健康経営
2022.11.08
エンゲージメントサーベイは質問の質が重要! 考え方や具体的な質問を徹底解説
「働きがいを求めている従業員」「生産性を高めていきたい企業」このような背景から、エンゲージメントを重視する企業が増えています。エンゲージメント向上の取り組みに欠かせないのが、その指標を測るエンゲージメントサーベイです。しかし適切な質問を行わなければ、ほしい情報やエンゲージメント向上の取り組みが行えません。そこで今回は、エンゲージメントサーベイの質問に対する基本的な考え方や質問項目の事例などを紹介します。ぜひ参考にしてください。
従業員と企業の関係性を測りたいときはエンゲージメントサーベイ
エンゲージメントサーベイとは、エンゲージメントを定量的に調査する方法のことです。全体像や現状を把握するのに役立ちます。
「エンゲージメント」は、簡単にいうと「愛社精神」や「従業員と企業の心的なつながり」、「サーベイ」は全体像や現状を把握するための「調査」という意味です。
企業においては、従業員を対象に行われるケースが多く見られ、職場やチーム、社員一人ひとりの課題や問題点の把握を目的としたエンゲージメントサーベイを行う企業が増えています。
エンゲージメントサーベイと似た調査に「従業員満足度」を測る調査がありますが、両者の大きな違いは「組織における課題・問題の解決」や「企業の成長」につながるかという点です。
従業員満足度は、仕事や職場に対しての満足度を可視化しています。一方のエンゲージメントサーベイでは、それらに加え、組織の課題・問題を解決しながら、会社への信頼や仕事への意欲・モチベーションなどを把握し、働きがいを高めることまでを可視化できます。
エンゲージメントサーベイについては、以下の記事でも詳しく解説していますので 、エンゲージメントサーベイを行う目的や注意点などを知りたい人は、ぜひご覧いただき、内容や見出しなどを、知りたいことの目次としてもご活用ください 。
▼『エンゲージメントサーベイとは? 実施の流れや効果、活用法を解説<企業事例付き>』をチェックする
質問に入れるべき5つの要素
エンゲージメントサーベイでは、質問の内容がその後の取り組みを左右します。組織が抱える課題や問題に対し、適切な施策を行なって解決したいのであれば、 組織改善に必要な情報を盛り込むことが重要です。
「会社と従業員の心的なつながり」には、お互いの信頼関係が大きく関係すると考えられます。そのため、会社と従業員の信頼関係があるかを調査するために、次の5つの要素を質問に入れることがおすすめです。
信頼関係を構成する要素 | 質問に取り入れることで可視化できること |
---|---|
信用 | 経営・管理職の能力やコミュニケーション、誠実さなど |
公正 | 経営・管理職の職場における中立性や公平性など |
尊重 | 経営・管理職からのサポートやフォロー、協力や配慮など |
プライド | 従業員の仕事・会社・組織に対して感じている誇りなど |
連帯感 | 従業員が職場で感じている連帯感、チームの親密さなど |
この5つの要素を盛り込むことで、
- ・経営・管理職に期待することは何か
- ・従業員が正当に扱われているか
- ・労働環境における課題や問題点はどこにあるのか
- ・会社や組織を誇りに思っているか
- ・従業員がお互いに思いやりを持って働いているのか
といった内容を可視化することができます。
エンゲージメントサーベイの代表的な質問事例
ここまでの内容を通して、エンゲージメントサーベイにおける質問の重要性や調査を行う際に盛り込むべき項目について理解いただけたと思います。
しかし実際に質問を考えるとなると、初めての場合どのような設問をすればいいのかわからないという人もおられるでしょう。
そこでここでは、主な項目ごとにエンゲージメントサーベイにおける代表的な質問事例を紹介します。
「信用」について知りたい場合の質問事例
- ・会社を信用している
- ・経営陣は明確なビジョンを持っており、自分もそれに対して理解している
- ・自分の会社の目標や戦略、目的を理解できている
- ・経営陣は、事業の方向性について適切かつ健全な意思決定をしていると思う
- ・上司が言うことに一貫性がある
- ・良い仕事をしたときに、経営陣や上司からポジティブなフィードバックがある
- ・自分は会社やチームから何を期待されているかを理解している
「公正」について知りたい場合の質問事例
