History

1990ビデオデッキNV-E505

写真:1990 ビデオデッキ NV-E505
1990 グッドデザイン賞
バーコードの一発読取りで、ビデオ予約を誰でも簡単に
高音質のHi-Fiビデオを、誰にでも親しみやすく、使いやすくしたビデオデッキ。
パナソニックでは、1980年代後半からテレビの番組予約をバーコードで行う方式を採用した。従来はシートに印刷した「チャンネル」「日付」「開始時刻」「終了時刻」のバーコードをデジタルスキャナでなぞっていく方法だったが、NV-E505は、リモコンのスキャナをバーコードに当てて「読取り」ボタンを押すだけの簡単操作を実現。大型スキャナ内蔵のT字型のリモコンは、軽く、手に自然にフィットする形状となっている。
本体は、フタを閉じるとボタン類が隠れるシンプル・デザイン。開くと多機能を操作できるボタン類が現れるが、ここでも番組予約機能を大きく扱っている。従来のHi-Fiビデオは精密感を重視するオーディオ的デザインが主流だったが、NV-E505は丸みのある造形と、マットな質感のグレーで、製品イメージを精密感から“やさしさ”へとシフトした。

1990テレビ画王TH-29VS10

写真:1990 テレビ画王 TH-29VS10
1990 グッドデザイン賞
いい絵といい音があればいい——ノイズレスデザインの集大成
“テレビの究極はいい絵といい音があること”という思想に基づき、映像と音声の阻害要素を排除する「ノイズレスデザイン」を徹底的に追求したテレビ。
画面を囲むフレームを極限まで細くし、ブラックのマットな仕上げとすることで、見る人の意識が映像だけに集中するようにした。画面両側に特殊なシートを張り、音の出る小孔を見えなくして、映像そのものから音が出ているかのように感じさせている。専用台は、画面が主体というコンセプトを貫き、本体より幅を狭くデザインした。多様なインテリアにマッチするどこから見ても美しい「360度デザイン」も大きな特徴で、弧を描く背面は美しさだけでなく、部屋の角に収めやすいという合理性も備えている。
ノイズレスデザイン、360度デザインは、1980年代半ばからパナソニックのデザイン部門が練り上げてきたコンセプト。その集大成、画王は累計生産台数300万台を記録した。

1990住宅用雨樋アーキスケアI型MQA5100, MQA6100, MQAG100(軒とい)

写真:1990 住宅用雨樋アーキスケアI型 MQA5100, MQA6100, MQAG100(軒とい)
1990 グッドデザイン賞、1991 グッドデザイン景観賞
“雨樋の建築化”で家屋と街並みを美しくする
従来、雨樋は住まいの外観上あまり歓迎されない部材だったが、アーキスケアは、“雨樋を感じさせない雨樋”をテーマにデザインすることで、雨樋を建築上の重要なデザイン要素にまで高めた。
ルーフ部分は屋根からの延長に見えるように勾配をつけ、底部分は軒天と揃えたフラットな面にして、建築との一体感を生み出している。直線を保つために芯にスチールを入れ、外からは見えにくい内吊式の金具で軒に固定することで、すっきりした外観を実現した。また、樋の下側に水切り部分を設けて、雨だれがまだら状の汚れをつくらないようにするなど、細かな機能的配慮もなされている。
“雨樋の建築化”を実現した画期的製品で、1991年に、町並みを美しく見せる雨樋としてグッドデザイン景観賞を受賞した。

1990システムキッチンナイスシステムキッチン メテオシリーズSEGA, SEGB(扉)

写真:1990 システムキッチンナイスシステムキッチン メテオシリーズSEGA, SEGB(扉)
光で変化する高級システムキッチンの新しい美
磨き上げた石材のような硬質感のある扉と、御影石調の人造石のカウンターを組み合わせ、モダンながら重厚なデザインを実現した高級システムキッチン。海外メーカーが強かった最高級グレードの中で、高い人気を得た。
扉表面材に、ウッドフレーク(木片)を樹脂とともに固めて作る新素材「メテオライト」を採用。これに透明ポリエステル塗装を施し、研磨して鏡面仕上げとすることで、ウッドフレークの粒子がきらめく、新しい感覚の石目の柄を生み出した。日の光や照明によって微妙に色合いが変化するため、朝、昼、夜とキッチンのさまざまな表情を楽しめる。
システムの面では、多様なユニットを用意して、購入者のどのようなプランにも対応できる「フリープラン」や、奥行きの異なるユニットを組み合わせて、スムーズな人の動きや変化に富む空間を実現できる「FDシステム」を採用。自由度の高さも特長だった。

