職場改善

2022.08.10

社内コミュニケーションの活性化が重要なワケとは? メリットや具体策と先行事例12選も紹介!

社内コミュニケーションの活性化が重要なワケとは? メリットや具体策と先行事例12選も紹介!

社内コミュニケーションを重視する企業が増えているといわれています。人が集まる職場ではコミュニケーションが欠かせません。しかし、テレワークの普及などにより、円滑なコミュニケーションが難しいと悩んでいる企業も少なくないようです。当記事では、社内コミュニケーションの活性化について、具体策やメリットなどの解説に加えて事例も紹介します。

社内コミュニケーションの定義

社内のあらゆるコミュニケーション

社内コミュニケーションとは、文字どおり会社内のあらゆるコミュニケーションを指す言葉です。公的なコミュニケーションだけでなく、私的なコミュニケーションも含まれます。社内で複数の人間がかかわれば、必ず生まれるのが社内コミュニケーションです。

あらゆる場面に影響を及ぼす社内コミュニケーション

社内コミュニケーションのうち、多くの企業でより重視されるのが企業統治、業務の円滑な遂行や職場の人間関係、さらには外部との関わりなど企業活動のあらゆる場面に影響を及ぼすコミュニケーションです。完全に個人に帰結して完結する場合、企業や業務に影響しない場合は、社内コミュニケーションとして取り上げる必然性がないといえそうです。

具体的な社内コミュニケーションの代表例としては、仕事に関する情報の交換や共有、部下から上司への報連相、上司から部下への指示のほか、休憩時間にリフレッシュするための雑談などがあります。企業の組織が大きくなれば、社内コミュニケーションが行われるシーンやメンバーの組み合わせが増えるといえるでしょう。

社内コミュニケーションの重要性

企業は組織で動いている

企業は組織で動いており、メンバー1人の意思と判断だけで仕事ができるわけではないため、社内コミュニケーションが必要不可欠です。上は経営理念やビジョンの共有、個別の事業に関する通達や連絡があります。事業計画に基づいた業務を実施する中で、日々会議や打ち合わせ、報告や相談が行われているはずです。

こうした社内コミュニケーションがあるからこそ、いろいろな意見を参考に、ときに修正を加えながら、正しい方向性で仕事が円滑に進んでいるのだといえます。

多様な考えから解決策が生まれる

問題が生じたときや新しい課題を突破しようとするとき、1人の考えではよいアイデアが浮かばないかもしれません。部門を跨いだ仕事をしているときなど、専門外の課題に出くわすことがあります。このようなときこそ社内コミュニケーションの出番です。他者との社内コミュニケーションがあれば、多様な考えから解決策がうまれる可能性があります。1人で悩んで時間ばかりが経過することと比較すれば、生産性の向上にもつながるでしょう。

働き方改革との関係

仕事に対する価値観の多様化や働き方改革の時代となって、コミュニケーション不足が及ぼす弊害が無視できないレベルになっていると考えられます。同じ職場でもフレックスタイムによる時差出勤や、テレワークの拡大による在宅勤務者の増加で顔を合わせる機会が減ってしまうなど、時代の変化は急です。さらに、正社員とパートタイマー、派遣社員といった雇用形態の違いも増えています。

そのため、全員が同じ目的に向かい同時刻に出退勤する正社員であった頃よりも会話の機会が減り、職場の人間の連携、一体感が薄れているといわれている状況です。こうした状況下では共通認識を持ちにくく、社内コミュニケーションがより重要になっています。

社内コミュニケーション活性化のメリット

エンゲージメントの向上

社内コミュニケーションを活性化するメリットのひとつが、従業員の満足度やエンゲージメントの向上です。コミュニケーション不足が解消された職場には活気があり、前向きな空気が流れるといっても過言ではないでしょう。気兼ねなく話ができる心理的安全性が高い風通しのよい職場では、協力的なメンバーによる情報共有が円滑に行われ、自発的な貢献意欲を要素にもつ従業員エンゲージメントが高まり、各自が最大のパフォーマンスを発揮しやすくなります。

問題点の発見と解決

活性化されたコミュニケーションで共有される情報には、お互いにとってよい話も悪い話も含まれます。ミスやトラブルの報告を躊躇う可能性が低くなり、問題点の早期発見と早期解決につながる点が大きなメリットです。属人的な仕事のデメリットが薄れ、チームワークによる活気あふれる職場を期待できます。