- ・自分が行っている仕事について、公正に報酬(給与や賞与、福利厚生など)を得ていると思う
- ・仕事量は、どのメンバーも均等に分配されている
- ・経歴や年齢に関係なく、新しいことに挑戦できる機会を与えてくれる
- ・仕事に見合った報酬を得ている
- ・仕事を行うのに必要な設備や材料を十分に与えられている
- ・自分の給与は、仕事の成果に連動している
「尊重」について知りたい場合の質問事例
- ・経営陣や上司から十分な情報を得ている
- ・経営陣や上司とコミュニケーションが取れている
- ・自分の能力や強みを理解し、足りない部分はフィードバックをしてくれる
- ・仕事において、必要な意思決定をできる権限が与えられている
- ・自分の意見は尊重されていると思う
- ・上司は、自分の意見にしっかりと耳を傾け、行動してくれる
- ・この会社は、必要に応じて人材や資金などのリソースを適切に活用している
「プライド」について知りたい場合の質問事例
- ・自分の会社(職場)を家族や知人など(他人)にも勧めたい
- ・自分が働いている会社や仕事に誇りを持っている
- ・自分の役割以上のことをしようという思いがある
- ・3年後も自分はこの会社で働いていると思う
- ・周囲が自分の仕事ぶりを認めてくれている
「連帯感」について知りたい場合の質問事例
- ・上司や同僚と良好な関係を築けている
- ・他の部署やチームから協力を得られる環境だ
- ・年齢や経歴、異なる意見を持つ人ともうまく働ける環境だ
- ・会社や組織で起こっていることを定期的に知らせてくれる
- ・オープンで双方向のコミュニケーションが取れている
- ・あなたの同僚は仕事や成果に対して質の高い仕事(貢献)をしている
- ・社内にあなたを気にかけてくれている上司や同僚がいる
どのような質問文にすればいいのかを検討する参考になれば幸いです。
目的に合った質問を行うことが重要
前章で、エンゲージメントサーベイの代表的な質問事例を紹介しましたが、その中から適当に選んでしまっては、最適な調査が行えない可能性があります。
エンゲージメントサーベイを有効に利用すれば、次のようなメリットが得られます。
- ・従業員のパフォーマンスや生産性が高まる
- ・定着率が高まり、離職率が低下する
エンゲージメントサーベイを行うことで、従業員が抱える課題や問題、その兆候を早期に発見することができるためです。
会社と従業員の関係性を把握し、人事や業務における取り組むべき課題や問題を炙り出せば、行うべき施策とその優先順位を決めるための情報を可視化できます。可視化することで、先手を打って対策ができ、業務効率が改善して結果的に生産性を高められたり、離職を防いだりすることが可能になります。
しかし、エンゲージメントサーベイは、しっかりと目的を持って設問しなければそのメリットを得られません。
もし目的が曖昧なままエンゲージメントサーベイを行うと、従業員の手間が増えるだけです。エンゲージメントサーベイは、年2回〜2年に1度を目安に行うのが一般的ですが、1回の質問量が多く、従業員は通常業務とは別に対応する必要があります。
目的もなく行えば、ただ業務効率を低下させ、負担も増えて離職への思いを強めてしまう可能性があります。質問の設計は自社の目的に合わせて設計することがとても重要です。
エンゲージメントサーベイの質問や運用を考える上で注意したい3つのポイント
エンゲージメントサーベイを効果的に行いたいのであれば、実施して終わりとならないような質問を考え、施策や取り組みを行う必要があります。
そこでこの章では、エンゲージメントサーベイの質問や運用方法を考える上で注意したいポイントについて、
- ・従業員満足度を測る指標や不利益を被ることはないことを説明する
- ・従業員の負担にならないよう配慮する
- ・定期的な効果測定を視野に入れて質問を設定する
上記3つを取り上げ、解説します。
従業員満足度を測る指標や不利益を被ることはないことを説明する
エンゲージメントサーベイと従業員満足度を混同している人がいます。
まずはエンゲージメントサーベイは、従業員満足度を測るための調査ではないことをしっかりと伝えるようにしましょう。それと同時に、設問によってどのようなことを把握し、どのように活かしていくのかという方向性についても、必要に応じて、資料配布や説明会を行い、理解を得ることが重要です。
