History

1980レコードプレーヤーSL-10

写真:1980 レコードプレーヤー SL-10
  • 1990 グッドデザイン賞、1996 グッドデザイン・
    スーパーコレクション
  • MoMAコレクション
技術の精緻さを伝える、究極のモダンデザイン
1960年代後半から1980年代前半まで、日本ではHi-Fiオーディオブームが続いた。Hi-Fiの理想は、録音されたときの音を忠実に再現する原音再生である。
SL-10はリニアトラッキング方式を取り入れて、究極の原音再生を目指したプレーヤー。リニアトラッキング方式はアームが平行移動し、常にレコードの溝と平行を保つ。レコードの原盤を彫るときと同じ角度で溝をなぞるため、原音再生に最適な機構だ。
直線で構成したフォルムは、アームの平行移動を視覚的にアピールしている。サイズを切りつめ、LPレコードの大きさに迫る「ジャケットサイズ」を実現した。アームの機構がフタ側に取り付けられており、フタを開けてレコードを出し入れするときにアームが邪魔にならず使いやすい。振動を抑えるアルミボディの素材感を外観にも活かしている。 技術の精緻さを形と素材感で表現した究極のモダンデザインが高い評価を得た。

1990ドライヤーうすドラEH625

写真:1980 ドライヤーうすドラ EH625
薄型・コンパクトの斬新なデザインが人気を呼んだ
ビジネスマンの出張などのトラベル用品としてデザインされた、厚さ約2cm、手のひらサイズのドライヤー。
携帯性の観点からあえてグリップをなくし、本体を持って使うようにした。一見、ドライヤーらしくない形に見えるが、実は、カバーの円状の部分の内側にはモーターとファンが、その前部(「National」のロゴのあたり)にはヒーターが、残りのスペースにはスイッチ部品などが入った、合理的な構造をしている。収納しやすいように本体の周囲には電気コードを巻きつけられるようになっており、コードを巻きつけた状態で熱風が吹き出さないように、コードの付け根にスイッチをロックする機構が設けてある。
薄くフラットな形状なので、旅行鞄のポケットやアタッシュケースにも収めやすい。独特の幾何学的なシェイプがビジネスマンなどに高く評価され、人気商品となった。

1982紙パック式掃除機キャニスターMC-250C

写真:1982 紙パック式掃除機キャニスター MC-250C
1982 グッドデザイン賞
紙パック式の利便性と、収納・掃除のしやすさの実現
紙パックを採用し、日本の掃除機の主流スタイルを確立した製品。
それまでの掃除機は本体に直接ゴミをためていたため、ゴミを捨てる際、手が汚れるうえ、ホコリが舞った。MC-250Cは、紙パックごと捨てる方式を採用し、そうした問題を解決。ふくらんだ時、箱状になる紙パックの形から生まれたコンパクトな箱型フォルムは、丸みを帯びた形が主流の中で、紙パック式の時代の到来を鮮烈にアピールした。
後端にはややはみ出る形でローラーが設けてあり、フロントハンドルを持ち上げると掃除機をスッと立てられ、収納や階段掃除がしやすい。立てたときに床が傷つかないよう、後面には軟質のプラスチックのクッションを付けるなど、細やかな配慮がなされている。紙パック式はその後の日本の掃除機のスタンダードとなり、MC-250Cはその原点となった。

1982オーブン電子レンジNE-M600

写真:1982 オーブン電子レンジ NE-M600
1982 グッドデザイン賞
道具としての本質を追求した“THIS ISオーブンレンジ”
家電のマイコン化がブームとなり、機能が複雑化した時代に、あえてシンプルな機械的操作を採用して、使いやすさを実現したオーブン電子レンジ。
右上にレンジ(強、弱)、グリルヒーター、オーブンを選ぶ4つのボタンを、その下にタイマー、ヒーターの上下切り替え、オーブン温度の3つのダイヤルを設けて、マイコンの操作になじめない主婦にもわかりやすい操作系にした。4つのボタンの上部は斜めにカットし、影で遠くからでもどのボタンが押してあるかわかるようにしている。大きなガラスをはめたフラットなドアには洗練されたイメージがあり、掃除もしやすい。ホワイトとブラックのツートンカラーに赤いラインを施して、モダンな感覚を表現した。
“THIS ISオーブンレンジ”の名称のもと、道具としてのあるべき姿を追求した製品で、わかりやすさと先進的なイメージ、手頃な価格が相まって、大ヒット商品となった。

