テレワーク

2021.11.29

テレワーク中のコミュニケーション課題の解決方法とは? 法人向けITツールや企業事例を紹介

テレワーク中のコミュニケーション課題の解決方法とは? 法人向けITツールや企業事例を紹介

テレワークは社員同士のコミュニケーション機会が少ないことから、コミュニケーション不足になりやすい環境です。コミュニケーションが不足すると意思疎通の難しさから業務に支障をきたし、生産性にも影響を与えます。そのため、意識してコミュニケーションがとれる環境整備が大切です。

この記事では、テレワーク下のコミュニケーション課題の解決方法について解説します。社員同士のコミュニケーション機会を増やせる法人向けのITツールや企業事例を紹介しますので、解決策のひとつとして参考にしてください。

テレワーク下のコミュニケーションの課題とは

時間と場所を有効に活用できる働き方として、テレワークが大きな注目を浴びています。2019年4月には「働き方改革関連法」が施行され、2020年と2021年は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、テレワークが多くの企業で実施されました。しかし、在宅で仕事に取り組むテレワークにはさまざまな課題があり、導入を検討中の企業が懸念している理由のひとつにコミュニケーション不足が挙げられます。

総務省の調査「令和2年通信利用動向調査報告書(企業編)」によるとテレワークを導入している企業の割合は47.4%。導入予定がある企業を合わせると58.0%です。実際にテレワークをしている従業員の割合は「5%未満」と回答した企業が37.3%。「80%以上」と回答した企業の割合は6.6%と前年の1.6%と比べて増えています(※1)。

労働者調査では「時間を有効に使える」「オフィスよりも集中できる」などのメリットがあげられるものの、デメリットとして「上司、同僚とのコミュニケーションが不足する」という声が37.6%(※2)ありました。

コミュニケーション不足は心理面にも影響しており、「正当に評価されていないのではないか」という不安や孤独を感じやすいという調査結果(※3)が出ています。そのため、テレワーク下のコミュニケーション課題について解決方法を考えなくてはいけません。

※1 出典:【総務省】令和2年通信利用動向調査報告書
※2 出典:【日本労働組合総連合会】テレワークに関する調査2020
※3 出典:【パーソル総合研究所】新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査

テレワーク下のコミュニケーション不足の原因

テレワーク下で社員同士のコミュニケーションが不足する原因を知ることで、よりよい解決策を講じられます。前述の総務省の「令和2年通信利用動向調査報告書」でも挙げられている、テレワーク下でコミュニケーションが不足する原因をみてみましょう。

スムーズなコミュニケーションが難しい

テレワークは自宅やコワーキングスペースなどで行います。上司や部下、同僚と一緒にいないため、「指示がうまく届いているのか」「今どこまで作業が進んでいるのか」など、オフィスにいれば声をかけて簡単に確認できることも、テレワーク環境では困難です。

コミュニケーションをとるにしても基本的にメールなど、文字のみでのやりとりになるため、得られる情報が少なく、認識齟齬が発生しやすくなります。業務に関する不明点や質問をメールで送っても、すぐに返信がくるとも限りません。

スムーズにコミュニケーションがとれないことで、確認や報告が遅れることもあります。業務を進める上で求められるコミュニケーションがとれない状況は生産性にも影響を及ぼすでしょう。

業務以外のコミュニケーションがとりにくい

テレワーク下では仕事以外の会話が難しく、業務連絡のみになりがちです。オフィスワークではトイレで席を立つときやランチなど、自然に会話が生まれるタイミングがあります。しかし、テレワークでは業務以外のコミュニケーションがとりにくいというデメリットがあります。

なかには朝から業務を開始して、気づいたら誰とも会話をせずに定時を迎えていたということもあるでしょう。しかし、上司や同僚と業務以外の話をすることは、業務を円滑に進める上でも大切なコミュニケーションのひとつです。互いに何をしているのか見えない中でのやりとりは、ミスやトラブルが起こる可能性もあります。

気軽な雑談ができない

自宅でテレワークをしているとき、家族がいるなら仕事の合間に家族と会話するタイミングがありますが、一人暮らしなら常に一人です。一人なら仕事中に話しかけられることもなく、集中できるよい環境のように感じます。

しかし、成人が集中力を持続できるのは、長くても約90分ほどではないでしょうか。疲れたら雑談をしてリフレッシュすることが大切です。オフィスワークなら、デスクを並べている同僚や上司とふとした時に雑談ができますが、テレワークでは気軽な雑談はできません。

気晴らしにカフェなどでテレワークをしようと考えても、企業によってはセキュリティ面の懸念から自宅外のテレワークを禁止している場合もあります。また、新型コロナウイルス感染症の流行により、外出そのものを自粛するような風潮もあることもコミュニケーション不足の原因のひとつです。

