職場改善
2021.07.05
ワークエンゲージメントを高め、よりよい心理状態で仕事に取り組もう!
仕事においてポジティブな心理状態を保つことは、高いパフォーマンスを発揮するための重要な要素です。この状態を「ワークエンゲージメント」と言い、業績の向上や従業員の満足度などの観点で、多くの企業から注目が集まっています。
今回の記事では、ワークエンゲージメントの詳細やメリットなどを詳しく解説します。
ワークエンゲージメントとは?
最初に、ワークエンゲージメントがどのような概念なのか、理解を深めていきましょう。
仕事に対して、前向きな姿勢や充実した心理状態
ワークエンゲージメントとは、仕事に対して前向きに取り組もうとする感情や、満たされた心理状態をさします。この状態で重要なのは、特定のきっかけで一時的に感情が高ぶるのではなく、持続的かつ感情が安定しているという点です。
「エンゲージメント」という言葉が最初に使われたのは、1990年代のコンサルタント業界だと言われています。そして、複数の学術研究者たちが独自にエンゲージメントの定義について研究を始めました。
その後、現在でも用いられるワークエンゲージメントの概念は、オランダのユトレヒト大学のシャウフェリ教授によって2002年に確立されました。国際的な比較ができる「ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度」も開発され、幅広く活用されています。
日本では、諸外国に比べてワークエンゲージメントの水準が低いとされてきました。しかし、厚生労働省の調査によると、「エンゲージメント」の単語を含む記事の数は、2014年と2019年を比較しておおよそ10倍になっているという結果が発表されています。この結果から、日本でもエンゲージメントに対する関心が急速に高まっていることが分かります。
バーンアウト(燃え尽き)と対極の概念
先に紹介したシャウフェリ教授は、「バーンアウト(燃え尽き症候群)」の研究でも有名な人物です。バーンアウトとは、仕事に対して相当のエネルギーを費やし、積極的に取り組んだにもかかわらず、思っていたほど成果が出せなかったために、不満や疲労などによって意欲が低下・喪失してしまう状態を言います。これは、仕事に対する態度が否定的であり、活動量が少ないことを意味します。
ワークエンゲージメントは、仕事への態度が肯定的および前向きで、活動量も多いことから、バーンアウトと対極の概念に位置付けられています。
ワークエンゲージメントが高いと、企業へ貢献しようとする気持ちが高まる
ワークエンゲージメントが高いことで、従業員がモチベーションを維持したまま業務に取り組めるようになります。これにより、自身の業務に誇りを持ち、企業の業績を上げるため貢献しようという気持ちが高まっていくでしょう。企業は、より優秀な人材を育成でき、さらなる発展を目指すことができます。
ワークエンゲージメントを高めるのに必要な3要素とは?
ワークエンゲージメントの概要や重要性を解説しましたが、ワークエンゲージメントを高めるには、次の3要素をバランス良く伸ばす取り組みが重要です。
活力
活力とは、仕事を最後までやり抜くための姿勢や取り組み、粘り強さなどから生み出されるエネルギーをさします。活力を持つとやる気が起きるため、仕事上でトラブルや失敗に見舞われても前向きな考えを持ったり対応したりすることが可能です。
不向きだと思う仕事であっても、活力を兼ね備えているとエネルギーを持って乗り越えられるようになります。心理的な回復力を持っていることも、活力につながります。
熱意
熱意とは、仕事に対する思いの深さ・誇り・やりがいなどをさします。専門性が高い・学んだ知識を活かせるなど、自分にしかできない仕事があると、より意欲が高まり熱意を持てるようになるでしょう。
また、挑戦したい仕事がある場合、積極的な姿勢で引き受けることで、上司や同僚に熱意を伝えやすくなります。スキルの向上も目指せるようになるうえ周囲も大きな影響を受け、企業全体の業績を上げる結果を招くことができます。
没頭
没頭とは、他のことを忘れてしまうほど仕事に集中し、時間が早く過ぎていく状態をさします。没頭しているとミスが起きにくくなり作業工程や動作の無駄も減ることで、作業のスピードアップになるほか、業務効率も上げられます。
さらなる業務の効率化を目指して工程を注意深く見直すようになり、自発的に効率の良い業務を考えることができます。
ワークエンゲージメントを高めるために企業が行うべき取り組みとは?
