2つの微細な泡の力で、清掃性と温浴効果を変える
「お湯を沸かす機器」から「暮らしのゆとりを生む設備」へ。新型エコキュート開発者が語る、新しい「お湯」の可能性
毎日何気なく使い、私たちの暮らしに欠かせない「お湯」。もし、そのお湯自体が「汚れを落としやすくする力」を持っていたら、日々の家事や生活はどう変わるでしょうか。
家庭の給湯機は今、単にお湯を沸かすだけの機器から、家事の負担を減らし、家族にゆとりの時間をもたらすインフラへと進化を遂げようとしています。パナソニックが新たに生み出したのは、「ウルトラファインバブル」技術を給湯システム全体に組み込んだ画期的なエコキュート。さらに9月(予定)には、癒やしの質を高める「美泡湯eco」(※1※2)の登場も控えています。
お湯から始まる新しいライフスタイルへの挑戦を、商品企画と開発担当者たちの声から紐解きます。
※1: 「美泡湯eco」の「eco」はエコキュート用の機能であることを示します
※2: 下記サイトに掲載した商品のJXシリーズ
新商品のご紹介 | エコキュート | 給湯・暖房 | Panasonic
1 変わるライフスタイル。水まわりの「潜在的な負担」を見過ごさない
今回の新型エコキュートですが、お風呂だけでなく「家中の水まわり」にまで機能を広げたのは、どのような背景があったのでしょうか?
蓮田(商品企画)今回この機能を企画するにあたり、Webアンケートだけでなく、より深い潜在的なニーズを知るために、お客様のご自宅に直接訪問して生活全体のお困り事や日々の入浴についてヒアリングしました。そこで見えてきたのが、「清潔さ」と「家事ラク」への強いご要望です。 特に印象的だったのが、「お風呂掃除が手間だからシャワーで済ませてしまう」「今日は誰が掃除をするかで毎日揉める」といったリアルな声でした。当社の入浴調査でも、30代から40代の女性の多くが浴室の「ピンク汚れ」やキッチンの「ぬめり」に強いストレスを感じていることが明らかになっています。エコキュートは浴室だけでなく家全体にお湯を供給する心臓部ですから、「お湯の力で、家中の水まわりを綺麗にできるはずだ」と視野を広げたのが最初の出発点でした。
中野(UFB開発)そうですね。開発チームとしても、家全体にお湯を供給するというエコキュートならではの役割を活かして、浴室という枠を超えて家全体の課題を解決したいという想いは完全に一致していました。
そこで白羽の矢が立ったのが、近年注目されている「ウルトラファインバブル(UFB)」ですね(※3)。この目に見えない小さな泡が、なぜ清掃性の向上につながるのでしょうか?
※3: 「ウルトラファインバブル」は、一般社団法人ファインバブル産業会(FBIA)の登録商標です。ウルトラファインバブル・マイクロバブルの性能·効果についてはパナソニックエコキュートWebサイトをご覧ください。新商品のご紹介 | エコキュート | 給湯・暖房 | Panasonic中野ウルトラファインバブルは、約1μm未満という目に見えないほどの極小の泡です。非常に小さいために汚れと付着面のわずかな隙間に入り込み、汚れを内側から浮かせる特性があります。そのため、シャワーで洗い流すだけで汚れが落ちやすくなったり、スポンジで軽く擦るだけで簡単に汚れが落とせたりするようになります。
蓮田実は「クリーンな暮らしを実現する機能」は、エコキュートにとって長年の悲願とも言えるテーマでした。過去に何度も新しい価値を提供できないかと議論を重ねていましたが、なかなか高い壁を超えられずにいたのです。そんな中、開発チームからこのUFB実装の提案を受け、実現に向けた手応えを感じると共に、社内でも期待が高まりました。
中野蓮田さんをはじめとする企画の皆さんが、それこそ長年お客様のお困りごとに真摯に向き合ってきたのを間近で見ていましたからね。これまで培ってきた技術が、その悲願を叶える最後のピースになれると分かったときは、開発者冥利に尽きる思いでした。と同時に、「これは絶対に失敗できない、何が何でも形にするぞ」と、エンジニア全員の目が一気に変わったのを今でも覚えています。
2 複雑な給湯システムに「見えない泡」を組み込む壁
ウルトラファインバブル発生装置を、単独のシャワーヘッドなどではなく、エコキュートという「複雑なシステム」に組み込む上で、技術的に最も難しかったのはどんな点ですか?
