50周年に5回目のライスボウル制覇
『全員フットボール』を体現したインパルス
2025年1月3日、東京ドームで行われた日本選手権第78回ライスボウルは、パナソニックインパルスと富士通フロンティアーズが対戦。第4Qまでどちらが勝利してもおかしくない接戦の末、終盤に富士通を突き放したインパルスが34対27で勝利。2015年シーズン以来9年ぶり5度目の日本一を勝ち取った。
フットボールにおいて白はビジターチームの色、つまり挑戦者の色だ。白いユニフォームをまとったインパルスは挑戦者のフットボールを完遂してみせた。
最初の攻撃機会は敵陣41ヤード地点で迎えた第4ダウン3ヤードの状況で果敢にギャンブルを敢行。この挑戦は富士通の好パスカットで失敗に終わり、好位置からの攻撃を与えてしまったインパルスは先制TDを許してしまった。
しかし、数々の苦しい試合をものにしてきた今季のインパルスは動じなかった。
LB#4 Jaboree WilliamsのQBサック、LB#10丸尾玲寿里の好タックルで富士通をパントに追い込むと、自陣28ヤードからの攻撃機会を獲得。QB#12荒木優也からWR#18桑田理介へのパスで敵陣に進行。節をまたいで相手のパスインターフェアの反則で得点圏まで進んだ。このシリーズは敵陣20ヤード地点で一度FGを失敗したが、このプレーで富士通がオフサイドの反則を犯してシリーズを更新。この直後にOLが中央に開いた大きな走路をRB#42立川玄明が駆け抜けて同点につながるTDを決めた。
守備が直後の富士通の攻撃を3ダウン&アウトに仕留めて得た自陣36ヤードからの攻撃機会には、再びWR桑田へのパスによる47ヤードのロングゲインを足がかりにゴール前15ヤードに進行。このチャンスをK#16佐伯眞太郎が32ヤードFGにつなげてリードを奪った。
第2Q終盤に富士通に同点FGを決められて10対10と振り出しに戻ったが、前半残り2分42秒、自陣25ヤードからの攻撃も無駄にしなかった。TE#85Caleb Phillipsへのパスでミッドフィールドに進むと、RB#5ミッチェル・ビクター・ジャモーが中央から抜け出し一気にゴール前13ヤードに進行。前半終了36秒前にK佐伯の28ヤードFGにつなげて13対10とリードしての折り返しに成功した。
第3Qは富士通に主導権を握られた。13対13の同点にされた後、第3Q終盤にはインパルスの攻撃時に猛烈なプレッシャーを浴びてファンブルによるターンオーバーを喫した。これをきっかけにTDを決められ、インパルスは7点を追う状況で第4Qを迎えた。
しかし、第4Q勝負になることを試合前から覚悟していたインパルスにとって、7点を追う展開は想定どおりのものだった。
自陣31ヤードで迎えた第3ダウン3ヤードの状況で、RB立川が中央を抜け出して一気にゴール前17ヤードに進行。このチャンスをQB荒木の2連続ランでTDにつなげて同点に追いついた。
さらに、自陣27ヤードから始まった攻撃機会は、TE#6成田光希へのパスで敵陣35ヤードに進行。さらに、RB立川をQBに、QB荒木とRB#26藤本拓弥をRBに配した体型から、スナップを受けた立川が左に展開した荒木にボールをトス。ボールを受けた荒木は右サイドに展開した藤本にパスを投げるスペシャルプレーを展開。藤本はゴール前2ヤードまでボールを運び、RBビクターの2ヤードTDダイブにつなげて勝ち越した。
守備にもビッグプレーが飛び出した。残り7分20秒から始まった富士通の攻撃機会。逆転を狙う富士通はパスで反撃を試みたが、富士通陣42ヤードで迎えた第3ダウン2ヤードで展開された短いパスに、LB Williamsが飛び上がってインターセプト。そのままエンドゾーンまでリターンし、この試合で初めて2ポゼッション差をつけた。
その後、終了1分7秒前に1TDを返されたが、富士通のオンサイドキックをWR#14ブレナン翼がリカバーし、勝利を決定づけた。
攻撃、守備、キッキング、すべての力を結集して勝ち取った5度目のライスボウル制覇。創部50周年の記念すべきシーズンに、インパルス不変の哲学である『全員フットボール』を体現した末の勝利だった。
試合後コメント
ヘッドコーチインタビュー
ヘッドコーチ 高山直也
このチームが始まった時から『第4Qで勝ち切る』ことをテーマに掲げてチームづくりを行ってきました。常にしんどい状況は続いていましたが、勝利できたのは選手、スタッフ含めて、全員が『same page』(=同じ認識、同じ考えであること)で戦うことができた結果だと思います。年間を通じて第4Qを大事にしてきたので、焦らずに臨むことができました。大事な点はいくつかありますが、特に「第4Qに何をするか」、「シチュエーションごとにしっかりと準備して臨むこと」、「メンタル・タフネスを持って臨むこと」、「共に戦うこと」、これを言い続けてきたので、皆、同じ考えでできていたと思います。荒木の出来は非常に良かったと思います。自分がやるんだというエナジーを感じました。今日、勝つことができたのは、荒木前監督をはじめ、先輩方が良い時も悪い時も諦めずに強いチームを作るための努力を積み重ねてきてくださったからだと思っています。あらためて、チームを支えてくださった皆様に感謝します。
選手インタビュー
主将 LB#1 青根 奨太
昨年、一昨年と同じような攻防が続いたが、攻撃、守備、キッキングすべてのメンバーがその時やることに集中して辛抱強く、細かいプレーをコツコツと実行してくれた成果だと思います。シーズン当初から相手のランに対して、一人ではなく全員で止めに行く、足を止めさせることを徹底しました。ところどころ進まれてしまったところはありましたが、総じてしっかりできたと思います。(#4WilliamsのインターセプトリターンTDは)練習からよくああいう形でパスを阻止することはあるので驚きはなかったです。ただ、キャッチしてTDまで持っていくということはあまりなかったので、よく持っていってくれたと思います。
自分ひとりでは成し遂げられない結果でした。チームメイトはもちろん、会社の方々、家族、チームスタッフ、たくさんの方々の応援が、私たちを奮い立たせてくれました。本当に応援してくださったすべての皆さんに感謝したいと思います。ありがとうございました。
選手インタビュー
QB#12 荒木 優也(MVPポール・ラッシュ杯受賞)
厳しい試合になることは、皆、試合前から認識していました。その中で一年間自分たちがやってきたことをしっかり出し切ろうと考えていました。それができたことが勝利につながったと思います。しんどい場面、いい場面、すべて含めてこの試合が今シーズンの中で一番楽しい試合でした。フットボールを全力で楽しむことができました。僕自身、最初のシリーズからしっかりパスを投げてペースを掴みたいとコーディネーターに伝えていました。その結果、試合を通じて思い切ってプレーすることができました。12月に第一子が生まれ、子どもが大きくなった時に『パパは君が生まれた年に日本一になったんだよ』と、言いたいな、と個人的に思っていました。試合の前日には毎試合、妻にプレーコールの確認を手伝ってもらったりしていました。いつも協力してくれた妻、そして、応援してくださった皆様に日本一という形で感謝を示せたことを嬉しく思っています。
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