職場改善
2021.06.04
職場改善は業務効率化のカギ!成功事例を詳しくご紹介
職場改善とは、働きやすい職場環境をつくっていく取り組みを指します。従業員の意見を取り入れることで、1日の多くを過ごす職場の環境を整えていくことは、企業の生産性を上げる成果につながります。
職場改善を行うためには、幅広い目線で職場の問題点を洗い出し、改善することが重要です。具体的にどのように取り組むべきなのか、そして成功するとどのように職場の雰囲気が変わるのか、この記事で詳しく紹介します。
職場改善は何のために行うのか?
快適な職場づくりを行うために、まず職場改善を行う目的を理解しましょう。
職場の魅力が上がり、離職率を減らせる
日本では、少子高齢化が進んでおり、これに伴い労働人口の減少も顕著になってきています。さらに、企業の人手不足も大きな問題で、企業の経営に影響を与える要因なのです。
人手不足が続けば従業員にかかる負担が増し、その結果離職へとつながってしまいます。さらに、離職者の穴埋めをするための採用活動や、入社後の教育を行うにもコストがかかります。
魅力がある職場であれば、従業員が企業に対して愛着心を持つようになり、定着率が向上することで離職率を減らせる可能性があります。さらに、職場環境の良さをアピールすることで、採用に対して応募者を数多く集めることも期待できます。
職場を選ぶ際のポイントとして、給与よりも働きやすさを優先する人が増えているのも、職場改善の重要性を示すカギとなるでしょう。
生産性が向上する
職場環境改善が進むと、従業員の仕事に対するモチベーションが上がり、生産性を向上させることができます。これによって、利益増や、品質の向上も見込めるようになります。
厚労省も「快適職場指針」を推奨している
厚生労働省は、1992年(平成4年)に「快適職場指針」を出し、計画性を持って職場の改善を進めることを推奨しています。
目標およびその内容とは
快適職場指針の目標は、次のように定められています。
作業環境…不快と感じないように、空気の汚れや温度・湿度などの作業環境を適切に維持管理する
作業方法…筋力が必要な作業について、作業方法を改善する
疲労回復支援施設…疲労やストレスを癒せる施設を設置・整備する
職場生活支援施設…職場で過ごすにあたって必要な施設(洗面所・お手洗いなど)を、清潔で使いやすくしておく
これらの目標に向かって、従業員の意見を反映させながら、継続かつ計画的に取り組みを行い、個人差に配慮しながら潤いのある職場にしていこうというものです。
これに加え、2003年(平成15年)に施行された健康増進法では受動喫煙を防ぐためのガイドラインが設けられ、喫煙所の設置などの対策が求められるようになりました。
労働安全衛生法において、快適な職場づくりが事業者の努力義務
労働安全衛生法の第71条の2において、上記のような快適職場づくりは事業者の努力義務とされています。裏を返すと、職場づくりが進められていない企業も多数存在しており、従業員の定着率向上にいたっていない事実を示しているものといえます。
具体的な職場改善の方法とは
職場改善には、先ほど紹介した厚生労働省の「快適職場指針」を指すものと、ストレス対策や業務改善も含めて広い意味での職場環境を改善するものとがあります。
ストレス対策については、一定の条件を満たす企業でストレスチェックが義務化されたり、従業員満足度に対しての概念が定着しつつあったりと、従業員のメンタルケアを重視する取り組みが進められています。
厚生労働省が提案している「メンタルヘルスアクションチェックリスト」には、職場環境を改善するためのアイディアが盛り込まれ、企業において従業員同士のグループ討論などで活用できるようになっています。
内容は、作業計画への参加、勤務時間と作業編成、円滑な作業手順、作業場の環境、職場内での相互支援、安心できる職場のしくみなどが含まれ、改善のためにどこから手をつけたらいいのかが分かりやすく示されています。
業務改善は、サービスや品質の向上、利益向上、コスト削減などを目的としています。これを達成するために、無駄な作業をなくし、業務の自動化・デジタル化・外注化を進めることでヒューマンエラーを防ぐほか、マニュアルを作成することで品質を安定させる発想もあげています。
職場環境改善の流れとは?
