エンジェルスボイス

ANGELS VOICE

パナソニックエンジェルスの選手たちの声をお届けしています。

INTERVIEW

森田詩織選手

SHIORI MORITA since 2014

2014年に入社後、9年間にわたってパナソニックの中心選手として
活躍してきた森田詩織選手。
パナソニックを選んだ理由や、ケガに悩み苦しい時期に感じていたこと、
その時に支えになった出来事やキャプテンとして過ごした3年間の思い。
そして、これからのチームに期待することとは…。

中村優希、信櫻空、伊藤南美、川口幸奈の4人がインタビューしました。

応援してくれる人のために―
 それがいつしか
  私の走り続ける意味になっていた

  • 中村

    まずは長い競技生活お疲れ様でした。
    今日は中学生のときからの15年間の競技生活についてや、キャプテンとしての3年間を振り返ってみた思いなどをインタビューさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

  • 詩織

    よろしくお願いします。

元の企業で走りたい

  • 川口

    パナソニックに入社したきっかけ、決め手はどんなことでしたか?

  • 詩織

    入社したきっかけは、毎年1月中旬に行われる都道府県対抗女子駅伝に参加した時にパナソニックの先輩にお世話になっていたことや、進路を実業団に決める前から合宿に参加させてもらっていたことなど。また、地元の企業ということもあって、パナソニックに入社させて頂きました。

  • 中村

    都道府県対抗女子駅伝に参加した時は、入社してから一緒に過ごした先輩は誰がいらっしゃったんですか?

  • 詩織

    その年は神奈川県が優勝した年で、アンカーは(現パナソニックコーチの)吉川(美香)さん。
    (今も会社に在籍している方で)一緒に過ごしたのは、中村仁美先輩、山崎里菜先輩、阿部ゆかり先輩です。

  • 川口

    入社したての自分に今の詩織先輩からかけたい言葉はありますか?

  • 詩織

    うーん。「もっと頑張れ」って。笑
    入社してすぐの時は、訳も分からずただ一生懸命走っているってだけだった。
    だから、何年後にどんな大会があって、どういうことを目指したいということをもっと長期的に見て「頑張れ」って言ってあげたい。

  • 川口

    そうなんですね。来年度から私も2年目になりますが、今後、気を付けていくことはありますか?

  • 詩織

    自分がどうしたいかっていう意思をしっかり持ってやることが大切。
    今までは歳も一番下だったから、先輩に負けても仕方ないって思ってしまうこともあったかもしれない。
    でも、これからは後輩も入ってきて、先輩として負けてはいけないプレッシャーも生まれてくる。
    そのプレッシャーを「ああ、負けちゃった。だめだ。」じゃなくて、「この人には絶対に負けないようにしよう」って小さな目標にしながらやっていく。
    そうやって、後輩と走ることのプレッシャーをマイナスに働かせるのではなく、プラスに働かせられるようなプレッシャーのかけ方をしていけるといいと思う。

援してくれる人たちと
もう一度笑顔になりたい

  • 川口

    パナソニックエンジェルスでの一番の思い出は何ですか?

  • 詩織

    いい思い出で言ったら駅伝の優勝。ただ私は繰り上げ優勝の時(2017)はメンバーとして走ることができたけど、本当に優勝した2連覇した時(2018)はメンバーとして走れていなかった。
    優勝した嬉しさもあったけど、メンバーとして走れずに悔しい思いもあった。
    その時に普段一緒に働いている職場の方が自分以上に悔しがって泣いてくれたことが嬉しかった。
    だから自分以上に悔しがってくれた職場の人に、もう1回自分の走りを見て喜んでもらいたい、結果を出したいって思いで、故障が長く苦しい期間だった競技生活の後半も頑張ってこれた。
    その出来事が、パナソニックの選手として走っている意味だったなって出来事でとても印象に残っている。

    2018年クイーンズ駅伝優勝 笑顔の裏には悔しさが溢れていた

  • 中村

    競技以外の面で、陸上部として楽しかったことはありますか?

  • 詩織

    コロナ禍の中で選手全員で寮内でレクをやったときのことは印象に残っている。

  • 中村

    楽しかったですよね!

  • 信櫻

    詩織先輩と香織先輩が押し相撲でどっちも最終戦に残ってどっちも負けないですごく長かった。

  • 詩織

    コロナ禍は休みの日も外出制限があったから、週替わりで企画担当決めながら。

  • 川口

    楽しそうですね!

  • 詩織

    あの時はそのくらいしかやることなかったから。でもコロナじゃなかったらああいうことをみんなですることもなかったから、新鮮で楽しかった。

  • 信櫻

    それが思い出って言ってくれるの嬉しい。

  • 中村

    うん。自分もいるときの思い出が出て嬉しかった。すごく昔のこと言われたらどうしようとか思ったけど。

しかったリハビリ期間
支えになっていたものは…

  • 伊藤

    昨年の手術は自身の中でも大きな決断だったと思いますが、手術をして、一番大変だったこと、苦労したことは何でしたか?

