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2022.02.15
バイオフィリックデザインのデメリットとは? オフィス空間における取り入れ方
今注目されているオフィスデザインである「バイオフィリックデザイン」にもデメリットがあります。そのため、基本的な考えとデメリットを理解した上で、採用するかどうかを慎重に決めるべきです。
本記事では、バイオフィリックデザインを採用することで想定されるデメリットとその対策、向いている企業や向いていない企業などを紹介します。後悔しないためのポイントや事例も紹介していますので、バイオフィリックデザインの導入を考えている担当者は必見です。
バイオフィリックデザインを取り入れた空間デザインとは?
バイオフィリックデザインとは、“人間は本能的に、自然に対して心地よさや解放感を得る”という考え方であるバイオフィリア仮説をもとにした空間デザインです。アメリカの生物学者エドワード.O.ウィルソン氏によって、1984年に提唱されました。
簡単に言うと、自然環境を採用した空間デザインのことで、オフィス内にはグリーンや植物の香り、川のせせらぎなど、五感を刺激するデザインが取り入れられています。
バイオフィリックデザインには、次のような効果が期待できると言われており、今多くの企業から注目されているのです。
【バイオフィリックデザインの導入で期待できる効果】
- ・ストレス軽減
- ・生産性向上
- ・幸福度アップ
- ・創造性アップ
実際、ケイリー・クーパー博士らが行った「世界中の職場におけるバイオフィリックデザインの効果」(※1)でも、その効果が証明されています。
植物や日光といった自然的要素のある空間で働く人は、一般的な蛍光灯やパソコン画面などの人工的な環境で働く人よりも幸福度と創造性が15%も向上しているのです。生産性も6%ほど高い結果となっており、バイオフィリックデザインが働く人に大きな影響を与えていることが明らかとなっています。
幸福度が高まれば、従業員も仕事に対するモチベーションが高まり、ストレスも軽減できますよね。高いモチベーションを維持できると、そのぶん生産性も創造性も向上しやすくなるため、従業員が健全に働ける職場環境づくりが重要視されつつあります。
特に、近年はコロナ禍や働き方改革により、働く環境を改善する動きが活発です。そのため、バイオフィリックデザインを導入する企業が増えています。
※1 出典:ロバートソン・クーパー社「世界中の職場におけるバイオフィリックデザインの効果」
▼バイオフィリックデザインのメリットについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
「『バイオフィリックデザイン』から得られる効果とは|実は多くの理にかなったオフィス緑化」
バイオフィリックデザインを採用することで想定されるデメリット
企業視点だけでなく、従業員視点でもメリットの多いバイオフィリックデザインですが、デメリットもあります。具体的なデメリットについて見ていきましょう。
導入やメンテナンスにコストがかかる
バイオフィリックデザインを導入するとなると、既存の整備されたオフィス環境を大幅に変えなければならない可能性もあり、その場合はコストがかかります。1からバイオフィリックデザインを採用した空間に作り直す場合はもちろん、既存のオフィス空間を活かしながら採用する場合も緑を配置したり、レイアウトを変えたりするのにコストがかかるでしょう。
また、導入後も植物の管理・維持のためのメンテナンス費用が必要であるため、持続的なコストがかかることも理解しておかなければなりません。
動線や避難経路に支障が出ることがある
既存のオフィス空間に、そのままバイオフィリックデザインを導入してグリーンなどを配置してしまうと、レイアウトによっては通路幅を狭めてしまう心配があります。
日々の行き来に影響が出るだけでなく、地震や火災といった万が一のときに、避難経路の妨げとならないよう、導入する際は、安全面にも配慮した計画やレイアウトを考えましょう。
デメリットも把握して賢くバイオフィリックデザインを採用する方法
バイオフィリックデザインを採用することで想定されるデメリットを見て、導入することの難しさを感じた人もいるかもしれませんが、デメリットを把握しておけば対策ができます。
