職場改善
2022.3.25
新しい時代のオフィスとは? 課題と改善策をご紹介
政府が推奨する働き方改革は、現在多くの企業が導入しており、時代に合った新しい形のオフィスが求められています。社員一人ひとりがフレキシブルに働けるオフィスの環境づくりは、企業にとって大きな課題といえるでしょう。社員が働きやすいオフィス環境をつくることで、生産性向上につながります。
この記事では、従来のオフィスが抱える課題と改善策について詳しく解説します。現状抱えている課題を解決するために、ぜひ参考にしてください。
社員にとってのオフィスとは?
一般社団法人 日本オフィス家具協会が2017年に首都圏に存する事業所に勤務するワーカーに対して行った調査では、「オフィス環境の良し悪し」の影響について「仕事の成果に影響する」と答えた人は64.8%、「仕事に対するモチベーションに影響する」と答えた人は71.4%という結果が出ています(※1)。この結果から社員にとって、オフィスの環境は非常に大切な要素だと分かります。
オフィス環境を整えることは、社員の仕事に対するモチベーションアップや生産性向上につながるといえるでしょう。
※1 出典:【一般社団法人 日本オフィス家具協会 顧客政策委員会】「オフィスワーカーから見た、オフィス環境ニーズのトレンド」 を探るための調査の実施と、分析結果を踏まえた提言・提案
働き方改革にオフィス環境の改善は不可欠
厚生労働省が推し進める働き方改革では「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指す」としています。具体的には労働時間の見直しや雇用形態に関わらず公正な待遇が受けられる制度の確立が進められていますが、企業にはオフィス環境の改善が求められている状況です。
時代に即したフレキシブルな働き方をサポートするためには、既存のオフィスでは対応しきれない部分があるでしょう。働き方改革を進める上でオフィス環境の改善は不可欠です。
オフィスが抱える課題とは
オフィス環境の改善には、まずは現在抱えている課題を洗い出すことが重要です。オフィスで働く社員の意見を聞いてみるのもよいでしょう。改善に向けて、オフィスが抱える課題を詳しく解説します。
オフィスの快適性の問題
快適性を重視したオフィスでは、社員が毎日気持ちよく仕事ができます。社員が身体的・精神的に健康に働けているかを考慮しましょう。物理的にはオフィスの広さや照明などが挙げられます。デスクの周りが狭くて十分な作業スペースがなかったり、オフィス全体が暗かったりすると、作業効率が悪くなります。
また近年は、感染症対策として換気の問題も重要です。人が密集する執務室では感染リスクが高くなります。その他、換気がきちんとされていないと、一酸化炭素・二酸化炭素が上昇して、頭痛やめまいなどの健康被害が出る可能性があるため気をつけましょう。
その他に仕事の合間にリフレッシュできるスペースが少ないと、仕事に対するモチベーションが低下してしまいます。
災害対策がなされているか
地震が多い日本では、災害対策がきちんとなされているかも重要なポイントです。自然災害が起こった時に社員全員が安全に避難できるか、オフィス家具の転倒防止策はとられているかなどを確認しましょう。
災害時の備えが十分に整備されていれば、社員も安心して仕事に取り組めます。
オフィスのレイアウトや設備の問題
オフィスのレイアウトが動線に合っていないと業務の効率が下がります。オフィス内で移動する際に通路が狭かったり、ものが置いてあったりすると移動しにくく、毎日のこととなればストレスを感じる社員もいるでしょう。
また、来客の多いオフィスでは、お客様を応接室に通す導線にも気をつけたいものです。社員が多くいる執務室を通らずに、玄関やロビーからスムーズに応接室にいける構造がベストです。
設備の面では収納スペースに着目しましょう。収納スペースの整理整頓がされておらず、探しものに時間がかかるようでは仕事の効率も下がります。余裕のある収納スペースの確保と整理整頓を目指しましょう。
集中しにくい環境になっていないか
人の動きや雑音が多いオフィスでは集中して仕事に取り組めないという問題があります。常に電話が鳴っていたり、顧客とのやり取りをしている社員が多くいたりした場合、近くにいる社員は気が散って集中できません。特に高い集中力を必要とする業務を行う場合、注意力が散漫になってミスをしてしまう可能性もあります。社員に仕事に集中できる環境かどうかのヒアリングを行いましょう。
さらに現在では顧客とのWEB会議が増えています。WEB会議をしている背後で頻繁に音が入ってくると顧客に失礼にあたります。また、近くでWEB会議をしている人の声が気になる社員がいる場合は、今後はより一層対策が必要です。
オフィス環境の改善策:快適性をアップ
オフィス環境の改善で大切なのは、社員や来客にとって快適な空間をつくることです。デスク周りや通路は十分な広さを確保しましょう。一般的に一人がデスクで作業するのに必要な広さは、デスクが幅120cm、奥行きが60~70cm、椅子の後ろに75~90cmといわれています。この基準より狭い場合、デスクのレイアウトを変更するなどの対策を講じましょう。