  • 詩織

    今までのけがとは違って、普通に歩くことや、普通に生活するところからのスタートだった。
    手術したことによって、筋力の左右差が生まれてしまって、他にも走る以前の問題や、筋力バランスなど走るために戻していかなければいけないことが多く、ただ反復して同じようなことをやり続けなきゃいけない地道なリハビリっていうのが、辛かった。

  • 伊藤

    手術後にはきついことが多かったと思いますが、リハビリ中などに心の支えになっていたことなどはありましたか?

  • 詩織

    手術をした時期は香織はマラソン練習をやっていた。私はコロナの制限で病院の外にも出られず、病室内でもあまり話してはいけない環境だったから、香織や家族とテレビ電話をすることがあった。香織が「30km走って疲れている」って言っているのに、私は「エアロバイクを30分を漕いで疲れている」って言ってはいけないなって。練習結果はチームで共有されているから、その結果から香織が苦しみながら練習しているのを知っていた。でも東京マラソンで結果をしっかり残したのを見て、「私も頑張らないとな」って思えたのはタイミング的には支えになったこととして大きかった。

    引退レースの北九州選抜女子駅伝
    27年間隣で支え合い、高め合ってきた香織から
    最後の襷を受け取り、走り出す

  • 伊藤

    双子でよかったことはありますか?

  • 詩織

    双子だから注目してもらえるってこともあるし、逆にそれが嫌になることもある。私はそんなにはっきり経歴に残るような成績は残せていなかったけど、たくさんの人に名前を知ってもらえたっていう意味では双子でよかった。あとは、チームに家族がいるっていうのは少し面倒な部分もあって嫌なこともあるけど、他の選手に比べて寮生活が始まってもホームシックとかにもならなかったことはよかった。

キャプテンとして
自分がやるべきことは何なのか

  • 信櫻

    ここからはキャプテンという立場でこのチームを見てきて、引っ張ってきて、感じたことについてお聞きします。
    キャプテンになってから意識していたことはありましたか?

  • 詩織

    自分が表立ってチームを引っ張っていこうというよりかは、チームとして何かしなければいけないときに自分がどうしなければいけないかっていうことを考えることを意識してやっていた。

  • 信櫻

    キャプテンになって大変だったことはありましたか?

  • 詩織

    人の前に立って話をしなければいけない場面が増えたことに抵抗感があったり、上手に話さなければいけないってプレッシャーもあって嫌だなって思ったこともあった。
    ただ、キャプテンとしてやらざるを得ない環境になって、色々と考えられるようになったのはよかったって思えている。
    また、人に注意したり、意見を言わなければいけない場面では、相手を傷つける行為にもなってしまう可能性があるから、その点では言う前に気を付けるようにしていた。キャプテンとして言わなければいけない立場になったのは、そういう意味では辛い時もあったかなって思う。

  • 信櫻

    それでもやっていてよかったって思った瞬間はありましたか?

  • 詩織

    「こういうこと言ってくれてありがとう」とか、「今回の話よかったよ」とか、キャプテンとしての仕事をやったときに周りの良い反応だとか、良い方向にチームを動かせたときはやっててよかったなって思えた。キャプテンは陸上部の中での一種の役職であって、会社の中で役職に就くってことは難しいことだから、立場として他の役職に就いている方々と同等にやらなきゃいけないっていう風に考えて、仕事の内容などは全然違うことだけれど、仕事に責任をもってやれたっていうことは、ある意味やりがいだった。

  • 信櫻

    今のチームのいいところ、足りないところは何だと思いますか?

  • 詩織

    いいなと思うところはまとまろうとしていなくてもチームとして自然とまとまっていける。
    選手間の関係も深すぎず、浅過ぎない距離感で誰でも分け隔てなく話せるような関係性がいい。
    逆に足りないって思うところは、思ってることをもっと言って欲しい。個人的なこととか、自分のわがままとか、そういうことに対しては言わないってのは当たり前というか、言ってほしくないなって思うけど、チームのことに関して、「どうでももいいや」って雰囲気にはなってほしくない。私たち(内藤・香織・堀)は先輩の引退によって、下の世代でどうにかしてやってかなければいけないって状況になってしまったから、必然的にチームの方向性について、早い段階から日常の中で「ああですよね、こうですよね」って話す機会が自然と生まれた。後輩から「そういう関係性いいですよね」ってよく言われるけど、私たちもそういうことを初めから話せたかっていうと、そういうことを口にし始めてから、そういう関係が生まれてきた。
    そういう話を自然と言えるような雰囲気っていうのが今よりもできてくれば、もっとチームとして進んでいける。

    苦しい時期を一緒に乗り越えてきた4人
    (2018年駅伝優勝後の夕食にて)

  • 信櫻

    今年詩織先輩が抜けられて、キャプテンが変わることになりますし、新人も入ってきますが、今後のチームに期待することは何ですか?