離職率の抑制

社内コミュニケーションが活性化すると、人間関係を中心としたオフィスの環境もよくなる可能性が高いといえます。そのため、退職希望者が減り離職率を抑制できるでしょう。前述のエンゲージメント向上も離職率の抑制に寄与します。

生産性の向上

社内コミュニケーションの活性化が円滑な情報交換、共有につながることで、業務に生じる無駄が減ります。確認作業を行うための手待ち時間が無くなるなど、時間的にも気分的にもメリットが大きいといえるでしょう。その結果、生産性の向上につながります。部署間の社内コミュニケーションが活性化すれば、セクショナリズムの弊害が薄れそうです。

また、社内コミュニケーションによってメンバーの個性や得意分野の把握がしやすくなり、適材適所の人員配置ができれば、さらなる生産性の向上が可能です。

ブランド力と業績の向上

従業員エンゲージメントの向上や生産性の向上といったメリットは、人材面や経営面で企業・組織の基盤を強化するものです。よい影響を受けるのは社内だけではありません。高いレベルの人材が商品やサービスを作り、顧客対応を行うことでブランド力が向上します。ブランドを支持する顧客が増えれば、企業の業績も向上するでしょう。

また、優秀な人材が集まっている中ではミスや不祥事が起きる可能性も低くなり、企業価値がますますアップする期待がもてます。

制度づくりの前に考えること

誰のための何の役に立つ制度かを考える

社内コミュニケーションを活性化させる制度・具体策はいくつもあります。さまざまな施策の中から自社に適したものを必要数選択して実施するとよいでしょう。ただし、それぞれの制度が誰のためになるのか、何の役に立つのかを理解して導入することが重要です。

理解がないままに進めてしまうと、社員、従業員の側でも「よくわからないモノ」とか「自分とは関係がないモノ」と認識してしまう可能性があり、効果が低下したり、逆効果になったりする恐れがあります。

経営課題として全社的に取り組む

社内コミュニケーションを一部の部署の問題と考えていると上手くいかない可能性が大です。いまや社内コミュニケーションは企業の行く末に関わる重大事といってもよいほど、人材面を含めて大きな影響を及ぼします。

もし、所属長や拠点長に責任を持たせて局地的な話で終らせてしまうと、全体の協力が得られないかもしれません。その部署の協力体制に問題がある場合はもちろんのこと、何かを始める際の拒否反応が出るケースもあります。しかし、全社一丸となっての取り組みとなれば、よりよい結果を期待できるでしょう。

社内コミュニケーション活性化はどの部署に限らず重要な経営課題であり、トップが先頭に立って全社的に取り組む必要がある課題です。

活性化は始めて終わりではない

活性化の施策には検証と改善が必要

制度を導入したことで社内コミュニケーションを活性化した気分になっていたのでは、継続的な効果は期待できません。制度を浸透させることはもちろん、実際の社内コミュニケーションがどの程度まで活性化できているかの検証と、それに基づく改善が重要です。一般的にはPDCAサイクルの活用が多いといえます。

長期的な視点と短期的な視点の両方が必要

社内コミュニケーションは一度活性化すれば永遠に活発な状態が続くわけではありません。人間同士のかかわりである以上、何かのきっかけで鈍化してしまう可能性があります。そこで、常に活性化させる試みが必要です。また、制度や具体策は必ずしも即効性のあるモノばかりとは限らないため、長期的な視点が必要になります。

一方で、ダラダラとやるのではなく、駄目な施策は早々に改めるといった短期的な視点も必要です。制度・具体策の導入にあたっては、即効性のあるモノと効果が出るまでに時間がかかるモノを組み合わせるとモチベーションが維持できて効率がよくおすすめといわれています。

分野別に活性化させる具体策

人事制度上の具体策

ここからは社内コミュニケーションを活性化させる具体策を分野別に紹介します。まずは、人事制度上の具体策です。

・ジョブローテーションの実施

ジョブローテーションはジョブ+ローテーションで計画的な人事異動(職場の異動)のことです。比較的短期間に2~3の部署を異動します。主なメリットは、社内の複数の仕事に触れることで理解が深まる点や、各部署の人員と人間関係を作れる点、適正に合う仕事に出会える可能性がある点です。これらはそのまま社内コミュニケーションを活性化するきっかけになります。

