パナソニック・ホーム パナソニックEWネットワークス > プロダクト > コラム一覧 > 天井埋込型PoEスイッチングハブ「CiLIN」の誕生秘話 その2

プロダクト関連

天井埋込型PoEスイッチングハブ「CiLIN」の誕生秘話 その2

更新日:2022/11/18
天井埋込型PoEスイッチングハブ「CiLIN」の誕生秘話 その2
2021年に発売しました天井埋込型PoE給電スイッチングハブ「CiLIN(シーリン)」。オフィスの盲点だった「天井」にスイッチングハブを設置し、ネットワーク構築をサポートするという、当社の製品としても業界としても画期的なアイデア製品です。

前回の誕生秘話では、どのような経緯でこの「CiLIN」が生まれたのかを開発に携わった3人に伺いましたが、今回は「CiLIN」の設計から使用感に対するこだわりまで、引き続きソフトウェア開発部門 Aさん、SE部門 Bさん、ハードウェア開発部門Cさん、そして今回はハードウェア開発部門 Dさんも加わり、4人に伺いました。

どんな想いが飛び出すか、楽しみです。
法人のお客様向け

スイッチングハブ、ネットワークシステム構築に関するお問い合わせはこちら

美観を損なわずに、施工・メンテナンスが簡単
全方位に優しい埋込型のスイッチングハブを作りたかった

美観を損なわずに、施工・メンテナンスが簡単 全方位に優しい埋込型のスイッチングハブを作りたかった

アイデアを形にしていく中で…
ヒントはやっぱり天井にあった!

Aさん(ソフトウェア開発部門、以下Aさん):
設計の中では一番にポートの向きをどうするかとても悩みました。ポートを上に向けると埃をかぶってしまうリスク、横は取り出しにくい…そんな中、目についたのがダウンライト照明です。

半分を製品基盤に、半分をポートにしてみよう!!! と考えました。
天井のことは天井機器に訊け、ということですね(笑)。

現場での使いやすさにもこだわりを

Aさん:まず石膏ボードに穴を開けるカッターがすでにあること、そして設置した時の美観。形状は「丸」一択でした。そこで施工しやすいように、ダウンライトの規格に合わせたサイズ(Φ150mm)にしました。

しかしダウンライトと異なる点があります。それは、カメラや無線APなど端末増設時に、スイッチングハブのポートの差し替えなどメンテナンスの可能性があることです。その都度、本体を石膏ボードから出し入れすると、石膏ボードの切り口から出るゴミの落下の可能性があることに気付きました。そこで、石膏ボードの切り口を保護するために取付用枠(以下、天井取付用ブラケット)と本体を分けることにしました。また、脚立での作業になるので安全面を考慮して、本体を抜く・ロックが片手でできるという点にもこだわり、指を置くためにへこませた形状にしています。

重量は、石膏ボードのメーカへのヒアリングや素材も考慮して、耐荷重を約1kgにおさえました。

現場での使いやすさにもこだわりを

メンテナンス時の安全性にも配慮、
落下に関する設計は最重要ポイントでした

Aさん:ポートの向きが決まった後に考えたことは「LANケーブルをどう配線するか」でした。

本体を取り出すときに、ケーブルが絡まる可能性があるかもしれないため、取り外しをよりスムーズにできるように「ケーブルホルダー」をつけました。

そして、天井空間を邪魔しない薄いパネル(以下 フェイスプレート)。天井PoEで天井のでっぱりを出したくなかったので、落下防止用のロックなどは、すべて「天井の上」にするように設計しました。

とは言っても、「天井の上」の高さはいくらでもとれるものではありません。天井裏には梁があったり、制限はあります。実際に穴を開けてみて設置できないというケースがないように、高さを抑える必要もありました。

