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サーモグラフィーの仕組みとは?原理や計測事例をわかりやすく解説
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そもそもサーモグラフィーとは何?
サーモグラフィーとは、物体の温度を非接触で測定し、その温度分布を画像化・可視化する仕組みのこと、あるいは装置のことを言います。サーモグラフィーのメリットの一つが、非接触で温度を測定できることです。対象物に触れることなく温度を測定できるため、安全性が高く、特に高温の物体や危険な物体に対して効果的です。カメラを向けるだけで瞬時に温度分布を画像化できるのもサーモグラフィーの利点であり、物体の異常や問題箇所をリアルタイムで検知することができます。また、一度に広範囲を測定できることも特徴の一つです。
厳密に言えば、サーモグラフィーは物体の温度分布を可視化した画像データのことで、画像データを取得するカメラは、「サーマルカメラ」や「サーモグラフィーカメラ」と呼ばれます。ですが、カメラも含めてサーモグラフィーと呼ばれることも多く、言葉の使い分けは曖昧になっています。
サーモグラフィーの仕組みに関連する用語
サーモグラフィーの仕組みを知るためのキーワードが、「赤外線」「放射線」「熱画像」の3つです。それぞれ詳しくご説明します。
赤外線
光は、目に見える光(可視光線)と目に見えない光(不可視光線)があり、赤外線は人の目に見えない不可視光線の一種です。光が人の目に見えるかどうかは、光線の長さ(波長)によって決まります。波長範囲の下限は360~400nm(ナノメートル)、上限は760~830nmです。下限を下回るために見えない光が紫外線であり、上限を上回るために見えない光が赤外線です。
熱を持つすべての物体は赤外線を放出しており、温度が高いほど放出される赤外線エネルギーも大きくなります。そのため、赤外線は人の目には見えませんが、熱として感じることはできます。サーモグラフィーは、物体から放たれる赤外線を検出し、そのエネルギーを温度に換算して熱画像として表示する仕組みです。
放射率
放射率とは、物体がどのくらいの赤外線を放出するかを示す値で、0~1の範囲で表されます。「鏡面体」の放射率は0で、「黒体」の放射率は1となります。ただし、鏡面体も黒体も物理学上の概念であり、自然界には存在しません。
サーモグラフィーは、物体から放射される赤外線を検出して温度を測定しますが、放射率の違いによって同じ温度でも検出される赤外線の強度が変わってきます。たとえば、金属の表面は放射率が低いため、実際の温度より低く測定されることがあります。サーモグラフィーで正確な温度を測定するためには、対象物の放射率を適切に設定する「放射率補正」が必要になります。
熱画像
熱画像は、サーモグラフィーによって取得された赤外線放射データを視覚化したもので、温度分布を色のグラデーションで表示します。一般的に、高温の箇所は赤色で、低温の箇所は青色で表示されます。サーモグラフィーの熱画像は、温度分布をひと目で確認できるのが大きな利点です。温度上昇箇所や冷却不良箇所をリアルタイムで把握できるため、たとえば、電気設備の異常や建物の断熱不良箇所などを即座に特定できるほか、医療現場でも乳がんの検査や炎症箇所の特定などに活用されています。
サーモグラフィーの仕組みとは?