1991パーソナルファックスおたっくすKX-PW1

写真:1991 パーソナルファックスおたっくす KX-PW1
1992 グッドデザイン賞
“形”そのものが“使い方”を語る
KX-PW1の、横から見ると“へ”の字型に見える「トライアングルフォルム」は見た目のインパクトが強いだけでなく、機能的にも数々の利点を備えている。まず、家庭用のファックスにふさわしく、場所をとらない。送信する紙を上から挿入すると、紙そのものの自重で滑らかに下の排出口から出てくる。後部の筒状の形がロール紙を入れる場所をわかりやすく示しており、ロール紙のセットは片手でも簡単にできる。
時代は、家庭にファックスが普及し始めた頃。“形”そのものが“使い方”を語っており、ファックスにあまり慣れていなかった当時の人々にとって、使い方がわかりやすい製品だった。パナソニック初のパーソナルファックスながら、発売後3カ月で機種別シェアのトップに躍り出るヒット商品となった。

1991CDラジカセRX-DT707

写真:1991 CDラジカセ RX-DT707
1991 グッドデザイン賞
音の迫力を表現するラウンドフォルムで大ヒット
CDラジカセは1980年代後半から多機能化が進んだ。パナソニックは、開閉可能なパネルに基本操作以外の操作系をまとめる「コブラトップ」の機構を1990年から採用し、人気を集めた。
RX-DT707はモーターで開閉する電動コブラトップを備えた、1991年のモデル。ダブル・カセットデッキを前面ではなくコブラトップの下に潜ませることで、スピーカー部分を大胆に表現することが可能になった。ラジカセ全体が音でふくれあがるかのような力強いラウンドフォルムが、音の迫力を表現している。一方で、コブラトップを閉じると、ボタンやダイヤル、液晶画面によるにぎやかさは影をひそめ、穏やかなたたずまいとなる。
音の迫力と電動でパネルが開閉するユニークなデザインで大ヒット商品となり、その後のCDラジカセのデザインに大きな影響を与えた。

1992エアコンCS-G25V

写真:1992 エアコン CS-G25V
1992 グッドデザイン賞(室外機)
住まい、景観とハーモニーを奏でるエアコン
住まいや景観との調和を重視したエアコン。シンプル・デザインの室外機を「ちいサイズ」と謳った広告も注目を集め、人々の目を室内機だけでなく、室外機にも向けさせた。
従来の室外機は横長のボディに丸い金網グリルの付いた無骨な機器だったが、CS-G25Vは新技術の導入によって小型化に成功。正方形のフロントパネルに千鳥格子模様の角形グリルをレイアウトし、住宅の外観や都市景観と調和するデザインを実現した。樹脂成形グリルの断面形状を、飛行機からヒントを得た翼型にして排気の流れをスムーズにし、金網グリルよりも静音性を高めた。配管、配線も、一本のカバーにまとめてすっきりさせた。
室内機は、吸入口の桟をよろい格子のように斜めにすることで、下から見上げたとき、吸入口の奥の黒い影が見えないようにしている。傾斜した桟の連続性と、おだやかなアールによって、エアコンを品よくインテリアに調和させている。