・リバースメンタリングの導入

リバースメンタリングは従来の指導体制を逆転させる制度で、若手の後輩社員が先輩や上司を相手に指導する制度です。逆メンター制度とも呼ばれています。経験の浅い若手が自分よりも仕事をわかっている相手に指導することがあるのかと疑問に思うかもしれません。しかし、移り変わりが早い時代では若手にしかわからない事柄も増えています。

また、指導する立場を入れ替えることにより、意識的に円滑なコミュニケーションを取ろうとする心理を期待できる点がメリットのひとつであり、社内コミュニケーション活性化のキッカケとなる部分です。

オフィス環境の具体策

・フリーアドレス制度

今、増えているフリーアドレス制度は、社員の席を固定しない制度です。フロア内であれば場所を選ばず仕事ができたり、別フロアで仕事が可能だったりと細部はさまざまあります。あちらこちらで仕事をすることで顔が広くなるだけでなく、各所の仕事内容に触れることでスキルアップも可能です。

・ミーティングスペースの充実

ちょっとした話題で集まることができるミーティングスペースの充実は、コミュニケーションシーンを増やすことにつながります。

・リフレッシュルームの設置

リラックスできるリフレッシュルームでの会話によって、社員間の親睦が深まるなどの効果が期待できます。

業務上の具体策

・社内SNSや社内報の活用

業務上の具体策として、社内SNSや社内報の活用があります。きっかけづくりに使えるさまざまな情報を発信できる点が特徴です。

・ビジネスチャット

比較的手軽なコミュニケーションツールとして活用できるのがビジネスチャットです。メールのような1件ごとに件名と本文を入れるといった作業がなく、流れの中で書き込み、閲覧ができます。

・タウンホールミーティング

タウンホールミーティングは別名で対話集会とも呼ばれており、経営側と従業員側が直接向き合って対話や質問をする場です。ダイレクトに意見が届く点や、普段は意見交換する機会が乏しい組み合わせの相互理解を深めるなどのメリットがあります。

・1on1

1on1は1on1ミーティングと呼ばれるもので、上司と部下が1対1で話し合います。部下のために定期的に行うミーティングです。悩みを聞いたり、課題を解決したり、人材の定着にも役立ちます。

福利厚生関連の具体策

・部活動への支援

福利厚生関連の具体策では部活動への支援が効果的です。部活動なら所属や年齢、性別、肩書に関係なく楽しむことができ、社内コミュニケーションの活性化に役立ちます。

・社内パーティ・ランチ会

社内パーティやランチ会といったイベントには、日頃の勤務への感謝の意を表すとともに、社員間の交流と親睦を深める機能があります。タウンホールミーティングよりも気軽なイメージで上下間の接触を図ることが可能です。

・ピアボーナス

ピアボーナスは社員間で評価するボーナスとして活用されます。普段は接点が少ない間柄でも、何かの感謝を伝える手段として使えるところがポイントです。コミュニケーションをとるきっかけになり得ます。

社内コミュニケーションを活性化させる各社の事例

株式会社コンビーズ

メルマガスタンドで知られている株式会社コンビーズでは、井戸端会議、イズムトークなどの独自施策を実施しています。井戸端会議はランダムに選ばれたメンバーが顔を合わせて行う肩肘張らない自然な雰囲気の会議です。コンビーズイズムを浸透させるために開かれているイズムトークの参加者もランダムに選ばれています。どちらも議事録が作成されるため、振り返りが可能です。

日本マイクロソフト株式会社

日本マイクロソフト株式会社ではフリーアドレス制を導入しています。それまではパーテーションで仕切ったオフィスを使っていました。ポイントは会社や自宅、外出先や移動中を問わず、どこでも問題なく仕事ができるモバイル環境を活用したフレキシブルなワークスタイルです。モバイル環境の進化に合わせてさらなる発展が期待できそうです。

株式会社サイバーエージェント

株式会社サイバーエージェントでは全社棚卸会議なる施策を実施しています。ここで棚卸の対象となるのは、部署ごとの仕事です。部署内でメンバーが抱えている仕事を、やめる、捨てる、変えるといった具合に棚卸します。棚卸しなければ仕事が積みあがり、棚卸している人との業務量の差が大きくなってしまう点の解決が可能です。上司を交えてチームとして個人が抱える仕事の棚卸をする方法が特徴といえます。

