ウェルビーイング
2022.07.12
1on1ミーティングとは? 人材を活かすメリットと効果的な進め方も合わせて解説!
1on1ミーティングへの関心が高まっている中、1on1といえば上司と部下が1対1で話をする場だとの認識があるようです。間違いではないものの、それだけでは正しい理解とはいえません。この記事では、1on1ミーティングとは何かについて、メリットやデメリット、扱うテーマや効果的な進め方などについて解説・紹介します。
1on1ミーティングの定義
上司と部下が1対1で向かい合うこと
1on1とは1対1のことで、そこにいるのは上司と部下の2人だけです。一般に人材分野で1on1と呼ぶ場合、ミーティングとつけていなくても1on1ミーティングのことを指す場合が多いといえるでしょう。
さて、1on1ミーティングはアメリカのシリコンバレーで長年にわたり用いられてきたマネジメント手法のひとつだといわれています。上司と部下の関係をよくする効果や部下の成長を促す効果が認められるとして日本でも注目を集めており、採り入れる企業が増えているようです。例えば、人事評価とは一切関連させず部下の話を傾聴することに徹したヤフー株式会社の事例などが、霞が関働き⽅改⾰推進チームの報告にもまとめられています。
1on1ミーティングを効果的に行うためには、1on1ミーティングの意義そのものを正しく理解することが大切です。
1on1は面談全般を指す言葉ではない
一般的な考え方として、1on1ミーティングは上司と部下が1対1で行う面談・ミーティングのすべてを指すわけではありません。1on1ミーティングは直接的にも間接的にも人材育成につながるもので、計画的かつ定期的に行われるものです。したがって、随時行われている個別の業務に関する打ち合わせや業務報告などは、たとえ上司と部下が1対1で行っていたとしても1on1ミーティングの範疇に入りません。
また、1対1で定期的かつ計画的に行われる面談といえば「評価面談」も該当します。しかし、評価面談は半期または通期の結果に対する通達的な性格を有する面談であり、まったく異なるものです。1on1ミーティングでは上司からの一方通行ではない会話と情報共有が重視されます。
1on1ミーティングの目的
上司と部下の相互理解を深める
1on1ミーティングを実施する目的は企業によってそれぞれですが、一般的に共通する大きな目的は人材育成と離職防止も含めた人材の活用です。そのための個別目的として、上司と部下の相互理解と部下の能力向上があります。
まず、上司と部下は一般的に管理する側とされる側であり立場が異なるため、その点において相互理解が難しい面のある関係です。とはいえ、指揮命令系統による管理が必要な組織において、上司と部下の関係をなくすわけにはいきません。そこで期待されるのが、1on1ミーティングです。
双方向のコミュニケーションを実現する場として1on1ミーティングを活用し、部下が抱える問題点を吸い上げて情報を共有しフィードバックをおくります。1on1ミーティングが目的どおりの効果を発揮すれば、相互理解が進み、信頼関係が構築された活気ある職場が期待できるでしょう。
部下の能力を向上させる
1on1ミーティングによる上下間の円滑なコミュニケーションと、上司による的確な対応が部下の能力向上につながることにも期待が集まっています。
企業によって部下の育成方法はさまざまです。1on1ミーティングは自社の人材育成をサポートする役割を担います。問題や悩みを抱えている部下に寄り添う1on1ミーティングを導入することで、部下の能力向上が可能です。もちろん、1on1ミーティングだけに頼るのではなく、根本的な人材育成プログラムの実施と改善が前提となります。
1on1ミーティングでは部下に問いかけて気づきや解決策を考えるように導くコーチングと、質問の回答を返すティーチングの使い分けがポイントです。同じ内容でも、部下のスキル、レベルに応じてどちらが適切かを考える必要があります。
なぜ1on1でなければならないのか?