1992冷蔵庫NR-B500

写真:1992 冷蔵庫 NR-B500
1992 グッドデザイン金賞、1996 グッドデザイン・スーパーコレクション
ディテールの美しさに徹底してこだわった冷蔵庫
ディテールに徹底してこだわり、シンプルな美しさを追求した高級冷蔵庫。高品位をテーマにした試みが、その後の冷蔵庫のデザインに影響を与えた。
当時、冷蔵庫の上級機種は多ドアが主流だったが、NR-B500はたたずまいの美しさを重視して、あえて2ドアとした。ドアは、光が反射したときに歪みが見えないよう、表面にガラスを張り、高い精度でフラットな面を実現。近寄って見ると、ガラスならではの深みのある美しさが感じられる。ガラス特有の緑がかった色を中和するため、補色のピンクをガラスの裏に塗装して、淡いグレーに見えるようにしている。
上の庫内は、強化ガラスの棚板に明るいホワイト光を当てて、食材がナチュラルに見えるようにし、下の庫内は、清潔感のある白いケースに統一。家族の誰もがよく使う冷凍室は、冷蔵庫の下側に配置して、取り出しやすくした。

1994照明器具はなさびシリーズ

写真:1994 照明器具 はなさびシリーズ
1994 グッドデザイン賞
茶の湯のもてなしの心を現代に活かす
茶の湯の美意識や価値観を現代生活に反映させることを目指す活動体「茶美会」との共同開発による、照明器具のシリーズ。茶美会の唱える“守”“破”“離”をコンセプトに、茶の湯のもてなしの心を照明器具にこめることに取り組んだ。
“守”では、数寄屋の作法やルールに習い、古くからの和紙や木材、塗りや木工の技術を取り入れたあかりで伝統美を追求。“破”では、従来の照明器具の価値観をあえて破り、暗がりの生む気持ちよさ、居心地のよさに着目した、新しい感覚のあかりをデザインした。“離”では、伝統的な和の空間や作法から離れ、和洋融合したデザインにより、現代生活におけるもてなしと快適空間を探求している。
一般住宅における照明のあり方を見直すことから始まったプロジェクトで、1994年以来、数々の製品がデザインされ、和の高級照明器具を代表するシリーズとなった。

1995デジタルビデオカメラNV-DJ1

写真:1995 デジタルビデオカメラ NV-DJ1
1995 グッドデザイン賞
光軸一致のメリットを一本の筒でダイレクトに表現した
ビューファインダーとレンズが一直線につながる“光軸一致”のメリットを、筒型の形状でダイレクトに表現したビデオカメラ。光軸一致は、ビューファインダーを覗く視線の延長線上にレンズがあるため、動くものを追いやすく、ズームしても被写体がずれない。
紙コップをビューファインダーに見立ててのぞきながら、新しいビデオカメラのデザインについて討論したことが、筒型の発想のきっかけとなった。ビューファインダーとレンズを直線上につなぐことで、強いインパクトが生まれた。ボディは上下に折り曲げることができ、例えば、高々と掲げて上から見下ろすような撮影方法も可能だ。
デジタルムービーのフォーマット、DVCを採用した初めてのビデオカメラで、その力強いデザインが高い評価を得た。光軸一致は、パナソニックのビデオカメラの基本スタイルとして、現在も踏襲されている。

1995マッサージチェアアーバンEP578

写真:1995 マッサージチェアアーバン EP578
軽快なデザインでマッサージチェアのイメージを変えた
スタイリッシュな寝椅子スタイルのデザインと、マンションにも置けるサイズ、低価格を実現して、マッサージチェアのイメージを刷新した製品。
それまでのマッサージチェアは高機能化に見合った高級感を出すため、重厚で豪華なデザインに終始していたが、EP578は発想を転換。肘掛け、脚をパイプにし、脚の周りを素通しの空間にして、軽快な感覚を打ち出した。簡素な構造にすることでコストを抑えることも可能になり、従来の3分の1程度の価格を実現した。
EP578の、リラックス感と軽快さを結びつけたデザインは、マッサージチェアに興味を持たなかった層をも惹きつけ、一般家庭への飛躍的な普及につながった。発売間もなく、月1万台にのぼる、マッサージチェア史上最高のヒット商品となった。

