ウェルビーイング

2021.06.30

【中編】マイナスを0へ。そして、0からプラスへ!
丸井グループ×パナソニックグループ 対談で紐解く
ワークプレイスにおけるWell-beingの取り入れ方

【中編】マイナスを0へ。そして、0からプラスへ!丸井グループ×パナソニックグループ 対談で紐解くワークプレイスにおけるWell-beingの取り入れ方

対談メンバー

小島 玲子 氏

株式会社丸井グループ執行役員CWO(Chief Well-being Officer) / ウェルネス推進部 部長 / 医師 医学博士 / 専属産業医

田中 宣仁 氏

パナソニック株式会社ライフソリューションズ社東京汐留ビル健康管理室 / 産業医

庄野 善雄

パナソニックEWネットワ―クス株式会社 代表取締役社長

丸井グループの調査によるとWell-beingを実践する組織と、そうでない組織では、ストレス度やモチベーション、仕事への捉え方に対する部分において差が出ることがわかりました。そのため、社員がいきいきと働くためにWell-beingを取り入れており、その一環として社員が活力高く働くために「レジリエンスプログラム」を実施しています。パナソニック ライフソリューションズ社でも開催されたレジリエンスプログラムによって、どのような効果が得られたのか、そしてワークプレイスづくりにどのように活かしていくのか、パナソニックEWネットワ―クス代表の庄野がレジリエンスプログラムに参加した体験をもとに小島先生のお話を伺います。

頭痛解消、建設的なコミュニケーション、ポジティブ思考
やればやるほど、変化する自分がいた。

庄野: 私はレジリエンスプログラムに参加する前から、原因不明の頭痛に悩まされてきました。ですが、レジリエンスプログラムの中で、小島先生から、脳と糖分の関係について講義してもらったとき、糖質不足が関係しているのではないかとヒントを得ました。その後、補食を摂ることを意識したところ、頭痛に悩むことはなくなりました。取り組んですぐにレジリエンスプログラムの効果がかたちになって現れてきたのです。

小島:庄野さんが行っているような、脳の持久力を高める食べ方や、睡眠、良い職場にするためのアクションのことを丸井グループでは「ウェルネスアクション」と呼んでいます。丸井グループで調査したところ、ウェルネスアクションに参加している4,230名は、参加していない2,070名と比べて、仕事に熱意をもって取り組む姿勢を表す「ワークエンゲージメント」が高く、ストレス度も良好な状態にあることがわかっています。

庄野:レジリエンスプログラムでは、講義後に、3つのアクションプランを立てて行動に移していきます。私は「栄養をとること」「メンバーと話すときにプラスの情報を渡すといった、ポジティブなコミュニケーションを取ること」「一日の中で3つ良かったことを記録すること」この3つに取り組みました。そうすることで、自分の思考もよりポジティブになり、建設的なコミュニケーションが増えていく感覚がありました。

小島:庄野さんのように、部下との接し方をより良く工夫するきっかけになったり、体調を万全に整えて仕事ができるようになったと言っていただけるのは、レジリエンスプログラムに携わるものとして、とてもうれしく思います。

田中:リーダーがより活力高く働ける状態は、産業医としてうれしい成果です。庄野さんは、影響力の高い方なので、ご自身がいきいきと働く姿を見せることは、社員にとっても組織にとっても効果が計り知れません。

上司がレジリエンスプログラムに参加することで、
職場の一体感も、個人を尊重する意識も高まる。

小島:丸井グループでは、ストレスチェックにおいて高ストレスかどうかを判断するだけでなく、「ワークエンゲージメント」や「職場の一体感」「個人の尊重」など、仕事をする上でプラスになる要素も数値化しています。レジリエンスプログラムの実施前と実施後で比較したところ、上司がレジリエンスプログラムに参加した職場・事業所では、「職場の一体感」や「個人の尊重」などの指数が向上しているという結果が出ています。

さらに、プログラム受講者が所属長の職場では、ワークエンゲージメントの指数が向上する結果が得られました。この背景としては、先ほど庄野さんが職場で接し方を変えたという話がありましたが、受講者それぞれ組織の活力を向上させるアクションを工夫して継続したことが影響しているといえます。

LINEグループを作成。
一人の活動報告が、全員の行動につながる。

田中:レジリエンスプログラムは、学んだ後にウェルネスアクションを習慣にすることが目的としてあります。習慣を継続させていくための取り組みとして、受講者4名に対して産業医1名がつき、いつでもアドバイスを受けられる体制をとっています。

