History

1970ファッションラジオToot-a-Loop radioR-70, R-72

写真:1970 ファッションラジオ Toot-a-Loop radioR-70, R-72
MoMAコレクション(R-72)
ポップな感覚と遊び心が若者の心をつかんだ
1970年頃、ポータブルラジオはスクエアな筐体がほとんどで、市場は飽和状態だった。
そんな中、ファッションラジオToot-a-Loop radioシリーズは、ラジオをファッショナブルなオブジェのような感覚でデザインし、成功を収めた。最初のR-70は、1970年の日本万国博覧会の記念商品。前年にアポロ11号が月に着陸し、宇宙時代の到来と言われた時代で、未来をイメージさせる球体のボディに、チューナーメーターを大胆にくり抜いたデザインで大ヒット商品となった。若者の間にポップカルチャーが浸透しつつあった時代でもあり、以後、遊び心にあふれたラジオがシリーズ化された。1972年のR-72は、リング状にして腕に巻きつけて携帯でき、ねじるとチューナー部分が現れる楽しいデザインだ。
もっぱら機能主義、合理性を重視していた日本のプロダクトデザインにおいて、遊び心や楽しさもまたデザインの大切な要素の1つであることを示したシリーズである。

1974家電シリーズ愛のカラーシリーズ

写真:1974 家電シリーズ 愛のカラーシリーズ
色による家電のシリーズ化の先がけ
若い世代を中心とした生活空間のトータルコーディネーションへの関心に着目して、家電製品のカラーコーディネートを行ったシリーズ。家電のシリーズ化、色の商品化の先がけとなった。
炊飯器、オーブントースター、ジューサー、電気ポット、トースターの5商品を選び、色彩嗜好調査の結果をもとに選定したカラーで統一。新しく暮らし始める若い世帯を主な対象に、5商品を1つのパッケージに梱包するセット販売も行った。その後、白物家電を中心にアイテムを増やし、シリーズの幅を拡げていった。
当時、第一次ベビーブームの世代が20代半ば~後半となり、結婚・出産した第二次ベビーブームの時代で、キッチンやダイニングを彩るカラフルな家電は、新しい幸せの形でもあった。

1977ラジオペッパーラジオR-012

写真:1977 ラジオペッパーラジオ R-012
1977 グッドデザイン賞、1996 グッドデザイン・
スーパーコレクション
「軽薄短小」で付加価値を創造する
YM工法という新しいICチップ取付方法、薄型スピーカー、薄型バリコンの開発によって、厚さ12.7mmという画期的な薄さを実現したラジオ。高さ127mm、幅71mmというサイズは、シャツの胸ポケットにも収まる。
デザインは極力シンプルにまとめ、薄さ、コンパクトさの魅力をストレートに伝えることに徹した。操作部品はポケットに入れたままでも操作できるように、全て上部にレイアウトしている。技術の先進性を象徴するメタリックなシルバーに梨地処理を施すことで、人にフィットするソフトさをさりげなく感じさせている。
身に着ける感覚で携帯できるオーディオ機器の先がけといえる製品。発売と同時に大きな話題となり、「軽薄短小」で付加価値を創造する商品デザインの先駆けとなった。

1977メンズシェーバースーパーレザーES820

写真:1977 メンズシェーバースーパーレザー ES820
1977 グッドデザイン賞
使いやすいT型がブランド力を高めた
モーターの回転を刃の往復運動に変えるダイレクトドライブ駆動を採用した、最初のシェーバー。
当時の往復刃式シェーバーは、電磁コイルを利用したバイブレーター方式の重くて大きい箱型が主流だったが、ES820は小さなモーターを採用したダイレクトドライブ駆動とすることで、軽量・小型化に成功した。モーターと電池を中に収めた細いグリップは握りやすく、髭を剃る際に扱いやすい。安全カミソリを連想させるT型の形状は、ナショナルのメンズシェーバーの特徴として、現在まで受け継がれている。
軽くて扱いやすいES820はヒット商品となり、海外メーカーが圧倒的なシェアを占めていたシェーバーの日本市場において、「National」の認知度を飛躍的に高めた。

1978コンポーネントステレオコンサイスコンポ

写真:1978 コンポーネントステレオ コンサイスコンポ
1978 グッドデザイン賞
音楽を自由に楽しめるA4サイズの高級オーディオ
1970年代の高級オーディオは、コンポーネントを単品で買い揃えるスタイルが主で、各コンポーネントはステレオラックにきれいに収まるサイズにデザインされていた。
コンサイスコンポは、プリアンプとパワーアンプを独立させた高級オーディオとしての仕様と高性能を備えながら、A4サイズという当時としては異例の小型サイズにまとめたステレオ。コンパクトなので、机や家具の上など、さまざまな場所に置くことができる。一体成形によるアルミダイキャスト製キャビネットがオーディオとしての精密感と本物感を、アナログメーターに代わる2色のLEDによるインジケーターが先進性を表現している。
高級オーディオを重厚なステレオラックから解放し、自分の好きな場所に置いて音楽を楽しめるようにした画期的なステレオで、その後の日本のオーディオ・デザインに大きな影響を与えた。

1978ライト付顕微鏡FF-393

写真:1978 ライト付顕微鏡 FF-393
  • 1978 グッドデザイン賞
  • MoMAコレクション
V字型の着想が生んだ新しい製品コンセプト
片方の円筒が顕微鏡、もう一方が電池付きのライト。2つの円筒をヒンジでつなぎ、開くとスイッチが入り、ライトが点灯するという発想から、“携帯してどこででも気軽に楽しめる顕微鏡”という新たなコンセプトが生まれた。
ポケットやバッグに入れていつでも外に持ち出すことができ、何か気になるものを見つけたら、パカッと開いて観察できる。ライトの光の中に拡大された像が映り、顕微鏡がとても楽しい道具だということに気づかされる。
この手軽さが受けて、自然観察の他にも印刷や精密加工など、ものづくりの現場で精度に挑むプロ達にとっても手放せない道具となった。20年以上も売れ続けるロングセラーとなり、MoMAコレクションにも選定されている。

1979照明器具リーラーペンダントLB16800, LB16801, LB16803, LB16804

写真:1979 照明器具リーラーペンダント LB16800, LB16801, LB16803, LB16804 他
家族の憩いの場で光の演出を楽しむ
ダイニングテーブル上で使うことを前提に開発した照明器具で、取っ手を動かすと、灯具を上下動できる。食事のときは下げて食卓を明るく照らし、団らんのときは上げて広い範囲を照らすなど、配光の変化を楽しめる。
スイッチは取っ手の上にあり、上下動を含めた操作の全てを取っ手で行える。スイッチを取り付けたことで無骨に見えかねない取っ手とハンドルを、大きめのカーブをうまく使って、ソフトなイメージにまとめている。ホコリなどがつきやすいカサは、本体から簡単に取り外して手入れができるようになっている。
時代は、住まいの洋風化が進み、家族の憩いの場が座布団と低いテーブルから椅子とダイニングテーブルへと変わっていった頃。リーラーペンダントは、照明は固定するものという既成概念を破り、家庭用ダイニングペンダントの新機軸を打ち出した。