ABW

2021.09.13

【ABW導入事例紹介10選】自社オフィスへのABW導入を慎重に検討するために

【ABW導入事例紹介10選】自社オフィスへのABW導入を慎重に検討するために

自由な時間に自由な場所で働くABW(Activity Based Working)という考え方が注目されており、国内外問わず導入する企業が増えています。特に最近では、コロナ禍を始めとした環境の変化、ニーズの後押しにより、なおいっそう広まる可能性があります。

この記事では、ABWの導入事例10選をあげ、業種ごとのABW導入のメリットをご紹介します。これからABW導入を検討されている方は、ぜひご確認ください。

ABW(Activity Based Working)とは?

ABW(Activity Based Working)とは、オランダのコンサルティング企業Veldhoen + Company(ヴェルデホーエン)社によって創設された働き方における考え方です。現在では「時間、場所を自由に選べる働き方」として認知されていますが、本来のコンセプトとしては、「企業の戦略や文化と照らし合わせ、よりよい働き方を見つけるための促進剤(カタリスト)」とされています。

従来のように会社のオフィス内で決められた時間・場所で働くのではなく、テレワークをはじめとした在宅業務含め、作業内容に適した時間や場所で働くことで、生産性の向上やチーム間のコラボレーションを促すことを目的としています。

具体的には、コミュニケーションがとりやすい会議室や個人業務に集中できる集中ブースなど、特定の業務に有効な環境を整え、社員が業務に適した場所を選択する働き方です。

業種ごとのABW導入メリット3つ

ABWは業種問わず導入することができ、すでにさまざまな業種で実践され、効果が出ています。ここではABW導入のメリットについてご紹介します。

生産性の向上、業務効率化の実現

業務の目的に応じたスペースを利用することにより、生産性の向上、業務効率化を実現できます。また、社員が業務に対して自発的に行動するようになる意識改革ができる点もポイントです。

コミュニケーションの活性化

少人数ですぐにコミュニケーションが取れるスペースを利用することにより、コミュニケーションの活性化が上げられます。部署外や、社外の人間とのコミュニケーションもとれることにより、多くのアイデアが生まれ、また新たなつながりも得やすくなります。

特に商社や製品を販売・製造する企業において、コミュニケーションエリアを設置することでコミュニケーション活性化の効果が得られているようです。

ペーパーレス化の推進によるコスト削減

ペーパーレス化はABW導入と共に並行して実施されています。これは、限られたスペースを有効活用するため、書類の保存スペースをなくすだけでなく、どこにいても資料やデータを見られるようにするための対策になります。

ペーパーレス化により印刷及び管理コストの削減が期待できます。企業によっては全体の6~7割に相当する文書を削減し、管理コストの大幅な削減とスペースの有効活用を実現しています。

ABW導入事例紹介10選

ABWの提唱者Veldhoen + Company社と業務提携「株式会社イトーキ」

株式会社イトーキでも2021年1月に名古屋オフィスをリニューアル、「ありたい姿を実現する」アプローチ手法により、ABWを導入しました。

空間設計においては、ワークプレイスをVeldhoen + Company社の知見に基づいた「10の活動」に分類し、分類ごとに最適な環境を配置。同時にペーパーレスの推進により収納量を70%以上削減してスペースを確保しつつ、IT面での見直しを図り、社員の自律的な働き方を支援しています。ABW導入後も、引き続き満足度調査を行い、意識改革を継続的に行っています。

在席率を調査し働き方にあったワーキングスペースを実現「株式会社リクルートマネジメントソリューションズ」

株式会社リクルートマネジメントソリューションズは、企業の人材採用・人材開発、制度構築など、経営や人材課題のコンサルティングを手掛けている会社です。2016年より働き方改革に力を入れ、2016年5月にオフィスの移転に伴いABWを導入しました。

会社の入館データや時間の過ごし方やオフィスの曜日および時間帯ごとの在席率、会議室の利用頻度など、ありとあらゆるデータを徹底的に調べ、空間作りのヒントにしたそうです。

日中は固定デスクが半分以上空席、在席社員の3~4割は会議室にいることが判明したため、少人数向けの会議室を追加。複数部署との協働が基本であるため、会議室を重視することで働き方にあったワーキングスペースを実現しています。

可動式ツールでフレキシブルにレイアウトを変更可能「ダイキン工業株式会社」

ダイキン工業株式会社は、環境と空気に新しい価値を見出し提供し成長を続ける日本を代表するグローバル企業です。東京支社オフィスにて、ABWを取り入れています。

オフィスにコワーキングスペースも内包しており、他拠点の社内メンバー以外に社外のメンバーと対話できる空間を構築。働き方によって選択可能なコミュニケーションスペースは、空気を可視化したようなカーテンや可動式ツールを用いることで、フレキシブルにレイアウトを変更できるだけでなく、空気で新たな価値を見出すダイキンらしさを表現しています。

運用ルールを整備し生産性を高める働き方を実現「パナソニックホームズ株式会社」

パナソニックホームズ株式会社は、注文設計住宅やリフォーム、土地活用事業を主業務とする企業です。ヒトとのつながり、企業とのつながり、空間のつながり、といった多様な「つながり」を創造し、より生産性を高める働き方と表す「Link Work Place」というオフィスコンセプトを定義。この実現のため東京汐留のオフィスにABWを導入しています。

