開館15周年 特別展 ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテ

展覧会レビュー

エントランスサイン

開館15周年を記念する本展では、20世紀フランスを代表する画家ジョルジュ・ルオー(1871-1958)の画業の軸である聖なる芸術に焦点をあて、画家が目指した美しい愛のかたちを紹介しました。

敬虔なキリスト教徒だったルオーは、生涯にわたって「受難」や「キリスト像」などの宗教主題を数多く描きました。画題が伝統的である一方、その造形表現は極めて革新的でした。本展は、こうしたルオーにおける聖なる芸術の意味とその現代性(モデルニテ)をあらためて問うたものです。

出品作品は、当館が所蔵するルオーコレクションに加え、ヴァチカン美術館が初めて日本に出品する《秋 またはナザレット》や、ポンピドゥー・センター パリ国立近代美術館が所蔵する《聖顔》、パリのジョルジュ・ルオー財団が所蔵する《サラ》など、国内外のルオーの名作が集結しました。「第1章 ミセレーレ -甦ったイコン」「第2章 聖顔と聖なる人物 -物言わぬサバルタン」「第3章 パッション[受難] -受肉するマチエール」「第4章 聖書の風景 -未完のユートピア」と特別セクションという五つのセクションで展示は構成され、出品作品84点をテーマに分けて紹介しました。

神聖な雰囲気に仕上げられた会場には、第3章と第4章の間に「特別セクション 聖なる空間の装飾」と題した部屋を設け、祭壇風の設えにステンドグラスやキリスト像を飾り、写真撮影が可能なエリアとして提供しました。また、会場の最後には、ルオーの作品の中に入り込むような映像を投影し、皆様にお楽しみいただきました。

展示の最初では、映画「ミセレーレ: ジョルジュ・ルオー版画作品選より」の冒頭2分半を上映
「第1章 ミセレーレ -甦ったイコン」展示風景
「第2章 聖顔と聖なる人物 -物言わぬサバルタン」展示風景
「第3章 パッション[受難] -受肉するマチエール」から「特別セクション 聖なる空間の装飾」の展示を臨む
「第4章 聖書の風景 -未完のユートピア」展示風景

イベントレポート

記念講演会 「我が祖父ルオー、そして『ミセレーレ』」

ジョルジュ・ルオーの孫であり、またパリのジョルジュ・ルオー財団の理事長であるジャン=イヴ・ルオー氏にご講演をいただきました。ルオーが生まれてから画家として確固とした地位を確立するまでを丁寧に辿りながら、ルオーの画業と人生を分かり易くお話しくださいました。途中、年譜にも載っていない家族ならではのあたたかなエピソードも交えられ、ますます画家ルオーへの親しみが増すような内容のご講演でした。

講師
ジャン=イヴ・ルオー氏(ジョルジュ・ルオー財団理事長)
日時
2018年9月29日(土) 午後2時~3時30分
会場
パナソニック東京汐留ビル5階ホール
ジャン=イヴ・ルオー氏(右)と通訳の宇都宮彰子氏(左)

対談 「ルオー芸術における”動的平衡”をめぐって」

生物学者として国内外における研究に携わり、またベストセラー作家でもある福岡伸一氏と、ルオーを所蔵する当館が長年学術的なご協力を頂戴している後藤新治氏とに対談形式でご講演いただきました。当日は、「動的平衡」を生命の本質とし「生命とは何か」について解説される福岡氏の著作の大ファンでおられるという後藤氏が主に聞き手となって、生命、科学、フェルメール、ルオーなど、ジャンルをまたがるキーワードをめぐってお話を頂く刺激的な内容でした。

講師
福岡伸一氏(生物学者・青山学院大学教授)
後藤新治氏(西南学院大学教授・本展監修者)
日時
2018年10月17日(土)午後2時~3時30分
会場
パナソニック東京汐留ビル5階ホール
福岡伸一氏(右)と後藤新治氏(左)