中野一番苦労したのは「お湯の流量(勢い)を絶対に下げないこと」です。従来のUFB発生装置は泡を発生させるための抵抗が大きく、水流が大幅に弱くなってしまうものがほとんどでした。給湯機において、シャワーの勢いが弱くなることはお客様のストレスに直結するため絶対に許されません。「約2,050万個/mLもの十分なファインバブルを出しつつ、流量を落とさない」という矛盾する課題をクリアするため、試行錯誤を重ねた結果、最終的に「ダブルベンチュリー方式」という特殊な仕組みを採用することで、流量をほとんど下げずに製品化することに成功しました。
山口(美泡湯開発)それともうひとつのハードルは、サイズ感の制約も非常に大きかったことです。当社のエコキュートは他社に比べて「コンパクトであること」を強みとしています。ですから、新しい機能を搭載するからといって、本体サイズを大きくすることはできません。正直、本体を大きくできれば、部品の設計も制約がなくなってかなりラクになるのですが…(笑)。この決められた大きさの中に、UFBの発生装置や、後ほどお話しする「美泡湯」のためのかなり大きなユニットを、アクチュエーター(水流を制御する電動弁やモーターなどの駆動装置)を限界まで減らすなどの工夫を重ねて、執念で押し込みました。
中野また、開発した新機能を実際の生活環境で検証する実証テストも、長期間におよぶ地道なものでした。本当にピンク汚れが落ちるのかを検証するために、実際の浴室のタイルに菌や人の皮脂汚れを塗布して試験を繰り返しました。さらに、社員の自宅にテスト機を設置し、8ヶ月間にも及ぶ長期モニタリングも実施しました。また、社内だけでなく、大学や外部の専門機関にも何度も足を運び、第三者機関から検証方法の妥当性についてお墨付きをいただくことで、ようやく自信を持って「汚れが落ちます」(※4)と言えるようになりました。
※4: ウルトラファインバブル発生ノズルは、肌汚れ・浴室汚れ・浴槽壁汚れの洗浄効果でFBIAの認証を取得しました。蓮田私も、あのテスト期間中は実際の汚れの落ち具合を自分の目で確認するため、何度も実験室に足を運びました。お客様に自信を持ってお届けできるレベルに達しているか、細かくチェックし続ける日々でしたね。
3 「お湯」が変われば、生活の質(QOL)が変わる
まさに執念のテストですね。 UFB入りのお湯が家中をめぐることで、お客様の日常にはどのような変化がもたらされると期待していますか?