照明は労働安全衛生規則第604条・605条および事務所衛生基準規則第10条で、必要とされる照度の基準と、6ヶ月に1回の定期点検を実施することが定められています。作業区分別の照度の基準は次のとおりです。
※2
作業区分 | 基準 |
---|---|
精密な作業 | 300ルクス以上 |
普通の作業 | 150ルクス以上 |
粗な作業 | 70ルクス以上 |
※2 出典:【中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター】労働安全衛生規則 第三編 第四章 採光及び照明
さらに日本工業規格(JIS)では「照明基準総則」で、エリアや活動領域ごとに快適な推奨照度の基準を設けています。
※3
領域区分 | 推奨照度 |
---|---|
事務室 | 750ルクス |
会議室 | 500ルクス |
役員室 | 750ルクス |
応接室 | 500ルクス |
オフィスラウンジ・喫茶室 | 200ルクス |
更衣室 | 200ルクス |
※3 出典::【経済産業省産業技術環境局 環境生活標準化推進室】JIS Z9110(照明基準総則)の改正について
※3 出典:【東芝ライテック株式会社】照明基準総則
作業を行う事務室は明るく、オフィスラウンジ・喫茶室などのリフレッシュスペースは明るさを控えた方がよいでしょう。これらの数値はあくまでも推奨基準として設けられているため、目安として検討しましょう。業務の内容によっても最適な照度は異なります。オフィス照明の専門業者に相談するのもよいでしょう。
オフィス内の換気については、窓や扉を開けて外気を取り入れる自然換気と機械を使って換気を行う機械換気があります。自然換気では1時間に10分程度の換気が望ましいとされています。一方の機械換気はファンなどを用いて、外気をオフィス内に入れる給気とオフィス内の空気を外に排出する排気の両方を行います。人が密集するオフィスでは、自然換気と機械換気を両方行うのが理想的です。
効果的に換気をするためには、二酸化酸素濃度センサーの導入や換気扇のメンテナンスサービスを利用しましょう。
さらにオフィスの室温や湿度にも着目しましょう。夏は室温25~28度、湿度55~65%、冬は室温18~22度、湿度45~60%が快適と感じる数値です。空調機器で温度を設定しても、オフィスの場所によっては室温が微妙に異なります。オフィス内の複数箇所に温度計や湿度計を置き、定期的にチェックしましょう。
扇風機やサーキュレーターなどを活用して、室内の空気を循環させると場所による室温のムラは軽減されます。冬には加湿器をオフィスに置くとよいでしょう。空調環境を整えて、社員が快適に仕事ができるよう改善しましょう。
オフィス環境の改善策:安全性をアップ
社員が日々、安心して働くには万全の防災対策が必要です。災害には地震や台風などの自然災害から火災などの人為災害までさまざまです。どのような災害が起こった時でも対処できるような環境づくりに努めましょう。災害が起こった時の避難経路を明確にしておくことが大切です。
特に大きなオフィスでは避難する人が多く、混乱が起きかねません。建築基準法第119条では避難に必要な廊下の幅を定めています。両側に部屋がある廊下では1.6m以上、その他の廊下は1.2m以上が必要です。廊下の幅が基準以上であっても、避難の邪魔になるような家具や書類は通路に置かないよう、日頃から整理整頓をしておきましょう。
地震対策としてオフィス家具やコピー機などに転倒防止措置を講じましょう。その他、窓のそばには背の高い家具を置かず、ガラスには飛散防止フィルムを貼ります。ゆっくりとした振動が長く続く長周期地震動では、高層階ほど被害が大きくなる傾向にあります。オフィスが高層階にある会社は特に気をつけましょう。
オフィスから自宅までの距離が20㎞以上の人は災害時に帰宅困難になることが想定されます。オフィスに長期間待機することを考慮して、簡易食料や飲料水などの防災グッズを1週間分は常備しておきましょう。
オフィスの防災は企業側の対策だけにとどまりません。災害発生時に自分自身を守る「自助」の努力も必要です。災害の種類や度合いに応じた防災訓練やセミナーなどを定期的に開催して、社員全員が防災意識を持つようにしましょう。複数の企業が入っている共同ビルでは、ビルの管理者や他社と連携して防災計画をたて、情報共有をしておくといざという時に役立ちます。
さらに近年は防災対策と同時に、災害発生時のBCP(事業継続計画)対策が不可欠です。BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、地震や火災を始めとする災害や停電、システムエラー、テロ攻撃などが起こった際に事業の被害を最小限にとどめ、事業の復旧や継続を目的とした対策を指します。防災対策が自然災害などを対象にしているのに対して、BCP対策はあらゆる非常時に対応しなくてはなりません。
具体的には次のような対策が必要です。
