フリーアドレス
2021.03.30
フリーアドレスを導入して失敗に。原因を追求して廃止を防ごう
会社に決まった席をつくらないフリーアドレスのスタイルは、日本でも浸透しつつあります。その一方で、フリーアドレスを導入したことで失敗し、結局フリーアドレスを廃止した会社も少なからずあるようです。ここではフリーアドレス導入の失敗例をもとに、なぜうまくいかなかったのかを探り、フリーアドレスを上手に活用する方法を考えます。
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フリーアドレスとは?
フリーアドレスとは、社員がオフィス内に自分のデスクを持たないスタイルを指します。“フリー=自由”に“アドレス=位置”を決めて、好きな席で仕事をできるのです。フリーアドレスの導入には、社員同士のコミュニケーションが増える、部署や部門の枠を超えた働き方が進む、オフィスのスペース削減ができるといったメリットがあります。
フリーアドレスのスタイルは、近年、日本のさまざまな企業で導入が進んでいます。それに加え、政府による働き方改革の推進やテレワークの増加などの影響もあり、ますます注目が集まっています。
フリーアドレスの導入に失敗・廃止した事例
フリーアドレスを導入する企業が増える一方で、運用に失敗し、もとの固定席を設けるスタイルに戻すケースも見られます。フリーアドレス導入の失敗・廃止の事例として、ありがちなものをいくつか見てみましょう。
事例1:人の位置を特定できず仕事に支障
まず挙げられるのが、人を探す手間が増えて失敗につながるケースです。ある企業では、一部部署内で実験的にフリーアドレスを導入。そこで困ったのが、特定のデスクがないせいで、誰がどこにいるのかをすぐに把握できないことでした。電話一本つなぐにも、つなぐ相手がいる場所を特定するまでに時間を要してしまいます。
さらに、上司に直接相談したいことがあっても、肝心の上司がどこにいるのか、まず探さなければなりません。来客時なども同様です。会社で携帯電話が支給されていればまだ問題はありませんが、携帯電話がない場合や、あってもつながらないときなどは、社内を歩き回って探さざるを得ません。
人の位置を特定できないことで、社員の仕事効率も悪化。不満が多数上がり、結局フリーアドレスの完全導入は見送られました。このような事例は少なくないようです。
事例2:雑談が増えて仕事効率が低下
もうひとつありがちなのが、スペースをオープンにすることにより、社員同士の雑談が増えて業務に支障をきたすケースです。もともとフリーアドレスの導入は、社員どうしのコミュニケーションの活性化が目的のひとつに挙げられます。しかし雑談があまりに増えると、仕事効率が落ちる場合もあるのです。
またフリーアドレスのオフィスでは、パーテーションをなくして人が自由に移動できるケースが少なくありません。人の行き来が多いオープンな空間で、しかも雑談も多いとなると、集中力が削がれて仕事が進まないケースもあります。このような状況が多発すると、フリーアドレスの導入も見直さざるを得ません。
事例3:書類などの管理に困り忘れ物も増加
フリーアドレスの導入の失敗例として、書類や物品の管理の問題も挙げられます。それぞれがデスクを持つ従来のオフィスであれば、書類はデスク周りで保管すれば問題ないでしょう。しかしフリーアドレスの場合は決まったデスクがないため、書類や仕事に必要な道具などを、毎回持ち運ばなければなりません。また、それらを保管する個人用ロッカー等の準備も必要になります。
特に書類を毎回持ち運ぶのは、手間がかかるだけでなく紛失にもつながり、重大な問題を招くケースがあります。そのため紙の書類が多い会社では、書類の管理や持ち運びがネックとなり、フリーアドレスの導入に失敗しかねません。また書類に限らず、デスクの上に忘れ物があっても誰の物か分からないため、物の紛失が増えた事例もあるようです。
事例4:同じ部署内での連携が不足
フリーアドレスを実験的に導入した結果、同じ部署や部門に属する社員どうしの連携が不十分になった例もあります。フリーアドレスは本来、部署の枠を超え、他部署に属する社員同士の交流を増やせることがメリットのひとつ。ところがその反作用として、同一部署内の社員同士のコミュニケーションが希薄になる場合があるのです。
