空気から、地球環境をこう変える!

子どもたちの絵画で未来の価値観を変える

「絵画」で育む、パナソニックが環境絵画コンクールで子どもたちに届けたい未来の価値観

「環境」をテーマに小学生から作品を募る、パナソニック主催の『環境絵画コンクール』。2006年から毎年開催し、全国から1,000点を超える作品が届いています。
現場の社員が抱いた「環境意識への高まり」から始まり、地道に、しかし着実に発展しつつ続いてきたコンクール。そこには「これからの社会を担う子どもたちが環境について考え、具体的なアクションを起こすきっかけをつくりたい」という願いが込められています。また本コンクールは当初から愛知県春日井市の後援を受けており、2019年から『春日井市長賞』も設けられました。

コンクール開設当時の意志を引き継ぎ、現在の事務局として運営にあたるのが、パナソニック株式会社 空質空調社の荒井由樹子、三井晴菜。コンクールを後援する春日井市から環境政策課の堀尾悦嗣さん、神美沙樹さんにもお越しいただき、パナソニックがこうした活動を続ける意義、コンクールを通じて育みたい未来の価値観についてうかがいました。

1 現場社員の思いから生まれた環境絵画コンクール

環境絵画コンクールは2006年に初めて開催され、15年以上継続しています。もともと、どのようなきっかけで始まった取り組みなのでしょうか?

荒井環境絵画コンクールはもともと、パナソニックのグループ会社で環境事業を担う「松下エコシステムズ(2006年当時)」が始めた取り組みでした。これからの環境事業を模索すると同時に、次世代教育にも力を入れていこうとしていた時期だったんです。
そこで2006年からスタートしたのが、小学生を対象にした環境絵画コンクールです。地球環境をテーマに絵を描くことで、環境問題について思いを馳せるきっかけを生み、具体的な行動につなげてもらえればと考えました。

荒井 由樹子
環境絵画コンクールの企画運営を担当している荒井 由樹子

もともとは現場の社員から生まれたアイデアだったそうですね。

荒井 そうですね。環境絵画コンクールはトップダウンではなく、現場の社員が抱いていた環境保全への思いが大きな起点になっています。 当時から春日井拠点(※)で働く社員は空気や水の環境技術を扱うという事業の関係もあって環境に対する問題意識が強く、一人ひとりが主体的に工場内の省エネ化を進めていました。そうした取り組みが評価され、工場として表彰を受けたこともあります。

【春日井拠点とは?】
空質空調社 春日井拠点は、愛知県春日井市に位置し、換気扇や空気清浄機など、室内空気質に関わる製品をグローバルに展開しています。工場は、CO2削減や資源リサイクルなど環境に配慮した生産活動を推進しています。

荒井 社会の「環境意識」の高まりに伴い、未来を担う子どもたちがしっかりと環境について考えることの必要性を企業としてもあと押ししたいという思いが「環境絵画コンクール」の企画につながりました。その思いは現在も同じです。

荒井さんは第5回から、環境絵画コンクールの事務局を担当されているそうですが、主催側として大切にしていることを教えてください。

荒井限られた予算のなかでいかに良いコンクールにできるか、いつも三井と二人で知恵を絞っています。子どもたちが描きやすいようにテーマを考えたり、チラシを設置する場所や受賞作品の展示会場を増やしたり。常に子どもの目線で、子どもたちにチャンスと自信をもってもらえるような活動にしたいと思って企画推進しています。

作品を評価するときは、絵のうまさだけではなく、子どもたちが「絵に込めた思い」もしっかりと汲み取らなければいけないと考えています。作品を応募いただく際には「タイトル」と「絵に込めたメッセージ」を一緒に送っていただいていて、その内容も審査の際の重要なポイントとしています。

このコンクールの実務を担当している三井さんは、子どもたちの作品やメッセージすべてに目をとおしているそうですね。そのなかで、どのようなことを感じますか?