従業員のワークエンゲージメントを高めるためには、企業が適切な対策をとり、従業員が力を発揮できる機会と場所を提供することが重要です。具体的な対策を紹介します。
現状を把握し、変えるべき習慣を見つけ出す
まず、企業の現状を把握し、従業員のワークエンゲージメントを下げている要因がないか確認します。把握するためには、エンゲージメントを測定する必要がありますが、数値化するのはとても難しいこともあり、次に挙げる2通りの測定方法のいずれかを用いるのが一般的です。
1つ目は、従業員にアンケートをとる方法です。この方法で重要なのは、匿名で行うという点です。記名式にしてしまうと、従業員が本音を書きづらくなり建前の回答となってしまい、アンケートの役割を果たせなくなってしまいます。名前だけでなく、年齢や役職も書かないことで、個人を特定できなくなります。アンケートの回答は、できるだけ具体的に記載するよう周知し、回答によって不公平にならないよう配慮しなくてはいけません。
2つ目は、外部の企業や調査ツールなどに依頼する方法です。人事担当の業務負担を減らせるうえ、客観的な第三者の視点を加えることで新たな問題点が見つかるケースもあります。
問題点が明確になったら、どのように変えていくべきかを検討します。例えば、長時間残業をするのが当然という社風になっていたとしたら、どうすれば業務効率を上げられるかを検証する必要があります。また、普段部下が上司に対して言えないことが、測定によって改善できる可能性も発生するでしょう。
ワークライフバランスを考慮する
ワークエンゲージメントとワークライフバランスは密接に関係しています。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにして広まった在宅勤務やテレワーク、時差通勤など、多くの企業が働き方の多様化を進めています。
また、休みが確実に取れるのか、残業時間をどれだけ削減できるのかという点も、ワークライフバランスの重要ポイントです。仕事とプライベートのメリハリをつけると、仕事へのやる気が高まり生産性も上げられます。
さらに、企業の福利厚生を見直すことは、従業員の満足度を上げる結果につながります。有給休暇を取りやすくする、スポーツ施設などを法人契約するなど、プライベートの時間を充実させられるような制度の導入が大切です。
モチベーションを上げる要因を分析する
ワークエンゲージメントには、モチベーションを上げる取り組みが必要不可欠ですが、モチベーションが上がるポイントは人それぞれです。従業員がモチベーションを上げられるよう、企業側が画一的な指示を出すのではなく、幅広い価値観や年代を考慮したうえで要因を分析する姿勢が求められます。
モチベーションには、「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」があります。内発的モチベーションは、従業員自らの意思で沸き起こるものであり、外部からの誘導によって起きることはあまり見られません。これに対し、外発的モチベーションは、外部から働きかけてモチベーションを上げる方法です。
従来のビジネスでは、主に外発的モチベーションが用いられてきました。しかし、内発的モチベーションは、持続性があるうえ従業員本人の成長につながることから、重要性が叫ばれるようになっています。
モチベーションが上がるポイントとして、次のようなものがあります。
- ・昇格などで給与が上がった
- ・自分が期待していた通りの評価を受けられた
- ・お客様から感謝された
- ・大きなプロジェクトをやり遂げた
- ・申請通りに休暇が取れた
これらのポイントに対処できるよう、幅広い視点からモチベーションを上げる施策の検討が求められます。
上司が適切にリードし、目標達成まで導く
ワークエンゲージメントは、従業員のみでできる取り組みではありません。上司が適切にリードすることも重要です。これを「仕事の資源」と言います。