蓮田水まわりの汚れは、毎日必ず目につくからこそ、無意識のストレスになりやすいものです。UFB入りのお湯を使い続けることで、「そういえば最近、お風呂やキッチンのシンクの掃除がラクになったな」と、後からジワジワと実感していただけるはずです。 掃除へのハードルが下がることで、「掃除が面倒だからシャワーで済まそう」というためらいがなくなり、毎日ゆっくり湯船に浸かれるようになる。これは、身体的にも精神的にも、お客様のQOL(生活の質)を劇的に向上させる変化だと思っています。
中野私の場合は、「家事ラク」という価値の先にある、肌に対する美容効果にもぜひ注目してほしいと思っています。アンケートでも半数以上の方が「肌の皮脂汚れ落ち」に期待を寄せていましたが、水まわりの汚れを入り込んで浮かせるのと同じメカニズムで、肌の皮脂汚れを優しく浮かせて落としやすくしてくれます。ゴシゴシ洗わなくても汚れが落ちるため、肌に優しく、美容という観点でも優れた効果をもたらします。
山口そのウルトラファインバブルの力に、9月に発売を予定している「美泡湯eco」が組み合わさることで、バスタイムの「癒やし」はさらに深まります。この美泡湯ecoには、20年以上の歴史と実績がある酸素美泡湯の技術が採用されています。美泡湯は、今までご説明したウルトラファインバブルより少し大きい泡である「マイクロバブル」(約1〜100μm)を活用しています。
マイクロバブルには主に2つの大きな効果があります。
1つ目は「保湿」です(※5)。角層の水分量が上がり、普通のお湯と比べて湯上がりの肌が格段にしっとりします。2つ目は「温まりの持続」です。お湯の中の細かな泡が流動することで、皮膚の表面にできる見えない水の層(熱伝達を阻害する層)が乱され、体の芯まで熱がしっかり伝わるようになります。UFBで肌の汚れを優しく落とし、美泡湯で体の芯まで温めて潤いを閉じ込める。この2つが合わさることで、湯冷めしにくく、これまでにない上質で極上の入浴体験をお届けできると確信しています。
4 暮らしにゆとりをもたらすインフラへ
「お湯をつくる」ことから、「暮らしのゆとりをもたらす」という新たな価値が生まれたのですね。この新技術を通じてこれからの日本の暮らしをどのように変えたいですか?
中野給湯機は生活のインフラであり、普段はあまり意識されない存在です。しかし、だからこそ「特別なことをしなくても、普通に生活しているだけで家事ラクや清潔さがアップしていく」というさりげない価値を提供したいんです。日々の面倒な掃除の負担を減らし、「気づけば助かっている」、そんな風に暮らしのゆとりを創り出せる存在へと育てていきたいですね。
山口暮らしのゆとりの創出ということでは、コロナ禍以降、家の中での「ウェルビーイング(心身の健康と幸福)」やセルフケアへの欲求が非常に高まっている状況があります。毎日の入浴を通じて、リフレッシュされ、心地よいひとときを過ごし、生活が少しでも楽しくなる。給湯機を選ぶ際に、これまでの「省エネ性能」だけでなく、「日々の生活がこんなにも豊かになるんだ」という新しい基準でお客様に選んでいただける未来を作っていきたいです。
蓮田パナソニックは2002年の1号機発売以来、エコキュートの社会的役割の拡大にも本気で向き合ってきました。例えば今回の新製品(※6)は、保温性を高めることで、国の「給湯省エネ2026事業」の厳しい基準をクリアする高い省エネ性を実現しています。
※6: 26年度モデルJX、JP、N、J、E、S、Cシリーズ
さらに、太陽光発電の広がりで変化する電力事情に合わせ、昼間に沸き上げを行う『おひさまエコキュート』の展開や、 多様化する電力会社の電気料金メニューに対応する機種も拡充しています。これにより、国の電力インフラの需給バランスを整えるというマクロな視点での貢献も果たしています。
環境に負荷をかけず、社会のインフラを支えながら、同時に目の前のお客様の暮らしに『ゆとり』と『癒やし』をもたらします。かつて白モノ家電が長時間の家事をなくし、生活に新たな時間を生み出したように、これからのエコキュートもまた『暮らしを豊かにする設備』として、未来の住まいに欠かせない家庭のインフラとなるよう、私たちはこれからも新たな価値の創造への挑戦を続けていきます。
- 蓮田 知佳 Tomoka Hasuda
- 宮崎県出身 29歳。2020年入社、入社から現在まで国内向け給湯機の商品企画と、専用アプリの企画を担当。
- 中野 勇樹 Yuki Nakano
- 大阪府出身 29歳。2021年入社、家庭用エアコンの開発を経て、2022年から現在まで給湯機の先行開発を担当。
- 山口 貴史 Takashi Yamaguchi
- 大阪府出身 32歳。2018年入社、入社から現在まで国内向け給湯機の量産開発と、先行開発を担当。