1985テレビモニターアルファチューブTH28-DM03

1985 テレビモニターアルファチューブ TH28-DM03
1985 グッドデザイン賞、1996 グッドデザイン・
スーパーコレクション
テレビとはブラウン管である
1980年代、ビデオデッキとレンタルビデオの普及により、テレビは「テレビ番組を見るもの」から、広く「映像を楽しむもの」へと変わっていった。
新しい時代のテレビのあり方を模索するなか、松下のデザイナー達が「一度、テレビの原点に戻ってみよう」とブラウン管を床に置いたとき、ひとつの閃きが生まれた——“テレビの本質は映像を映すブラウン管にある”。
アルファチューブは、大型のブラウン管を最低限のコスチュームで包み、形そのもので「テレビとはブラウン管である」ことを表現している。画面は10度の角度で上を向かせ、床にテレビを置いて楽しむ“フロアライフ”を提案した。“フロアライフ”は、日本人が長年親しんできた、床の上に座る暮らしをあらためて見直すものでもあった。
テレビの本質をつかむことにより、大画面で映像を楽しむ時代を先取りした製品である。

1986配線器具フルカラーモダンプレートWN6001, W010他

写真:1986 配線器具フルカラーモダンプレート WN6001, W010他
1986 グッドデザイン賞
壁と同化するシンプル・デザインで日本のスタンダードに
1971年発売のフルカラー配線器具シリーズは、外側のプレート・モジュールと内側の器具モジュールの二重構造になっており、それぞれのモジュールのサイズが規格化されている。後にこの規格がJIS規格となって、現在に至っている。
インテリアの多様化に対して、フルカラー配線器具シリーズは従来、多種多様なデザインを用意することで対応してきたが、1986年発売のフルカラーモダンプレートは発想を逆転。デザインをぎりぎりまでシンプル化することによって、さまざまなインテリアに融合するようにした。外側のプレート・モジュールはわずかなふくらみを持ち、壁と同化する形状となっている。器具モジュールとプレート・モジュールをさまざまに組み合わせることで、スイッチ、コンセントなどの機能・数と、サイズの多様なニーズに応えられる。
発売直後から普及が進み、日本の配線器具のスタンダードとなった製品である。

1986リビングバス清滝ジェット1500XGZK15344-50(60), XGZK15352-50(60), XGZK15361-50(60)

1986 リビングバス清滝ジェット 1500XGZK15344-50(60), XGZK15352-50(60), XGZK15361-50(60)
1992 グッドデザイン賞(室外機)
温泉のくつろぎの感覚を家庭で楽しむ
まるで温泉のようなくつろぎの空間を実現したリビングバス。
循環するお湯を吐水口から滝のように落とすことで、温泉の湧き出る湯のイメージを表現した。浴槽は大人が手足を伸ばしてゆったり入れるサイズで、ジェット噴流の気泡がジャグジー効果をもたらす。フランジ(上面の縁)には流れ模様が美しい石目柄の人造大理石を採用し、品格と自然の風合いを感じさせている。フランジの幅を広く取ってあるため、温泉の湯殿のように腰掛けて、ゆっくりと足湯を楽しむこともできる。
一般の浴槽はエプロン(洗い場側の垂直面部材)を付属している場合が多いが、清滝ジェット1500ではあえてエプロンをなくし、浴室内で自由な高さ・位置にレイアウトできるようにした。施主やインテリア設計者が、温泉のイメージを活かした、多様な浴室のデザインを行えるようにするための配慮である。

1988電気暖房機まろやかヒーターFE-12L1E

写真:1988 電気暖房機まろやかヒーター FE-12L1E
1988 グッドデザイン金賞、1996 グッドデザイン・
スーパーコレクション
器具的イメージから脱した新しい暖房のデザイン
本体上面からおだやかに熱を出す無音の自然対流式暖房と、本体下部から温風を吹き出して早く暖をとれる温風暖房の、2方式を備えた電気暖房機。
寝室や子ども部屋などのやすらぎの場で使うことを前提に、幾何学的なフォルムにして、インテリアの中で主張しすぎず、埋没もしないデザインを実現した。薄い縦型の形状は、部屋の中でも場所をとらない。下部の温風吹き出し口は、安全対策用の金網を奥に配置し、スリット状の口とすることで、器具的なイメージを感じさせないようにしている。
石油ストーブや輻射式電気ストーブなど、暖房機といえば器具的イメージのデザインがほとんどだった時代に、高品位なシンプル・デザインで、新しい暖房機デザインの方向を打ち出した製品である。