テレワーク下のコミュニケーション不足の影響

テレワーク下で必須のテキストコミュニケーションでは、互いの認識が異なるケースがあるので注意が必要です。コミュニケーション不足によって起こる影響について解説します。

報告内容や指示が伝わりにくい

テレワーク下でコミュニケーションをとるためにメールを使っている方は少なくはないでしょう。しかし、メールなどのテキストコミュニケーションは、慣れていないと伝えたいことが送った相手に伝わっていないことがあります。大切な情報なのに認識齟齬が発生したり、誤解を招いたりとトラブルになる可能性もあるので注意が必要です。

もし、うまく伝わっていないようだと感じるときは、メールにこだわらずに電話で確認してみましょう。このようなトラブルを防ぐために報告するためのツールの選択肢があれば、シーンや人に合わせたコミュニケーションがとりやすくなります。

円滑なコミュニケーションが難しい

テレワークでは相手の状況を確認できないため、メールやチャットを送ってもすぐに返事が返ってこない場合があります。多少のタイムラグは当たり前と認識して、緊急性の高い内容は電話を使うなど案件によってコミュニケーション方法を変えましょう。

また、オフィスではすぐに気が付いたミスなどもテレワークでは、データなどを確認する時間もまちまちのため、情報共有がうまくいかず、チームワークに影響を及ぼすこともあります。

テレワーク下のコミュニケーションにはツールを活用

テレワーク下のコミュニケーションにはビジネスチャットツール・Web会議システム・FAQシステムなどのツールを活用することで効率性が高まります。

以下では、各ツールの特徴と代表的な機能についてご紹介します。

ビジネスチャットツール

ビジネスチャットツールはSNSのように気軽にやりとりができます。まるでオフィスで声をかけるように、気軽に送れるメリットがあります。

基本的なチャット機能以外にも、ビジネスチャットツールには一般的に下記のような機能が含まれています。

  • ・グループチャット
  • ・無料通話
  • ・ファイルアップロード
  • ・Googleドライブなど外部サービスとの一体化
  • ・IP・モバイル端末制限
  • ・チーム機能

グループチャットや無料通話、ファイルのアップロードに関しては、人数や容量の制限が設けられていることが一般的です。プランは中小企業から大企業まで対応していることが殆どですので、規模や用途に応じたツールを選びましょう。

Web会議システム

Web会議システムでは社員の顔を確認しながら会話ができます。1対1はもちろん、複数人の会議も可能です。一般的なWeb会議システムに備わっている主な機能をいくつかご紹介します。

  • ・画面共有機能
  • ・チャット
  • ・オンライン名刺交換
  • ・カンペ
  • ・アンケート
  • ・ファイル共有・送信
  • ・カレンダー連携
  • ・レコーディング・自動文字起こし

機能はサービスによって異なります。Web会議の主催者からの招待があれば、参加者側はアカウントがなくてもURLやIDから会議へ参加できるため、顧客との商談にも便利です。上でご紹介したチャットツールと同じような機能を備えているため、ニーズに応じて比較検討しましょう。

FAQシステム

FAQシステムは「Frequently Asked Questions system」の略称です。また、関連する言葉としてナレッジとは「knowledge(知識)」という意味。社員一人ひとりが持つ知識やノウハウをはじめ、社内ルールなどのデータを共有できるシステムです。一般的なFAQシステムが持つ主な機能をまとめてみました。

  • ・キーワード検索
  • ・知識ランキング
  • ・コミュニティ機能
  • ・ピン止め機能
  • ・キーワード分析
  • ・必読設定
  • ・サポートチケット管理システム
  • ・ヘルプセンターの構築

機能はサービスによって異なります。コールセンターやヘルプデスクに必要なナレッジを共有できるため、テレワークでも業務効率を下げることなく対応することが可能です。

テレワーク下で円滑にコミュニケーションをとるポイント

テレワークで円滑にコミュニケーションをとるためのポイントについて解説します。

コミュニケーションツールは同じものを使う

テレワークに活用できるコミュニケーションツールには、チャットツールやWeb会議システム、FAQシステムなどさまざまなものがあります。それぞれ機能は異なるため、部署ごとで違うものを使用しているとファイルやデータなどの共有ができないなど、円滑にコミュニケーションが取れません。

また、ツールごとの使い方も学ばなくてはいけないので業務に支障をきたします。そのため、使用するコミュニケーションツールは社内共通で同じものを使うことがポイントです。しかし、ツールの使いやすさは業務内容によっても異なるため、機能をしっかりと確認して選ぶ必要があります。

ツールの使い方を統一する

コミュニケーションツールはさまざまな機能を備えています。使い方に個人差があると業務に影響する可能性もあるため、導入時に社内でセミナーを行うなどツールの使用方法を統一しておきましょう。

