History

1962配線器具トリプルタップWH2013

写真:1962 配線器具トリプルタップ WH2013
1964 グッドデザイン賞、1980 グッドデザイン・
ロングライフデザイン賞、1996 グッドデザイン・
スーパーコレクション
形状についての細かな思考が生んだ超ロングセラー
1950年代後半から、家庭では、テレビ、洗濯機、冷蔵庫の「三種の神器」に代表される電化が進み、コンセント不足を補うためにタップが必需品となった。当時の配線器具のデザインは技術者が行っており、タップは壁面から大きく出っ張る無骨な直方体をしていた。
トリプルタップは、デザイナーが開発に積極的に携わることで、製品がどれだけ変わるかを示す好例といえる。カバーの側面をやや斜めにすることで、全体の厚みを抑えると同時にプラグを差しやすくし、差し込み口には曲面を設けて、プラグの先端を自然に誘い込むようにしている。金型で成形しやすい形状でもあり、生産性は高い。カバーのホワイト、ベースのチョコレート色のツートンカラーが、製品に引き締まった印象を与えている。
発売以来半世紀近くの間、基本デザインが変更されていない超ロングセラーで、1980年にはグッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞した。

1963アンサンブルステレオ飛鳥SE-200

写真:1963 アンサンブルステレオ飛鳥 SE-200
1964 グッドデザイン賞、1996 グッドデザイン・
スーパーコレクション
ステレオを高級家具としてデザインした
国産のステレオは、1960年代半ばまで、プレーヤー、チューナー、アンプ、スピーカーが一体となったアンサンブル型と呼ばれるタイプが主流だった。価格は高価で、応接間に置く高級品だった。
飛鳥はそんな時代を代表するステレオ。天面の上蓋を引き戸のように左右に開くと、オートチェンジャー機能付きのプレーヤーとラジオのチューナーが現れる。木目調の本体の前面には校倉造りをモデルにした桟を配し、スピーカーの存在を隠している。本体を支えるブナ製の四本脚は、テーブルの脚のようなデザインになっている。
「家具調」というより、家具そのもの。直線を基調とした端正なデザインなので、和室にも洋間にも調和する。ステレオを応接間に置くにふさわしい高級家具としてデザインし、高い評価を得た。

1965テレビ嵯峨TC-96G

写真:1965 テレビ嵯峨 TC-96G
1965 グッドデザイン賞、1996 グッドデザイン・
スーパーコレクション
日本オリジナルのテレビデザイン、「家具調テレビ」の誕生
1960年代半ばまでの国産テレビは、箱形の本体にモニターを収める米国のテレビデザインに大きな影響を受けていた。嵯峨は家具調テレビという日本独自のスタイルを確立したマイルストーンともいえる製品である。
嵯峨のデザインは、日本の家庭におけるテレビの実態調査から生まれた。1960年代、テレビは居間の中心的存在として置かれ、上に物を置くケースも多かった。そこから、テレビを家具としてデザインするという発想が生まれた。
嵯峨は北欧のシンプルな家具デザインの影響を受けており、キャビネットには高価な天然のウォールナットとブナを用いている。上に物を置きやすいようにサイドボードを参考にしてデザインした結果、天板は外に張り出すことになった。
1960年代後半~1970年代、国産テレビは嵯峨の確立したスタイルを踏襲していく。

1965掃除機MC-1000C

写真:1965 掃除機 MC-1000C
1965 グッドデザイン賞、1996 グッドデザイン・
スーパーコレクション
プラスチック時代の幕開けを告げた掃除機
多くの掃除機が板金による単純な円筒形をしていた時代に、MC1000Cは造形の自由度の高いプラスチックを初めて本格的に採用し、プラスチックの美学とも言うべき、流麗な曲面を実現した。また、従来の掃除機の車輪は固定式で曲がろうとするとすぐに転倒したが、MC-1000Cは前輪を左右に振れるようにして掃除する人の後を掃除機が自在について回るようにし、掃除する人のストレスを大幅に軽減した。
生産方式にも革新が見られる。板金による掃除機は、筒形の本体の片側から順に機械部品を挿入していかなければならなかった。MC-1000Cの本体は左右2ピースに分かれており、片側のピースに機械部品をはめ、もう一方のピースを閉じてビス止めするだけで組み立てることができた。プラスチックならではの方式で、生産性は大幅にアップした。
生産累計63万台は当時の掃除機の記録。プラスチック時代の幕開けを告げた製品である。