1988アイロンセパレNI-S2000L

写真:1988 アイロンセパレ NI-S2000L
1988 グッドデザイン賞
“重くて、たいへん”というアイロン掛けのイメージを変えた
今日では普通になった、コードレスアイロンの第一号。本体後部がコネクタになっており、衣類の位置を動かしたり、入れ替えたりする間に、本体を専用台に置くと、電気が流れて蓄熱できる仕組みになっている。
コードがなくなったことで、アイロンの取り回しは格段に楽になった。併せて、小型・軽量化を図ることにより、“重くて、扱うのがたいへん”という、昔からのアイロン掛けのイメージを払拭した。ホワイトのボディに半透明のグリーンのカセットタンクというカラーリング、ハンドルから先端につながるやわらかなカーブのデザインによって、視覚的にも軽快さを感じさせ、アイロン掛けにつきまとう心理的負担を軽減している。

1988IHジャー炊飯器にっぽん炊きSR-IH18

写真:1988 IHジャー炊飯器にっぽん炊き SR-IH18
1989 グッドデザイン賞
新的技術をフォルムの斬新さで伝える
釜そのものを発熱させるIH方式を採用した、初めての電気炊飯器。IH方式は加熱力が高いため、従来の電気炊飯器と比べて、格段においしいご飯が炊ける。
電気炊飯器のデザインは、1950年代の登場以来、昔ながらのお釜の形を踏襲した丸い形がスタンダードだった。SR-IH18は、あえて斬新な四角いフォルムを採用することにより、IH方式という革新的技術の導入を視覚的に伝えている。四角いフォルムは、洋風化、高級化の進んだ1980年代後半のキッチンによくマッチするものでもあった。
ハンドルはなく、食卓に移すときはお櫃のように抱えて運ぶ。蓋は前面にあるボタンを押して開くようになっているため、炊きたてのご飯の蒸気が手に当たらない。斬新なフォルムの一方で、松下ならではの、日本の伝統的な「作法」への着目や、使う人の立場に立った細かい配慮も特長となっている。

1988ヘアケア化粧台ソミエールGQB73ST1/GQB7312M, GQB73ST1/GQB7112M

写真:1988 ヘアケア化粧台ソミエール GQB73ST1/GQB7312M, GQB73ST1/GQB7112M
1988 グッドデザイン金賞
空間性、道具性、シンプルな美しさで新しい価値観をもたらす
1980年代後半、中高生が朝、シャンプーしてから登校する“朝シャン”が流行語となった。中高生を意識した“かわいい”デザインのシャワー付き洗面化粧台が市場に溢れるなか、ソミエールは落ち着いた大人っぽいデザインで高い評価を得た。
人工大理石製の大きなボウルが製品に独特な表情をもたらしている。前面に張り出した曲面と、奥にくぼませるアルコーブ的曲面が、洗髪・洗顔する人を大きく包む空間性を実現。奥のアルコーブ的曲面は物を置きやすいという利点も兼ね備えており、操作しやすいシャワー水洗金具、タッチ式のスイッチやスライド式カバーのついたコンセントなどと併せて、洗面化粧台としての道具性を高めている。全体は直線と曲線のシンプルな組み合わせで美しくまとめ、設備機器的イメージが強かった洗面化粧台に新しい価値観をもたらした。

1989扇風機F-C304F

写真:1989 扇風機 F-C304F
1989 グッドデザイン賞
やさしく、ライトな扇風機の美
自然の風の周期性に近いと言われる「1/fゆらぎ」の理論を応用して、ナチュラルでやさしい風を送る扇風機。デザインも、モノとしての存在感を抑えた、繊細でライトな美しさを目指した。
通常の扇風機は羽根の後ろにモーターを収納する大きなボックスがついているが、F-C304Fは薄型モーターを採用して、ボックスのないスタイリングを実現。ポールや、ガードの桟もぎりぎりまで細くして、品よくインテリアに収まるようにした。小さな5枚羽根は、止めているときもやさしい風をイメージさせる。メインのカラーを扇風機には珍しく金属粉を使ったチタングレーとし、技術によって人にやさしい風を送る「1/fゆらぎ」の、ハイテクとハイタッチ(人間らしさ)を表現している。