株式会社ヤクルト本社

株式会社ヤクルト本社ではIT採用を除く総合職にジョブローテーションを採用しています。入社後の10年間で部署を3つスムーズに経験するシステムです。一般に国内の部署と海外の部署の経験が可能で、営業部門と管理部門の経験ができます。つまり、国内営業拠点から海外営業拠点へ異動し、帰国して管理部門に異動するといった総合職に相応しいキャリアを積むことが可能です。

株式会社資生堂

株式会社資生堂では2017年にリバースメンター制度を採用して話題になっています。一般にリバースメンタリングとも呼ばれており、若手や部下が先輩や上司に対して指導・研修を行う逆転のコミュニケーション手法です。資生堂がリバースメンター制度に踏み切ったのは、役員のITスキルを上げると同時に、社内コミュニケーションの活性化も狙ったためでした。実際に若手社員がレクチャーする相手は、自分とは別の事業を担当する役員です。

エン・ジャパン株式会社

エン・ジャパン株式会社では、2020年12月17日にバーチャル本社を解説しています。テレワーク環境を推進する中で一部に設置されていたバーチャルオフィスを、本社にまで拡大したものです。他拠点からもバーチャル本社へのアクセスが可能となり、テレワーク下でのコミュニケーション不足の解消に役立つものとなっています。状況に応じたオフィスレイアウトの変更により、その時点における最大限のコミュニケーションが可能です。

株式会社カヤック

株式会社カヤックでは、2014年7月7日に「ぜんいん人事部化計画」を開始しています。全社員がまとめて人事部員となることで、一緒に働きたい仲間を増やすことが可能です。社員間のコミュニケーションにとどまらず、新規採用に目を向けている点は特筆すべきでしょう。面白法人を名乗っているカヤックらしいユニークな企画といえます。

人事部員となった社員は書類選考免除のファストパスと、最終面接に向かうラストパスの2種類の武器を持って、新人の発掘が可能です。

カルビー株式会社

カルビー株式会社の「社 “無い”(しゃない) 文化」とは、従来の企業やオフィスに当たり前のようにあった、あれやこれが “無い”というものです。何が “無い”かといえば、フリーアドレスによって固定化された席が “無い”、フレックスによってコアタイムはあるものの固定の出退勤時間が “無い”といった感じになっています。その他にもテレワークにより出社が、さん付けにより肩書呼びが “無い”といった具合で、従来の常識に縛られ “無い”ということです。

サントリー食品インターナショナル株式会社

サントリー食品インターナショナル株式会社が展開する「社長のおごり自販機」とは、法人向けのサービスです。文字どおり設置した企業の社長による提供かどうかはともかく、社員からすればタダで飲料がもらえます。ただし、社長のおごり自販機から飲料が出てくる条件として、2人の社員がそれぞれの社員証を持って集まり、同時にタッチすることが必要です。つまり、2人のコミュニケーションを活性化するきっかけとなります。

株式会社バンダイナムコエンターテインメント

株式会社バンダイナムコエンターテインメントでは、事業の垣根を超えて一緒にモノを創る共創空間を導入しています。自社製品に触れることができる場でもある共創空間は、社内だけでなく、社外の人とのコミュニケーションにも活用できる場です。共創空間はフリーアドレス空間としても、リフレッシュ空間としても使用されています。

株式会社SmartHR

株式会社SmartHR(SmartHR, Inc.)では、オンライン部活支援制度を設けています。この制度が始まったのは、強制リモートワークの実施後にオンラインによるコミュニケーションが活発になったものの、対面のコミュニケーションができないため物足りない空気を感じたことが理由のようです。強制リモートワークの適用は新型コロナウイルス感染症が発生したことによります。

いずれにしてもオンラインが前提となる状況で、オンライン飲み会の支援を導入したものです。

ヤフー株式会社

日本における1on1ミーティングの草分け的存在といわれるヤフー株式会社の1on1は、人事部が中心となりながらも専門家を招いて、自社に適したものとなって始まっています。週に1回、30分という限られた時間での実施です。ヤフー式の成功から学ぶ「経験学習」と潜在能力を開花させる取り組みとして行われています。

社内コミュニケーションの活性化で働きがいのある職場を!

社内コミュニケーションの重要性は改めて資料を調査するまでもなく、多くの企業が感じていることでしょう。テレワーク下でコミュニケーション不足への対策が大切とされる中では、活性化の実現が急がれます。

どの具体策を利用するにせよ、重要なことは働きがいのある職場にすることです。必要に応じてプロジェクトを立ち上げるなど、社内コミュニケーション活性化に取り組みましょう。

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