質問の内容によっては「自分の不利益になるのではないか」という思いから、正当な回答が得られなくなる可能性があるためです。実名ではなかなか本音がいえないような踏み込んだ質問を設定する場合には、匿名回答にするなどの配慮も必要でしょう。
調査自体が形だけの調査とならないよう、事前の説明や質問に合わせたやり方を検討することが大事です。
従業員の負担にならないよう配慮する
エンゲージメントサーベイは、半年ごとの年2回から「2022年4月」「2023年4月」のような年次、2年に1度くらいのペースが一般的です。頻繁に行われるわけではありませんが、従業員は質問に答えるための時間を割く必要があります。1回で終わりではなく定期的に行うことになるため、その都度従業員の協力が必要です。
また、結果を分析して原因や改善点を把握し現場に反映するとなると、業務に何らかの支障を与えることもあるかもしれません。もちろん、課題や問題を解決するための施策ですが、それが従業員の負担になっては、改善するどころか悪影響を与える可能性もあります。
「どこにいてもダウンロードできる」「どこからでもアクセスして答えられる」など、自社の現状にあった仕組みを考えましょう。また質問に回答する従業員が負担と感じることがないよう配慮しつつ、実施する会社にとってもリソースがかかりにくい方法を採用することも大切です。
定期的な効果測定を視野に入れて質問を設定する
大きな成果を得るためには、エンゲージメントサーベイを定期的に行うことが望ましいでしょう。以前の課題が改善されたとしても、再び新しい問題が出てくるということもあるためです。
エンゲージメントサーベイでは、明確化した課題や問題に対し改善するための施策を行ったら、再びエンゲージメントサーベイを行い効果をチェックする、というシステムを繰り返すのが一般的です。
そのため、効果をしっかりと確認できるような質問、改善策を行った後の変化を把握できる質問など、定期的な実施を意識した質問を設定することも重要といえます。
代表的な調査方法
最後に、エンゲージメントサーベイの質問を考える際に参考になる代表的な調査方法を紹介します。
eNPS(イーエヌピーエス)
eNPSは、従業員エンゲージメントを測る指標のことです。「Employee Net Promoter Score(エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)」の頭文字を取り、eNPSと呼ばれています。
eNPSでは「自分の職場をどれくらい知人・友人におすすめしたいか」という質問を行います。質問に対する評価を行う際に「本当におすすめできるのか」ということを当事者レベルで考え、結論を出すため、より慎重に判断するようになり、従業員の本心を知ることが可能です。
離職する可能性が高いと考えられる従業員や、エンゲージメントの高さがみられる従業員をより正確に把握できる ため、特に従業員の離職率や定着率に課題を抱えている企業向けの調査といえます。
Q12(キュー・トゥエルブ)
Q12は、アメリカ最大の調査会社「ギャラップ社」が、全世界の1,300万人ものビジネスパーソンを調査し、その膨大なデータから導き出したエンゲージメントを測るための調査方法です。
質問の数はわずか12問ですが、質問にさまざまな要素が含まれており、会社やチームがより高いパフォーマンスとエンゲージメントを得るために必要な課題を見つける手がかりとなります。
ギャラップ社では、Q12がベースの従業員エンゲージメント調査ツールの販売も行っているため、それを活用すればエンゲージメントサーベイが初めてという企業もスムーズに実施できるでしょう。
適切な質問でエンゲージメントサーベイの質を高めて組織の取り組みに活かそう
質問1つで、把握できる情報が変わってきます。そのため、エンゲージメントサーベイでは、目的に合った質問を設定することが重要です。
事例などを参考にしながら、自社に合ったエンゲージメントサーベイを行い、組織の改善点を把握して、従業員のパフォーマンスや業績、定着率の向上を実現しましょう。
エンゲージメントドライバー指標を測定したいときの設問例
- ・自分が所属するチームの目標や戦略を把握していますか?
- ・直近1か月以内に、何かの仕事で認められたり、賞賛されたりしたことがありますか?
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