開館20周年記念展中川 衛美しき金工とデザイン終了致しました
「開館20周年記念展 中川 衛 美しき金工とデザイン」は、予約は不要になりました。混雑時には、15分毎の「入館時間整理券」を発行いたします。
展覧会概要
パナソニック汐留美術館の開館20周年を記念し、パナソニック出身で、石川県金沢市を拠点に活動する金工作家・重要無形文化財「 彫金」 保持者(人間国宝)、中川衛(1947年生まれ)を紹介する展覧会を開催します。
金沢美術工芸大学で工業デザインを専攻した中川は、1971年に大阪の松下電工(現パナソニック)に入社し、美容家電製品などのデザインに携わりました。27歳で帰郷した後、石川県立美術館で行われていた鐙の展覧会を観たことを機に、地元の伝統工芸である加賀象嵌に魅了されます。そして彫金家の高橋介州(1905〜2004)に入門し、石川県工業試験場に勤務しながら修業しました。日本伝統工芸展等で入選・受賞を重ねて作家として頭角を現していき、2004年には、金工の技術継承に尽力した功績により重要無形文化財「彫金」保持者に認定されました。また今日まで、大学や造幣局などで後進の育成に尽力する一方、アメリカや台湾などで積極的に海外研修を行うなど、国際的な視野で活動を展開しています。
中川が追求する「象嵌」とは、金属の表面を鏨で彫り、できた溝に異なる金属を嵌めこんで模様を作り出す技法です。象嵌部分の深さはわずか1mm以下と非常に薄く、精緻な仕事が求められます。その中でも中川は、複数の金属で構成し、難易度が高いとされる「重ね象嵌」を極めていきました。「工芸も工業デザインも創作の展開は同じである」と語る中川は、企業で身につけたデザイナーとしての制作手法を生かし、金工の試作を重ね、日常生活にヒントを得たフォルムと、自身の記憶から紡ぎ出した抽象文様により、現代的な象嵌の作風を築きました。
本展では、中川の初期の象嵌作品から最新作までを辿るとともに、1970〜80年代に手がけたプロダクトデザイン、金工の道に進む原点となった加賀象嵌の名品、現代アーティストとのコラボレーション、中川から技を受け継ぐ次世代の作品まで、作品と資料を合わせて約130点を展覧します。中川の象嵌制作に一貫して息づくデザインの精神と、伝統技法の継承を目指すさまざまな取り組みにご注目ください。
- 展覧会会期
- 2023年7月15日(土)〜9月18日(月・祝)
- 開館時間
- 午前10時~午後6時(ご入館は午後5時30分まで)
※8月4日(金)、9月1日(金)、9月15日(金)、9月16日(土)は夜間開館 午後8時まで開館(ご入館は午後7時30分まで)
- 休館日
- 水曜日(ただし9月13日(水)は開館)、8月13日(日)〜17日(木)
- 主催
- パナソニック汐留美術館、朝日新聞社
- 後援
- 公益社団法人日本工芸会、港区教育委員会
- 特別協力
- 公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団、公益財団法人宗桂会
関連イベント
記念講演会「金工とデザインについて」
- 講師
- 中川 衛氏(重要無形文化財「彫金」保持者、本展出品作家)
- 日時
- 7月15日(土) 午後2時~午後4時(開場午後1時30分)
- 定員
- 100名(要予約)
- 聴講費
- 無料(ただし本展の観覧券が必要です)
- 会場
- パナソニック東京汐留ビル 5階ホール
*未就学児はご遠慮ください。
夏休み特別プログラム「FUTURE LIFE FACTORY レトロ家電ハックプロジェクト “リミックス”」
親子で体験!リミックスラボ 「 絵×音 かいて、きこう 」
実際にリミックス専用レコードに自分で色を塗り、自分だけのレコードをつくって自分だけの音楽を鳴らしてみませんか?
