職場改善

2021.12.27

社内環境の改善方法とは? 社員が働きやすい職場づくりに取り組む企業事例も紹介

社内環境の改善方法とは? 社員が働きやすい職場づくりに取り組む企業事例も紹介

「社内環境」という概念には、職場の人間関係やレイアウトなどの労働環境、人事評価などが含まれます。社内環境に問題があると生産効率の低下や離職率の増加などにつながるので改善が必要です。

本記事では社内環境の改善方法について解説します。まずは自社の社内改善が必要であるかチェックしてみましょう。企業の具体的な改善事例もぜひ参考にしてください。

社内環境とは

1972年に制定された労働安全衛生法では「快適な職場環境の形成のための措置(第7章の2)」に、事業主は社員が働きやすい環境づくりに努めなければならないと定めています。

  • 1.作業環境を快適な状態に維持管理するための措置
  • 2.労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置
  • 3.作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設又は設備の設置又は整備
  • 4.前三号に掲げるもののほか、快適な職場環境を形成するため必要な措置

業務体制や労働時間、メンタルケア、待遇面などなど、現場で働く社員の声を聞きながら、社内環境を整備・改善していくことが大切です。

出典:【厚生労働省】労働安全衛生法

社内環境改善が必要な職場とは

社員が働きにくい社内環境は、社員のメンタル面だけではなく、生産効率や離職率にも影響を与えるため改善が必要です。具体的にはどのような環境になっているのかチェックしてほしい箇所について解説します。

社員同士のコミュニケーションはとれているか

人間関係は仕事の生産効率にも大きな影響を与えます。上司や同僚とコミュニケーションがうまくとれているのか確認してみましょう。報連相(ほうれんそう|報告・連絡・相談)がうまくできていないと、仕事の進捗や成果がわかりにくく、チームワークも乱れます。

尚、コミュニケーションの機会を増やすためにという目的であっても、ミーティングの回数自体をむやみに増やしたり、飲み会をしたりすることは、社員によってはストレスになっていることもありえます(飲み会の強要はハラスメントに該当することも)。職場の人間関係を改善するためにも、コミュニケーション方法について慎重に検討しましょう。

仕事の負荷が偏っている

仕事量がひとりだけ多かったり、残業が多かったりするとモチベーションに影響を与えます。特に人手不足だと、できる社員のみに仕事が偏りがちです。仕事の内容や量、労働時間など仕事の負荷が偏っていないか確認してみましょう。

だからといって、経験が浅い社員にフォロー体制もない状況で仕事を任せたり、経験が豊富な社員にいつまでも同じような仕事をさせたりするのもよくありません。やりがいを感じられない職場では、社員が一生懸命働こうという意欲がわかないため、生産性の低下につながる可能性があります。

仕事の偏りの原因を調査して原因に合わせた対応策を講じることが必要です。

社員が働きがいを感じられない環境

上司が指示を出してばかりで、社員が自由に動けない環境では、仕事へのモチベーションも低下します。完全に受け身体制ができあがっていると、仕事に対して「やらされている感」が強くなります。また、自分で考えて動けないため、働きがいを感じることができません。

社員の経験値に応じて意思決定に関わらせる機会を設けたり、こまかく指示を出さずに社員自身が考えて動けるようにしたりする必要があります。社員一人ひとりが働きがいをもって取り組める環境を作ることで、組織力の強化や生産性の向上につなげることが可能です。

また、2021年4月より「労働者派遣法」が改正され、同一労働同一賃金ガイドラインが導入されました。雇用形態を問わず社員の待遇に差がある場合、不満を抱える社員が出てきます。ガイドラインを確認してみましょう。

出典:【厚生労働省】平成30年労働者版権法改正の概要

オフィス環境や福利厚生制度の内容に対する不満

働く上で温度や湿度、騒音などの室内環境の整備も大事です。集中して働ける環境を整えることで、社員一人ひとりの生産性が向上します。また、作業に使用する道具の整備も重要です。例えばスペックが低く動作が重いパソコンや、古くなって座り心地に影響が出ているチェアなどは、日々の業務でストレスとして蓄積されてしまいます。

また、福利厚生制度は整っているのに、利用しにくいなどの不満の声が上がっている場合、取得しやすい環境へ改善が求められます。正社員登用制度を設けているのに、非正規社員がなかなかキャリアアップをしたがらない場合、こうした面が影響している可能性があります。

社員が快適に働けるようにオフィス環境や福利厚生などの制度を見直すことが大切です。

社内環境改善の効果とは

社内環境を改善すると、社員のモチベーションや生産効率の向上が期待できます。社内環境の改善が与える効果について解説します。

社員のストレスが緩和する

社内環境の改善により働きやすい環境へ変わると、社員のストレスが緩和されます。ストレスを感じにくい環境は、社員に長く働き続けてもらうために必要です。心身が元気になるとミスも減り、生産効率の向上も期待できます。

