- 活動レポート
#Week2
長く続いた雨が上がり、明るい陽射しが差し込んだ今週。
ウォーキングついでに立ち寄ったご夫婦や、サッカーボールを抱えた小さな子ども連れのご家族など、20人近い方々が柵の外から練習を見守った。
グラウンドから響くのは、明るく元気な声。
アップの時には笑顔を見せながら体をほぐしていた選手たちだが、実戦形式の練習が始まると一転、試合さながらの迫力でグラウンドいっぱいにボールを運んだ。
全体練習後には、遅くまで個人練習を続ける選手たちの姿も目立つ。
まずはプレシーズンで個人の課題を克服し、チームとして次のステップへと進む。
★★★ 今週のピックアップ ★★★
竹山晃暉選手
新人賞を獲得するも、怪我のため優勝の瞬間を観客席で迎えた竹山選手。
昨シーズンの悔しさと今シーズンに向けた意気込み、そして熊谷での新たな楽しみについて話を聞いた。
■涙の理由は「悔しかった」から
――2021年シーズンの優勝、そして新人賞獲得おめでとうございます
ありがとうございます。チームが優勝できたこと、入部2年目で優勝を経験出来たことはとても嬉しいです。コロナ禍でもファンの皆さんが出来る精一杯の応援を感じ、たくさんのパワーを頂きました。
そういう意味で満足している部分はあるのですが、一方で、怪我のため決勝トーナメントに1試合も出場することが出来なかったことは悔しいです。新人賞も頂きましたし、チームの優勝は率直に嬉しかったのですが、一選手としては大事な所で怪我をしてしまう自分の力量を痛感しました。悔しい終わり方ですね。
――決勝戦の後、スタンドで涙を流されている姿が印象に残っています
完全に悔し涙です。決勝の大舞台で、スタンドに座るという経験はこれまでのラグビー人生にありませんでした。初めて感じた、もどかしさや悔しさ。でも優勝してくれた嬉しさとで、気持ちがぐちゃぐちゃでした。
実は、決勝戦に向けて復帰する予定だったんです。決勝に出るために怪我を治していたので、「怪我をしたからシーズンが終わった」という感覚はありませんでした。
決勝の週は、ナイツ*の一員となり対戦相手のコピー班としてラグビーが出来るまでに回復していました。完全にラグビーが出来ない状態ではなく、そこまでのプレーが出来るようになっていたので、余計悔しかったですね。
*ナイツ・・・試合に出場しない、ノンメンバーのこと。対戦相手のプレースタイルをコピーし、ワイルド(試合メンバー)の練習相手となる
――決勝戦は通常よりFWの人数を増やしたことも影響しているのでしょうか
最後あと1人誰にするかという所で、リスクのある選手よりは元気な選手、というロビーさん(ロビー ディーンズ監督)の判断でした。
準決勝の後、ロビーさんから「復帰しようとチャレンジしてくれていたことはしっかり見ていたし、チームにとってプラスだった。ただ決勝は、晃暉じゃないメンバーで行くので最後までよろしく」というメッセージを頂いたんです。だからこそ心が折れることなく、決勝に向けてナイツチームで頑張れたのだと思います。
――竹山選手にとっては初めてのナイツでしたね
自チームの戦術を理解するのも難しいのに、ナイツはたった1週間という短いスパンでコピーするチームが変わります。ナイツのチームに対する取り組みは素晴らしいものだなと改めて感じました。
試合に良い準備をして挑めるのは、ナイツがいるからこそ。ナイツの経験で分かったチームメイトのありがたみと、感謝の気持ちを胸に、来シーズンは試合に挑みたいと思います。
■新生・埼玉ワイルドナイツ
――約2ヵ月間のオフはどのように過ごしましたか
昨年、コロナでリーグが中止になった時もそうだったのですが、オフの過ごし方が自分の課題でした。僕、すぐに体重が増えてしまうんです。小・中学生の頃は食べても食べても太らなかったのに、今はすぐに大きくなれます(笑)。練習がある時よりも食事量を減らさなければならなかったので、食べることが大好きな自分には難しかったですね。
2022年シーズンに向けた体作りのために、堀江さん(堀江翔太選手)のお家で一緒にトレーニングさせてもらいました。この経験はすごく大きかったです。奈良に帰省したり、家族と過ごしたり。体を鍛えつつ、心もリフレッシュ出来た、実りあるオフシーズンでしたね。
――いよいよ埼玉ワイルドナイツとして最初のシーズンが始まりました
昨シーズンと同じことをしていては勝てない、という思いが自分の中にあります。ロビーさんもミーティングで「昨年成し遂げられたことをするのも大事だが、成し遂げられなかったこと、やらなかったことにチャレンジすることが今シーズンの優勝に必要な要素だ」とおっしゃっていたので、まずはこの言葉を胸において日々のトレーニングを頑張ろうと思います。
――今週もたくさんのファンがグラウンド脇で見学されています
すごくモチベーションになりますね。小さいお子さんも見に来てくれています。選手としてこの距離感で頑張っている姿を見てもらえるのは、励みになります。