賢くバイオフィリックデザインを採用する方法について見ていきましょう。
レンタルグリーンを活用する
レンタルグリーンは、名前の通り、観葉植物などをレンタルする方法です。継続的にレンタル料金やメンテナンスコストはかかりますが、業者が空間に合ったグリーン選びから管理までを一括で行ってくれるため、購入時の選定の手間やメンテナンスの手間を抑えることができます。
また、レンタルグリーンなら、定期的に配置するグリーンの種類を入れ替えることで、オフィス空間の印象を変えることも可能です。
配置換えなどをうまく活用すれば、従業員もオフィス空間に新鮮さを感じやすくなり、グリーンを通して気分転換もできるため、幸福度や創造性などの効果もより期待できるかもしれません。
配置スペースや動線を確認する
動線や避難経路の問題については、配置スペースに合ったサイズ感のグリーンを採用することで、支障なく空間を緑化できます。
例えば、動線が狭い部分には、フロアに置くタイプではなく、天井から吊るすタイプや壁掛けタイプなどを採用することで、従来のレイアウトのままでもグリーンを取り入れることが可能です。
バイオフィリックデザインが向いている企業・向いていない企業
デメリットを把握した上で実現可能な方法を紹介しました。しかし、どの企業でもバイオフィリックデザインを採用できるというわけではありません。
ここでは、バイオフィリックデザインが向いている企業・向いていない企業についてお話ししたいと思います。
バイオフィリックデザインが向いている企業
バイオフィリックデザインについてお話しした際に触れた通り、自然的要素のある空間では、従業員の幸福度や生産性、創造性が向上するため、新しいことを生み出すIT系やクリエイティブ系の企業に向いています。
また、働く環境にグリーンがあるとストレスの軽減効果も期待できることから、一日中オフィスで過ごすことが多い事務作業がメインの部署などにもおすすめです。
普段から従業員の健全な職場づくりを心がけている企業、健康経営意識の高い企業なども向いているでしょう。
バイオフィリックデザインが向いていない企業
既存空間にグリーンを配置するスペースがない場合には、バイオフィリックデザインの導入ハードルが高いかもしれません。
また、バイオフィリックデザインでは、グリーンもフェイクグリーンではなく、本物の植物を配置するため、フロア内に土や水を持ち込むことになります。そのため、精密機器を取り扱う部門や衛生重視の部署では、植物の配置は難しいでしょう。
ただ、バイオフィリックデザインで用いられる要素は、グリーンだけではありません。土や水の問題からグリーンが置けない場合は、川のせせらぎといった環境音や自然光を積極的に取り入れる方法を検討しましょう。
バイオフィリックデザイン採用後に後悔しないためのポイント
バイオフィリックデザインを採用してから後悔しないためには、レイアウトから導入後の維持管理までをプロに任せることです。
メリットの多いバイオフィリックデザインですが、デメリットもあります。そのため、導入するとなると、先のことも見越して、事前にしっかりと計画を立て、準備をしなければなりません。
ただ、初めてバイオフィリックデザインを知り、見よう見まねで準備や計画を進めても、素人では難しいこともあるでしょう。
実際、自分たちでレイアウトを考えたり、採用するグリーンを選んだりするのは大変なものです。グリーンによってもお手入れ方法が違い、手間がかかる可能性もあります。せっかくバイオフィリックデザインを採用しても、維持管理ができずに植物を枯れさせてしまったり、従業員に手間をかけさせてしまったりしては、効果も期待できません。
バイオフィリックデザイン採用後に後悔しないためにも、導入の際には、初めからプロに任せることも視野に入れて検討することをおすすめします。
参考にしたいバイオフィリックデザインの事例
バイオフィリックデザインについて理解が深まったものの、自社のオフィスフロアへどのような形で採用すべきか、なかなかイメージできないという人もいるでしょう。
そこでこの章では、バイオフィリックデザインを実際に採用している日本企業を5社ピックアップして紹介したいと思います。
