くるまの保険のコラム

くるまの保険のコラム 2023年3月号

 追越しとは、進路を変えて、進行中の前の車の前方に出ることをいいます。追越しは、さまざまな運転行動の中でも特にリスクの大きい行動であり、十分な慎重さが求められます。そこで今回は、追越しをする際の手順や留意点についてまとめてみました。

追越しをする際の手順

追越しをスムーズに行う手順

 追越しの方法が不適切だと、「あおり運転」と誤解されることもありますから、そうならないよう追越しをする際は、次の手順でスムーズに行いましょう。

  •  追越し禁止場所でないかどうかを必ず確認します。
  •  速度に応じた停止距離(時速50キロでは32メートル、時速60キロでは44メートル)と同じ車間距離を前車と保ちます。
    ※接近し過ぎると「あおり運転」と誤解されるおそれがあります。
  •  前方、右、右後方、対向車線の安全を確認します。
  •  右の合図を出して3秒後に最高速度の制限内で加速しながらゆるやかに右に進路変更をします。このとき、追い越される車との側方間隔を十分に保ちながら通過します。
  •  左の合図を出して、追い越した車両がルームミラーで見えるくらいの距離まで進んでから、左に進路変更をして追い越した車両の前に出ます。このときの車間距離は、追い越した車両の速度に応じた停止距離(時速 50 キロでは 32 メートル)が目安となります。短い車間距離では、強引な割り込みと誤解されるおそれがあります。
  •  合図をやめます。
追越しをスムーズに行う手順

追越しには長い距離が必要なことを理解しておく

 追越しをするためには、長い距離が必要です。例えば、時速50キロの車を時速60キロで追越しをする場合、516メートルの距離が必要とされており、対向車があり、 自車と同じ速度で走行している場合には、その2倍(上記の例でいえば、1,032 メートル)の距離が必要になります。
 対向車線にはみ出して追越しをしようとする際は、対向車の有無を十分に確認し、対向車があるときは追越しは控えるようにしましょう。

追越しには長い距離が必要なことを理解しておく

追越しをする際の留意点

大型車を追い越す際はその前方の状況を確認する

 バスやトラックのような大型車は前方の死角が大きくなります。そのため、大型車の前を走行する車が見えないことがあります。そのような状態で追越しをすると、大型車の前に車がいて、大型車とその車との間に進入できる余地がない場合には、その車よりもさらに前方まで進行しなければならなくなり、追越しに要する距離が一層長くなります。追越しの開始時点では対向車がいなくても、追越しに手間どっている間に対向車が出現することは十分考えられます。特に道路の前方が見通しの悪いカーブになっているような場所では、危険な状態に陥るおそれもあります。大型車を追い越す際は、大型車の前に車がいないかどうかを必ず確認しましょう。

大型車を追い越す際はその前方の状況を確認する

カーブや下り坂、夜間での追越しを避ける

 道路交通法の追越し禁止場所に、「道路の曲がり角」の規定はありますが、カーブについては特に規定はありません。しかし、「交通の方法に関する教則・第6章危険な場所などでの運転」の「曲がり角・カーブ」の項には「曲がり角やカーブでは前の車を追い越してはいけません」と定められています。従って、見通しが良い、悪いにかかわらず、カーブでの追越しは避けなければなりません。

カーブや下り坂、夜間での追越しを避ける

 下り坂については、道路交通法では「勾配の急な下り坂」が追越し禁止場所となっていますが、どの程度の勾配が対象になるのかは明示されていません。道路標識の「下り急勾配あり」では、10%(100メートルで10メートル低くなる勾配)の表示がされており、下り勾配10%以上が該当すると解されています。従って、「下り急勾配あり」の標識のある下り坂では追越しはできません。それ以外でも、加速がつく下り坂ではハンドルやブレーキ操作のちょっとしたミスがスリップなどにつながりますから、前の車がよほどの低速車でないかぎり、追越しは控えましょう。
 夜間において、対向車の場合は、ヘッドライトでその存在がわかりますが、歩行者の場合は、前を車が走行しているため、発見するのが遅れてしまいます。しかも、追越し時は速度が出ているため、歩行者を発見して急ブレーキをかけても停止できないおそれがあります。従って、対向車も歩行者もいないことが明らかでない限り、追越しは控えましょう。

下り坂について

※イラストの二次利用はご遠慮願います

〔制作〕MS&ADインターリスク総研株式会社 リクマネジメント第二部 交通リスク第一グループ

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