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PoE給電などのIT機器の雷対策とは?注意すべき雷サージや機器に及ぼす影響を解説
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雷がPoE給電のIT機器に及ぼす影響とは?
工場・施設やオフィスの近隣で落雷があると、その影響はPoE給電機器にも及び、通信障害や機器の故障など、深刻なダメージをもたらすおそれがあります。落雷が機器に及ぼす具体的な影響について見てきましょう。
雷がIT機器・家電製品に及ぼすダメージの種類
落雷がIT機器や家電製品に及ぼすダメージは多岐にわたります。もっとも一般的なのが、雷サージによる過電圧被害です。落雷によって電力線や通信線に誘導電流が発生し、それが屋内の機器に侵入すると、内部回路が焼損したり破損したりするリスクがあります。特にPoE給電に対応したネットワーク機器や、精密な電子制御をおこなう機器は過電圧に弱いため、一瞬の電圧上昇でも致命的なダメージを受けることがあります。
落雷と言うと、直接建物に雷が落ちるシーンを想起しがちですが、数百メートル離れた場所の落雷でも、「誘導雷」として影響を受けるケースが多々あります。LANケーブルや電源ケーブルを介して過電圧が伝わることで、オフィスのルータや監視カメラ、あるいは家庭内のテレビやエアコンといった機器にも被害が及ぶ可能性があります。
直撃雷・誘導雷・逆流雷の違い
雷にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる経路でPoE給電機器に影響を及ぼします。こちらでは、「直撃雷」「誘導雷」「逆流雷」の特徴についてご説明します。
直撃雷
直撃雷とは、建物やアンテナ、電柱、カメラポールなどに直接、落雷する現象のことです。非常に強力な電流が一瞬で流れることで、構造物や接続されているPoE給電機器などを破壊するだけでなく、火災や感電などの二次被害を引き起こすおそれがあります。もっとも被害が大きく危険な雷であり、落雷対策をしていても機器を保護できない可能性があります。
誘導雷
誘導雷とは、近隣に雷が落ちたときに生じる電磁誘導によって、電線や通信線などに高電圧が誘導される現象のことです。建物に直接、雷が落ちなくても、周囲の強い電磁場の影響で電流が発生し、接続された機器などに過電圧が侵入することで、内部回路の焼損や破壊などの被害をもたらします。
特に、PoE給電に対応したネットワークカメラやスイッチ、ルータなどは、通信ケーブルを介して電圧が侵入するため被害を受けやすい傾向にあります。実際に、複数の監視カメラが同時に故障したり、LAN接続機器が一斉にダウンしたりする被害が報告されています。
なお、公益社団法人 全国市有物件災害共済会が発行する「公共施設のための雷害対策ガイドブック」によると、雷被害のほとんど(全体の99%)は、直接的な落雷によるものではなく、誘導雷や逆流雷(後述)といった非直撃雷によるものであるとされています。
逆流雷
逆流雷とは、建物に設置された避雷針や接地設備を通して地面に流れた雷の電流が、逆に屋内の電気配線や通信線を介して機器に到達する現象のことです。逆流雷は、雷の電流が地面に放電された後、その経路上の電位差によって電流が屋内に「逆流」することで発生します。
逆流雷は、避雷設備の存在がかえって被害を誘発する要因になり得るため、注意が必要です。特に、PoE給電に対応したネットワーク機器など、接地系統と電源・通信系統が交差するシステムは、逆流雷によって内部基板が焼損したり、機器が誤作動・破損したりする被害事例が報告されています。工場やオフィスビルなど、複雑な配線構造を持つ施設では、逆流雷による被害を最小限に抑えるため、適切な雷対策が求められます。
PoE給電などのIT機器における雷対策の方法
PoE給電に対応したIT機器は雷による過電圧に弱いため、適切な雷対策が不可欠です。こちらでは、基本的な雷対策である「SPD(サージ保護デバイス)の設置」と「アース接続(接地)」についてご説明します。
①SPD(サージ保護デバイス)の設置
PoE給電に対応したIT機器は、LANケーブル1本でデータと電力を同時に供給できる利便性がある一方で、雷による過電圧に脆弱です。落雷があると、電源線だけでなく通信線からも雷サージが侵入し、ネットワーク機器や接続されている各種デバイスを損傷させるおそれがあります。
このような被害を回避、軽減するための基本的な雷対策の一つが、SPD(Surge Protective Device:サージ保護デバイス)の設置です。SPDとは、電源線や通信線などを介して侵入する過電圧・過電流を安全に地面に逃がす装置のことです。雷サージなどの異常電圧を検知すると瞬時に電流をバイパスし、機器への侵入を防ぐ役割を果たします。
PoE給電環境においてSPDを設置する場合は、電源線用のSPDだけでなく、LANケーブル用(通信線用)のSPDも組み合わせて設置する必要があります。たとえば、ネットワークスイッチやルータの手前にLANケーブル用のSPDを設置することで、雷サージがデータ通信経路から機器に侵入するのを防ぐことができます。また、屋外に設置された監視カメラ・防犯カメラなど、建物の外部と内部を接続するPoE給電機器は特にリスクが高いため、両端にSPDを配置することが推奨されます。
屋外の監視カメラや防犯カメラの落雷対策については、以下の記事で詳しく解説しています。
なお、SPDの効果を最大限に引き出すためには、後述する「アース接続(接地)」との組み合わせが重要です。
②アース接続(接地)
PoE給電に対応したIT機器を雷から守るうえで、もう一つ欠かせない対策が「アース接続(接地)」です。誘導雷や逆流雷は、電源線や通信線を通して機器内部に侵入し、回路の破損や誤動作を引き起こします。このような被害を回避、軽減するためには、アース接続によって電気的な逃げ道を設けることが不可欠です。