- 指導・
おはなし - 鈴木 慶太(パナソニック株式会社 デザイン本部 FUTURE LIFE FACTORY)
- 日時
- 2023年8月5日(土)
午前の部:10時30分~12時、
午後の部:14時~15時30分
各回90分 - 定員
- 各回15組(要予約、定員は変更となることがあります)
- 対象
- 5歳以上
- 参加費
- 無料(ただし本展の観覧券が必要です)
- 会場
- パナソニック東京汐留ビル 2階
*10歳以下のお子様は必ず保護者付き添いでの参加をお願いいたします。
*大人の方、お一人様での参加も可能です。
【ご予約方法】
ハローダイヤル(050-5541-8600)へお電話にてお申し込みください。
①イベント名 ②参加人数(一度に2名までお申し込みいただけます) ③氏名(全参加希望者) ④住所 ⑤電話番号を承るほか、簡単なアンケートにご協力いただきます。
- ・2023年6月26日(月)より受付開始
- ・ご予約の受付時間 午前9時~午後8時
- ・ご予約の受付は先着順、定員になり次第締め切りとさせていただきます。
- ・お申し込み時にお知らせする整理番号を活用して入場いただきます。
映画「加賀象嵌 中川衛 美の世界 -新たな伝統を創る-」
会期中、美術館会場にてご鑑賞いただけます(上映時間約40分)。
当館学芸員によるギャラリートーク
本展担当学芸員が、展覧会の見どころや作品をご紹介いたします。
7月21日(金)、8月19日(土)、9月15日(金)
いずれも午後3時~、予約不要、参加無料(本展観覧券が必要です)。
混雑状況により、スライドトークに変更となります。
オリジナルポストカードプレゼント
開館20周年にちなみ、7月20日(木)、8月20日(日)にポストカードを各日先着200名様にプレゼントします。
夜間開館日に「汐留エリア グルメガイド」プレゼント
8月4日(金)、9月1日(金)、9月15日(金)、9月16日(土)は午後8時まで開館(ご入館は午後7時30分まで)
夜間開館日の、午後6時~7時30分までにご入館のお客様に、汐留エリアのカフェやレストランの割引など、お得な情報満載の「汐留エリア グルメガイド」をプレゼント!
展覧会図録のご案内
展覧会のみどころ
1.人間国宝・中川衛の仕事を「デザイン」の視点で展観する初の展覧会
重要無形文化財「彫金」保持者(人間国宝)・中川衛の初期から最近までの活動を幅広く網羅した展覧会であり、さらにその仕事を「デザイン」という視点で展示構成します。デザイナーとして出発したことが、その後の金工作品の制作工程や、意匠に対する考え方など、中川の工芸の根幹をなしているということを伝えます。
2.「工業デザイン」と「伝統工芸」をつなぐ展示空間づくり
中川衛は「工芸も工業デザインも発想や創作の展開は同じである」という考えのもと、デザイナー/工芸作家として、象嵌の制作に臨んでいます。そうした中川の創作姿勢を体感していただくため、本展では、中川のシャープなプロダクトデザインと、華麗な伝統工芸にみられる連続性に着目し、展示空間においても地続きでみせることを試みます。
3.世代・ジャンル・国境を超えた現代金工の拡がり、魅力再発見へ
中川衛は、技術の継承を重んじて後進の育成に尽力し、積極的に海外研修を行うなど国際的な視野で活動を展開しています。本展では、中川の作品とともに、中川に教えを受けた作家や、独自に象嵌を追求する作家、また中川と異分野のアーティストとのコラボレーション、海外での滞在制作などを紹介します。
中川衛の象嵌技法とは
中川が追求する「象嵌」とは、金属の表面を鏨で彫り、できた溝に異なる金属を嵌めこんで模様を作り出す技法です。象嵌部分の深さはわずか1mm以下と非常に薄く、精緻な仕事が求められます。特に中川は、複数の異なる金属の層を組み合わせて意匠を構成する、難易度が高いとされる「重ね象嵌」を極めていきました。そのことにより、シンプルな幾何学的模様から、実際の取材に基づく自然描写へと、表現の幅が広がりました。「工芸も工業デザインも創作の展開は同じである」と語る中川は、企業で身につけたデザイナーとしての制作手法を生かして金工の試作を重ね、日常生活にヒントを得た立体のフォルムと、自身の記憶から紡ぎ出した抽象文様により、現代的な象嵌の作風を築きました。