部下に受け入れられやすいスタイル
1on1ミーティングは「管理」のための面談ではなく、上からの伝達を目的とした場でもないことから堅苦しい話をする必要がありません。人材育成につながる相互理解や部下が抱えている問題や感じている悩みの解決、自主的な行動ができるようにサポートすることが目的であり、部下のために開催されるミーティングです。
1on1ミーティングでは、上司は部下の話を引き出す必要があり、必然的に話しやすい雰囲気を作ることが求められます。つまり、1on1ミーティングは部下に受け入れられやすいスタイルでの実施が前提です。部下にとっては、自分の意見を話しやすく、仕事に対して意欲的になるきっかけが生まれる場でもあります。部下に受け入れられやすいスタイルこそが、1on1ミーティングでなければならない理由のひとつだといえるでしょう。
時代の要請
現在、少子化と労働力人口の減少により一方通行のマネジメントでは人材育成どころか人材の数的な確保すら困難な時代となっています。社会全体が働き方改革の時代に入っており、ワークライフバランスを重視する背景もあって、人材育成においても個人にフォーカスした対応が必要です。また、多くの企業において、個々の社員に求められる役割や能力が一様ではなくなっていることもあり、個々の社員が抱える問題も多様化しています。
現状を踏まえたうえで効果的な人材育成を行うためには、きめの細かい対応が不可欠です。その手段のひとつであり、重要な方策として1on1ミーティングへの期待が高まっています。
仮に全員が同じ場所で同じ時間、統一された考えで働く時代や職場であれば、上下関係に基づく上意下達(top-down)のコミュニケーションを基本とした人材育成でよいかもしれません。わざわざ個別に時間を設けて1on1ミーティングを行う必要性は低いでしょう。しかし、そのような職場であっても、そこで働く人々には個性があり、個人差があります。1on1ミーティングが不要ということはないといえるでしょう。
1on1で取り上げる主なテーマ
業務に関して抱えている問題点
1on1ミーティングで取り上げるテーマは多々あります。直接業務に関する問題点も重要なテーマのひとつです。企業活動の中で生じる問題点の多くが業務に関係していることは想像に難くありません。問題点を共有することと、有効なアドバイスをおくって課題解決策を見つける助けとなることは、人材育成はもちろんのこと、業務の円滑な遂行にとっても欠かせない過程といえます。
日常業務の中で忙殺されて忘れてしまいがちな小さな問題点の再確認や、相談相手がいなくて困っている状況の改善という意味でも、業務に関する問題点は1on1ミーティングで扱うべき大きなテーマです。
キャリアプラン
部下が思い描いているキャリアプランを把握し、支援する姿勢を示すためのテーマ設定も重要です。入社したての新人であろうと、中堅やベテラン社員であろうと、自身のキャリアプランにまったくの無関心という人材は少数派ではないでしょうか。
この会社で積みたいキャリアや、仕事の成果とキャリア形成の関係に対する疑問や不安といった部下のキャリアプランに対する考えを知ることは、上司として適切なマネジメントを行うにあたり重要なポイントです。部下が自身のキャリアに関して不明確な部分やモヤモヤした感情を抱いたままでは、モチベーションにも影響します。悪くすると離職につながってしまいかねないため、1on1ミーティングで丁寧に対応したいテーマだといえるでしょう。
職場環境や人間関係の悩み
仕事内容そのものの課題や悩みではないとしても、職場環境や職場の人間関係に悩みがあれば人材活用の阻害要因となります。1on1ミーティングのテーマとして職場環境や人間関係の悩みは非常に重要です。
職場環境といっても内容はさまざまで、事務所の照明が暗い、机の配置が窮屈だといったものから、組織全体としての風通しの悪さといったものまで各種あります。人間関係に至っては、あからさまな妨害やいじめがあるというケースだけでなく、相性問題や単純な好き嫌いも関係してくるため、最適解を導き出すのは難しいかもしれません。
しかし、難しいからこそ1on1でコミュニケーションを図ることに意味があります。部下の置かれた状況や希望、意思を聞き取ることが問題解決と人材育成の第一歩です。
プライベートや健康に関する相談ごと
職場環境や人間関係の悩みと関連する話として、健康に関する不安や相談が重要なテーマとなります。健康経営が重視される時代です。1on1ミーティングには社員の健康問題を解決する一助としての役割も期待されるでしょう。