- ・本社機能の分散
- ・感染症対策
- ・耐震性能の強化
- ・テレワークによる社員の安全確保
- ・データのバックアップ機能構築
業種によって必要な策は異なるため、自社に合ったBCPを策定しておきましょう。
オフィス環境の改善策:オフィスレイアウトの見直し
オフィスの動線は社員全員が使いやすいことが大切です。業務を行うなかでよく使うメインの動線と使用頻度はやや低いものの必要なサブの動線に分けましょう。ただしメインの動線とサブの動線が複雑にならないよう注意が必要です。メインの動線からサブが派生していくイメージで設計するとよいでしょう。動線は広めにとっておくと、社員が動きやすくなり作業効率もアップします。
来客の多いオフィスでは入口から応接室までの導線にも配慮が必要です。応接室は、できる限りシンプルな導線で出入口から近く、執務室を通らない位置に配置しましょう。
一般的に人一人が通れる幅は80cm以上、二人がすれ違う幅は160cm以上が理想的です。デスクの周りに十分な幅がないと、社員は動きにくくストレスになる場合もあります。特に人の往来が多い部署では、余裕を持たせたレイアウトがおすすめです。デスクのレイアウトには次のようなものがあります。
- ・対向型レイアウト
- ・同向型レイアウト
- ・背面式レイアウト
- ・ブース型レイアウト
- ・クロス型レイアウト
- ・ブーメラン型レイアウト
オフィスの規模や業種に合ったレイアウトを選択しましょう。コピー機やFAXの周りは広めにスペースを確保しておくと、人の流れが滞ることもありません。また、関連性の高い部署は近くに配置すると業務が円滑に進みます。
デスクだけではなく、収納スペースなどの設備面も大切です。必要な資料や書類などがすぐ取り出せるよう、執務室の近くに収納スペースを広くとりましょう。保管期限が決まっているものの、日々の業務では使用しない書類などは書庫に納めておくとよいでしょう。
オフィスのレイアウトや業種に合ったオフィス家具も必要です。オフィスワークが中心の業種では、快適なデスクやチェアでパフォーマンスが上がります。前述したように一般的なデスクのサイズは幅120cm、奥行きが60~70cmですが、PC作業をメインとする業種では大きめのデスクを選びましょう。幅は150cm以上、奥行きは70cm以上が理想的です。
チェアは長時間座っていても疲れない高機能の商品を選びましょう。社員の体型に合わせられるよう、細かに高さ調節ができるものがよいでしょう。
オフィス環境の改善策:ワークスタイルに合わせたオフィス
ワークスタイルが多様化している現在、個人の事情や職種、働き方に応じたオフィスが注目されています。テレワークやABW(Activity Based Working)、フリーアドレスなど、さまざまなワークスタイルに対応できるオフィスの環境づくりによって、社員の満足度も上がります。
オフィス内で自由に自分で席を変えられるフリーアドレスやオフィスに限らず自宅のほかコワーキングスペース、カフェなどで自由に仕事を行うABWでは、従来のオフィスのように社員の人数分だけ個人のデスクを用意する必要がなく、オフィスのコスト削減につながります。しかし、フリーアドレスやABWに対応できるワーキングスペースの確保が必要です。
具体的には、グループワークに適したスペース、個人ブース、集中エリア、リフレッシュスペースなどさまざまなタイプのスペースを設置しましょう。毎日席が変わることで普段は接する機会が少なかった社員同士のコミュニケーションが活性化したり、新たなアイデアが生まれやすくなったりといったメリットがあります。
WEB会議が増えたことによる音問題は、個人ブースの設置で解決できます。オフィスの規模や予算の問題で個室になったブースの設置が難しい場合は、周りから視覚的に遮断されたソファ型の集中ブースやパーテーションで周囲を区切ったスペースなどもよいでしょう。周りの音を極力遮断して、WEB会議や業務に集中できる空間です。
テレワークを導入している場合は、社員の稼働状況を管理できるツールやウイルス対策ソフトを活用しましょう。自宅に通信機器がそろっていない場合は、サテライトオフィスを用意するなどの対策が必要です。
また、テレワークでは社員と上司や社員同士のコミュニケーションがどうしても希薄になってしまい、モチベーションが低下する可能性があります。定期的にWEBミーティングなどを実施して密なコミュニケーションをとり、相談や連絡、情報共有がスムーズに行えるようにしましょう。
オフィスの課題を解決しよう!
現在のオフィスが抱える課題は非常に多くあります。しかし、課題をクリアして改善につなげることで社員の満足度は向上し、生産性もアップするでしょう。
まずはオフィスの現状と課題を社員や専門家の意見を聞いて把握しましょう。社員が毎日快適で安全に仕事ができるオフィス環境は、働き方改革には不可欠です。課題を解決してよりよいオフィスを目指しましょう。
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