美しいユートピア理想の地を夢みた近代日本の群像終了致しました

美しいユートピア 理想の地を夢みた近代日本の群像

「美しいユートピア 理想の地を夢みた近代日本の群像」ご来館にあたって

土曜日・日曜日・祝日は日時指定予約(平日は予約不要)

12月22日(月)午前10時から予約受付開始

展覧会概要

ユートピアは、イギリスの思想家トマス・モアの小説タイトルで、「どこにもない場所」を意味します。
同じくイギリスの社会思想家、ウィリアム・モリスは自著『ユートピアだより』の中で、暮らしと芸術の総合を唱え、今ここにある課題をみつめ、どこにもない理想を夢みています。その思想が紹介された20世紀の日本でも、ユートピアは暮らしをめぐる課題と理想となりました。そして20世紀を通じあらゆる場所で、美術、工芸、建築など幅広いジャンルを結ぶ共同体が模索されます。新時代の異文化体験を通して近代化しつつあった日本は、かつての日本でもなく、同時代の世界のどこにもない場所だったのです。
この展覧会では暮らしにまつわる過去をたずね、未来を夢みるさまざまな運動を、「ユートピア」と呼びます。そして「美しさ」にまつわる芸術、装飾工芸、建築デザインにテーマを絞り、暮らしの中の「美しいユートピア」をみつめます。さらに「美しいユートピア」の歴史をたずねるだけでなく、未来への手がかりとします。美しい暮らしを求める20世紀日本のユートピアをたずね、当時の来るべき世界を振り返り、今日のユートピアを思い描く方法を探ります。



展覧会会期
2026年1月15日(木)〜 3月22日(日)
会期中、一部展示替えします。前期1月11日~2月17日、後期 2月19日~3月22日。2月19日以降に再入場の場合は、半券ご提示で100円割引となります。展示替えの詳細は当館ウェブサイトにて1月15日以降発表いたします。なお、ルオー・ギャラリーにて、当館所蔵のルオーコレクションの中から作品を展示しております。併せてご覧ください。
開館時間
午前10時~午後6時(ご入館は午後5時30分まで)
※2月6日(金)、3月6日(金)、20(金)、21 (土)は夜間開館 午後8時まで開館(ご入館は午後7時30分まで)
休館日
水曜日(ただし2月11日と3月18日は開館)
入館料
一般:1,200円、65歳以上:1,100円、大学生・高校生:700円、中学生以下:無料 
※障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料でご入館いただけます。ホームページ割引引き換え券はこちら
主催
パナソニック汐留美術館
後援
一般社団法人日本建築学会、公益社団法人日本建築家協会、港区教育委員会
企画協力
株式会社TNCプロジェクト
会場構成
GROUP

関連イベント

ミュージアムコンサート「美しいユートピアをたずねて」

終了致しました 満席のため受付を終了しました

展覧会で紹介する群馬音楽ホールを拠点とする群馬交響楽団の演奏、そして音楽と美術と建築をめぐるトークをお楽しみいただくコンサートです。2回とも同じ内容です。

Program
エリック・サティ:ジュ・トゥ・ヴー/ピアソラ:リベルタンゴ 他
出演
群馬交響楽団 弦楽カルテット
第一ヴァイオリン:西谷康子
第二ヴァイオリン:山田修平
ヴィオラ:太田玲奈
チェロ:中田英一郎
トーク
服部想之介(声優)
日時
2月7日(土)
①午後1時30分~午後2時10分(開場午後1時)
②午後4時~午後4時40分(開場午後 3時30分)
定員
各回110名、要予約
聴講費
無料(ただし本展の観覧券が必要です)
会場
パナソニック東京汐留ビル 5階ホール

*未就学児はご遠慮ください。
*展覧会観覧には、事前の日時指定予約が必要です。

申し込み方法

展覧会記念講演会「祖父、清六から聞いた宮澤賢治」

終了致しました 満席のため受付を終了しました

宮澤賢治の8歳年下の弟、祖父清六から聞いた「賢治さんの美術、宗教、科学に対しての考え方。日常での様子。
自分へ向けて書いた『雨ニモマケズ…』の願い。」を、残された資料、家族写真などをスクリーンに映しながらお話しいただきます。