役員席含めすべての従業員にフリーアドレスを採用。コミュニケーションを目的とした画一的なスペースだけでなく、一人1日3時間と限定された集中ブース、設計部門優先スペースのダイニングなど運用ルールも整備されています。また、仕事内容からつながりの深さ・広さを選択できるように、状況に応じて可動式の家具が調整できるなど、工夫が凝らされています。

適業適所に基づいた環境の整備「ハウス食品グループ本社株式会社」

ハウス食品グループ本社株式会社は、創業100周年を記念し、旧大阪本社ビルを含む3拠点を統合し、大阪本社を新築。オフィス構築にあたっては、ABWの考えを採り入れました。

自席に縛られない「適業適所」という考え方のもと、やりたい仕事にふさわしい空間を設置。打ち合わせ室や集中コーナー、リフレッシュコーナーなどを設け、仕事に合わせて勤務する場所を選べる環境が整えられています。

並行して、7割の文書削減も実施。将来的にフリーアドレスもできるよう、執務室は大型ロングデスクを採用し、ワゴンは使用せず個人ロッカーを扱っています。

ABWを導入し社員への意識改革を推進「株式会社りそなホールディングス」

りそなホールディングスを親会社とし、3つの商業銀行で構成されるりそなグループでは、2016年に大阪にあった2つの本社ビルを集約。生産性向上への社員の意識改革、部門間のコミュニケーションの活性化などを目標に、新本社ビルの5階にABWが導入されました。

フロアには正方形デスクが組み合わさった執務室の他、円形デスクやミーティングブース、ベンチシートを設け、社内コミュニケーションの活性化を図っています。

あわせて、限られたスペースで全社員を収容するため、ペーパーレス化も徹底。その文書削減量は全体の6割強、富士山3.5個分の高さに匹敵するそうです。

オフィスをショールームとしても活用「アイリスオーヤマ株式会社」

アイリスオーヤマ株式会社は、生活用品、家電製品などを製造・販売する会社です。2018年11月に東京アンテナオフィスは、ABWを取り入れています。限られた時間内での最大のパフォーマンスを重視するとともに、ABWオフィスのトレンドがわかるように内装空間がショールームとして作られています。

変化対応型のスピード経営に対応すべく、執務室はフリーアドレスを採用。並行して段階的なペーパーレス化を進めています。その他、コミュニケーションエリアやソファエリア、出張者が気軽に利用できるタッチダウンスペースなど、目的に応じたワーキングスペースも確保しています。

アクティブ・コモンズの実践で業務効率化を実現「株式会社内田洋行」

株式会社内田洋行は、オフィス家具やICTツールの取り扱いを専門に行う商社です。それぞれのアクティビティ(行為)に応じて社員一人ひとりが自由に最適な場所を選択する働き方を「アクティブ・コモンズ」と提唱、2012年より自社実践しています。

創造性や生産性の向上を目的として、ABWを導入。集中力を高め、個人業務を効率よく行うためのソロワーク、すぐに話せる環境をつくるスタンディングスタイルで行うミーティングエリア、思い立ったときに予約なしで利用できるカジュアルミーティングなど、目的に応じたワーキングスペースにより業務効率化を実現しています。

オフィスや座席に縛られない仕組みの整備「株式会社J-オイルミルズ」

株式会社J-オイルミルズは、食用油脂の製造・販売を行っている会社です。働き方改革の一環として、2020年に本社管理部門を対象に、ABWを取り入れたオフィスリニューアルおよび業務改善を実施しました。

部門を超えたコミュニケーションの促進を目指す「リンケージラウンジ」、業務に集中するための「集中ブース」を設置。並行して、固定電話から携帯電話への切替、ペーパーレス化を促進し、オフィスや座席に縛られない仕組みの整備を実施することにより、フレキシブルな働き方を実現しました。

この取り組みにより、多様な働き方を推進するとともに、アフターコロナを見据え、社員の健康と安全・安心を守る新しい働き方を目指していきます。

社員一人当たり45分~60分の労働時間短縮を見込む「ヤンマー株式会社」

ヤンマー株式会社は、農業機械をはじめ発電・空調システムや船舶用のエンジンなどの総合産業機械の技術開発を行う企業です。2015年から働き方改革とオフィス変革による組織活性化を進め、2016年からABWを導入しました。

個人が占有するスペースを見直し共有スペースを広げ、またコミュニケーションエリアや集中エリアなど、目的にあったスペースを設置。スペースの活用率向上にハイチェアを設置するなど工夫も行っています。ABW導入により部署間のコミュニケーションが増え、社員一人あたり1日45~60分の労働時間短縮を見込んでいます。

このように、さまざまな業種の企業でオフィスにABWを導入しています。ご紹介した企業では、オフィス全体、フロア全体でABWを導入していますが、一部の部門から導入を始めるなど、段階的なABW導入も可能です。どの企業も決まったスタイルに固執するのではなく、独自のコンセプトをもとに導入している点がポイントです。

導入事例をもとに、ABWによる業務効率化を実現しよう

本記事ではABWを導入し、実際に効果をあげた事例10選をご紹介してきました。どの企業も導入の内容は同じではなく、各企業のオフィスの利用状況や社員のニーズにあわせたワーキングスペースを設置することにより、業務効率化を実現しています。

ABWを導入するには、現在の状況をしっかり調査したうえで、適切なアプローチをとることが大切です。また、ただワーキングスペースを確保するだけでなく、並行してペーパーレス化の推進など制度の見直しを行っている点もポイントです。

ABWの導入事例1から業種ごとの導入メリットをご紹介しました。
これからABW導入を検討されている方は、参考にしていただければ幸いです。

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