コロナ禍ですから、一緒に写真を撮ったり近くでお話をしたり、ということが出来ないのは残念ですが、状況が落ち着けばファンサービスが再開できると思います。練習で何かを感じてもらいながら、サポートしてくださっているみなさんと触れ合える日を楽しみにしています。
――先日の記者会見では「これからのワイルドナイツは、今の小・中学生が作る」とおっしゃっていました
奈良に住んでいたので、幼少期はよく花園ラグビー場へ近鉄ライナーズの試合を見に行っていました。今でも覚えているのは、選手たちがスタンドに上がってきてくれたり、練習に来て教えてくれたりしたこと。そういう経験って、大きくなっても覚えているんですよね。
埼玉ワイルドナイツを強くしていきたいという自分たちの気持ちはもちろん大事なのですが、このような施設が出来たからには地域の方々に継続して応援してもらえる環境を作らなければなりません。やはり地域の人に愛される、応援してもらえる、というのがチームを大きくする上で大事ですから。
これからは自分が継承する立場として、取り組んでいきたいと思います。
■自転車でしか味わえない景色
――現在グラウンドには自転車で通われていますが、どのようなきっかけがあったのでしょうか
いくつか理由はあります。ハドレー パークスが太田で自転車通勤しているのを見て「なんでこんなカッコイイんやろ!」って感じたことも一因ですし(笑)、この地域をもっとしっかり見たいな、とも思ったんですよね。車と自転車では、目に入るスピードが違いますから。
あとはパナソニックが格好良くて機能的な電動自転車を作っていることも大きかったです。
――ラグビーロード沿いには、ワイルドナイツ サイクルステーション&カフェも出来ました
実はワールドカップの時、熊谷駅でシェアサイクルを借りてラグビー場まで往復しました。気持ちが良かったことはもちろん、長時間、バスの乗車待ちをしなくて良かったことが何よりストレスフリーだったので、今回サイクルカフェが出来たことを凄く嬉しく思います。全部で100台のシェアサイクルが熊谷駅やサイクルカフェにありますが、全て電動アシスト付き自転車なので走りやすいですし、ラグビーロードには自転車専用レーンもあるのでバスとそれほど変わらない時間で到着出来ます。
試合や練習を見に来られる際には、熊谷駅で自転車を借りてラグビーロードを通り、サイクルカフェで返却がてらお茶をして、試合や練習を見た後には再び自転車を借りて気持ちよく帰る。ぜひみなさんにも、自転車でしか気付けない景色や匂いを感じながら、行きも帰りも、そして行った先でも丸一日「パナソニックデー」として楽しんで頂けたらと思います。
■選手として1年でも長くプレーするために
――今シーズンの竹山選手のテーマを教えてください
まずは怪我をしないこと。昨シーズンは優勝の瞬間をピッチで迎えられず本当に悔しい思いをしたので、怪我をしない体を作るためにも、練習前後の丁寧な体のケアを毎日継続しています。
あとは、チャレンジですね。これまでたくさんのチャレンジをしてきましたが、まだまだ破らなければならない皮があると感じています。
そのうちの1つは、昨シーズンの課題でもあったボールを持つチャンスを増やすこと。「もっとあいつボール持てよ!」と思われるような選手になりたいと思っています。これまで主としていたフィニッシャーという形を一度崩すのは勇気の要ることですが、自分が活きつつ周りも活かせられるプレーヤーを目指しています。
――将来的にはどのような選手像を描いているのでしょうか
数十年後に引退、ではなく、1年でも長くラグビーをすることが現在の目標です。
怪我が引退の引き金になる選手も多いので、そうならないために必要な筋肉をつけようと、チームでのトレーニングにプラスして行っています。堀江さんのお宅でのトレーニングも、その一環ですね。
プレー面でいうと、これまであまり得意ではなかったタックルや体を張ることにチャレンジしたい、という心境の変化がありました。子どもって純粋じゃないですか。「なんでノックオンしたん?」って見に来てくれる子どもたちに言われないよう、情けないプレーは出来ないですからね。
――最後に、制限の厳しい中でも各地で応援し続けてくれるファンの皆様へメッセージをお願いします
まず今は、みなさんご自身の健康を大事にしてください。自粛が続きなかなかグラウンドまで足を運べない方も数多くいると思います。ラグビーロス、ワイルドナイツロスになっている方のためにも、この時期だからこそできる発信を選手として考えていきたいな、と思っています。
一方で時間を見つけてグラウンドまで練習を見に来てくださる方には感謝しています。完全非公開だった昨年よりも選手たちが活き活きしているように感じるので、やっぱりプロ選手は見られて、見せて成長するものなんだな、と。
まだまだ対面で話すことは出来そうもないですが、SNSで「今日練習見に行ってきました!」と言って頂けると嬉しいです。
今シーズンも埼玉ワイルドナイツの応援を、よろしくお願いします!
(&rugby/原田友莉子)