パソコンを最新モデルに変えるなど、仕事を進める上で必要なツールやアイテムはしっかりと整えましょう。作業環境以外に空調やレイアウトなど、オフィス環境の整備もモチベーションアップにつながります。居心地のよい社内環境を作ることで、定着率も高まるでしょう。

上司や同僚とのコミュニケーションが活性化する

上司や同僚とのコミュニケーションのとりやすさは、働きやすさにも大きく影響を与えます。ビジネスチャットツールを利用すれば、声をかけずに迅速な対応が可能です。報告・連絡・相談もスピーディーに行えるため、社内のコミュニケーションを活性化することが可能です。

また、お互いに声をかけやすくなることで、信頼関係の構築や価値観が共有しやすくなり風通しのよい雰囲気が作れます。

ワークライフバランスの実現に伴い定着率も向上する

社内環境において福利厚生や休暇制度の見直し、適正な人事評価制度を導入することで社員のモチベーションアップの効果が期待できます。また、妊娠・出産など育児も兼ねる社員のライフスタイルも理解することが大切です。

社員一人ひとりがワークライフバランスを大切にしながら働けるように、社内環境を整備することで定着率の向上も目指せます。

企業が取り組む社内環境の改善事例

社内環境の改善や整備に取り組んでいる企業の改善事例を紹介します。アイデアを参考にして自社の社内環境の改善に役立ててみてください。

味の素株式会社

味の素株式会社は「味の素グループ ワーク・ライフ・バランス(WLB)ビジョン」を掲げ、社員の働く環境や働き方の見直し、生産性の向上に向けて取り組んでいます。

労働時間や有給休暇の取得日数などを改善し、社内アンケートでは仕事へのやりがいや職場環境などにおいて、社員から評価されています。働き方においても時間単位有給やスーパーフレックスタイムを導入するなど、多様なライフスタイルを考慮した柔軟な働き方を実現しました。

また、社員のメンタルヘルスケアにおいても中立の立場をとる健康保険スタッフを配置。一人ひとりと面談を行って健康チェックを行っています。不調を訴える社員が「いきいきと働ける状態」まで回復できるように、メンタルヘルス回復プログラムに沿った段階的なケアを行っています。

株式会社リコー

株式会社リコーは1990年より、「ワークスタイル変革」「多様な人材が活躍できる職場環境づくり」に取り組んでいます。特に働き方改革においては、役員の意識改革から取り組むことで組織全体の意識や風土を変えていきました。

社員一人ひとりがワーク・ライフに合わせて働けるように、ショートワークやリモートワーク制度を導入。働き方改革で懸念されるコミュニケーションの低下については、Web会議システムや電子黒板などのIT環境を整備することで働き方改革に取り組んでいます。

自社製品においてもビジュアルコミュニケーション機器を展開。新しい働き方の実現に向けて支援を行っています。

出典:【厚生労働省】働き方・休み方改善ポータルサイト

社内環境の改善方法

社内環境の改善事例をふまえて、自社の社内環境の整備・改善に取り組む上で押さえておきたいポイントについて解説します。

社員のメンタルヘルスケアを導入

国は労働者の安全と健康を守る上で社員のメンタルヘルス対策へ取り組むよう推進しています。社員一人ひとりが心身から健やかな状態であると生産性向上も目指せます。メンタルヘルスケアにあたり、「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」の4つのケアを行うことが重要です。

ケア体制を構築しても実際に相談する社員が少ない場合、相談しやすい体制づくりとして社外の相談窓口を知らせておきましょう。

・あかるい職場応援団(厚生労働省)

ハラスメント対策の総合情報サイト。各都道府県労働局や個別労働紛争のあっせんを行っている都道府県省労政主管課、法テラスなどの相談窓口のリンクが掲載されています。

・ハラスメント社外相談窓口サービス(公益社団法人 21世紀職業財団)

正規・非正規問わず契約企業の従業員が対象です。産業カウンセラーなど有資格者が対応してくれます。電話またはWeb相談が可能です。ハラスメント相談担当者に向けたセミナー研修も実施しています。

メンタルヘルスケア制度を整えることで、離職防止や生産性向上につながります。2022年4月1日からは企業の規模を問わず、ハラスメント相談窓口の設置が義務付けられました(※1)。ハラスメントによるメンタルヘルス不調者からの相談には、迅速に対応できるように対策を立てておきましょう。

参考:【厚生労働省】明るい職場応援団
参考:【公益社団法人 21世紀職業財団】ハラスメント社外相談窓口サービス
出典 ※1:【厚生労働省】明るい職場応援団「職場におけるハラスメント関係指針」

社員が働きがいのあるオフィス環境をつくる

社員一人ひとりが働きやすいように、冷暖房設備の整備やデスクの配置など、社内環境を整えましょう。固定席を作らないワークスタイルのひとつ「フリーアドレス」は、働き方の多様化とともに注目を浴びています。業務内容に合わせて席を変えられるため、チームメンバーとのコミュニケーションもとりやすくなるメリットがあります。