同じ部署内での連携が不足すると、業務にもさまざまな支障が生じます。まず挙げられるのが、上司の目が部下に行き届きにくくなることです。場合によっては、仕事が適切に処理されず、クレームに発展するケースもあります。そのほか、同一部署の先輩・後輩が必ずしも近くにいないため、新人教育が進みにくくなるという失敗例もありがちです。
事例5:最終的に席やメンバーがほぼ固定化
最後に挙げられるのが、フリーアドレスのスタイルにしたにも関わらず、結局は席が固定化される事例です。毎朝席を選ぶのが面倒、自分のお気に入りの席が決まっているなどの理由で、気付けば毎日同じ席に同じ人が座っていて、席が固定化されるケースがあります。そのほかに、席は変えていても、周りに集まるメンバーが結局いつも同じになる場合も少なくありません。
このように席やメンバーが固定化されてしまうと、フリーアドレスの目的のひとつである“部署や部門の枠を超えた連携”が実現しづらくなります。フリーアドレスを導入した意味がなくなってしまうのです。そればかりか、仲のよいメンバーがいつも固まっていれば、上で挙げた雑談の増加などにもつながりやすくなります。
原因を紐解いて、フリーアドレスのよりよい導入を
フリーアドレスのよりよい導入を目指すには、上記でご紹介した失敗例の原因を紐解き、その対策をあらかじめ講じることが重要です。具体的な対策として、次のような点を検討するとよいでしょう。
人の位置を特定できるシステム整備
事例1で挙げたように、誰がどこにいるか分からないことが、フリーアドレスで失敗する原因のひとつです。この問題を解決するには、誰がどこにいるかをすぐに確認できるシステムを利用する方法があります。社員のいる場所をWEB上で確認できるツールも出ているので、導入を検討してみるとよいでしょう。
仕事に集中できる環境づくり
事例2のような雑談による作業効率の低下を防ぐには、社員の意識改善はもちろんのこと、集中できる環境づくりも必要です。いつも同じメンバーが固まらないよう、席をランダムに振り分ける日をつくったり、集中したい人のために個別ブースを設けたりといった工夫をするとよいでしょう。
書類のペーパーレス化と物品管理の見直し
事例3のように書類などの管理の問題に対応するには、フリーアドレスの導入に先駆けて書類のペーパーレス化を進める必要があります。資料の保管や持ち運びの手間を省くためにも、可能な限り書類をデジタル化し、ペーパーレスでも仕事ができる体制を整えましょう。
また、書類だけでなく私物もきちんと管理できるよう、フリーアドレスの導入と共に個人用のロッカーの設置も必要です。そのほか、プロジェクタなどの共有物の場所がすぐ分かるよう、備品の位置を確認できるシステムの導入も検討するとよいでしょう。
部署内で連携が取れる制度づくり
事例4では、同じ部署のメンバー間のコミュニケーションが不足し、連携がうまくいかなくなるのが失敗の原因でした。このような問題を防ぐには、部署内での報告・連絡・相談が徹底されるような制度づくりが大切です。そのほかにも、週に何度かは部署内でのミーティングを設定したり、同一部署のメンバーが一緒に仕事をする日を設けたりといった対処法もあります。
フリーアドレスの意味を共有
事例5の席が固定化するという問題を解決するには、フリーアドレスを導入する目的を社員みんなが共有することが大切です。それでも席が決まってくる場合は、席を選ぶ際のルールを決めたり、席をシャッフルする日を設けたりといった工夫をしましょう。
まとめ
フリーアドレスのスタイルは、よりフレキシブルな働き方が叶うのが魅力です。せっかく導入すらなら、失敗して廃止とならないために、失敗につながる原因を理解して先手を打つようにしましょう。今回ご紹介した失敗例とその対処法を参考に、フリーアドレスを活かせるような環境づくりをまずは考えてみてください。
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