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PoEで給電できる距離は?距離を延ばす方法について解説
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PoE給電が可能な距離は?
PoEはLANケーブル1本で通信と電力を供給できる便利な技術ですが、給電可能な距離には制限があります。一般的に、PoEスイッチングハブから接続機器までの最長距離は100mとされています。これはイーサネット規格上の最大伝送距離に基づいたものですが、実際の給電距離はLANケーブルの品質や構造、接続する機器の電力要件などによって変動します。ただし、専用機器を活用することでPoEの給電距離を延ばすことが可能です。
PoEの給電距離を延ばす方法
PoEの給電距離を延ばすためには、PoEパススルーを使う方法と、PoEスイッチングハブやPoEインジェクターを増やす方法があります。
PoEパススルーを使って給電距離を延ばす
PoEの給電距離は規格上、最大100mとされていますが、工場や学校、官庁施設などの広い敷地に監視カメラや無線APを設置する場合、100mでは足りないケースも少なくありません。PoEの給電距離を延ばす際に有効なのが、「PoEパススルー(PoEリピーター、PoEエクステンダー)」を活用することです。
PoEパススルーは、PoEスイッチングハブから受け取った電力を中継し、さらに次の機器へ給電する装置です。PoEパススルーを活用することで、給電距離を延長できるようになります。PoEパススルーのメリットは、電源工事が不要なことです。PoEハブから供給された電力をそのまま利用するため、設置場所にコンセントがなくても導入でき、配線工事の手間やコストを削減できます。ただし、パススルーを繰り返すほど供給可能な電力が減少する点には注意が必要です。
PoEスイッチングハブやPoEインジェクターを増やして給電距離を延ばす
PoEの給電距離を延ばし、安定した電力と通信を確保したいときに効果的な手段の一つが「PoEスイッチングハブ」や「PoEインジェクター」を増設する方法です。
既存のPoEハブと機器の間に新たなPoEハブやPoEインジェクターを設置することで、給電距離を延長することができます。PoEハブを中継地点として増設すれば、接続可能な距離をさらに100m単位で延ばせるため、広い敷地にもネットワークカメラや無線APを設置しやすくなります。また、PoEインジェクターを利用すれば、PoE非対応のスイッチングハブでもPoE給電が可能になります。既存の設備を有効活用しながらPoEの給電距離を延ばせるのがPoEインジェクターの利点です。ただし、増設するPoEハブやPoEインジェクター自体に電源が必要な点には注意が必要です。
PoE給電距離が長い場合に押さえるべきポイント
PoEの給電距離を延長する際はいくつかの注意点があります。「PoE規格に応じた最大供給電力を確認すること」「必要な給電能力を満たしているか確認すること」「適切なLANケーブルを選ぶこと」の3点を押さえておきましょう。
PoE規格に応じた最大供給電力を確認する
PoEの給電距離を延ばすときに確認しなければいけないのが、使用するPoE規格ごとの最大供給電力です。以下は代表的な3つのPoE規格ですが、それぞれ最大供給電力が異なります。
- IEEE802.3af(PoE):1ポートあたり最大15.4W
- IEEE802.3at(PoE+):1ポートあたり最大30W
- IEEE802.3bt(PoE++):1ポートあたり最大90W
このようにPoE規格によって供給できる電力量が異なるため、接続する機器の消費電力に合わせて適切な規格を選ぶ必要があります。たとえば、IP電話や小型の認証装置などはPoEで十分ですが、PTZカメラやカードリーダーにはPoE+が求められます。4K対応カメラやデジタルサイネージなどは、PoE++でなければ安定稼働が難しいでしょう。
必要な給電能力を満たしているか確認する
PoE給電の安定化を図るためには、接続する機器全体の消費電力に加えて、LANケーブルによる電力ロスも考慮して、「必要な給電能力」を満たしているかどうかを確認することが重要です。必要な給電能力は次の算式で求められます。
必要な給電能力 = 各機器の消費電力の合計 + LANケーブルによる電力ロス
