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テレワーク

2021.11.29

テレワーク実施率に関する各種調査結果から見えてくる実態・普及促進への取り組みと企業や人の動向

テレワーク実施率に関する各種調査結果から見えてくる実態・普及促進への取り組みと企業や人の動向

新型コロナウイルス感染症を機に俄然注目が集まったテレワーク。業務の特性や企業規模、場所の問題など、テレワーク実施率の調査結果からは数字を左右するさまざまなことが見えると同時に考えさせられることも多数です。国や自治体もテレワークの普及促進に取り組む中でのテレワーク実施率について見ていきます。

テレワーク実施率はコロナ禍で急上昇

コロナ禍で不可避となったテレワークへの取り組み

テレワークは2020年の新型コロナウイルス感染症拡大を受けて発出された緊急事態宣言による要請や、“3密”の回避策として注目を浴びました。満員電車での通勤やオフィスで同僚が隣り合わせになるのを避けるために、テレワークを一部または全面的に実施した企業は少なくありません。世界的な感染拡大を前に、好むと好まざるとにかかわらず、テレワークへの取り組みが至上命題になったといっても過言ではない状況でした。

一部テレワークを実施した企業においては、週のうち2~3日を在宅勤務としたり、半数ずつ1日おきに出社するカタチにしたり、あるいは午前と午後に出社を分けたりといった工夫をしています。

その結果、2020年の4~5月前後における雇用型就業者のテレワーク実施率が全国で20.4%に達しており、3月以前の8.9%から倍増しています。また、首都圏に限れば13.5%から31.4%へとほぼ18ポイントも増えています。

出典:【国土交通省】プレスリリース「「テレワーク」実施者の割合が昨年度から倍増!」

新型コロナウイルス感染症拡大前のテレワーク

テレワークが推奨されるようになったのは、新型コロナウイルス感染症拡大よりもずっと前のことです。一般社団法人日本テレワーク協会の前身である日本サテライトオフィス協会が発足したのが1991年1月のことで、日本のテレワークは20年以上の歴史をもっています。

日本テレワーク協会には2021年6月時点で422の企業や団体が会員として名を連ねており、政府と協力してテレワークを推進中です。テレワークのそもそもの始まりは、問題視されていた長時間労働の解消や、多様化するライフスタイルに応じるカタチでの働き方改革と、地方の活性化、遠隔地のリソース活用を目指してのものでした。

また、企業にとっては出社する従業員を減らすことによるコストカットを見込め、社会全体としては人流が抑制されることによるエコ効果や災害対応上のメリットも期待されていました。しかし、実際には1割にも満たない実施率で伸び悩んでおり、コロナ騒動がなければ、スポットが当たることはなかったかもしれません。

属性で見るテレワーク利用の様子

IT関連が多いテレワーク利用率

テレワークの利用率が多い業種を調査した、大久保敏弘・NIRA 総合研究開発機構(2021)「第5回テレワークに関する就業者実態調査(速報)」によれば、通信情報、情報サービス・調査、金融・保険業でテレワークが多かったのに対し、運輸や医療・福祉、飲食・宿泊といった業種では伸びていないことがわかります(※1)。

業種形態で何が違うかといえば、ITが活用できるか否かです。対面でなければできないマンパワーを要する業種や職種においては、テレワークとの親和性が高くないことが改めて認識できる調査結果だといえるでしょう。わかりやすい例が運送業で荷物を届ける、医療機関で注射を打つ、介護職が食事の世話をするといったものです。もちろん、このような業種でもテレワーク自体が無理ということではなく、拠点における事務作業などは在宅でもできます。

テレワーク利用率が高いのは南関東4都県

同調査に示された2021年9月1週目時点のデータによる居住地別のテレワーク利用率では、南関東4都県でテレワーク利用率が高いという結果が出ています(※2)。首都圏の実施率が高かった前述の国交省データと傾向を同じくする状況です。東京を中心とするエリアでのテレワークが進んでいる背景として、各企業の本社機能をもつ拠点が多いなど、デスクワークをメインとする人口が集中している点が考えられます。