三井 届いたメッセージのなかには、私たち大人も考えさせられるような鋭い視点や、ハッとさせられるような言葉もあって驚かされます。 そこから強く感じるのは、これからの未来に対して不安を感じている子どもたちがとても多いことです。「地球がどうなっていくのか不安です」と。

一人の大人として、子どもたちが未来に不安を抱かないような社会に少しでもなってほしいですし、 絵画コンクールの発信をとおしていまの子どもたちの不安や思いを伝え、一人ひとりの意識の向上や行動に繋げられたらと思っています。 環境絵画コンクールのウェブサイトでは環境絵画コンクールの全応募作品とともに、作品に添えられたメッセージも掲載していますので、ぜひ多くの人にご覧いただきたいですね。

三井 晴菜
環境絵画コンクール応募作品の管理をはじめ実務を担当していた三井 晴菜

パナソニック環境絵画コンクール

2 環境について考えるだけでなく「行動できる人」になってほしい

環境絵画コンクールがスタートした2006年に比べると、環境に対する社会の意識も大きく変化していると思います。それに伴い応募数の増加や応募作品の傾向に変化はありましたか?

荒井まず、応募数自体は回を重ねるごとに増えています。2021年の第16回から応募が1,000作品を超え、第17回は過去最高となる約1,589作品のご応募をいただきました。コンクール自体の認知度が増していることもありますが、学校の授業で環境について学んだり、テレビのニュースでさまざまな環境問題が取り上げられ、家庭内で話し合う機会が多くなったりしていることも要因ではないかと思います。

また、作品の傾向も開催年によって大きく変化していて、近年はたとえば「海洋プラスチック」の問題をクローズアップした作品が多いですね。学校でSDGsの授業をする際、この問題について取り上げる機会が増えたようで、それが要因ではないかと思います。きれいな海と、そこに暮らす生き物を守りたいという強い思いを感じます。

海洋プラスチック問題やきれいな海を題材にした作品
海洋プラスチック問題やきれいな海を題材にした作品
環境絵画コンクールの審査中の様子(画像提供:パナソニック株式会社)
環境絵画コンクールの審査中の様子(画像提供:パナソニック株式会社)

三井最近は、「学校のSDGsの授業でウミガメが誤ってビニール袋を食べ、命を落としていることを知って描きました」というメッセージが本当に多かったです。「海=きれいなもの」というイメージが強いなかで、ショックを受けた子たちが多かったようです。

子どもたちは純粋に、生き物を守りたいという一心で絵を描いてくれています。大人としてあらためて、子どもたちがそんな心配をしなくていい社会をつくっていかなければいけないなと感じました。

子どもたちにとっては授業で習うだけでなく、自分の思いを絵にすることで、より環境について深く考えるきっかけにもなりそうです。

三井それも大きな目的の一つです。先ほど荒井がお話ししたように、環境絵画コンクールの目的は「環境問題について考えてもらうきっかけを生み、具体的な行動につなげる」こと。大事なのは知ることだけではなく、それについて考え、自らアクションを起こすことだと思っています。

たとえば、地球温暖化や海洋プラスチックの問題について学校で習ったとします。子どもたちにはそこからさらに一歩を踏み出して、ごみの分別などできることでいいので何かを始めてほしい。環境絵画コンクールが、そのきっかけになれば嬉しく思います。

環境絵画コンクールの審査中の様子(画像提供:パナソニック株式会社)

荒井以前、作品の展示会場で入賞したお子さんやそのご家族とお話しをする機会があったのですが、絵を描いてからはより環境に対する思いが強くなったとおっしゃっていました。そこで芽生えた思いをどう育て、どんなふうに成長していくのか、私たちとしても楽しみにしています。

......じつは個人的に会いたい人がいるんです。私が初めて携わった第5回の環境絵画コンクールで最優秀賞だった、当時小学2年生の女の子。犬塚結理さんというお名前で、2010年の開催なのでいまは成人しているはずですが、彼女がどんな大人になっているのか。入賞したことで、人生に何かしらの変化があったのか。ぜひお話を聞いてみたいと思っています。

<第5回最優秀賞受賞の犬塚結理さんより>
13年ぶりに犬塚さんに連絡をとったところ、本記事のためにコメントを寄せてくれました!