特に、PoE給電に対応した機器は通信と電力が一本化されているため、過電圧の影響を受けやすい構造になっています。適切なアース接続をしておくことで、雷サージが発生した際にも電流を安全に地面に逃がすことができ、機器本体や上流のネットワークを保護することができます。なお、適切なアース接続がおこなわれていないと、かえって雷による被害を拡大させるおそれがあるため、専門業者による施工をおすすめします。
PoE給電などのIT機器における雷被害の救急措置
雷被害を受けたPoE給電のIT機器には、迅速かつ適切な初期対応が重要です。ここでは主な救急措置の方法を紹介します。
データの保護・復旧
PoE給電に対応したIT機器が雷による被害を受けた際は、データの保護・復旧を図りましょう。落雷による電圧の急上昇は、機器のハードウェアだけでなく、保存されているデータにも深刻な影響を与えることがあります。特に、PoE給電に対応した監視カメラやネットワークドライブなどは映像記録や業務データを蓄積しているため、データの損失が業務に大きな影響を及ぼします。
まず、被害を受けたPoE給電機器の電源をすぐに切り、二次被害の防止を図ります。次に、HDDやSSDなどの記録メディアを取り外します。データが損傷している場合は、データ復旧の専門業者に依頼することをおすすめします。自力でデータ復旧を試みると、かえってデータの損傷が悪化し、復旧が難しくなるおそれがあります。
なお、PoE給電機器の多くはネットワーク経由でデータが保存されるため、被害が発生した場合でもバックアップ機能が活用できるケースもあります。事前にクラウドストレージや別サーバーへの自動バックアップを設定しておくことで、迅速な復旧が可能になります。
機器の修理・買い替え
落雷によってPoE給電に対応したIT機器が被害を受けた場合、修理するべきか、あるいは買い替えるべきかというのは、重要な判断になります。雷による過電圧は、機器内部の電子部品や基板に目に見えない損傷を与えることがあります。そのため、一見正常に見えても、実際には性能が低下していたり、後に不具合を招いたりする可能性があります。電源ユニットや通信ポートに破損がある場合、それが他の機器へ影響を及ぼすおそれもあります。
特に、PoE給電に対応したスイッチやネットワークカメラなどの精密機器は、単に電源が入るかどうかだけでなく、データ通信の安定性や給電能力のチェックが不可欠です。修理するべきか買い替えるべきか、正しい判断をするためには、専門業者による診断を受けることをおすすめします。診断の結果、被害の範囲が限定的だった場合などは、修理対応も有効です。ただし、長期使用によって寿命が近づいている機器は、買い替えを検討するほうが現実的です。
また、落雷による被害が発生したという事実は、現状の雷対策が不十分であった可能性を示しています。再発防止の観点から、機器更新と同時に雷対策の見直しをすることが重要です。
雷対策におすすめの製品
落雷によるPoE給電機器の被害・トラブルを防ぐには、高度な雷対策が施された製品を導入するのが効果的です。こちらでは、雷対策におすすめのPoE給電機器をご紹介します。
IT機器の雷対策ならパナソニックEWネットワークス
パナソニックEWネットワークスは、業界水準を大きく上回る雷サージ耐性を備えたスイッチングハブを多数提供しています。全ポートに誘導雷をアースへ逃がすSPDを搭載。当社従来製品比で、雷サージ耐性を2.5倍の10kVに向上させています。監視カメラや防犯カメラなど、屋外ネットワーク機器の落雷対策として、ぜひ当社のスイッチングハブの導入をご検討ください。
- 関連リンク:ポート側雷サージ耐性10kV|製品機能説明
まとめ
PoE給電に対応したIT機器は、落雷によって大きなダメージを受ける可能性があります。業務への影響や経済的な損失を最小限に抑えるためには、適切な雷対策が不可欠です。本記事でご紹介したSPDの設置やアース接続は、被害を最小限に抑えるための基本的な雷対策です。信頼できる雷耐性製品の導入も含め、ぜひこの機会に自社の雷対策を見直してみましょう。日頃からの備えが、IT機器の長寿命化と安定した業務運用につながります。
PoE給電などのIT機器の雷対策に関するQ&A
雷サージを防ぐ方法はある?
雷サージを防ぐためには、複合的な対策が有効です。代表的な対策の一つが、SPD(サージ保護デバイス)の設置です。電源や通信線にSPDを設置することで、雷による過電圧が機器に到達する前に地面へ逃がすことができます。また、建物全体に適切なアース(接地)を設けることで、雷による電流の逃げ道を確保し、被害を軽減することができます。特に被害を受けやすいPoE給電機器は、雷サージ耐性を備えた製品を選ぶことも重要です。
雷対策としてコンセントを抜いてもいい?
はい、雷が接近している際、機器を保護するもっとも確実な方法は、電源コンセントやLANケーブルを物理的に抜くことです。雷サージは配線を介して機器内部に侵入するため、完全に回路から切り離すことで過電圧の影響を防ぐことができます。手間がかかる方法ですが、雷対策の最終手段として非常に有効です。もちろん、常時稼働が必要な機器や遠隔地にある機器などはコンセントを抜くのは難しいため、SPDなどの雷対策が必要になります。
SPDの仕組みは?
SPD(Surge Protective Device)は、日本語で「サージ保護デバイス」や「避雷器」と呼ばれます。雷などによる過電圧(サージ)が発生した場合に、そのエネルギーを安全に地面へ逃がすことで接続された機器を保護するのが、SPDの基本的な仕組みです。通常時は回路に影響を与えず待機していますが、過電圧を検知すると瞬時に導通し、電流をアースへ流します。これにより機器にかかる電圧を抑え、内部回路の破損や誤作動を防ぎます。