職場環境を改善するのに、どのような流れで進めていくと効果が上がるのでしょうか。
まず、健康診断の結果やストレスチェックの分析結果などをふまえて企業が抱えている問題を洗い出します。問題が分かったら、考えられる原因を突き止めます。
原因ごとに、具体的な取り組みを決めたら、改善計画を立てていきましょう。
職場改善の事例をご紹介
職場改善の重要性を解説したところで、具体的に行った取り組みと改善結果の事例を紹介します。
看護師の制服を勤務時間で色分けすることで、残業時間の削減
熊本県熊本市中央区にある熊本地域医療センターでは、勤務時間によって病棟看護師の制服を色分けすることで、残業時間の削減に成功しました。
日勤の制服を赤・夜勤の制服を緑にし、勤務の終了時刻が近づいている看護師には仕事の割り当てをしないようにします。これにより、残業時間が1年で半減・4年後にはおよそ5分の1にまで減少しました。2019年には、日本看護協会の先進事例表彰において、最優秀賞を受賞しました。
制服の色以外にも、終業1時間前になったら音楽が流れたり、人手不足に備えて複数の診療科を担当できる看護師を増やしたりする取り組みを進めてきました。
このような改善で、看護師の離職率が1割に満たなくなり、働きやすい職場という印象を与えたことで、採用面でも好影響となっているとのことです。
業務における気づきを無記名で投稿し、社内全体で改善案を検討した
岩手県にある株式会社長島製作所では、プレス加工・精密板金加工・自動車部品製造などを行っています。製品を製造していく中で、納品が不可能な不良品の発生率が高くなっていたのですが、社員から声を上げることはできない社風でした。
よって、現場の問題が社内で共有できず、不良品対応による残業時間も増えていきました。さらに、休みづらい環境になってしまい、社員のモチベーション低下も懸念されていました。
この状況を改善するために、「YKI活動」を実施しました。Y(やりづらい)、K(気を遣う)、I(イライラする)と感じる作業や気づきを、無記名でホワイトボードやノートに記入していくものです。
次第に提案も増えていき、会社全体で改善や提案を行う風土に変わっていきました。不良率の大幅な改善にもつながり、業績の向上に貢献できました。
コミュニケーションスペースを確保し、異部署であっても社内での交流がしやすいようにした
東京都に本社を構えるネットイヤーグループ株式会社では、オフィスのリニューアルを行うことで社内のコミュニケーションを活性化する取り組みを始めました。
リニューアル前は2か所に分かれていたラウンジを1か所に集約し、大空間のコミュニケーションスペースを確保しました。このスペースを使って、社内イベントも開催できるようになり、ラウンジがなくなった箇所には事業戦略部を新設し、業務効率化につなげられました。
さらに、ほとんど使われていなかった地下1階を、セミナースペースへと生まれ変わらせたのです。音響効果があり、パーティーにも活用できると好評です。
3Kの職場で、入社6年以内の離職率ゼロを達成
埼玉県熊谷市にある田部井建設株式会社では、技術者が不足している弊害が起きていました。不景気時に採用を控えていたため、新卒採用に必要な学校とのつながりが途絶えてしまっていたのです。離職率も高く、ベテランから若手への技術の伝承が困難になっていました。
この状況を打破すべく、若手社員による職場環境の改善が始まりました。休暇制度やノー残業デーの導入、企業説明会において若手社員が学生と接する機会をつくる、年に3~4回のヒアリング、インターンシップ実習生の受け入れ、施工管理技士の資格取得に対する支援など、あらゆる取り組みを行った結果、人材確保や休暇取得に対する意識の向上、有資格者の確保などの効果が得られました。
小規模な製造業ながらも、一部業務でテレワークを導入・業務を相互にカバーする体制の構築が可能に
新潟県燕市にある有限会社栄工業は、女性が大半を占める製造業の会社であり、人材の定着が難しいことが課題でした。休みも取りづらく、無理をして出社している状態でした。
改善策として、社内の作業を全員が対応できるようにし、お互いに業務をカバーしあえることで休みを取りやすくしました。また、現場責任者を、社員だけでなくパート社員も立候補できる制度を設けました。
さらに、事務担当はテレワークができる体制を整え、出勤が難しい場合でもできる範囲で業務を行うことができます。親睦会として、「パワーランチ」の実施も月1回行うようになりました。
この結果、休日の日数も増え、女性社員の定着につなげられたうえ、休みが取りやすい雰囲気とすることができました。
これらの取り組みは、全て従業員が自ら行動を起こし、実践に至っています。現場の事情をもっとも把握している従業員が声をあげることで、働きやすい職場環境へと改善されていくのです。
まとめ
職場改善の取り組みを進めることで、従業員自らが働きやすさを強く感じられるようになり、仕事に前向きな気持ちを持てるようになるでしょう。
職場が抱える問題を明確にし、それに対する解決策を話し合いながら、よりよい職場環境づくりを心がけていきましょう。そのときに、今回の記事を参考にしていただければ幸いです。