左が第5回最優秀賞作品。中央は当時、右は現在の犬塚結理さん。いまは愛知教育大学教育学部にて、「社会」に対する若者の問題意識を変える教育を実現すべく、教員を目指しているそう。勉強の傍ら、書道にも熱心に励んでいるとのこと(画像提供:犬塚結理さん)

最優秀賞をいただいた絵では、大好きな祖父と一緒におたまじゃくしを見つける嬉しい瞬間を描いた記憶があります。

受賞してからは地球環境により興味が湧き、色々知っていくうちに「自分はまだ子どもだけど、できることはたくさんある」と環境に対する責任を感じるようになり、「環境に良いか」が日常の判断基準に加わりました。ペットボトルではなく水筒にしたり、祖父とよくしていた散歩ではついでにゴミ拾いをしたり。いま振り返ると、環境を考えることがより大きな「社会」を捉えるきっかけにもなっていたと思います。

いまの子どもたちがもし環境に対して不安に思っていたとしたら、その気持ちを大切にしてほしいです。そして、誰かにぜひ伝えてみてください。もしみんなが環境に対して不安に思い、行動を変えていけば、きっと地球の環境は大きく変わるはずですから。

3 受賞作品が市内を巡回。地元小学生からの応募が急増

2019年からは、新たに春日井市長賞が設置されました。春日井市環境政策課の堀尾さん、神さんは市側の担当窓口として環境絵画コンクールにご協力いただいていますが、あらためて、春日井市とパナソニックが連携するに至った経緯を教えてください。

堀尾春日井市では2002年に「かすがい環境まちづくりパートナーシップ会議(以下、PS会議)」を設立し、市民の方々や地元の事業者の方々と連携しながら、さまざまな環境活動を実施してきました。パナソニックさんとも当初から、環境に関するさまざまな取り組みでご一緒させていただいております。

環境絵画コンクールに関しては全国から作品を応募していますが、やはり地元の企業による取り組みということで、春日井市としても何かしらのかたちで連携・協力できないかと考えていました。それが2019年に春日井市長賞を新設した経緯です。なお、受賞作品はごみ収集車の側面にラッピングされ、市内全域のゴミ収集や環境学習で活用されます。

春日井市 環境政策課の堀尾悦嗣さん(左)、神美沙樹さん(右)。春日井市の環境施策企画立案実施を行なっている
受賞作品をラッピングしたゴミ収集車(画像提供:春日井市 環境政策課)

ごみ収集車に受賞作をラッピングしたことによる環境絵画コンクールへの影響について、荒井さんはどのように感じましたか?

荒井ラッピングカーの影響は本当に大きく、そこから地元でのコンクールの認知度が一気に高まり、春日井市内からの応募が急増しました。それ以外にも春日井市さんには本当にお世話になっていまして、たとえば市内で行なわれる各種環境イベントなどで入賞作品を展示してくださったり、教育委員会を通じ、一部の小学校で環境絵画コンクールの絵を夏休みの宿題の一つとして設定してくださったり。このような展開は私たち事務局だけでは実施できないので、本当に心強い存在です。

環境絵画コンクールに対する市民の方々からの反応はいかがでしょうか?

堀尾春日井市ではごみ収集車を使い、子どもたちにごみの分別などを学んでもらう「青空教室」を市内の小学校・保育園などで実施していますが、環境絵画コンクールのラッピングカーを用いるようになってからは子どもたちの反応も良く、より関心が高まったように感じます。

市民の方からも直接「いい活動ですね」「小学生のときから環境を考える、いいきっかけになりました」といったお声をいただいています。未来を担う子どもたちや若い世代に対する啓発活動は私たち環境政策課の重要なミッションですので、今後もぜひご一緒させていただきたいです。

荒井さんは企業と自治体が一緒に環境活動に取り組むうえで、大切なことは何だと思いますか?