また、健康面以外のプライベートな問題も仕事に影響を及ぼす可能性が少なくないことから、1on1ミーティングの重要なテーマとなり得ます。あまり突っ込んだ話はできないかもしれませんが、悩みが軽くなる手助けができればよいでしょう。ただし、どちらもセンシティブな内容を含む可能性があり、対応を間違えるとハラスメントや越権行為になりかねません。取扱いには注意を要します。
1on1ミーティングに向かないテーマ
業務そのものについての指示確認
1on1ミーティングは一般的な業務の打ち合わせを目的としていません。通常業務の打ち合わせといった目的に沿わないテーマを入れてしまうと、わざわざ開催する意味が損なわれてしまいます。
話すことがなくなってしまい、時間が余ってしまったとしても、ついでだからといって単なる指示確認を持ち込むことがないように注意すべきです。それが当たり前になってしまうと、いつの間にか目的が曖昧になってしまいかねません。あくまでも1on1ミーティングと一般の業務連絡は区別して行うことが、長く効果的に行うための前提条件だといえるでしょう。
長時間かかる内容
1on1ミーティングは比較的短時間(一般的には長くても1時間以下)で、定期的に頻回で実施できる前提のミーティングです。多ければ毎週実施されるケースもあります。そのため、一度に長時間かけて話すような内容は向いていません。どうしても連続して長時間に及ぶ話をする必要がある場合は、別途時間を設けて行うべきでしょう。
とはいえ、短時間の1on1ミーティングで1回話しただけで完了してしまうような問題点、課題ばかりではないでしょう。あくまでも一度に長時間かかる場合が向いていないのであって、継続的にトータルで長時間(1回は短時間で終わる)となるケースは問題ありません。何回もかけて解決に至る問題点もあるでしょう。
軽い話題は導入としてアリ
1on1ミーティングは上司対部下といった対決姿勢で臨む場ではなく、お互いが理解を深めるために肩の力を抜いて向き合える場です。したがって、テーマとして適していないような話に思えたとしても、軽い話題なら問題にならない場面があります。緊張をほぐすためにミーティングへの導入部分で話したり、会話が途切れたときのつなぎで用いたりといった場面です。
▼1on1ミーティングで話す内容(テーマ)については、こちらの記事でも詳しく解説しています
1on1で主に話すこととは? ミーティングのテーマや話の具体例も合わせて解説!
1on1ミーティングに期待される5大メリット
課題解決能力の高い一体感のある集団ができる
1on1ミーティングには部下の能力向上という目的があります。個々の部下が集まった組織において目的を達成することは、上司への信頼を中心にまとまった課題解決能力の高い集団の誕生を意味しており、これが1on1ミーティングの大きなメリットです。
上司のマネジメント能力を高める
リラックスしたムードの中で部下が話したいことを話し、上司が情報を共有するとともに、有効なコーチング、ティーチング、そしてフィードバックを行うことが1on1ミーティングの代表的なカタチです。
メインの目的は相互理解や問題解決、部下の能力を向上させることですが、上司にとっても部下が無用な遠慮をすることなく話せる雰囲気を作り、コミュニケーションを促進する訓練になります。
上司には引き出した話を理解して問題を整理し、適切なフィードバックを行えるだけの能力が必要です。始めから十分なマネジメント能力を備えている上司ばかりとは限らないことから、1on1ミーティングを通じて上司のマネジメント能力を高めることにつながる点もメリットといえるでしょう。
従業員エンゲージメントの向上
1on1ミーティングによって個別に向き合った問題解決が進めば、上司や会社への信頼や共感、納得感が得られます。社員から見た場合、1on1ミーティングを通じて上司が自分の言葉に耳を傾けてくれる体験は、自分が上司や職場にとって重要な存在であること、仲間であることを強く認識させてくれるものです。
1on1ミーティングのメリットが及ぶ範囲は正社員に限りません。契約社員や派遣社員であっても同じです。自分の存在価値が認識できれば、結果として社員の従業員エンゲージメントが向上し、自発的に仕事に取り組む部下が増えます。
人材確保
従業員エンゲージメントが向上する企業・組織では、社員は会社の理念やビジョンに共感・信頼を寄せています。たとえ満足していない部分があったとしても、積極的に貢献しようという意欲に満ちている社員が多数いる点が強みです。必然的に離職への動機が薄れ、人材確保につながるでしょう。つまり、従業員エンゲージメントを向上させる1on1ミーティングには、人材育成だけでなく、優秀な人材を流出させないメリットも期待できます。
