- 活動レポート
#Week11
1週間の個人練習期間を経て、再び全体トレーニングが始まったワイルドナイツ。
週の前半には激しい雨が降ったが、そんな悪天候下でさえグラウンド脇にはファンの方々の姿が見受けられた。
ある選手が教えてくれた。「ロビーさんが居るだけで練習が締まる」
声を出して練習の陣頭指揮を執るわけではない。各コーチがそれぞれの役割を担いながら、ロビー監督はそっと後方から練習を見守るのが定番スタイルだ。
その中でも良いプレーには両手でサムアップを、何かアドバイスがあれば個々人に短く声を掛ける。
楽しい中に緊張感があるような、そんな練習が今週も続く。
★★★ 今週のピックアップ ★★★
谷田部洸太郎選手&戸室達貴選手
樹徳高校の先輩後輩である、谷田部選手と戸室選手。オフ期間中には共に練習をし、昨年の自粛期間中は近くの山でトレーニングを重ねた。
そんな2人が大事にしている、「魅力的な男になれ」という言葉の意味とは。
――お2人はともに樹徳高校出身ですが、ワイルドナイツに入る前から面識はあったのでしょうか
谷田部8学年違うのですが、同じ監督に指導してもらったキャプテン同士ということで、知ってはいました。
戸室洸太郎さんの親戚が僕と同級生でラグビーをしていたこともあり、たまに練習に来てくださっていましたよね。
――座右の銘は、ともに『魅力的な男になれ』です。樹徳での教えですか?
戸室そうです、監督がいつもおっしゃっていた言葉ですね。言わんとすることは同じなのですが、年代によって少し伝え方は違うかもしれません。
谷田部僕の代は「ラグビーが上手い下手関係なく、魅力的な男になりなさい」と言われていました。その『魅力的』という意味が当時は良く分からなかったのですが、年を重ねながらラグビーをする中で、「こういう人が魅力的な男だよな」と段々理解してきたように思います。
戸室僕の頃は「格好良い男になれ」と言われることが多かったです。ラグビーだけでなく人として、格好良い男になりたいと思います。
――ぜひ、お2人が考える魅力的な男像を教えてください
谷田部日本代表ですね。2015年のワールドカップで南アフリカに勝った選手たち、2019年でベスト8になった選手たちを見ていたら「こういう人たちが魅力的なんだ」と自分の中で結び付きました。2020年にサンウルブズから声を掛けて頂いた時には、「今度は自分が魅力的な男になるチャンスが来たな」と思ったことを覚えています。
戸室僕の中の魅力的な男、なりたい男像というのは、当時の樹徳高校の監督ですね。今の所、その監督を超える人には出会えていません。実は、練習試合中にくも膜下出血で倒れて目の前で監督が亡くなったんです。もし監督が健全で生きていたら、僕の人生も大きく変わっていたと思います。
谷田部物凄い怖い先生だったんですよね。ラグビーは危険と隣り合わせのスポーツだからこそ、厳しく教えてくださいました。でも、卒業してから監督に会いに行くとめちゃくちゃ優しい。OBとして帰りたくなるような、会いたくなるような監督でした。
■タックルよりもチームからの信頼を失う方が圧倒的に怖い
――谷田部選手は今年茨城県に引っ越されましたが、通勤も大変だと思います。毎日どのような生活スケジュールなのでしょうか
谷田部朝4時半に起きて5時に家を出発し、真っ暗な中を車で走っていると6時頃に古賀辺りで太陽が昇るのを感じて、6時半過ぎにクラブハウスに到着します。7時からウエイトトレーニングをした後は会社に行き、仕事終わりに再びクラブハウスに戻って全体練習です。
家に着くのは夜の8時頃ですね。子どもとお風呂に入ったりゲームをしたりして、10時から11時頃に寝る、というのが毎日のスケジュールです。でも朝早く起きることは苦でないですし、車の運転も好きなので全然問題はありません。
――どうしたらそこまで頑張れるのでしょう
