職場改善

2022.4.29

ワークライフバランスの取り組みとは? 背景やメリット、企業事例を解説!

ワークライフバランスの取り組みとは? 背景やメリット、企業事例を解説!

仕事と私生活の充実を図るための取り組みとして、ワークライフバランスを推進する企業が増えています。しかし、「ワークライフバランス」という言葉を知っていても、どのように導入すべきか分からない経営者や担当者も多いでしょう。

そこで本記事では、ワークライフバランスの取り組みが注目されている背景に触れながら、導入のメリットや基本的な導入方法について紹介します。記事の最後には、実際にワークライフバランスの取り組みを行う企業の事例についても紹介していますので、参考にして自社に合ったワークライフバランスの取り組みを見つけるヒントになれば幸いです。

ワークライフバランスの取り組みが注目されている背景

「仕事と生活の調和」と訳されるワークライフバランスとは、仕事と仕事以外の生活、具体的には、子育て、介護、地域活動、自分の趣味といったものとのバランスが取れている状態を表す言葉です。

このワークライフバランスが注目されている背景には、次の3つの事柄が関係しています。

  • ・人材の流出
  • ・女性の社会進出
  • ・仕事に対する個人の価値観の多様化

ひとつずつ見ていきましょう。

人材の流出

近年、働き手が不足している状況がありますが、働き盛りの世代においては子育てや親の介護により勤務時間に制約がある社員が増えています。特に女性は、結婚や子どもの出産、介護などを理由に仕事を辞める人も多い状況です。

人手不足が深刻化している企業にとって、人材の流出は大きな問題となっています。そのため、解決策のひとつとして、仕事と仕事以外の生活のバランスを取るための取り組みが求められるようになり、ワークライフバランスが注目されているのです。

女性の社会進出

人材の流出にも関連するところですが、女性の社会進出により共働き世帯が増えました。男性の育児・介護への参加なども進んでいますが、家事・育児・介護などについては、まだ女性の負担が大きい傾向にあります。そのため、女性は働き方の選択肢が限られるケースもあり、仕事と仕事以外の生活の両立ができず、出産や育児などのライフイベントを機に仕事を辞めてしまうケースも多い状況です。

ライフスタイルやライフステージが変わってもキャリアを断念することなく働き続けられるよう、ワークライフバランスの取り組みを進める企業が増えています。企業としても大事な“人財”を大事にすることで、社員のキャリア形成ができ、結果として企業の成長や業績アップにつながることから、ワークライフバランスを推進する企業が増えているのです。

仕事に対する個人の価値観の多様化

「自分自身が成長しながらキャリアアップしたい」「会社はもちろん、社会にも貢献できる仕事をしたい」など、仕事に対する価値観はさまざまです。

働き方改革の影響もあり、「生活が充実することで仕事にも良い影響を与える」と考える人も多く、ワークライフバランスを重要視する人が増えています。

ワークライフバランスの取り組みを行うメリット

前章で紹介した通り、社会的な影響を受けて注目されているワークライフバランスの取り組みですが、「ワーク」と「ライフ」のバランスが取れることで相互に良い影響を与えてくれます。

具体的なメリットは、次の通りです。

従業員におけるメリット 企業におけるメリット
・子育てや介護など、家庭の事情に合わせて
柔軟な働き方ができる
・趣味や自己啓発など、自分のための時間を
持てるようになる
・地域活動に参加しやすくなる
・心身の健康を維持しやすくなる
・家族との時間が増える
・優秀な人材の確保・定着
・従業員の仕事に対するモチベーションや
能力の向上
・生産性の向上
・企業イメージアップ
・企業や組織としてのリスクの軽減

ワークライフバランスを実現することで得られるメリットは多岐にわたるため、この章では、従業員と企業に分けて紹介します。

「従業員におけるメリット」「企業におけるメリット」を実現するためにできることについても触れているので、実践的な取り組みが知りたいという人はぜひ参考にしてください。

従業員におけるメリット

まずは、働く人が得られる効果を見ていきましょう。

・子育てや介護など、家庭の事情に合わせて柔軟な働き方ができる

育児や介護には、多くの時間が必要です。しかし、日本には長時間労働が常態化している背景があります。家庭よりも仕事を優先せざるを得ないという状況や環境も少なくありませんが、ワークライフバランスが推進されることで、家庭の状況に合わせた働き方の選択肢が増え、時間や体力に合わせて柔軟に働くことができるようになります。

