2018年度の建築展は、子どものためにつくられた建築と空間にスポットをあて、日本の近現代の建築・デザイン史に名を残す先駆的かつ独創的な児童施設の優作を紹介する展覧会となりました。子どもの「学び」の場の代表格といえる学校建築に加えて、幼稚園・保育園や児童図書館の建築をとりあげ、一方で、「遊び」の場にも注目し、子ども博覧会や児童遊園、遊具といったランドスケープデザインやプロダクトのデザインの要素も併せ持つ作品群を、模型、図面や写真、模型の展示を通して紹介しました。さらに、教育玩具や浮世絵、絵本の原画などが加わり、子どもたちの夢と憧れを反映した世界が、会場のなかにつくり出されました。
展覧会の構成は、第1章「子どもの場の夜明け」、第2章「子どもの世界の発見」、インターミッション「戦争前夜に咲いた花」、第3章「新しい時代の到来、子どもたちの夢の世界を築く」、第4章「おしゃべり、いたずら、探検‐多様化と個性化の時代」、第5章「今、そしてこれからの子どもたちへ」と5つのセクションでまとめました。近代教育が始動した明治時代から現代に至るまで、時代ごとに子どもたちの成育環境には様々な課題があり、それを受けて建築家やデザイナーが実現してきた作品を、時代の流れに沿って分りやすく見ていただけたと思います。
誰しも経験のある親しみやすいテーマ設定と、参加型プレイコーナーを設置したことにより、子育て中の世代を中心に幼児からシニア層まで、幅広い方々のご関心を集めることができました。ことに、身近なテーマをきっかけに、建築やデザインに親しむ機会を中高生に提供できたことは、本展の大きな成果であったといえるでしょう。