荒井やはり「一緒に行動すること」じゃないでしょうか。たとえば、企業と自治体が一緒に環境活動をしようというときに、企業側がお金だけ出して活動の中身には無関心といったケースもあると思います。そんなビジネスライクなスタンスではなく、企業側も積極的に企画会議などの場へ参加し、アイデアを出し、市が主催する環境イベントにも顔を出して協力する。それにより信頼関係が生まれて、より良い活動、より長期的な活動につながっていくのだと思います。

まさに「自らアクションを起こすこと」を大事にしているのですね。

4 発展より「継続」。子どもたちに環境や自然を考えるきっかけを届け続けたい

荒井さんは今後、環境絵画コンクールをどのように発展させていきたいですか?

荒井発展はもちろんですが、まずはやはり継続することが大事だと思っています。会社の大きな組織再編のなかで継続するかどうかを見直すこともありましたが、周囲の多くの方々に助けていただきこれまで続けることができました。

すべての子どもたちが、いまも、これからの未来も安心してくらしていくために、環境保全活動や地域の方々との交流は必須です。これからも、事業ミッションと合致したテーマを掲げ、環境絵画コンクールをとおして環境や自然について考えるきっかけを創出していきたいです。また、もっと多くの全国の子どもたちに参加いただけるよう活動の輪を広げていきたいですし、その子どもたちの純粋な思いを多くの方々に届けていければと思っています。

思いを持った社員が15年以上続けてきた環境活動だけに、未来に向けて残していきたいですよね。

荒井そうですね。パナソニック全体として環境問題に取り組むことはもちろん重要ですが、環境絵画コンクールのように現場発の小さく地道な活動を推奨していくことも、同じくらい大切ではないかと思います。

トップが大きな戦略を立てても、現場の社員にそうしたマインドが醸成されなければ本当の意味で環境にやさしい会社にはなれません。逆に、社員一人ひとりの環境意識が高まれば、そのぶんだけ環境に配慮した製品が数多く生まれていくはず。そのためにも、こうした取り組みを少しでも長く続けていきたいです。

荒井 由樹子 Yukiko Arai
パナソニック株式会社 空質空調社品質・環境室 環境推進部(現:パナソニック株式会社 空質空調社 品質・環境センター 環境推進部 環境企画・ファシリティ課)
1985年入社。本部職能として技術管理を経て知財業務を中心に意匠・商標業務に従事。2010年9月より環境職能に在籍。環境事務局としてISOをはじめ、社員の環境マインド醸成、地域共生などを手がけている。

私の未来への想い「環響」
通常の「環境」という熟語は「環(わ)」に「境(さかい)」をつくってしまいます。これからは「環響」とし、人々の「環(わ)」を大切に各々の「響き」を加え美しい調和の世界が生まれると良いなと思います。
三井 晴菜 Haruna Mitsui
パナソニック株式会社 空質空調社 人事担当 人事センター 総務部
2022年より、派遣社員として環境絵画コンクールを中心に環境活動や春日井拠点のエネルギー・資源の利用量、廃棄物発生量の集計業務などに従事。

私の未来への想い「創造」
絵画コンクールを通して、1から創造することの楽しさや、環境活動を子ども達に体験してもらい、自分達の未来を創造することに繋げて欲しいと思います。
堀尾 悦嗣 Etsushi Horio
愛知県 春日井市 環境部 環境政策課 課長
1993年入庁。2020年4月より環境政策課に在籍。
環境まちづくりやカーボンニュートラルの実現に向けた取組みを進めています。
神 美沙樹 Misaki Jin
愛知県 春日井市 環境部 環境政策課
2020年入庁。2022年11月より環境政策課に在籍。
市民、事業者、市の三者協働によるさまざまな環境活動に取り組んでいます。
※記事中に記載の情報は、2023年10月のものです。
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