テレワーク
2021.06.04
テレワークはメリットばかりではない!問題点を知って改善につなげよう
テレワークは、オフィス以外の場所で仕事をすることで、通勤時間を短縮できる、ライフスタイルに合わせた働き方ができる、オフィスコストを削減できるなどのメリットがあります。働き方の多様性が求められている今、テレワークは大きな注目を集めている働き方です。
その一方で、問題点があるのを見過ごすことはできません。新型コロナウイルスの影響で、周到な準備期間を確保できないままテレワークに突入した企業も多かったかと思います。
今回の記事では、テレワークが抱える問題点を探り、よりよいテレワーク環境を整備するための改善策を考えます。
海外に比べ、日本でテレワーク導入が進まない要因とは?
「コロナ禍に求められるオフィスとは?意識調査レポート2021」によると、新型コロナウイルス感染症が拡大した影響でテレワークを採用している企業は、52.3%にも及んでいることが分かりました。特に、従業員が1,000名以上の企業では、62.4%もの企業がテレワークを採用している結果が出ています。
参考:「コロナ禍に求められるオフィスとは?意識調査レポート2021」資料ダウンロード
その一方で、コロナ前と比べて働き方が変わっていないと答えた企業も41.0%にのぼり、テレワークを導入していない企業も多いことが分かります。
テレワークを導入しない理由としては、リモートコミュニケーションに関する不安や、オンとオフの切り替えの難しさ、セキュリティ面での懸念などがあげられています。
また、次のような事情も、テレワーク導入に対してハードルを上げる要因となっているのです。
日本の企業では帰属意識が強く残っている
日本では、諸外国に比べ、企業に対する帰属意識が強く見られる傾向があります。単独で業務を担当するのではなくチームで行うのが主流であり、メンバー間のコミュニケーションが重要です。テレワークでは、コミュニケーション面で不安を感じる人が多く、導入に後ろ向きとなってしまう結果につながります。
ハンコや対面を重視する
日本にはハンコ文化が残っており、ペーパーレス化がなかなか進まない要因となっています。長年続いた慣習を変えるのは、ハードルが高いと言えるでしょう。
2020年(令和2年)12月に、内閣府が「押印見直しマニュアル」を作成し、脱ハンコに向けた取り組みが始まりました。これにより、行政手続について認印は全て廃止される見込みとなったほか、どうしても残さないといけない押印以外は見直しが進められています。
同時に、民間企業に対しても検討を勧めています。この取り組みが、即座にテレワークの推進につながるかは不透明ですが、新たな一歩となるのは間違いないでしょう。
また、対面でのコミュニケーションを重視するのも、日本ならではの習慣です。リモートワークで対面せずに仕事をすることに違和感を覚える人も多いようです。
導入時点での問題点とは
企業にとって、テレワークを導入するのは新しい取り組みであるため、問題点が起こりやすくなります。中でも多くの企業で聞かれる問題点を取り上げてみましょう。
ネット環境
テレワークに必要不可欠なものはネット環境です。
1人1台モバイルパソコンを貸与する、自宅でネット環境を用意できない従業員にはコワーキングスペースなどの施設を確保するなどの対策が有効です。
また、急にネット回線が途切れてしまう等の通信トラブルが起こることも考えられます。オンラインミーティング中に通信が途切れると、打ち合わせに支障が出ます。通信速度が遅い環境にも、注意が必要でしょう。
セキュリティ対策
ネット環境と併せて問題となるのが、セキュリティ対策です。テレワークのリスクのひとつに、情報漏洩があげられます。持ち出したパソコンやUSBの紛失、フリーWi-fiからのデータ漏洩に注意が必要です。
テレワークに適したセキュリティ対策をとっていなければ、不正アクセスに遭う可能性もあります。データを暗号化せずに送信すると、外部から情報にアクセスされるリスクもあるでしょう。
テレワークに適した業種ではない
テレワークに適していない業種もあります。製造業、建設業、運輸業、運送業などは現場が必須であるほか、インターネットを使った業務はごくわずかです。また、医療関係や福祉関係、飲食業、販売業なども、対面が求められますので、テレワークは適していません。
テレワークができない企業も多数存在するという事実も、忘れてはなりません。
運用面での問題点とは
テレワークを無事導入し、実運用を始めてからも、新たな問題が発生することがあります。
上司が部下のマネジメントをしにくくなる
テレワークでは、上司が部下の働いている姿を直接見ることができません。このため、仕事のスキルを判断する材料が乏しくなり、上司が部下を評価することが難しくなります。
経営学者のピーター・ドラッガーは、上司が部下のマネジメントを行うために求められるスキルとして、目標設定・組織化・コミュニケーション・評価測定・問題解決という5つのスキルをあげています。
これらのスキルは、会社や組織において上司が管理できる環境の中で行われないと、マネジメントが非常に難しいと説いています。
労働時間が長引く傾向が出てくる
これも、働く姿が見られないことが要因となっていますが、テレワークではONとOFFの区別が付けづらくなります。業務の開始時間と終了時間もはっきりしづらく、労働時間が長引くことにつながります。