たとえば、複数台の監視カメラを導入する場合は、LANケーブルによる電力ロスを考慮して、各カメラの消費電力の合計がPoEの給電能力を超えていないかを確認します。通常、距離が長くなるほどLANケーブル内部の抵抗によって電力ロスが大きくなり、機器に届く電力量が減少します。LANケーブルの品質や配線距離を考慮して、余裕のある設計をすることが重要です。
適切なLANケーブルを選ぶ
PoE給電の安定性は、LANケーブルの種類や品質によっても左右されます。規格上はPoEで100mまで給電可能ですが、実際にはLANケーブルのカテゴリや構造によって電力ロスの大きさが変わり、給電距離も変わってきます。
たとえば、カテゴリの古いLANケーブルや劣化したLANケーブルの場合、伝送品質が低下し、安定した給電が難しくなることがあります。また、LANケーブル内部の芯線が1本の銅線で構成される「単線ケーブル」は電気抵抗が少ないため長距離給電に有利で、100mまで安定した伝送が可能です。一方、複数の細い銅線を撚り合わせた「より線ケーブル」はノイズの影響を受けやすく、給電距離が60~70m程度に制限されることがあります。
PoEの給電距離を延ばすためにはLANケーブルが重要
上述のとおり、PoEの給電距離を延ばすときは適切なLANケーブルを選択することが重要です。こちらでは、LANケーブルの種類や選ぶポイントなどについて解説します。
LANケーブルの種類
LANケーブルは、カテゴリ(Cat)によって性能が区分され、通信速度や伝送帯域が異なります。
最大通信速度:1Gbps/伝送帯域:100MHz
一般的に使われているケーブルで、コストも安価。PoE+までの利用であれば十分に対応可能。
最大通信速度:1Gbps(短距離で10Gbps対応可)/伝送帯域:250MHz
Cat5eよりもノイズに強く、安定性が高い。オフィスや学校への新規導入ならCat6がおすすめ。
最大通信速度:10Gbps/伝送帯域:500MHz
Cat6を強化した規格で、長距離でも10Gbps通信が安定。PoE++など、高消費電力機器や長距離配線に適している。
最大通信速度:10Gbps/伝送帯域:600MHz
シールド加工が施されており、ノイズに非常に強い。サーバールームや工場など、電磁ノイズが多い環境に適している。
最大通信速度:25〜40Gbps/伝送帯域:2000MHz
最新の規格で、超高速通信に対応。ただし、伝送距離は最大30m程度と短く、主にデータセンターや特殊な環境向け。
PoEに合ったLANケーブルを
長距離でも安定したPoE給電をおこなうためには、PoEに適したLANケーブルを選ぶ必要があります。規格に応じたカテゴリのLANケーブルを選ぶのは基本です。PoEはCat3以上、PoE+やPoE++はCat5e以上のケーブルが推奨されています。高消費電力の機器を接続する場合は、Cat6A以上のケーブルを選んでおくと安心です。
また、繰り返しになりますが、ケーブルの芯線構造も重要です。単線ケーブルは電力ロスを抑えられるため、最長100mまで安定した給電が可能です。一方、より線ケーブルはやわらかく敷設しやすいのが利点ですが、ノイズの影響を受けやすく、実際の給電距離は60~70m程度に制限されることがあります。長距離配線をする場合は、単線タイプのLANケーブルを選ぶことをおすすめします。
PoE給電の距離に関するよくある質問
PoEの最大給電距離は?
PoEの最大給電距離は規格上100mとされており、単線タイプのLANケーブルであれば、理論上100mまで安定した給電が可能です。ただし、LANケーブルの品質や構造によっては給電距離が短くなることがあります。
PoE給電は何Vの電圧が必要?
PoE給電には、一般的に48V程度の電圧が使用されますが、これは標準値であり、実際の電圧は44Vから57Vの範囲で変動します。この電圧設計により、長距離配線でも電力ロスを抑えつつ安定した給電が可能になっています。
PoE給電ならパナソニックEWネットワークス
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まとめ
PoEは電源工事不要で監視カメラや無線APなどの機器を設置できる仕組みですが、給電可能距離には制限があります。給電距離を延ばすためには、PoEパススルーの活用や、PoEスイッチングハブ、PoEインジェクターの増設が効果的です。また、最適な種類・構造のLANケーブルを選ぶことが安定した給電の鍵になります。機器の消費電力やLANケーブルの電力ロスを考慮して、余裕を持った給電設計をおこなうことが大切です。正しい知識を身に付けて、長距離PoE環境を構築しましょう。