生産性向上と業績アップ
1on1ミーティングが効果を発揮した結果、社員の多くが自発的に積極的な貢献意欲を持つように変化すれば、企業としての生産性が上がり業績がよくなる期待をもてます。このようにメリットは多数ありますが、あくまでも1on1ミーティングを正しく実施することが前提です。カタチだけ1対1であっても、中身が伴っていなければ逆効果になりかねない点に注意しましょう。
1on1ミーティングのデメリット3つ
面談が苦痛になる
上司が経験不足で1on1ミーティングの進行がうまくできなかったり、上司に対する部下の信頼が低かったりする場合は2人だけの面談が苦痛になってしまうケースがあります。前者は事前準備をしっかり行うことで解決可能です。
後者の場合、「話したいことはあるものの、話したところでどうにもならない」といった感情が隠れているかもしれません。1on1ミーティングが部下のための対話機会であり、ある意味で「無料サービス」であることと、適切に対応することを周知することが重要です。
時間が無駄になる
定期的に短いサイクルと高い頻度で実施するため、漫然と実践していれば「ネタ切れ」になり時間が無駄になる可能性があります。1on1ミーティングでは特定の話題に拘る必要がなく、目的に沿った話題であれば何でも構いません。部下を普段からしっかりと観察しておけば、話を引き出すきっかけ作りの参考となるネタには困らないものです。
対応が追いつかず信頼関係を損ねる
せっかく話したにもかかわらず、上司の反応が鈍い、的確な反応が返ってこない、返答が曖昧で役に立たないといった事態になると信頼関係を損ねてしまいかねません。どのような答えを出すにせよ、部下に不信感を持たれないようにしっかりと対応する必要があります。
効果的な進め方
基本的な信頼関係を構築する
いきなり1on1ミーティングで相互理解を深めるといっても、距離感がつかめていない上下関係の場合は効果を期待しにくい部分があります。面談が苦痛になるケースと同様に、1on1ミーティングが制度上の義務ではなく部下自身のために積極的に活用して欲しい場である点を伝えることが重要です。加えて、双方向のコミュニケーションを図る場でもある点を伝えます。言葉だけでなく、実際に適切な対話を行うことで関係性を深めましょう。
聞き役と話し手が逆転しない準備を行う
繰り返しになりますが、1on1ミーティングは部下のための時間であり、部下がいいたいことをいう前提をしっかりと認識することが重要です。間違っても上司がいいたいことを話し続ける場にしてはいけません。職場の上下関係がある以上、部下のほうから「ここは私のための場です」とは指摘しにくいため、ストップをかけられるのは上司自身です。
そうならないためにも、1on1ミーティングで何を話すのか、テーマを事前に決めておき、お互いがそれについて何を話し、何を聞くのかを準備したうえで現場に臨むことで、効率のよい運用が可能となります。想定される会話の一覧や、関係資料があれば用意しておくべきでしょう。
検証と改善
1on1ミーティングを実施しても話をして終わりでは雑談と変わらない結果になってしまうかもしれません。次回以降も効果的な1on1ミーティングの実施をし続けるためには、PDCAを利用するなど検証と改善が必要です。
活用上の注意点
1on1の位置づけを明確にする
1on1ミーティングには一般的な定義こそあれ、どう位置づけるかは自社次第です。参加者は直属の上司と部下になりますが、会社としては人事部門も交えて全社的な方針、位置づけを明確にする必要があります。そのうえで、目的に向けてしっかりと進めることが大切です。
管理職のスキルを向上させる
人材育成に重要な意味をもつ1on1ミーティングにおいて、上司となる管理職には高いスキルが求められるといえるでしょう。聞き役を演じながら問題点をまとめて、最適な対処を行うためには、セミナーや研修での学習も含めて管理職のスキル向上が欠かせません。1on1ミーティングについて書かれた最新のコラムを読んだり、参考資料をダウンロードして活用したりといった方法も考えられます。
1on1ミーティングは事前準備が重要
1on1ミーティングは部下に指示を出すことが多い上司にとって、聞き役に徹しながらも適切な反応を示す必要がある点に難しさを感じることがあるかもしれません。しかし、事前準備をしっかりと行うことで難しさは半減するでしょう。
おすすめは普段から部下をしっかりと観察しておき、いつ1on1ミーティングをしても大丈夫なくらいの準備を行うことです。
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