高年収者ほどテレワークを利用している

さらに、同調査によればテレワークと年収の関係がハッキリ出ていることがわかります。年収100万円未満から100万円刻みに700万円台まで、年収が上がるごとにテレワーク利用率も上昇しており、100万円未満と900万円以上の差は実に5倍強です(※3)。 

高年収といえば、地域では都市部、業種では先端技術関連や金融関係が浮かんできます。調査結果で先に示されたテレワークが進んでいる地域や業種と一致しており、結果が符合します。

※1.2.3 出典:【慶応義塾大学】大久保敏弘・NIRA 総合研究開発機構(2021)
「第5回テレワークに関する就業者実態調査(速報)」

テレワーク実施率を左右する企業と人の動向

テレワークの導入なし予定なしが4割超え

2020年の4~5月前後におけるテレワーク実施率が20.4%に倍増したデータがありましたが、実は緊急事態宣言が解除されてから16%台に下落しています。ちょっとしたきっかけでテレワークへの意欲、意識が低下することを示すものだといえるでしょう。

そんな中、2020年のテレワーク導入状況を示す総務省のデータによると、導入している企業が47.4%と半数近くあり、導入予定ありを加えると58%となります(※4)。 ところが、未導入で、導入の予定もない企業も41.8%と高率です。テレワークの頭打ちを感じさせるデータになっています。

また、東京商工会議所の各種調査では、中小企業におけるテレワーク実施率はあまり進んでいない傾向が見て取れます。日本一の都市部である東京23区内でさえ、2021年5月の緊急事態宣言発出時における中小企業のテレワーク実施率は38.4%です。また同時に、従業員数が少ない企業ほどテレワーク実施率が低いといった傾向も出ています(※5)。 

日本の企業は圧倒的多数が中小企業であり、その中小企業でテレワークの実施が難しいとなれば、今後のテレワークの広がりには赤信号が灯るかもしれません。

※4 出典:【総務省】令和2年 通信利用動向調査報告書(P.13)
※5 出典:【東京商工会議所】各種調査「中小企業のテレワーク実施状況に関する調査」調査結果を取りまとめました ~東京23区内中小企業のテレワーク実施率は38.4%。全ての企業規模・業種で実施率が低下傾向~

導入したテレワークをどこまで利用するかという問題

さて、テレワークの実施率を議論する際に忘れてはならない点に、どこまで利用するのか、しているのかという問題があります。極論すれば100人の企業で1人でもテレワークを利用していれば実施率の分子としてカウント可能です。しかし、それでテレワークをやっていますと胸を張っていえるのでしょうか。また、テレワークが週に1日なのか3日なのか、5日なのか、終日かテレハーフかといったところまで詳細に見ていかないと、見た目だけのテレワークになりはしないかという問題があります。

テレワークする場所が実施率に与える影響

テレワークの対象となる仕事場所は自宅、モバイル環境のある公共乗用具やカフェ、さらにはサテライトオフィスやリゾート地等となっています。人によって業務効率がアップする場所もあればダウンする場所もあるようです。また、そこにいる人との関わりも業務効率に影響してきます。自宅であれば家族が協力的かどうかといった要素も大きいでしょう。

最終的に企業として判断したとき、業務効率次第ではテレワークを廃止する結論に達し、実施率を下げる可能性があります。2021年11月にはそれまで週に3日の出社としていた楽天グループが、週4日の出社を決めたことがニュースになりました(※6)。楽天グループの場合は、より前向きな理由による決定でしたが、ひとつの流れを感じさせる出来事だったことは間違いありません。

※6 出典:【東京新聞】楽天、出社週4日に拡大 コミュニケーション活性化

東京都におけるコロナ禍でのテレワーク実施率とテレハーフの関係

半ドン? でも仕事は終日のテレハーフとは

テレワーク実施率をけん引する東京では、都がコロナ禍におけるテレワークの推進に取り組んでいます。そのひとつがテレハーフの推奨です。昔風にいえば半ドンといったところですが、午前中に限らず、また半日に限らず時間単位もありという点で本来の半ドンと異なります。それ以前に、従来の半ドンはそこで仕事が終わっていたのに対し、テレハーフでは仕事をする場所が会社からオンラインのリモート環境に切り替わるだけであり、仕事は丸1日体制です。