・趣味や自己啓発など、自分のための時間を持てるようになる

ワークライフバランスに取り組めば、従業員の「仕事」と「仕事以外の生活」にメリハリが生まれ、自由な時間を趣味やスキルアップ等の自己啓発に使えるようになります。

その結果、仕事に対する気持ちの切り替えもスムーズになり、前向きに取り組めるようになる可能性があります。また、スキルアップのために時間を使えば、仕事の質や効率の向上にもつながるでしょう。

仕事ばかりで自分の時間が取れなければ、仕事に対する意識が低下するだけでなく、生活の質も低下してしまいます。働き続ける上で、気持ちの余裕を持つことも重要であるため、そのための施策として、ワークライフバランスの取り組みは有効です。

・地域活動に参加しやすくなる

ワークライフバランスにより、仕事と仕事以外の時間のバランスが取れれば、子どものPTA活動や自治活動など、一般的な地域活動に参加しやすくなります。

仕事をメインとした生活をしていると、地域活動に参画しづらいというケースは少なくありませんが、近所付き合いはないがしろにはできないものです。

ワークライフバランスによって仕事以外の時間を持つ余裕ができれば、地域活動にも参加しやすくなり、仕事を理由に欠席し続ける後ろめたさを感じずに済みます。

・心身の健康を維持しやすくなる

働きすぎによって体を壊し、休職や退職を余儀なくされるというケースもあります。体だけでなく、心的なストレスが原因となることも少なくありません。

しかし、ワークライフバランスを実現できれば、生活にもゆとりが生まれやすく、充分な休息やストレスの発散のために時間を使えるようになり、心身の健康にもつながります。

・家族との時間が増える

ワークライフバランスにより、仕事と仕事以外の時間のバランスが取れることで、家族と過ごす時間が増えます。家族で分担して家事をしたり、介護をしたりでき、子どもがいる従業員は、家族との触れ合いに時間を使うこともできるようになるでしょう。

従業員におけるメリットを実現するために個人でできる取り組み

従業員におけるメリットを見てきましたが、それらを実現するためには、企業の体制だけでなく、従業員自身も働き方を変えることが大切です。具体的な取り組みとしては次の3つがあげられます。

・仕事の効率化

ワークライフバランスの実現には、仕事の効率化が欠かせません。例えば、データ入力など、毎日決まった仕事をしている人は、不要な業務の洗い出しやスケジュールの管理を見直すことで、仕事の効率化ができます。

より正確に時間を短縮する方法を模索し、作業の見直しをしましょう。

・仕事内容と生活に合わせて働く場所を選ぶ

勤務先がワークライフバランスの取り組みとして、サテライトオフィスや在宅勤務といった選択肢を用意してくれているのであれば、仕事内容や生活に合わせて働く場所を変えることも個人ができる取り組みのひとつです。

サテライトオフィスや在宅勤務を活用することで、通勤にかかっていた時間を短縮でき、その時間も仕事ができるようになるため、時間をより有効的に使うことができます。

・生活に合わせて勤務形態や雇用形態を変える

勤務形態や雇用形態を生活に合わせて変えるのも、個人でできる取り組みのひとつです。

出産前:正社員(フルタイム)
子ども就学前:パート勤務(シフト制)
子ども就学後:正社員(フレックス・時短勤務)

以上のように、ライフイベントに合わせて勤務形態や雇用形態を変えることで、時間が必要な時期には家庭の時間を確保しやすくなり、子どもの手が離れた時期には仕事の割合を増やしてキャリアを積むことができます。

企業におけるメリット

続いては、企業におけるワークライフバランスに取り組むメリットを紹介します。

・優秀な人材の確保・定着

ワークライフバランスに取り組むことで「従業員思いの会社」「柔軟な働き方ができる会社」という印象を持ってもらいやすくなるため、そこにメリットを感じる優秀な人材が集まりやすくなり、より良い人材の確保や定着が期待できます。

人材が定着すれば、即戦力となる人材を失うことがなく、新たな人材の採用や育成にかかるコストも削減できるため、会社の利益も高めやすいでしょう。

・従業員の仕事に対するモチベーションや能力の向上

仕事以外の時間が充実することで、気持ちの切り替えやリフレッシュができるため、仕事に対する意欲も向上しやすくなります。従業員が、資格取得や語学の勉強といったスキルアップ・自己啓発のために時間を使えば、社員1人ひとりの能力が向上し、仕事にも良い結果をもたらすかもしれません。