また、同じ理由で、深夜労働にいたることも増え、勤怠を管理しにくくなるケースもあります。
オフィスに出勤している社員が不公平感を感じることがある
企業全体ではなく、部署ごと、または育休社員のみなど、一部社員に限定してテレワークを導入すると、オフィスに出勤している社員とテレワークをしている社員の間で不公平感が生じる場合があります。
出勤している社員はテレワークのメリットのみを捉えてしまい、自分は大変な思いをして出勤しているのに、と感じてしまいます。
作業環境の差が出やすくなる
自宅のパソコンを業務に使う場合と、企業から貸与されたパソコンを使う場合とでは、性能に差が生じることがあります。パソコンを利用する場所や、つなげる回線によっても、環境の差が生まれる要因となりえます。
パソコンを設置できるスペースの広さや、家族構成などによっても、自宅における作業環境は大幅に変わってきます。
問題点に対する改善策をご紹介
以上、テレワークにおける問題点を検証してきました。これまでご紹介した問題点を改善し、よりよいテレワーク環境を構築するには、どのような対策が有効的なのでしょうか。
社内システムのクラウド化を進める
テレワークでは、様々な場所で作業を行うため、社内システムにアクセスできるようにクラウド化を進めることも重要です。
例として、自宅でもコールセンター業務ができるようなシステムや、クラウド型営業支援ツール等があげられます。また、クラウド型の会計・経理システムは、最新バージョンにするだけで法改正に対応可能なものが多いため、経理ミスを防ぐことができます。
さらに、勤怠管理ツールやタスク管理ツールなどを活用し、テレワークでもマネジメントできるシステムを作りましょう。
一部業務だけでもテレワークにできないか検討する
テレワークができる業務は、基本的にパソコンやインターネットを使う仕事に限られます。製造業などでは導入が難しいと解説しましたが、資料作成やメールの送受信など、一部業務ではパソコンを使う場面が増えているのではないでしょうか。このような業務であれば、テレワークの検討も可能となります。
テレワークに加えて、業務の流れを整備し、業務の自動化やアウトソーシングを進めるなど、出社を減らせるようなシステムを導入することも効果があります。
セキュリティ対策の強化徹底
テレワークで最も懸念される点はセキュリティ対策です。セキュリティ対策が適切に行われないと、情報漏洩のリスクが高まります。情報漏洩が起こった企業は信用度を落とし、回復するには相当の時間と労力が必要です。
情報漏洩を防ぐには、適切なセキュリティ対策の実施が求められます。具体的には、セキュリティソフトの導入、通信の暗号化、パスワードロックをかけたUSBメモリの使用などがあります。
対策に加えて、従業員のセキュリティに対する意識向上への取り組みが重要です。対策やシステムが整っていても、それを扱う従業員の意識が低ければ、十分に活用することはできません。
自宅などでのネット環境を整備
従業員にモバイルパソコンや、Wi-fi環境を貸与できる仕組みを作ることも重要です。Wi-fi接続が不安定な場合には、有線LANへ接続することで不安を解消できます。
チャットツールなどを活用してのコミュニケーション
テレワークでは、オフィスにいるのと同じようなコミュニケーションをとるのが難しくなります。コミュニケーションが不足すると、共有できる情報量が減ってしまうことや、強い孤独感を感じるようになるなどの問題が起き、生産性が下がることにもつながるでしょう。
この状況を防ぐには、オンライン会議システムを活用して定期的にミーティングを開催したり、ビジネスチャットの導入で気軽にやりとりするなどして、今までどおりのコミュニケーションがとれるように工夫しましょう。
できれば、週に数日など出勤日を設定して定期的に顔を合わせられる機会を作ると、さらに円滑なコミュニケーションがとれるようになります。
助成金の活用
テレワークの導入に必要なパソコン環境やセキュリティの対策には、多額の経費が必要となります。これに加え、通信費、光熱費、机・椅子などの購入費用も必要です。
国や自治体、各企業などでテレワーク導入に対する助成金制度を設けており、申請条件や方法などがそれぞれ異なります。場合によっては、申請受付が終了しているところもありますが、一度問い合わせてみると良いでしょう。
評価制度を見直す
オフィスと異なり、テレワークでは仕事完了までの過程(プロセス)が分かりにくく、評価がしづらくなります。一方で成果による評価をしやすくなることから、テレワークの導入に合わせて評価制度の見直しを検討する企業もあります。
これまでの時間制(プロセス)評価に加えて、成果評価をしていくことで、より公平な評価につながっていくでしょう。
テレワークとオフィス勤務とで、評価基準が異なってしまってはいけません。また、上司によって評価基準にばらつきがある事態も防ぐ必要があります。テレワークを行う従業員と上司の間で、業務内容と成果についての理解を共有していくことが重要なのです。
まとめ
テレワークは、今や企業に欠かせない取り組みとなっています。メリットに目が向けられやすいのですが、ここでご紹介したように問題点が多く残っているのも事実です。
問題点を解決することで、仕事の生産性を上げられ、働き方改革のさらなる推進にもつながります。ぜひ、企業をあげて取り組みを進めてみてください。