テレハーフの主目的は密の回避

東京都がテレハーフを推奨する主目的は、コロナ対策としての人流抑制、密の回避にあります。2021年8月に行った東京都発表の調査では、終日テレワークの実施企業が約8割であるのに対してテレハーフは約2割に留まります。ちなみに、東京都における従業員30人以上の規模の企業では65%がテレワークを実施しているとの結果が出ており、密の回避という目的は達成されている感があります。

※出典:【東京都】テレワーク実施率調査結果をお知らせします!8月の調査結果

個人差があるテレハーフの注意点

テレワーク自体にも仕事場による業務効率のアップダウンの問題がありますが、テレハーフにはより注意する必要がありそうです。1日の中で就業場所を対極的なオフィスと自宅の両方に求めるテレハーフでは、気分転換して後半の仕事に臨めるメリットがある反面、仕事を中断したうえに移動までして仕事を再開しなければならないデメリットがあります。

東京都の調査で2割程度となったテレハーフ実施率ですが、高いのか低いのかは人によって判断が分かれるところでしょう。結論を出すには、今後の推移をもう少し見守る必要があるかもしれません。

テレワークの実施率を上げたい行政の取り組み

ここではテレワーク関係府省が推進するテレワークの代表的施策を紹介します。

大臣賞やセキュリティガイドラインを定める総務省

総務省ではテレワーク先駆者百選・総務大臣賞を創設し、公式サイト上で事例を公表することで時代の先端を行く企業のモチベーションアップを図っています。これまでに江崎グリコや富士通といった知名度のある企業も選ばれており、テレワークへの取り組みを一種のイベントとして盛り上げる施策だといえるでしょう。

また、ICT※を駆使するテレワークではセキュリティ対策も必要となることから、総務省では「テレワークセキュリティガイドライン」を策定しています。
(※ICTとは「Information and Communication Technology」の略称で、日本語では「情報通信技術」と訳されます。)

労務管理上のガイドラインを示す厚生労働省

厚生労働省では、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」を策定しています。公私が曖昧になりがちで、下手をすればオーバーワークになりかねないテレワークが適切に実施されるよう、労使双方の注意点などを念頭に出されたものです。その中心は労務管理に関するものとなっています。

IT導入補助金でテレワークを推進する経済産業省

経済産業省では、事業者の設備投資を応援するカタチでテレワークを推進しています。IT導入補助金の低感染リスクビジネス枠D類型がそれです。テレワーク環境を整えるためのクラウドソフトウェアの購入などが対象となっています。補助金申請額が30万~150万円以下で、補助率は2/3以内です。

テレワークで地方創生を推進する内閣府

内閣府ではコロナと少子高齢化、東京一極集中といった多くの問題に対するアプローチと地方活性化の手段としての地方創生テレワーク交付金予算を付けています。令和2年度第3次補正予算での金額は、サテライトオフィス整備などで100億円です。

国土交通省ではテレワーク人口実態調査を毎年実施

他府省が賞やガイドライン、補助金でテレワークを推進する中、国土交通省では推進の進捗、あるいは結果を確認できるテレワーク人口実態調査を毎年実施しています。これにより、長時間労働になってしまうケースや、仕事ができる環境が不十分といったテレワークの課題も見えています。

テレワーク実施率には日本社会の今が見える

テレワーク実施率を調べることで、都市部と地方の差や業種・職種による違い、さらには年収が数字を左右する実態が明らかとなりました。そこには、ITCの効果が及びにくく、人の手がなければ何も進まない現場があることや、テレワーク自体の問題点も見えています。コロナ禍を経験して、未来へ進もうとしている日本社会の今が見える。それがテレワーク実施率です。

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