サーモグラフィーの仕組みを知るためには、「温度計測の仕組み」と「可視化の仕組み」を理解する必要があります。それぞれ詳しくご説明します。
温度の計測の仕組み
すべての物体は、その温度に応じて赤外線を放出しています。熱い物体ほど多くの赤外線を放出しており、身の回りでは、暖房器具や調理器具のほか、私たち人間の体も赤外線を放出しています。赤外線は人の目には見えませんが、サーモグラフィーを使うことで可視化することができます。
サーモグラフィーは、赤外線を感知して物体の温度を測る仕組み・装置です。サーモグラフィーには、赤外線を認識するセンサーが付いており、このセンサーが物体から放出されている赤外線の量を測ります。センサーが捉えた赤外線の量は、コンピューターが理解できる電気信号に変換され、電気信号は物体の温度に変換されます。その温度に応じた色で熱画像を生成するのが、サーモグラフィーの基本的な仕組みです。
可視化の仕組み
上述のとおり、サーモグラフィーは、物体から放出されている赤外線の量を測定し、それを温度データに変換します。そして、温度に対応した色を表示することで温度分布が分かる熱画像を生成する仕組みです。色で表示することで、温度が高い部分や温度が低い部分を直感的に把握でき、異常な高温部分や低温部分を瞬時に検出することができます。
通常、温度が高い部分は赤色やオレンジ色で、温度が低い部分は青色や紫色で表示されます。たとえば、ホットコーヒーのカップの表面は高温なので赤色で示されますが、アイスコーヒーのグラスは低温なので青色で示されます。人間の体も同様に、温度が高い頭部や胸部は赤色で示され、温度が低い手先や足先は青色で表示されることが多いです。
サーモグラフィーの仕組みを活かした計測事例
サーモグラフィーは幅広い分野で活用が進んでいます。サーモグラフィーの仕組みを活かした計測事例を6つご紹介します。
感染症対策
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、様々な場所にサーモグラフィーが設置されるようになりました。空港や病院、オフィスビルや商業施設、イベント会場などでは、利用者・入場者の体温を迅速に測定するためにサーモグラフィーが導入されています。サーモグラフィーを設置することで、非接触で人々の体温を測定でき、発熱があるかどうかを即座に判断することができます。これにより、感染拡大のリスクを低減でき、施設内の安全確保につながります。
建築現場
サーモグラフィーの仕組みは、建築現場でも広く活用されています。たとえば、サーモグラフィーで外壁や屋根の温度を測定することで、断熱材の状態や断熱効果を把握したり、熱が逃げている箇所を特定したりすることができます。また、漏水箇所の特定にもサーモグラフィーが役立ちます。壁内や天井裏の漏水箇所は周囲の温度より低くなるため、その温度差を検出できれば早期発見・早期改善が可能になります。サーモグラフィーなら、高所など危険な箇所でも安全に温度測定ができるため、建築現場には欠かせないツールになっています。
食品工場
サーモグラフィーの仕組みは、食品工場においても活用されています。たとえば、加熱工程であれば、加熱機器内の温度分布を可視化し、均一な加熱状態を確保することで製品の品質向上につながります。冷却工程であれば、製品の温度が適切に保たれているかどうかを監視することで、食品の鮮度維持につながります。また、食品に異物が混入している場合、周囲との温度差が生まれるため、サーモグラフィーで異物混入を検出することも可能です。サーモグラフィーなら食品に触れることなく温度測定ができるので、衛生面でも安心です。
製造現場
サーモグラフィーの仕組みは、製造業でも様々な用途で活用されています。たとえば、サーモグラフィーによって設備機器の過熱部分や配線の異常発熱を検出できれば、故障を未然に防止でき、生産ラインの停止を避けられます。サーモグラフィーは設備機器の保全だけではなく、製品の品質管理にも役立っています。たとえば、製品の熱ムラや不自然な熱を検出することで欠陥や異物混入を発見するなど、品質チェックにも活用されています。
医療現場
サーモグラフィーは、体の温度分布をリアルタイムで可視化し、温度の異常を迅速に検出できることから、医療現場でも活用が進んでいます。たとえば、腫瘍は周囲の組織に比べて温度が高い場合があるため、サーモグラフィーで熱異常を検出することで早期発見に役立ちます。同様に、炎症がある部位は周囲と比べて温度が高いため、サーモグラフィーで炎症の有無や程度を評価することもできます。微細な温度変化を捉え、早期に異常を発見できることや、非接触で温度を測定できることは医療現場において非常に重要です。
農業現場
サーモグラフィーの仕組みは農業の進化にも貢献しています。たとえば、サーモグラフィーで作物の温度を測定することで、病害虫の発生や水不足など、生育に問題がある箇所を見つけ出せれば、早期の対処が可能になりますビニールハウスや温室栽培では、温室内の温度分布をリアルタイムで監視することで、均一な環境を維持し、作物の成長を促進できます。このように、サーモグラフィーは作物の健康状態の管理や病気の早期発見に役立っており、農作業の効率向上や収穫量の増加、品質の安定化につながっています。
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まとめ
本記事では、サーモグラフィーの仕組みやメリット、具体的な活用事例などについて解説してきました。非接触で物体の温度を測定し、温度分布を可視化できるサーモグラフィーは感染症対策に用いられるほか、設備の異常発熱を検知したり建物の断熱性能を評価したりと、様々な分野・現場で活用が進んでいます。リアルタイムで問題箇所を特定できるサーモグラフィーの用途は無限です。ぜひ、御社のビジネスにサーモグラフィーをお役立てください。