Ⅰ 工業デザインの精神
金沢美術工芸大学で工業デザインを学んだ中川は、卒業後に松下電工株式会社(現パナソニック)に就職し、美容家電製品などのデザインに携わりました。石川県工業試験場に転職してからも、県の伝統的工芸品のデザインを手がけており、デザイナーとしてものづくりの礎を築いたことが、その後金工作家になってからの作風の展開や作家活動に息づいていきました。本章では、中川の会社員時代の仕事をうかがわせる資料を中心に紹介するとともに、パナソニックの歴代美容家電製品をアーカイヴするHIKONE KIZUNA館や、パナソニックミュージアムとも連携し、中川が活動した時期の背景にある1970年代の工業デザインの一端を紹介します。本章を通じて、のちの中川に繋がる伝統工芸における「デザイン」の意義について見つめます。
Ⅱ 象嵌のわざと美
松下電工を退社し、金沢市に帰郷した中川衛は、石川県工業試験場に勤務しました。その頃に石川県立美術館で江戸時代の鐙の展覧会を観て、そのデザインのモダンさに魅了されます。そこから伝統的な加賀象嵌に関心を持ち、加賀象嵌の第一人者であった彫金家の高橋介州に入門し、象嵌技法の修業をしました。そして日本伝統工芸展等で作家として頭角を現し、2004(平成16)年には重要無形文化財「彫金」保持者(人間国宝)に認定されました。ここでは、加賀象嵌の歴史なども踏まえ、その系譜に位置づけられる中川が何を継承し、どのような現代性をもたらしたのかを見つめます。
Ⅲ 国境と世代とジャンルを超えて
中川衛の作家活動にスケール感をもたらした転機の一つは、第6回淡水翁賞受賞時の海外研修でした。そこで中川はイギリスやトルコをまわり、古から続く象嵌技法の普遍的な美や日本とは異なる工芸観を体感するとともに、技術継承の大切さをより一層味わいます。そして今日まで、母校の金沢美術工芸大学をはじめとして、後進の育成に尽力する一方、積極的に海外研修を行うなど国際的な視野で活動を展開しています。この章では、金属工芸の現在とこれからを射程に、中川に学んだ金工作家作品や、中川と異分野のアーティストのコラボレーション、海外での仕事について紹介します。ひとりの作家の活動を通じて、古今東西を往還することで、金属工芸の魅力をあらためて知っていただく機会を目指します。
主な展示内容
- 海外の象嵌:古代トルコの銀象嵌(写真・資料等)
- 拡がる現代金工:上田稔、笠松加葉、久米圭子、黄照津、坂井直樹、長井未来、原智、前田真知子、水代達史、宮薗士朗、村上浩堂(順不同)
- 舘鼻則孝とのコラボレーション
- 台湾での大型作品制作について(映像・写真)
中川 衛 プロフィール
中川衛は1947(昭和22)年、石川県金沢市に生まれ、金沢美術工芸大学産業美術学科で工業デザインを専攻し、柳宗理や平野拓夫らの薫陶を受けました。1971(昭和46)年に同校を卒業後、大阪の松下電工(現パナソニック)に入社し、美容家電製品などのプロダクトデザインに携わります。20代後半に帰郷し、石川県工業試験場に勤務していた頃に、石川県立美術館で行われていた鐙の展覧会を観たことがきっかけで、加賀象嵌に魅了されました。「加賀象嵌」で石川県の無形文化財保持者に認定された彫金家の高橋介州(1905~2004)に入門し、工業試験場に通いながら修業し、日本伝統工芸展に出品していきます。その後も入選・受賞を重ねて作家として頭角を現し、2004(平成16)年には金工の技術継承に尽力した功績により、重要無形文化財「彫金」保持者(人間国宝)に認定されました。また今日まで、母校の金沢美術工芸大学をはじめとして、後進の育成に尽力する一方、積極的に海外研修を行うなど国際的な視野で活動を展開しています。