1996電動工具12V充電式振動ドリル&ドライバーEY6901

写真:1996 電動工具12V充電式振動ドリル&ドライバー EY6901
1996 iFプロダクトデザイン賞
長時間作業の疲労を抑制する最高のバランスを追求
コンクリートやモルタル、レンガなどへの小径の孔開けと、ネジ締め作業の両方を行える充電式の電動工具。高性能、コードレスの機動性、狭い場所でも作業できるコンパクトさ、疲れにくさが高い評価を得た。
グリップを握ったとき、上のシリンダ状のボディと下のバッテリーケースが、重量のバランスをとる役割を果たす。長時間の作業でも疲労を最小限に抑えるデザインに挑み、天井作業の上向き、壁作業の横向き、地面作業の下向きなど、さまざまな角度で作業したときの筋肉の動きを測定しながら、最適なグリップの形状・角度、重量バランスを探求していった。フロントグリップは、ドリルで削るときのかけらや粉塵から手とスイッチ部を保護するとともに、両手で持って作業することも可能にしている。

1997ポータブルMDプレーヤーSJ-MJ7

写真:1997 ポータブルMDプレーヤー SJ-MJ7
1998 グッドデザイン賞
マグネシウム合金の素材感が強いインパクトをもたらした
MDジャケットの正面サイズと同じサイズを実現したポータブルMDプレーヤー。
スクエアなボディに、MDの光ディスクをイメージさせる同心円状のヘアラインを刻むことで(サーキュラー加工)、強いインパクトを感じさせている。剛性の高いマグネシウム合金へのサーキュラー加工は独特の美しい光沢を見せる一方で加工が難しく、空気に触れると酸化作用ですぐ変色するため、このデザインを実現するために、約1年かけて新たな素材加工と表面処理技術が開発された。リモコンの液晶画面に角度がつけてあり、クリップで胸ポケットに留めると表示面が上に来て、画面を見ながらプレーヤーを操作できる。十字キーはシンプルな形状なので、ブラインドタッチでも扱いやすい。
ジャケットサイズと美しい素材感が人気を呼び、マグネシウム合金へのサーキュラー加工はパナソニックのポータブルMDプレーヤーの顔となった。

1997シャワーユニット座シャワーYU-RT21SR他

写真:1997 シャワーユニット座シャワー YU-RT21SR他
1997 グッドデザイン・ユニバーサルデザイン賞
より多くの人にメリットをもたらすユニバーサルデザインの典型
座ったままシャワー浴ができる全く新しい発想の製品。
ノズルから霧状のお湯が出て全身を包み、浴槽入浴と同じくらい温まることができる。足腰の弱った高齢者や、身障者、妊婦のほか、心臓の弱い人でも心拍上昇が抑えられ、安全に入浴を楽しめる一方で、入浴を短時間で済ませたい人にも便利だ。両側のアームは壁際に収納できるので浴槽と併用でき、要介護の高齢者と健常者の同居の一助になる。より多くの人にメリットをもたらす、ユニバーサルデザインの典型的な製品といえる。
開発は、松下のデザイン部門におけるシャワー浴の研究から始まった。当初は小部屋にノズルを設置する方式を検討していたが、コストの点から商品化を断念。代わって、ノズルのついたアームを設ける椅子タイプのアイデアが生まれた。発想の転換により、ユニット化と既存の浴室への設置が可能となり、約7年の歳月をかけて商品化に成功した。

1999食器洗い乾燥機NP-33S1

写真:1999 食器洗い乾燥機 NP-33S1
1999 グッドデザイン賞
日本のキッチンで求められる食器洗い乾燥機のスタイルを追求
日本では1990年頃から家庭用の食器洗い乾燥機が登場したが、狭い日本のキッチンには空きスペースが少なく、一般の家庭への普及はなかなか進まなかった。
NP-33S1は、奥行き33cmという大幅なコンパクト化に成功した画期的な食器洗い乾燥機。多くのキッチンではシンクの横に幅30cm程度の空きスペースがあることに着目し、そのスペースに収まるデザインと機構を実現した。扉は、防水上のハードルは高かったものの、食器類を出し入れしやすく、インパクトのある前面開閉式とし、折り曲げながら上に開く形にして、キッチンの収納棚に当たらないようにした。製品の上部をゆるくラウンドさせて、狭いスペースに置いても圧迫感を覚えさせないよう配慮している。
コンパクト化によって、設置可能な家庭が飛躍的に増え、大ヒットを記録。NP-33S1の確立したスタイルは、その後の日本の食器洗い乾燥機の原型となった。