・生産性の向上

ワークライフバランスを実現したい従業員が、限られた時間の中で効率良く仕事を行う術を考え続けることで、時間当たりの労働生産性の向上が期待できます。

・企業イメージアップ

企業選びにおいてワークライフバランスを重要と考える人が増えています。そのため、求職活動中の学生や転職者からの評価や信用度が高くなり、よりよい人材が集まりやすくなります。

・企業や組織としてのリスクの軽減

仕事や私生活の満足度が高くなることで、メンタルの不調を防ぎやすくなり、致命的なミスや不正といった企業・組織におけるリスクの軽減が期待できます。離職率も低くなる傾向があるため、社外的にも優良企業としてPRできるようになるでしょう。

企業におけるメリットを実現するために企業ができる取り組み

企業におけるワークライフバランスに取り組むメリットを実現するためには、次のような取り組みを進めましょう。

・労働時間の削減

働き方改革が進められており、残業時間を減らして労働時間の削減に努める企業も増えてきていますが、まだ浸透していないのが実情です。「ノー残業デー」などの制度を採用し、従業員が早く帰りやすい環境を作ってあげましょう。

・福利厚生制度の充実

例えば、育児休暇は女性が一般的で、男性の取得はなかなか進んでいません。家族で分担して育児や介護に取り組むケースも増えつつあるため、企業としては性別に関係なく利用できる育児や介護のための休暇制度を設け、企業が主体となって推奨していくことが大切です。

・働き方の選択肢(勤務形態・雇用形態を増やす)

在宅勤務(テレワーク)や「時短勤務」「フレックスタイム制」など、育児や介護をしている従業員が生活に合わせて働き方を選べる体制を整えることも企業ができる取り組みと言えます。

・適正な人事評価制度の導入

日本は、まだ長時間労働を評価する意識が根強く、ワークライフバランスを重視しながら働く社員に対しての評価を下げるようなケースもあります。

長時間仕事をしていても仕事の質が低ければ、その時間の残業代や光熱費を考えると会社にとってはマイナスです。時間ではなく、仕事の質で正当に評価されるよう取り組むこともワークライフバランスの実現に向けて、企業ができる取り組みのひとつと言えるでしょう。

ワークライフバランスを実現したくても、その環境を整えるのに時間がかかるという場合もあると思います。国は、そのような悩みを抱える企業向けの支援制度として、専門家による無料相談やIT設備導入の際の助成金などを用意しています。

専門家による
無料相談
どうすれば従業員が育児や介護を理由に離職せず働き続けられるのかといった相談ができる。
●育休復帰支援
●介護支援

▶詳細: 厚生労働省:「仕事と家庭の両立支援プランナー」の支援を希望する事業主の方へ
IT設備導入などに
対する助成金
複数の取り組みが支援対象。
例)
●労働者に対する研修、周知・啓発
●労務管理用ソフトウェアの導入・更新 など

▶詳細: 厚生労働省:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

上のような情報を確認し、支援制度をうまく活用して従業員や企業におけるメリットが多いワークライフバランスを実現しましょう。

ワークライフバランスを推進するための基本STEP

ワークライフバランスといっても、取り組み方はいろいろあります。どのようなことを実現したいのかで整備すべき事柄が変わってくるため、従業員のニーズや企業が抱える課題などを洗い出し、順序良くすすめることが大事です。

どのようにワークライフバランスを推進すればいいかわからないという時は、次の手順を参考にして進めましょう。

STEP1:現状の課題・ニーズを探す

現場とのミスマッチを避けるためには、ニーズや課題を洗い出すことが大事です。経営者だけで話を進めるのではなく、意見募集やグループワークなどを行って、実際に課題を抱える従業員と一緒に福利厚生や業務量などを洗い出しましょう。

STEP2:ワークライフバランスに取り組む目的を決める

STEP1で現状の課題とニーズを把握したら、次は最終的にどのような会社にしたいのかという目的や目標を決めましょう。

STEP3:具体的な取り組み(手法)を検討する

STEP3では、最終的な目的や目標を達成するための取り組みを考えます。例えば、「柔軟な働き方ができる会社」を目的とした場合、「固定された勤務時間をフレックスタイム制に変える」などが具体的な取り組みになります。いつまでに環境を整え、どのタイミングから実装するのかなど、より具体的なスケジュールやその環境と整備するための予算などを決めて準備をすすめましょう。