  • 詩織

    来年度からチームはガラッと変わるのかなって思う。チームとして高いところを目指してやっていくって言っている分、変化としてはすごく大変だと思う。
    パナソニックだけじゃなくて陸上界自体も大きく変化しているから、このチームがそこにどこまで対応できるのかということと、このチームを育て上げて戦っていくというスタンスでどこまで戦えるかな、ということが楽しみ。
    今度は応援する立場になるけど、そういったチームの方が応援しやすいし、一緒に頑張ってきてくれた選手たちが頑張ってるってのが一番嬉しい。

の仕事は
自分の夢を周りの人が
一緒に追ってくれる夢の職業

  • 中村

    最後に、長い間9年間パナソニックエンジェルスとして、その前も中高生時代とずっと走ってきたと思いますが、自分にとって「走る」とは?

  • 詩織

    難しいな。考えたことないけど。
    走ることって言うより、自分の求められていることを一生懸命取り組んでいた。自分の求められていることを周りの人に認めてもらえるように頑張っていた感じ。
    走ることじゃない、違うことだったらとっくの昔に辞めていたと思う。得意なことを、しかも応援してくれる人がいてくれて、認めてもらいたい人のために走るとか、そういうことをやりがいに頑張っていたっていうことなのかな。あとは、自分の追いかけてる夢を他人が一緒になって喜んだり、笑ったり、そういう影響のある職業はなかなかないと思うし、その立場に行きたくてもいけない人ってたくさんいて、そういう環境でやらせてもらえる職業って夢の職業だと思う。結果を残すことがスポーツ選手としては全てだし、それが一番大きなことではあるけど、そうじゃない「生きざま」を見せるという面で頑張って取り組んでいた。
    あとはこの仕事への誇りを持ってやらなきゃいけない。競技をやっている自分は辛くて、「早く辞めたいな」とか、「自由になりたいな」とか思うこともあるけど、本当に「辞めよう」って口にしようと思ったときに、そういったことを思い出して、「みんなの期待に応えてられていないな」とか、「こういう職業をやらせてもらえているのはありがたいな」とか、考えていた。走ることのやりがいをそういうことを思い出しながら見つけてここまで走り続けてくることができたかなって思います。

    2022年クイーンズ8奪還
    キャプテンとして最後の大役を果たし、チームを後にする

  • 全員

    ありがとうございました。

ンタビューを終えて

たくさんの応援やサポートしてくださる皆様のおかげでここまで競技者として続けてくることができました。改めて感謝申し上げます。
これからはパナソニックでの社業に専念いたします。
大きく変わる生活や責任に大変なことも多いと思いますが、今まで陸上を通して培ってきたことを糧に頑張っていくとともに、裏方としてエンジェルスをサポートしていきたいと思っています!
今後もエンジェルスを!また私の新天地での活躍を応援していただけたら幸いです!
ありがとうございました。


森田 詩織

たくさんの経験をされてきた先輩から話を聞くことができ、自分の中で新たな考え方を得ることができました。
これから悩んだり壁にぶつかったとしても今回のインタビューのおかげで乗り越えられるような気がしています!!
今後の競技人生にプラスになるインタビューを行うことができ、また詩織先輩とたくさんお話しすることができて良かったです!


中村 優希

人生の半分以上をアスリートとして過ごしてきた先輩の競技に対する考え方や今のチームに対しての想いなど、普段あまり聞いたことのない話まで最後に聞くことができてとても光栄でした!
私も詩織先輩のようにたくさんの人に感動を与え応援されるような選手になりたいです。


信櫻 空

今回詩織先輩に突撃インタビューをして驚くことがありました。
それは、先輩にも新人時代があったということです。
この約一年詩織先輩の印象は、頼れるかっこいい先輩という面と優しくて親しみやすい面でしたが、お話を聞いていくと新人時代は壁にぶつかることもあったようでした。普段聞く機会がなかなか無い話題だったため、今回聞いたお話を2年目から活かしていきたいです!


伊藤 南美

詩織先輩の貴重なお話をお聞きすることができました。私は全国トップクラスで入社された詩織先輩には、9年間辛い経験がなかったのではと思っていましたが、辛いことも多く経験されて今に至るということを知りました。その度に会社の方のため、応援してくださる方のために頑張ったと聞き、スポーツ選手として尊敬することが多くありました。


川口 幸奈