職場改善
2022.4.29
ワークスタイル変革(働き方改革)とは? 目的やオフィスに求められる施策を解説!
政府が中心となって、企業が積極的に取り組んでいるワークスタイル変革(働き方改革)ですが、ただ進めるだけでは、ワークやライフ、マネジメントにおいて思っているほどの成果があげられない可能性があります。成功させるためには、ワークスタイル変革の目的や課題、それを解決するための施策などを把握することが大事です。
本記事では、ワークスタイル変革における基本を解説しています。推進する際に参考になる事例なども紹介していますので、自社に合うワークスタイル変革を模索している担当者はぜひ参考にしてください。
ワークスタイル変革(働き方改革)とは
ワークスタイル変革(働き方改革)とは、「時代や従業員のニーズなどに対応し、新たな働き方を実現すること」を表す言葉です。
少子高齢化による労働人口の減少が深刻さを増し始めたことから、2016年以降、政府を中心に各企業で従来の働き方の見直し、女性の活躍、労働生産性向上などを目指す「働き方改革」が進められました。
ワークスタイル変革の目的
ワークスタイル変革の目的は、場所や時間に縛られた働き方を見直して労働力の供給量を高めたり、ICT(情報通信技術)のような技術を活用したりして、時代や働く人のニーズに合った柔軟な働き方を実現することです。
実現のための取り組み内容は、企業によって異なりますが、具体的には次のような施策があげられます。
【施策一覧】
- ・長時間労働の是正
- ・テレワークや副業・兼業といった柔軟な働き方
- ・働きやすい環境の整備
- ・優秀な人材の獲得や維持、定着
- ・新規商品やサービスの開発(イノベーションの創出)
- ・コミュニケーションの活性化
- ・各種費用(コスト)の削減
いくつかの施策を紹介しましたが、その中でも特に注目の施策を次章で紹介します。
ワークスタイル変革で注目されている3つの施策
ここでは、ワークスタイル変革で注目されている3つの施策について、それぞれの理由を解説します。
長時間労働の是正(残業の削減)
1つ目は、長時間労働の是正です。
働き手世代が減少していく中、いかに優秀な人材を確保し、定着させるかは企業にとって大きな課題です。そんな中、長時間労働が常態化している企業は、働き方改革が目指すところとは正反対で、働き手にとってもメリットがないため、企業価値が低くなります。
そのため、ワークスタイル変革の施策として、長時間労働の是正に取り組む企業が多い傾向にあります。
長時間労働は、従業員の心身にダメージを与えやすく、仕事に対するモチベーションも下がってしまう原因になります。生産性が低下し、企業にとってもマイナスになる可能性があるため、そうならないためにも、長時間労働が常態化している企業は、残業時間を削減する取り組みが急務と言えるでしょう。
生産性を高める環境の整備
2つ目は、生産性を高める環境を整備することです。
企業が持続的に事業を行うためには、将来的な成長を見据えながら、生産性を向上させて、新たな商品やサービスといった価値を創出する必要があります。そのために従業員が働きやすい環境を整えることが重要で、ワークスタイル変革の施策のひとつとして生産性を高める環境の整備も注目されているのです。
具体的な施策としては、
- ・テレワークや在宅勤務をしやすいシステムの構築(クラウド化や業務アプリケーションの採用)
- ・仕事をする席を固定化しないフリーアドレス
- ・オフィス緑化
以上のような働く時間・場所の選択肢を拡大する施策や、働きやすい環境の整備があげられます。
業務面における具体的な施策としては、
- ・機械的・定型的な業務を自動化
- ・アウトソーシング可能な業務の外注
以上のような、「生産性や効率性を下げる業務から社員を解放する」施策があげられるでしょう。
柔軟な働き方
3つ目は、柔軟な働き方です。ワークスタイル変革では、従業員一人ひとりにあった柔軟な働き方が注目されています。
例えば、勤務形態であれば次のような制度を取り入れることで柔軟な働き方が可能になります。
フレックスタイム制 従業員自身で、⽇々の始業・終業時刻を決めることで、仕事と仕事以外の生活のバランスを取りながら、効率的に働くことができる制度。