講師
宮澤和樹氏(宮澤賢治、8歳下の実弟清六の孫、株式会社林風舎代表取締役)
日時
2月14日(土)午後2時~午後3時30分(開場午後1時30分)
定員
150名、要予約
聴講費
無料(ただし本展の観覧券が必要です)
会場
パナソニック東京汐留ビル 5階ホール

*未就学児はご遠慮ください。
*展覧会観覧には、事前の日時指定予約が必要です。

申し込み方法

【ご予約方法】

ハローダイヤル(050-5541-8600)へお電話にてお申し込みください。

①イベント名 ②参加人数(一度に2名までお申し込みいただけます) ③氏名(全参加希望者) ④住所 ⑤電話番号を承るほか、簡単なアンケートにご協力いただきます。

  • ・2025年12月1日(月)より受付開始
  • ・ご予約の受付時間 午前9時~午後8時
  • ・ご予約の受付は先着順、定員になり次第締め切りとさせていただきます。
  • ・お申し込み時にお知らせする整理番号を活用して入場いただきます。

*お申し込み時に頂いた個人情報は、本イベントの受講管理の目的でのみ使用し、参加希望者はこの目的での使用に同意したものとします。
*定員に達しなかった場合、当日受付をする場合がございます。

企画3館学芸員リレーによるスライドトーク

終了致しました
日時
1月24日(土)午後4時~ [ゲスト]住田常生氏(高崎市美術館)
2月13日(金)午後2時~ 大村理恵子(パナソニック汐留美術館)
2月21日(土)午後4時~ [ゲスト]山極佳子氏(上田市立美術館)
定員
先着70名(予約不要)
聴講費
無料(ただし本展の観覧券が必要です)
会場
パナソニック東京汐留ビル5階ホール

*1月24日(土)、2月21日(土)の展覧会観覧には、事前の日時指定予約が必要です

展覧会の見どころ

1.場所を得て輝いた建築家たちのユートピア

美術、工芸、建築、民俗学と領域を横断しながら夢のカタチを見ていきます。建築では工部大学校(東京大学工学部の前身)旧蔵のジョン・ラスキン著書『The Seven Lamps of Architecture』(建築の七燈)から始まり、蔵田周忠の自邸図面とそこで用いられた森谷延雄がデザインした家具、詩人で建築家の立原道造が描いた芸術家コロニーのスケッチ、今和次郎の民家採集図、アントニン&ノエミ・レーモンドの群馬音楽センターの図面やデザイン画、磯崎新自身による群馬県立近代美術館を描いたシルクスクリーン、伊藤ていじや神代雄一郎とその研究室によるデザインサーヴェイの図面など、ユートピアのテーマのもと多彩な建築資料を展示いたします。

2.論考「生きている画家」、《立てる像下絵》、《夜の群像》に見る画家たちのユートピアへの希求

パリの芸術に憧れ、池袋モンパルナスに集って制作に励んだ画家たちはやがて1930年代以降、次第に戦争に巻き込まれていきます。その中で時局に抗い、個人の創作を追求した新人画会が結成されます。そのうち靉光、麻生三郎、鶴岡政男、寺田政明、松本竣介の絵画を展示します。松本竣介の《立てる像下絵》からは不安を抱えつつ戦争の時代に立ち向かう画家の決意が伝わってきます。鶴岡政男《夜の群像》は、夭折した松本竣介のアトリエにのこされた、松本が下塗りした板に鶴岡が描いた作品で、混沌とした戦後と矛盾に満ちた現実の中で、もがきつつも逞しく生きていく人間の生命力を示唆しています。

3.会場構成は若手建築コレクティブ GROUP

大阪・関西万博で公共スペースの設計者として注目された若手建築家20組のうちの1組、建築コレクティブ GROUP が会場構成を手がけます。展覧会で紹介されるそれぞれのユートピア、そして私たちの日常の延長のその先にあるユートピアを展望する装置としての「ユートピア観測所」をコンセプトとしました。

