ライフスタイルの変化に合わせて対応する長期優良住宅の家とは?
私たちの暮らしは、時代とともに進化し続けてきました。時代とともに移り変わる、価値観とライフスタイル。当然のことながら、暮らし方が変われば私たちが暮らす家の在り方も変わります。
超高齢社会の日本で、これからはどんな家が求められるのでしょうか?
これまでの住宅と「長期優良住宅」
私たち日本人は、昔からふすまや障子といった建具を用いてひとつの空間を区切って独立した空間を作り出してきました。
現在の一般的な家庭では、独立した部屋同士を廊下や階段でつなぎ合わせるという西洋的な家づくりが多く、「家族の人数+LDK」が基本的な家づくりのポイントとなっているようです。
ただ、こうした考え方に基づくこれまでの家づくりは、子どもが大きくなって独立した後の空き部屋の利用や、高齢者になったときのバリアフリーなどには対応しづらいという問題がありました。
そのため、ある程度の築年数が経過した後は改修工事や建て替えを行いながら、その時々のシーンに合わせてきたというのが実情です。
これまでの住宅のように建てる→壊すを繰り返してばかりでは、地球上の資源や環境破壊にも大きな影響を与えることにもなるため、「いいものを作って長く大切に暮らせる住まい作りを推進する」という取り組みが進められています。
このような取り組みのひとつが、「長期優良住宅」です。
長期優良住宅とは?
将来にわたり、長く住み続けられる住宅のこと。以下のような措置が取られている住宅を指します。
① 長期に使用するための構造及び設備を有していること
② 居住環境等への配慮を行っていること
③ 一定面積以上の住戸面積を有していること
④ 維持保全の期間、方法を定めていること
⑤ 自然災害への配慮を行っていること
長期優良住宅は、認定を受けることで、国や地方自治体からの補助金制度や税制優遇などが受けられるなどのメリットもあります。
長期優良住宅の認定基準は?
長期優良住宅の認定を受けるためには、一定の基準を満たす必要があります。まずは、その基準についての詳細をご紹介します。
- 劣化対策
- 耐震性
- 維持管理・更新の容易性
- 可変性
- バリアフリー性
- 省エネルギー性
- 居住環境
- 住戸面積
- 維持保全計画
- 災害配慮
※可変性とバリアフリーについては共同住宅のみの適用。
劣化対策
数世代にわたって(通常想定の維持管理条件下で100年程度)構造躯体が使用できること。
- 鉄筋コンクリート造の場合、セメントに対する水の比率を低減し、鉄筋に対するコンクリートのかぶりを厚くすること
- 木造の場合、床下および小屋裏の点検口を設置すること
- 点検のため床下空間の一定の高さを確保すること
などが挙げられます。
耐震性
極めて稀に発生する地震に対し、継続利用のための改修の容易化を図るため、損傷のレベルの低減を図ること。
大規模な地震力に対する変形を一定以下に抑制する措置がとられていることが必要です。
維持管理・更新の容易性
構造躯体よりも耐用年数が短い内装や設備の維持管理を容易に行うための措置がとられていること(清掃・点検・補修・更新)。
構造躯体に影響を与えずに配管の維持管理ができることや更新時の工事が軽減される措置が取られていること、などが必要です。
可変性(共同住宅のみ)
居住者のライフスタイルの変化に応じて間取りの変更が可能な措置がとられていることが必要です。
共同住宅の場合は、将来の間取りの変更にあわせて配管や配線のために必要な躯体の天井高さが確保されていることなどが挙げられます。
バリアフリー性(共同住宅のみ)
将来のバリアフリー改修工事に対応できるよう、共用スペースや廊下に必要な広さが確保されていることが必要です。
省エネルギー性
高断熱性能を持った資材などを使用して、省エネルギー性能を確保します。
居住環境
良好な景観の形成やその他の地域における居住環境の維持および向上に配慮されたものであることが必要です。
地区計画や景観計画、条例による街並み計画や建築協定、景観協定などの区域内の場合は、これらの内容と調和が図られていなければいけません。
住戸面積
良好な居住水準を確保するために必要な規模を有することが必要で、戸建て住宅や共同住宅それぞれに必要な面積が設定されています。
維持保全計画
建築時点から、将来のために定期的な点検・補修計画が策定されていることが必要です。
- 構造耐力上主要な部分
- 雨水の侵入を防止する部分
- 給水・排水の設備
について点検の時期と内容を定めることなどが必要です。
災害配慮
災害発生のリスクのある地域においては、そのリスクに応じて所管行政庁が定めた措置を講じなければなりません。
可変性と家族のライフスタイル
長期優良住宅では、手入れをしながら子どもや孫の代まで大切に住み続けられる家づくりが重視されています。
ひとつの家に長く住み続けていても、ライスタイルや家族構成は変わっていくもの。建てたときには小さかった子供たちも、やがては独立していくことでしょう。
自分たちの老後に合わせて手すりや車椅子が必要になる場合もあるかもしれません。
そうしたときに、間取りの変更など、柔軟に対応できる家であれば、生活の変化とともに暮らしやすい住まいに変化させることができます。
可変性が高い家とは?
住宅には、絶対に動かすことのできない柱や壁が存在します。
耐震性や家の耐力性を高めるために必要な筋交いが入っている壁などは、動かすことができません。
しかし、逆に動かせない柱や壁以外のものは、その工法や家の造りなどにもよりますが、ある程度移動させることが可能です。
家族が増えた、ライフスタイルが変化したなど、家を新築した時以降の変化を想定して柱や壁の配置を工夫しておくことで可変性の高い家が作れます。
高齢者に必要な家づくり
長期優良住宅では、自分たちが高齢者になった時のことも考えておきたいもの。
「バリアフリー」は、長期優良住宅の認定条件としては共同住宅のみに適用されていますが、段差をなくしたり、手すりを付けたりすることで、高齢になった時も使いやすい住まいになります。
さらに、可変性を確保することによって、狭い廊下や部屋の出入り口を広げたりすることができます。
リビングダイニングにも余計な壁を作らずに開放的な空間を確保することで車イスでの移動も可能になります。
また、自分たちでなく親や配偶者を介護する立場に立ったときにも、こうした家づくりが役立つことでしょう。