相手のステータスがわかるものであっても、リアルタイムを反映しているとは限らずもしかしたらWeb会議や、作業に集中している可能性もあります。また、業務時間外に連絡をとってはいけないなど、ある程度のルールを決めておくことでプライベートとメリハリをつけて働くことができます。

文章の表現を工夫する

テレワーク下では文字を使ったコミュニケーションが多くなります。チャットで伝える場合、長く書くよりも箇条書きで書いたほうが理解しやすい傾向があります。

しかし、すべて箇条書きだけだと冷たい印象を与えてしまうため、文章表現をやわらかくしたり、時には感情が伝わるような文章表現をすることも大事かもしれません。

業務前後など毎日コミュニケーションをとる

テレワーク中はオフィスと違って対面することがありません。そのため、毎日コミュニケーションがとれるように意識することがポイントです。闇雲にWeb会議をセッティングするよりも、業務の進捗報告として業務を開始する朝と夕方に同じ部署メンバーと一緒にWeb会議を行う習慣をつけるといいでしょう。

朝は今日中に行う業務の報告、夕方はその後の進捗など。顔を見ながらコミュニケーションがとれる機会を設けることで、デスクで顔を合わせていたような雰囲気も感じられます。

意識して「雑談」の時間を作る

テレワークはオフィスワークと異なり、業務に関するやりとりになりがちです。スムーズに仕事を進めることはできますが、適度な雑談は生産性においても大切。意識して雑談を楽しむことで、より円滑なコミュニケーションが生まれます。

業務時間中にオンラインランチ会を開催したり、終業後「ちょっと一杯」の気持ちでオンライン飲み会を実施したりするのもひとつの方法です。こうしたコミュニケーションの場を設けたいと声を挙げづらい社員も、気軽に参加できます。チームの結束力を高めるためにも効果的です。

テレワーク導入企業のコミュニケーション課題解決事例

厚生労働省では2015年より、テレワークを活用して成果をあげている企業を表彰しています。「令和2年テレワーク先駆者百選」と「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」より、コミュニケーション課題に取り組んでいる企業を2社紹介しましょう。

株式会社キャスター

株式会社キャスターは、オンラインアシスタントなど人材事業を行っている会社です。「リモートワークを当たり前にする」をモットーにオンライン業務の効率化にも取り組んでいます。「令和2年 テレワーク先駆者百選」では総務大臣賞を受賞。

常にリモートワークをしている社員の割合は97%でワークライフバランスを大切にしながら働けるように、時間単位ではなく、作業単位で契約する業務委託など自分に合った働き方が選べます。

対面でコミュニケーションがとれるサテライトオフィス「キャスタースクエア」を開設。リモートワークの「見えない」働き方に対する不安の解消に努めています。普段のやりとりはチャットツールを活用。オンライン部活や雑談チャット、バーチャルイベント会場での社内イベントなどで社員同士が交流できる場を設けるなど、リモートワーク環境を構築しています。

出典:【厚生労働省 輝くテレワーク賞】テレワーク先駆者百選

シックス・アパート株式会社

シックス・アパート株式会社は、出社不要のワークスタイルとして「SAWS(Six ApartらしいWorking Style)」と名付けたテレワーク制度を導入。2016年にオフィスを小規模化し、削減できたぶんのコストは社員へテレワーク手当として還元しています。

令和2年には「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰」において特別奨励賞を受賞。一人ひとりが幸せに働けるような環境整備に努めています。在宅勤務やサテライトオフィス勤務、モバイル勤務などの勤務形態を用意。ワークライフバランスに合わせた働き方を選ぶことが可能です。

業務連絡にはチャットツールを使用。オフィスに出社している社員の報告などを知らせる会社公式キャラクター「トフ」のBOTを常駐させており、テレワークをしていてもオフィスの様子がわかるようになっています。テレワーク手当や規定などのルール以外の運用は社員に任せて、細かく管理しすぎないことで心理面へのプレッシャーを与えず、それぞれが働きやすい環境を整えられるように尽力しています。

出典:【厚生労働省】令和2年度 テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰~輝くテレワーク賞~事例集

テレワーク導入後のコミュニケーション課題はツールを活用しよう

テレワークやリモートワークなど新しい働き方が促進されている中で、課題となっているコミュニケーション不足。オフィスにいるときと同じような雑談が難しいことから、孤独感の増加や生産性の低下につながることがあります。コミュニケーション課題には、法人向けのビジネスチャットツールやWeb会議システムなどのツールを活用しましょう。

社員同士のコミュニケーションは普段の業務でも大切ですが、テレワーク導入後は特に意識をして対策することが大切です。この記事を参考にして、社員の声も聞きながら企業に合ったコミュニケーション方法を導入していただければ幸いです。

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