第1章 ユートピアへの憧れ

西欧に憧れ、アジアにめざめる。
雑誌『白樺』、「民藝」運動などから20世紀日本の理想主義が芽生える

ジョン・ラスキン、ウィリアム・モリスの影響を受けた20世紀日本の理想主義を紹介します。20世紀初頭の大正デモクラシーに象徴される当時の日本では「民」が一つのキーワードでした。西欧美術に憧れ、自由と個性を尊重し自らのルーツを振り返った雑誌『白樺』。その白樺派同人たちの交流の中から柳宗悦が中心となり、民衆の暮らしの中の美を説いた「民藝」運動は、「民」をめぐる前後の理想主義を代表します。

ウィリアム・モリス著、ケルムスコット・プレス刊
『ユートピア便り』
1892年、TOPPANホールディングス
株式会社 印刷博物館蔵

第2章 たずね求める 周縁、国外でのフィールドワーク

民家研究、民具調査など「民」をめぐるフィールドワークが、ジャンルや国境を越えてミュージアムを育む

近代化するみずからの足元をみつめた、民家や民具などをめぐるフィールドワークを紹介します。農山漁村や周辺地域、民族をたずねる交流はジャンルや国境を越えて、失われてゆく「民」を記録し、未来へつなぐ「ミュージアム」を育みました。渋沢敬三が計画し今和次郎や蔵田周忠ちかただも参画した国立の民族学博物館構想の図面も展示いたします。

山本鼎
《スケッチ パイワン族 小箱の蓋(百歩蛇)》
1924年、上田市立美術館蔵

第3章 夢みる 都市と郊外のコミュニティ

関東大震災後、郊外アトリエや芸術家村が生まれる。
その交友から「新人画会」が理想を戦後へつなぐ

蔵田周忠や立原道造など、建築家や詩人、芸術家による関東大震災後の郊外アトリエや芸術家コロニーへの夢を紹介します。1920年代の都市化と鉄道網の発達は郊外住宅地の発達を促しました。分離派建築会の会員であった蔵田は、モリスに倣った田園のユートピアを目指し、世田谷や杉並に文学者や芸術家たちが集って住むモダンで快適なコミュニティを設計しました。同時期、アトリエ村の一つ、池袋モンパルナスの交友に始まる「新人画会」の理想はのちに戦後美術の出発点とされました。

鶴岡政男
《夜の群像》
1949年、群馬県立近代美術館蔵

第4章 試みる それぞれの「郷土」で

山本鼎、宮沢賢治、竹久夢二、ブルーノ・タウト…
郷土や「ドリームランド」で表現者の実践が始まる

山本鼎の農民芸術運動や宮沢賢治の活動、竹久夢二、ブルーノ・タウトの美術工芸運動は、「ドリームランド」としての「ふるさと」に、美しい暮らしをもたらす協働の実践でした。同時代、前後して官民による郷土改良や産業化が始まりました。山本鼎の日本農民美術研究所で制作された工芸品やそのデザイン画、宮沢賢治によるドローイング、タウトデザインによる工芸品などを展示します。

宮沢賢治 《日輪と山》
(展示期間 1月15日〜2月2日)
制作年不詳、林風舎蔵、資料提供林風舎
ブルーノ・タウト 「ヤーンバスケット」
1934-36年、 群馬県立歴史博物館蔵

第5章 ふりかえる/よみがえる ユートピアのゆくえ

戦後復興をデザインする芸術・建築と、「失われてゆく世界」を記録し
未来への手がかりを求める運動が前後して生まれ…

戦後まもなく、芸術、建築による都市再生に着手した群馬県高崎の文化活動家・井上房一郎と、彼に協力した建築家レーモンド夫妻や磯崎新。そして高度経済成長期の大きく変貌する都市と社会で向かうべき方向を模索して、日本の伝統的な共同体を実測調査し図面化した60年代後半からの「デザイン・サーヴェイ」。それらの動きは芸術と民衆の力を原動力に未来への手がかりをつかもうとしたものです。

アントニン・レーモンド
「群馬音楽センター内観透視図」
1958年、レーモンド設計事務所蔵
©︎The Raymond Family
磯崎新
《還元シリーズ1 群馬県立近代美術館》
1983年、磯崎新アトリエ蔵
©︎Estate of Arata Isozaki
明治大学神代研究室 「伊根亀山デザイン・サーヴェイ集落全体平面図(4枚組)」
1968年、明治大学建築アーカイブ蔵