谷田部僕、高校でラグビーを辞めようとしたんです。でも樹徳のOBで国士舘大学に通われていた方が、毎週僕を勧誘しに高校まで来てくれて。色んな大学から誘われていたのですが、「洸太郎が欲しい。ぜひ来てくれないか」と1か月半ずっと来続けてくれたんですよね。そうするうちに、必要とされるならチャレンジしてみようかなという気持ちが芽生えて、国士舘大学に進学することにしました。
でも行ってみたら、本当にキツくて(笑)。大学4年間がキツ過ぎて、それ以上のキツさを未だかつて経験したことはありません。この4年間に比べたら、往復3時間超の通勤は何ともないですね。
――ワイルドナイツに加入して、今年で13年目になりました。後輩に継いでいきたいワイルドナイツの文化を教えてください
谷田部ワイルドナイツはディフェンスが強みのチーム。ディフェンスというのは、自分自身の気持ち、責任です。そこがしっかりしていないと、ワイルドナイツでは試合に出ることが出来ません。僕は、タックルに行って怪我をすることよりも、タックルに行かずに抜かれる方が怖いです。タックルを怖がってチームからの信頼を失う方が、圧倒的に怖い。
それくらいワイルドナイツのディフェンスは強みだと思うので、伝統として継いでいって欲しいなと感じます。
――先日のSA浦安戦は、久しぶりの試合でしたね
谷田部練習してきたことを20分という短い出場時間でどれだけ出せるか、というのが課題でした。ラインアウトやスクラムなどのセットプレーでは満足する部分はあるのですが、まだ改善したい、より良くしたい部分もあります。
ディフェンスで相手をどれだけ前で止められるか、というのは常にチャレンジですね。今回は短い出場時間だったので、次の試合でも継続課題として取り組んでいきます。
――谷田部選手でも、課題があるんですね
谷田部一生付き物じゃないですか。完璧ではないから、成長する喜びもあるし頑張ることが出来る。多分ずっと、完璧にはならないと思います。
戸室(堀江)翔太さんやウッチーさん(内田啓介選手)、洸太郎さんたちは、僕から見たら完璧なんです。でもそういう人たちがめちゃくちゃ練習するんですよ。僕はまだまだ足元にも及ばないな、と思わされます。
谷田部試合でミスすると、落ち込むし「どこかで取り返そう!」って思いがちなんですよね。でもそうすると普段練習でしていないことをするようになって、歯車が狂ってくる。実際、数年前の自分がそうでした。
今は、ミスはミスで反省して次のプレーに切り替えて集中します。練習でやってきたことしか出来ないと思っているので、それ以上のことはやらずに、やってきたことだけに集中するようにしています。
戸室樹徳用語で言うと『半眼』ですね。全ての事を見過ぎず、目の前の事だけを見る。
谷田部僕に出来ないことは、堀江さんが出来るかもしれない。でも、堀江さんに出来ないことで、僕には出来ることがあります。そこを伸ばしていきたいなと思います。切り替えですね。
■「体張ってるね」と言われるようなプレーを
――改めて、戸室選手がラグビーを始めたきっかけを教えてください
戸室父がコーチをしていたラグビースクールに、4歳の時に通い始めました。太田市出身なので、ワイルドナイツが太田で試合をした時にはボールボーイとしてグラウンドに入ったこともあります。だからそんなチームでプレーが出来ている今は、夢のようですね。
――プロフィール欄にはアメフトが好きと書かれていますね
戸室めちゃくちゃ好きです。シアトルシーホークスというチームが大好きで、ファンクラブに入って試合を欠かさず見ています。中でも好きなのは、カム・チャンセラーというディフェンスの選手。僕のロッカー番号が31番なんですけど、チャンセラー選手の背番号も31番だったので嬉しかったですね。
――戸室選手も、気付けば加入5年目になりました。チームでも中堅の領域に突入した今、チームの中でどういう役割を担っていきたいと考えていますか