「フレキシブルタイム」といういつ出社してもよい時間帯と、「コアタイム」という必ず勤務しなければならない時間で構成されるのが一般的です
勤務間インターバル制度 勤務後に、一定時間以上の「休息時間」を設け、従業員の生活時間や、睡眠時間などを確保するための制度。
例えば、勤務間インターバル制度で「就業後に11時間の休息を取ること」と決めると、仮に23時まで残業した場合、規定の就業開始が朝8時でも残業の翌日は11時間後の朝10時出社ができます。
また、雇用形態も正社員だけでなく、ライフイベントやライフスタイルに合わせ、パートなどへ柔軟に変更できる制度を整えるのもおすすめです。子育てや介護をしている従業員が生活に合わせた雇用形態を選べるようになり、優秀な人材を逃さずに済みます。
ワークスタイル変革で求められている3つのオフィス環境
ワークスタイル変革の施策について紹介しました。この章では、もう一歩踏み込み、ワークスタイル変革で求められているオフィス環境における具体的な施策について、深堀していきたいと思います。
ICT環境
まず1つ目が、ICT環境です。
ICTとは、PCだけでなくスマートフォンやその他の様々なネットワークデバイスを利用した情報処理や通信技術の総称です。「IT(情報技術)」は一般的によく知られた言葉ですが、ICTの"C"は”Communication”を表しており、より通信によるコミュニケーションの重要性を強調しています。このコミュニケーションに重きを置いた環境作りがワークスタイル変革で重要な要素となっています。Web会議を採用しても、高速インターネットや無線LANが整備されていなければ、使い勝手が悪く、快適に利用することができません。そのため、まずは自社の状況に合ったICT環境を導入し、整備する必要があります。
ただし、導入すればそれだけでいいというわけではありません。現場のニーズに応じた環境が整っていなければ上手く活用されず、整備にかけたコストが無駄になってしまう可能性があるからです。
現場でどのようなICT環境が求められているのかを調査した上で導入するようにしましょう。
オフィス改革
2つ目は、オフィス内の環境における改革です。
働き方が多様化している今、従業員が使用目的に合った作業スペースを選べるように整えることが重要となってきています。
【具体例】
- ・従来のように固定席を設けず、従業員自身で自由に席を選んで仕事ができるフリーアドレス化
- ・業務で煮詰まったときに気軽に利用できるリフレッシュスペース
- ・集中したいときに利用しやすいパーテーションで区切られた個室席
- ・予約なしで打ち合わせができるオープンな会議スペース
自律的な働き方を促進できるようなオフィス環境の改変が求められています。
テレワーク制度
3つ目がテレワーク制度です。
ワークスタイル変革だけでなく、昨今の社会情勢の影響から、場所や時間の制限がない環境を求める傾向が高まっています。
「必ず出社しなければならない」という制約がなくなれば、より効率的な働き方ができるようになり、通勤にかかっていた時間に仕事をしたり、子育てや介護の時間に使ったりできるようになり、仕事との両立もしやすくなるからです。
長時間労働の防止にも有効で、ワークスタイルバランスも実現しやすくなります。そのため、ワークスタイル変革において、「在宅勤務」やカフェやコワーキングスペースなどを活用した「モバイルワーク」を含むテレワーク制度が求められています。
ワークスタイル変革における課題
ワークスタイル変革によって今抱えている問題を改善できる可能性がありますが、課題も多い状況です。特に注意したい課題としては、以下の3つがあげられます。
どのようにしてワークスタイル変革を推進すべきか分かっていない
ワークスタイル変革がトレンドだからといって、適当に導入するのはよくありません。実践すべきワークスタイル変革は、企業によって違うため、誤った方法や手順で進めてしまうと失敗してしまいます。
まずは、自社におけるワークスタイル変革の目的や従業員のニーズを洗い出し、最終的な目標や目的を設定しましょう。その上で、目的や目標を達成するためにどのようなワークスタイル変革が必要かを考えることが大事です。
環境や制度の導入が目的となってしまっている
ワークスタイル変革でよくありがちなのが、環境や制度の導入を目的としてしまっていることです。