アイテム選びのポイントや配置の仕方、バイオフィリックデザインを取り入れるときに真似したい工夫などに注目して見ていきましょう。
NTTコミュニケーションズ株式会社(CROSS LAB内執務エリア)
さまざまなICTサービスを構築・提供しているNTTコミュニケーションズでは、ITエンジニアがシステムデバッグ作業を行うフロアにバイオフィリックデザインを導入しています。どうしても緊張感や修正のストレスが付きまとう検証作業において、そのストレスを軽減するソリューションを担当者が思案し、COMORE BIZ(コモレビズ)というパソナ・パナソニックビジネスサービス株式会社が中心となり展開しているサービスを採用。
単に緑をオフィス空間に入れるだけではなく、音響システムを内蔵したビルトインプランターを採用し、小鳥のさえずりや虫の鳴き声など自然音も取り入れることで、働く人の仕事の性質にも合わせたリラックス空間を提供しています。
NTTコミュニケーションズ株式会社 CROSS LAB内執務エリアの事例はこちら
ヤンマー本社ビル
ヤンマーホールディングス株式会社の本社ビルは、国際的な環境建築の顕彰である「Biophilic Design Award」において大賞に次ぐ入賞を果たすほど、自然や環境に配慮したデザインが特徴です。
「自然との共生」をコンセプトに建てられ、例えば、最上階ではフロア内にガラス張りの養蜂場が設けられています。
養蜂場はあくまで一例ですが、自然を模した景観がフロア内で楽しめるという状況は、バイオフィリックデザインの効果として絶大なものです。広いスペースが確保できるのであれば、フロアの中央に緑化スペースを設けてみてはいかがでしょうか。
ザ・パークレックス天王洲「the DOCK」
ザ・パークレックス天王洲「the DOCK」は、2019年6月にグランドオープンしたコワーキングスペースです。
室内に植栽や水什器を配置するだけでなく、プロジェクターを使ってそれらに映像を投影し、実際に風で揺れ動く木々や波打つ水面を表現しています。照明も時間帯に合わせて明るさを調節するなど、映像や光を工夫して自然的要素を高めているところは、真似したいポイントです。
▶ザ・パークレックス天王洲「the DOCK」の事例はこちら
parkERs(パーカーズ)
空間におけるデザインのプロと植物の専門知識を有するプロが作り出した「parkERs」は、「日常に公園のここちよさを。」をコンセプトに、デザイン×グリーンの空間を提案する株式会社パーク・コーポレーションの事業です。
空間デザインを手掛けるだけあり、公式サイトで閲覧できる実例写真では、オフィスの随所にグリーンが配置されています。例えば、空間を隔てる仕切りやソファー、テーブルといったインテリアの一部にグリーンを設置するアイデアは、既存オフィスでも真似しやすい工夫のひとつです。
Global Business Hub Tokyo
“City Camping”がコンセプトの「Global Business Hub Tokyo」は、日本最大規模のビジネス支援施設です。
共用ラウンジスペースの壁面沿いにグリーンを配置することで、動線を確保しつつ、上手く癒しを取り入れています。
竹中工務店東京本店ワークラウンジ「KOMOREBI」
株式会社竹中工務店の東京本店ワークラウンジ「KOMOREBI」は、先ほど紹介した「parkERs」が手掛けた緑あふれるバイオフィリックデザイン空間です。
天井から吊り下げるタイプのグリーンも取り入れられており、空間全体が緑に包まれています。天井にグリーンを配置するだけでも、自然的要素を強く感じられるので、フロアが狭いという企業はこの事例を参考にして、吊り下げタイプを採用するとよいでしょう。
▶竹中工務店東京本店ワークラウンジ「KOMOREBI」の事例はこちら
デメリット対策をしてバイオフィリックデザインを取り入れよう
バイオフィリックデザインにもデメリットはありますが、対策や工夫次第で取り入れることができます。ただし、バイオフィリックデザインが向いていない企業・部署があるのも事実です。
本記事で紹介した事例を参考にしつつ、事業内容的にグリーンを取り入れることが難しいときは、音や光で取り入れるなど、自社に合った方法を採用しましょう。
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