戸室ワイルドナイツに加入後、ニュージーランドでラグビーする機会を頂いたのですが、そこで外国人選手とのコミュニケーション方法を学びました。ワイルドナイツは多国籍なチームだからこそ、ラグビー外の所でも積極的にコミュニケーションを取って、チームが一つになれるよう貢献出来ればいいな、と思っています。
翔太さんやウッチーさんたちは練習の時に怒ることもあるのですが、グラウンドを出たら仲良く遊んでくれるんですよね。そういう切り替えは先輩方から学び、グラウンド外でも一つになれるよう受け継いでいきたいと思います。
――中にはシャイな選手もいますよね
谷田部僕も入団当初はシャイでしたよ。そういう選手には、僕たちが話し掛けて開花させる、じゃないですけど。中堅・ベテランってそういう役目なのかな、と思っています。
昔言われたのは、「俺らワイルドナイツはグラウンド上ではスイッチオン、グラウンド外でもスイッチオンだ」ということ。常にスイッチがオンなんだ、とトニー ブラウン(現・アドバイザー)が言っていました。
さっき戸室が言った「練習では厳しく、プライベートでは一緒に楽しく遊ぶ」というのは、オン・オンなんです。常にオン、本気、ということですね。だから、飲むのも本気。それがワイルドナイツの良さなのかな、と思います。
――強化試合初戦のSA浦安戦では、前半の40分間に出場しました
戸室フォワードとバックスを繋げる役目になろう、とバックスコーチの金沢さんとシーズンが始まる前に話をしたんです。別の方からは「達貴はもっとボールを持つのが好きなはずなのに、ワイルドナイツのラグビーばっかりし過ぎて武器が消えてる」と言われたこともありました。フォワードとバックスのコネクションを意識しつつ、少しでもチャンスがあったら自分が活きる、ボールを持って走るプレーをしよう、と思ってチャレンジした40分間でした。まだまだ粗削りですが、結果が出てきていると感じます。
――自分の得意なプレーとワイルドナイツのラグビーが違うこともあるのですね
戸室ラグビーが上手い人、例えば山沢(拓也選手)や笹倉(康誉)さんとかは、自分の強みを織り交ぜつつ、どんなフォーメーションでもワイルドナイツのラグビーが出来ているんですよね。でも僕は器用ではないので、その加減を勉強中です。外のスペースを見られるようにもなりたいし、スタンドオフを助けられるようにキックも上手くなりたい。器用ではない分、「体張ってるね」と言われるようなプレーをしていきたいです。
■ファンもチームの一員
――今シーズンの目標を、それぞれ教えてください
谷田部新リーグになって優勝を目指すためには、目の前の1試合1試合が大事です。出場するチャンスは必ずあると思いますし、常に出られる準備はしていきます。ピッチに立った時には、練習してきたことを120%出してチームに貢献していきたいと思います。
戸室プロフィールページに書かれているロビーさんへの一言メッセージには「自転車を返して欲しい」とあるんですが、実は既に返ってきました。なので今度は、ニュージーランドで乗せて頂いたボートに日本でも乗せて欲しい、というのが今年のラグビー外での目標です!(笑)
ラグビー面では、試合に出ようが出まいが、どんな時でもチームのため、チームファーストでプレー・行動をし続けたいと思います。
――最後に、お2人からファンの皆様にメッセージをお願いします
戸室チームの役に立つ行動やプレーをしたいです。その『チーム』には、ロビーさんも言うようにファンの方々も含まれています。みんなでチームだと思っているので、プレーでも行動でもファンの方が喜んでくれるような行動をしていきます。
谷田部埼玉に移転して、クラブハウスも綺麗になって、身近にラグビーを見られる環境があると思います。ぜひ、練習や試合会場で僕たちの迫力を生で観て頂けたら嬉しいです。
自分自身がグラウンドでプレーしている姿を見せられるよう努力しますので、応援をよろしくお願いします!
(&rugby/原田友莉子)