すことになった。各部門における小委員会での主な意見は以下のようなものである。

「文学」
古典は万葉集、源氏物語など5点、明治以降の近代は、現代をひいき目にみて5点程度を考えたい。翻訳ものも、日本文学の中の翻訳された「ゲーテ」といった意味合いをもたせて入れたい。原爆問題を扱ったものや戦争文学についではどうするかも慎重に考えたい。文学辞典なども入れたい。
「美術」
印刷とスライドの二つで収納したい。毎日新聞社刊「国宝」をスライドにして収納すればどうか。漆は1,000年から1,500年もつたろうし、漆の技術保存も考慮したい。現代美術をどういう形で取り上げるかも問題なので専門家を加え検討したい。
「映画」
個々に挙げられた提案を総合的に扱う意味で、“現代”をテーマにした映画フィルム、テレビフィルムを新たに製作したい。
「演劇」
代表的歌舞伎(かぶき)俳優の上演記録と写真、「勧進帳(かんじんちょう)」の映画、「夕鶴(ゆうづる)」の脚本などの提案がある。文楽も入れておきたい。人形の表情はすばらしいし、世界的にも相当日本独自のものだ。また、人形使いが数年のうちにいなくなる恐れもある。
「音楽」
レコード、全録音または部分録音、演奏中のフィルム、楽譜などを合わせて収納したい。この部門は特に内容が多岐にわたるので、音楽各分野の専門家を加えて調整したい。

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※本ページの内容は、タイム・カプセルEXPO'70記録書(1975年3月発行)を引用して掲載しています。社名や組織名など現在とは異なる場合がありますのでご了承ください。


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