Bさん(SE、以下Bさん):
すでにご紹介した直径サイズ(Φ150mm)だけでなく、「高さ」にもこだわりを持たせています。

天井取付用ブラケットは、石膏ボードを2枚重ねている天井もありますので、石膏ボードにLANケーブルが当たらないように高さを出しました。ネジは、挟み込みネジを採用していて、天井下からドライバーを回すと金具が下りてきて、金具と天井が水平になって、石膏ボードを挟み込み固定をします。固定は、天井下から3か所をドライバーで止めるだけの作業なので、天井裏の様子の確認が不要になるのはとても魅力的です。

Dさん(ハードウェア開発部門、以下Dさん):僕からもこの小さな「CiLIN」本体の設計におけるこだわりをぜひ紹介させてください。限られたサイズの本体に、スイッチングハブを構成する電子部品を組み込むのはとても大変でした。まず、電子部品は、品質や性能は落とさずになるべく小型なものを探し、また、小型であれば良いのではなく、電子部品の「配置」にも工夫しました。さらに、本体は埃を取り込まないように通風口のない設計にしていますので、電子部品の放熱をどうするのかが次の課題でした。何度も何度もシミュレーションを繰り返して、今のデザイン設計にたどり着きました。それは本当に大変でした…。

Aさん:薄さと美観を追求したフェイスプレートにも工夫箇所があります。
フェイスプレートを取付後に中で本体が回らないようにツメをつけています。

Bさん:天井裏は、電気や空調等の工事が発生します。その際に天井PoEから配線されているLANケーブルが他のケーブルに引っかかる、引っ張られるリスクがあります。万が一、LANケーブルが引っ張られてしまうと、本体が回転して天井取付用ブラケットのロックが外れてしまいます。その状態を知らずに、メンテナンスで、フェイスプレートを外したあと、本体が天井から落ちてきてしまっては危険です。それを抑止するため、このフェイスプレートのツメをつけました。

Aさん:本体の取付時や、天井取付用ブラケットへも、落下防止の仕掛けをしています。本体の取り外し時に万が一手からすべった際、取付用ブラケットにひっかかり落下を抑止する設計です。施工のしやすさはもちろん、安全性も十分に配慮しました。

Dさん:落下防止ワイヤーも標準付属品として用意しています。このワイヤーは本体の上部に取り付けて天井裏の吊りボルトなどにひっかけて使用できます。この製品を施工する方々は、ワイヤーをつけるとき、おそらく片手で本体を持っている…。ワイヤーとネジを一体型にすれば、もう一方の手でワイヤーのねじ止めまででき、安全で便利なはず。ワイヤー一本にも、私たちのこだわりが詰まっているんです。

さらに、フェイスプレート用に「いたずら防止ネジ」を標準添付します。その名の通り「いたずら防止」を目的としていて、フェイスプレートを誰でも簡単に外せないように、固定するネジです。フェイスプレートにある2点の印をきりなどを用いて穴を開け、フェイスプレート設置後に専用工具でねじ止めするだけです。専用工具が必要なため、関係者以外はスイッチングハブに触れないようセキュリティ強化したい方向けの設計です。

開発者が見据える
天井PoEの今後の可能性について

Cさん(ハードウェア開発部門):
海外では、PoE対応のLED照明も登場しています。今後、よりセンサー系の端末が増えてきそうですよね。

Aさん:オフィスでは空気で広がる「音」や「光」や「香り」や「電波」に関係した端末が登場したり、病院におけるバイタルセンサーのような端末も増えていくかもしれません。すべてがネットワークで繋がるとき、その一つ一つを集約そして動かす動力の役割を担うのが天井PoEになったら良いですね。天井PoEがきっかけで、アイデアが広がり、さらに新しいオフィス、そしてより働きやすいオフィスが実現できたら、と考えると楽しみですね。

オフィスがこれ以上快適すぎると、いつまでもオフィスにいてしまう不安がありますね…。今度はタイミングを見計らって業務終了を知らせてくれるシステムもまた必要になりますね(笑)。

アイデア募集から企画・開発、発売まで約3年半…
皆さん天井PoE「CiLIN」の開発お疲れ様でした。
新しいアイデア製品の登場、楽しみにしています!

施工・取付方法を動画で紹介