オフィス環境を整えたり、制度を導入したりしても、それをしっかりと周知していなければ形だけで終わってしまいます。ワークスタイル変革を実現し、生産性や従業員満足度を向上させたいのであれば、しっかりと社内へ発信することが大事です。
このとき、どのようなワークスタイル変革につながるのかを従業員に対して明確にしてあげることがポイントです。例えば、雇用形態を多様化させ、ライフステージに応じて選べるような制度を導入したのであれば、社内研修や対象者への声掛けをして「子どもが未就学児の間はパート、就学後は正社員」などの家庭環境に合わせた働き方ができるということをしっかりと周知しましょう。
情報管理のリスクについて意識統一ができていない
ICTの活用で場所にとらわれず仕事ができるようになりますが、専用デバイスを持ち歩くとなると、その分リスクがともないます。盗難や紛失にすると、情報漏洩のきっかけになるからです。
そのため、社員研修などを行い、情報管理のリスクについて意識統一をしましょう。万が一に備え、生体認証や2重パスワードなどの対策を一緒に考えることも大事です。
ワークスタイル変革における情報の収集方法
たくさんの事例に触れることで、課題解決のヒントが見つかります。この章では、実際の事例が確認できる2つのサイトを紹介していますので、ワークスタイル変革を考えている経営者や担当者は、ぜひ参考にして情報収集にお役立てください。
厚生労働省「働き方・休み方ポータルサイト」
「働き方・休み方ポータルサイト」は、大手企業などの体制づくりや制度・ルールの導入、改善事項などの取り組み事例を見ることができるサイトです。厚生労働省が運営していることもあり、情報の信ぴょう性や信頼性も高く、安心して利用できます。
「取組・参考事例検索」ページでは、事例をみたい企業で検索できるだけでなく、フリーワード検索を使ってキーワードを入力すれば、自社で取り組もうとしている施策を行う企業の事例だけを見ることもできます。
日本テレワーク協会「テレワーク推進賞」
一般社団法人 日本テレワーク協会は、政府が進めるテレワーク推進にも協力しているテレワークの普及・啓発活動を行う団体です。
毎年、テレワークによる環境づくりや業務の向上などを実現した企業を集め表彰しています。それが「テレワーク推進賞」です。各章を受賞した企業のテレワークの実践事例や促進事例を見ることができます。
具体的なワークスタイル変革の取り組み事例
最後にワークスタイル変革の事例として3社を紹介します。
日本航空株式会社
日本航空株式会社では、育児・介護など時間的制約がある従業員も活躍できるような支援・施策を行っています。具体的には、申請理由を問わず全社員がテレワークできる環境の整備があります。
また、多様化する働き方の中で、さらなるコミュニケーションを活性化できるよう、本社ビルには部署間を超えて交流できるコミュニケーションスペースを用意し、新しい働き方を実現しています。
損害保険ジャパン株式会社
損害保険ジャパン株式会社では、テレワークの形態のひとつとしてモバイルワークを推進しており、営業担当者にはスマートフォンを貸与しています。また、社員自身のスマートフォンでもメールやスケジュールなどの閲覧が可能で、移動中や外出先でも隙間時間を有効活用することができます。
▶詳細:働き方・休み方ポータルサイト「損害保険ジャパン株式会社」
一般社団法人日本能率協会
一般社団法人日本能率協会では、空間を有効化する施策としてフリーアドレスを導入し、モバイルワークを推進しています。シェアードオフィスを活用したテレワークも採用しており、従業員自身が働きやすい環境を選んで仕事ができます。
▶詳細:働き方・休み方ポータルサイト「一般社団法人日本能率協会」
ワークスタイル変革でニューノーマルな働き方を実現しよう
少子高齢化や労働者の働く環境が変わって来ている今、ワークスタイル変革は必要に迫られています。ただし、上手く活用できなければ「人材確保」「生産性向上」といった期待している効果は得られません。
ICT機器や従業員一人ひとりに合った雇用形態の導入、オフィス改革、テレワーク制度などを上手く取り入れたニューノーマルな働き方を実現し、企業価値を高めましょう。
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