しかし、フリーアドレスをストレスに感じる社員もいます。1人で業務に集中して取り組める「集中席」を作りましょう。業務に集中して取り組める環境は効率が上がるだけではなく、ネガティブな感情も出てきにくくなるためメンタルケアにもつながります。

ほかにも観葉植物を取り入れたり、住居のような空間を作ったりなど、社員がリラックスできる環境を作ることで、ウェルビーイング(肉体的・精神的・社会的に幸福で、満たされた状態)を高めることが可能です。

現場で働く社員の声を聞く

国は雇用政策にあたり企業に対し、『経営においては「従業員満足度」と「顧客満足度」の両方を重視するのが重要』と示しています(※2)。社内環境の改善に取り組むには、現場で働く社員の声を聞くことは重要です。社内アンケートを作成して社員の声を集めましょう。

アンケートを作成するときは、社員が抱えている不満を明らかにするために実施するため、企業側に都合のようアンケートにならないように注意してください。社員が本音を書きやすいように匿名方式がおすすめです。アンケートの最後に自由に意見を書ける記入欄を設けておくことで、より本音が書きやすくなるでしょう。

「従業員満足度」は「顧客満足度」だけではなく、生産効率の向上や売上向上に影響を与えるほど重要なものです。社員一人ひとりが自分らしく働けるように社内環境の改善に取り組みましょう。

出典 ※2:【厚生労働省】従業員の職場定着など、雇用管理面でお困りの事業主の皆さまへ

ICTツールを導入して効率性・生産性アップを図る

テレワークや在宅勤務など新しい働き方が広まりつつある中で、ICTツールが注目を浴びています。ICTツールの代表的なものをまとめてみました。

・ビジネスチャットツール

ChatworkやSlack、Microsoft Teamsなどがあります。SNSのように気軽に使いやすいツールでコミュニケーションがとれるため、在宅勤務社員とオフィスにいる社員のコミュニケーション活性化に便利です。タスク管理やデータ共有など、ビジネス向けの機能も豊富です。

・FAQシステム(Frequently Asked Questions)

社員が持つ知識やノウハウを共有して、組織全体の生産効率を向上させるためのツールです。部署を越えて知識や技術を共有できるため、新しいアイデアが生まれやすくなるでしょう。

・クラウドサービス

利用者同士でデータやソフトウェアをネットワーク経由で共有できるツールです。セキュリティ対策にも着目して選びましょう。代表的なサービスにはAWS(Amazon Web services)・Microsoft Azure・GCP(Google Cloud Platfom)などがあります。

・Web会議システム

ネットワーク回線を使用して画像と音声を共有できるシステムのことです。遠方にいる社員と顔を見ながらコミュニケーションをとることが可能です。現在使用しているパソコンを使用できるためコストを抑えて導入できます。

学生の就活においても、テレワーク・リモートワークができる企業は注目を集めています。効率性・生産性を高めるためだけではなく、優秀な人材を確保するために導入を検討してもいいでしょう。ただし、導入費用が必要であることと、ツールによっては使い方を教えるための研修が必要です。

人事評価制度を見直す

社員一人ひとりが評価について不満を持っていると生産性にも影響が出てきます。社員が満足する評価制度を目指して改正しましょう。人事評価制度を見直すときは、以下の4つのポイントを押さえることが大切です。

1.評価項目を選ぶ

どのような仕事をしたら評価が上がるのか、基準となる評価項目を選びましょう。売上アップやチーム力強化など、目的は企業によって異なります。適した項目を選ぶことで売上向上にもつなげることが可能です。

2.評価基準を明確にする

どのように評価するのか、評価基準をはっきりと定めておきましょう。曖昧な基準だと主観が入ってしまうため、社員一人ひとりに対して適切な評価ができません。社員の不満にもつながるので明確にしておきましょう。

3.評価の活用先を周知しておく

評価結果は給与や賞与に活用されるケースが多いですが、役職や人事異動などへ活用することが可能です。

4.評価結果を社員に伝える

評価結果は直属の上司が伝える役割を担う企業が多いでしょう。主観が入らないように、あくまで結果のみを伝えるようにすることが大切です。

人事評価制度の改正により、評価が下がってしまう社員があまりにも多いときは制度の内容をさらに見直すか、改正そのものを中止する判断も求められます。

社内環境を改善して社員一人ひとりの幸福度を高めよう

国は「働き方改革」の実現に向けて、多様な働き方を選べるような社会を目指しています。社内環境の改善は社員が心身ともに健やかで働きやすい環境を目指さなくてはいけません。社員のメンタルヘルスケアや室内環境の整備、人事評価制度の見直し、ICTツールの導入を検討しましょう。

生産効率や離職率にお悩みなら、まずは会社や企業において社員が不満を抱えている箇所を把握することが大切です。社員一人ひとりが幸せに働けるように社内環境の改善に取り組んでください。

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