上司は、個々の従業員に合った目標や目的を設定し、目標達成のために支援を行います。業務量を調整したり、適切な指導を行うことも、仕事の資源に含まれる対策です。適切な環境を整え、業務のフィードバックも必要です。
業務内容を精査し、正当な人事評価を行う制度も、従業員の目標達成に向けての指標となります。評価をした経緯も併せて、本人に伝えるようにしましょう。
人間関係を良好に保てるよう、コミュニケーションが取れるスペースを作る
企業で仕事を行うのに、良好な人間関係の構築は必要不可欠な条件です。近年オフィスへの導入が進められているのが、リフレッシュスペースです。
リフレッシュスペースでは、従業員が仕事のオンとオフを切り替えて一息ついたり、他部署の従業員と交流する場面が多く見られます。ときには雑談からアイディアが生まれると言われるほど、気分転換ができる場所となっているのです。
また、求職者が企業に求める設備の1つとして、リフレッシュスペースが挙げられるようになってきました。このことからも、リフレッシュスペースの重要性が分かります。
ワークエンゲージメントを高めることで得られるメリットは?
ワークエンゲージメントを高めることが、なぜ企業にとって重要なのでしょうか。それは、次のようなメリットを得られるためです。
従業員が肯定感を持てるようになり、ストレスを感じにくくなる
ワークエンゲージメントはポジティブな心理状態であるため、従業員に自己肯定感が芽生えるようになります。仕事に対しても自主的に取り組み柔軟に対応できることで、ストレスを感じにくくなるのです。
また、ストレスを感じたとしても、ポジティブな考え方ができることで解消しやすくなり、長時間ストレスを抱えたままになるリスクを減らせます。
企業全体の根本的なメンタルヘルス対策につながる
従業員一人ひとりがストレスを感じにくくなると、企業全体に存在するストレスも減少します。この結果、企業でメンタルヘルス対策をとる必要性も軽減していきます。
常時従業員が50人以上勤務する事業場を持つ事業所において、2015年からストレスチェク制度の実施が義務化されました。このチェックにより、ストレスが高い従業員に気づいたり、職場環境の改善を行ったりする取り組みは大変重要です。
ワークエンゲージメントを高めることが、根本的なメンタルヘルス対策へとつながります。ストレスに対応できる強いメンタルを持つには、ワークエンゲージメントが役立つのです。
生産性が向上し、チームや組織の活性化および人材育成につながる
ワークエンゲージメントが高まると、従業員の前向きな気持ちが仕事を行うパワー源となり、仕事の効率が上がります。よって生産性や業績も向上し、共に業務を行うチームや組織の活性化も期待できます。
さらに、管理職に部下を育成しようという意欲が生まれ、部下は上司や先輩を見習おうとする姿勢が見られるようになり、人材育成のきっかけにもなりうるのです。会社に長く勤めようとする気持ちも強まることから離職率も下がり、新たな採用にかかるコストの削減にも効果を発揮します。
従業員が自発的に行動でき、パフォーマンスが上がる
従業員がワークエンゲージメントを高めることで、自ら仕事の提案をしたり、プロジェクトに参加するなど自発的な行動が期待できます。自分のスキルをさらに向上させようとする気力も強くなり、アイディアも生まれやすい条件が揃うため、パフォーマンスの向上につながります。
まとめ
ワークエンゲージメントの重要性やメリット、企業が実施すべき取り組みなどを、詳しく解説しました。ワークエンゲージメントを高め、従業員の仕事に対するストレスが軽減されることで、生産性が上がり職場環境の向上にも貢献できます。
最も期待できる効果は、従業員が活力を得て、前向きに業務へ取り組む姿勢を構築することではないでしょうか。ワークエンゲージメントの概念を、企業で最大限活用するために、今回解説した内容を役立てていただきたいと思います。
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