小島:組織活性化のアクションを一人だけで継続するのは、忙しい管理職には難しいこともあります。ですので、管理職のチームでLINEグループをつくって、写真を交えながら「今日はこの場所を〇km走ったよ」、「がんばってるね」など、互いに励まし合いながら、自然に次のアクションにつながる仕組みをつくっています。

庄野:私は、もともと長距離を走るのは苦手でした。ですが、皆さんと共有する場があることで、運動を続けられています。今は、単身赴任になったので、一人で走っていますが、転勤前は、妻と一緒に走っていました。

田中:家族とアクションを実践するのもとても良いですね。レジリエンスプログラムには「良い習慣が人をつくる」「組織の慣行が良い会社をつくる」という考え方があります。まず、レジリエンスプログラムの前半戦で、自分の習慣をつくってもらう。そして後半戦は、習慣や学びを職場や周りに広げてもらうといった構成にしています。庄野さんは、レジリエンスプログラムで学んだことを、スライド1〜2枚でわかりやすくまとめて、それを職場のサイネージに掲示して、伝えてくださっています。庄野さんの学びが部門全体に広がっていくのを感じています。

庄野:私は、企業のミッションやバリュー行動指針など、基本姿勢の中にも、レジリエンスプログラムで得た「思考」「精神」などの学びを活かしていきたいと思っています。代表として、会社の考え方を発信する機会をいただけるようになりました。会社の方針、大きな方向性について社員から共感を得た上で、具体的なプログラムの内容を伝えていきたいと考えています。職場の中でスライドを掲示するだけでは全員に見てもらえるとは限らないので、発信の仕方や取り組みも、工夫を重ねていきたいと思っています。丸井グループさんのように、いろんなかたちで、社員の皆さんが自ら手を挙げてテーマを持って実行するまで発展できたら理想的ですね。

働く空間にも、メリハリを。
創造性もリラックス効果も高めるワークプレイスへ。

庄野:我々のオフィスは、フリーアドレスを採用しています。その中に「集中スペース」と「緩和スペース」をそれぞれつくっています。緩和スペースでは、映像や音響技術を活用して自然空間を演出し、没入する体験を通して、リラックスすることができます。次の仕事への活力を生み出すようなリチャージできるスポットづくりを意識しております。

小島:レジリエンスプログラムの「思考」パートの中に、「創造性」という項目があります。良い仕事や創造性のある仕事をするためには、思考や行動の「リズム」や「ゆらぎ」が大切と言われています。新しいアイデアや発想のひらめきは、出そうと思って出せるものではありません。集中する時間とリラックスする時間などを意識的に組み合わせて、リズムをつくっていくことがひらめきへの近道といえます。

庄野:音や映像の他にも、オフィスに生木のグリーンを入れることで社員のリラックス効果を高めたり、香りによって、集中度を高める空間づくりを意識しています。状況に応じて、社員がオフィスを自由に行き来して、自身の生産性を上げてもらえるようなオフィスでありたいと思います。

小島:レジリエンスプログラムでは、新たな発想や着想が得られる方法についても学びます。「セレンディピティ」といって、「偶然の幸運を手に入れる力」をさす言葉があります。例えば、いつも行かないところ、いつもと違うメンバーと話すことで、新たな発想や着想が得られることがあります。「これは当初の目的には使えないけれど、他のことに使えるのではないか」と捉える意識を持つことも、そのひとつです。こうして、職場でセレンディピティを高める、つまり「偶然の幸運を迎えに行く」、という行動を職場で意識することで、より創造性の高い職場づくりにつなげることができます。世の中の偉大な発見には、例えば、ペニシリン開発(カビの周りだけ菌が生えないことにふと気づき、抗生物質につながった)エピソードなど、セレンディピティによって生まれているものが多くあります。

セレンディピティを高めるには、ただの遊びにならないよう、目的意識も必要です。パナソニックEWネットワ―クスさんでは「世界中で、お客様それぞれに最適な安全で生産性の高いワークプレイスを提供する」という目的を掲げ、働く人たちが、良いリズムを作って、創造性の高い職場にする支援をされているのですね。

庄野:我々がこれから積極的に取り組むべきことは、リラックス空間や集中空間を含めたオフィス環境が本当に効果的なのか、客観的データを示すことです。緑を置くことでリラックスできるかどうかについては、感情的に判断されることも多いと思います。このような主観的な評価ではなく、たとえば、心拍数がちゃんと抑えられているのかなど、定量的に検証していきます。集中についても脳の測定を行い、複雑な仕事をしていても集中時間が続くかどうか、データとして定量的に示す必要があると思っています。我々が実際に体験をしていることを、お客様にご提案して広げていきたい。

次の回では、コロナ禍によってオフィスのあり方がどのように変化したのか、対談を通してご紹介していきます。

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