STEP4:従業員に周知(意識啓蒙)する

準備が整ったら、従業員全体に向けて説明会などを行いましょう。顧客へもPRしておけば、企業としての本気度をより示すことができます。

STEP5:定期的に見直しと点検を行う

無事に取り組みを実装できたとしても、それで終わりではありません。やってみて初めて気づく課題などもあるため、改善点があれば柔軟に見直し、持続できる仕組みを確立しましょう。

ワークライフバランスの取り組みを行う企業の事例

具体的な施策を考える上で、すでにワークライフバランスの取り組みを実施している企業の成功体験は参考になります。

そこでこの章では、厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」で紹介されている
5つの事例を取り上げ、マネしたいポイントをピックアップしました。事例を見ながら、自社におけるワークライフバランスの取り組みのヒントを探ってみてください。

株式会社りそな銀行

「株式会社りそな銀行」では、従業員が働きやすさを感じながら、個々の能力を最大限に発揮できる環境づくりを進め、最終的に全従業員が仕事と生活を両立できる働き方を実現するという取り組みの目的を掲げています。

具体的な取り組みのひとつが「所定外労働時間の削減」です。原則19時退社や早く帰れるよう17時25分以降は部店間の電話連絡を控えるといったルールを明確化に設定することで、ワークライフバランスの実現を図っています。

また、産育休前・中・後の各タイミングに復職に向けたセミナーを開催し、両立支援も行い、育児休業が取得しやすい職場づくりを行っています。

▶事例詳細:働き方・休み方改善ポータルサイト「株式会社りそな銀行 取組事例」

株式会社東急ハンズ

「株式会社東急ハンズ」では、従業員一人ひとりがいきいきすることが、お客様満足度やサービス、企業価値の向上につながると考え、そのための取り組みとして「フレックスタイム制度」や「勤務間インターバル制度」などを行っています。

これまで以上に業務の効率化をするようになったことで、残業時間の削減にも成功しており、取組前は月平均17時間だった所定外労働時間数が、取組後には月平均15時間にまで減少しました。

▶事例詳細:働き方・休み方改善ポータルサイト「株式会社東急ハンズ 取組事例」

株式会社スノーピークビジネスソリューションズ

「株式会社スノーピークビジネスソリューションズ」では、テクノロジーを活用した場所にとらわれない柔軟な働き方の実現を目的に取り組んでいます。

環境が整っていないまま進めても、上手くいかないことが懸念されることから、

①オフィスをフリーアドレス化(座席が固定していないオフィスデザイン)に変更
②別フロアの人ともコミュニケーションを取りやすいよう、Web会議やチャット機能を導入
③育児休業復帰予定者を対象に実験的に在宅勤務を取り入れ、段階的に進めてテレワークの仕方やメリットを浸透させてから制度化

上の3つのステップに分け、段階的に導入しています。いきなりテレワークを導入するのではなく、目的や意義の共有、環境の整備から始めるという手順は、これから導入する企業にとって参考になるはずです。

▶事例詳細:働き方・休み方改善ポータルサイト「株式会社スノーピークビジネスソリューションズ」

株式会社東急コミュニティー

「株式会社東急コミュニティー」では、働き方に合ったニーズの把握を大事に考え、仕事と家庭の両立を支援する取り組みを行っています。

男性の育児休業取得率が高く、2015年時点では6.7%でしたが、2019年度には47.3%まで上昇しており、女性のみならず男性もワークライフバランスを重視した働き方がしやすい状況です。

▶事例詳細:働き方・休み方改善ポータルサイト「株式会社東急コミュニティー」

株式会社ブリヂストン

「株式会社ブリヂストン」では、「一人ひとりの仕事の『質』の向上による企業競争力の向上」をテーマに、デジタル化やソリューション化にも力を入れており、デジタル機器を活用した多様な働き方の実現を進めています。

その背景から、オフィスでは部門判断でフリーアドレス化を採用し、他部門とのコミュニケーションの向上にもつながってます。

▶事例詳細:働き方・休み方改善ポータルサイト「株式会社ブリヂストン」

自社に合うワークライフバランスの取り組みを実現しよう

ワークライフバランスの取り組みは、少子高齢化や働き方が多様化している現代において、企業価値を高める1つの戦略です。ただ、企業によってさまざまなワークライフバランスの取り組み方があります。

ワークライフバランスに取り組むことで得られるメリットや事例を参考に、自社に合った取り組みを実現しましょう。

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