パナソニック汐留美術館発行の展覧会図録を紹介します。お求めの方法は「図録のお申込み方法」をご覧ください。
販売を終了いたしました
「つながる琳派スピリット 神坂雪佳」
2,200円(税込)
会期:2022年10月29日(土)〜12月18日(日)
発行:株式会社アートワン
縦220×横192㎜、192ページ
神坂雪佳(1866-1942)は、明治から昭和にかけ、京都を中心に活躍した図案家・画家です。20世紀の幕開けと同時に、欧州で当時最先端の美術工芸を視察したことで、雪佳はあらためて日本古来の装飾芸術の素晴らしさを再認識し、「琳派」の研究に励みました。本展覧会は、「琳派」というテーマを通じて、多岐にわたる神坂雪佳の活動の真髄をひもときます。
「琳派」の起源は、江戸時代初期にさかのぼります。平安王朝の典雅な美に憧れ、その再興を目指した新しい芸術は、時を経て幕末から近現代にまで至る、世界的にも類まれな芸術の潮流となりました。中でも、本阿弥光悦、俵屋宗達、尾形光琳と尾形乾山、さらに酒井抱一、鈴木其一といった日本美術の歴史を彩る芸術家たちの偉業はよく知られているでしょう。そして明治時代の京都に登場した神坂雪佳は、琳派の芸術に強い関心を寄せ、その表現手法にとどまらず彼らの活動姿勢にも共感し、自ら実践していきました。そのあり方から「近代琳派・神坂雪佳」とも呼ばれています。
雪佳の創作活動の大きな特徴は、暮らしを彩るデザインを提供し、空間のトータルコーディネイトをした点にあります。実用性の高い図案集の出版から、工芸品の意匠(デザイン)、調度品の装飾、絵画制作まで、実に幅広く仕事をのこしました。そして「光琳の再来」とも称される作風を築くとともに、京都産業界の振興、工芸界の活性化にも尽力しました。
本展覧会では、魅力的な琳派コレクションで知られ、神坂雪佳にも早くから注目し顕彰してきた京都・細見美術館の監修のもと、雪佳の代表的作品に加え、雪佳が手本とした琳派の美をうかがわせる本阿弥光悦、尾形光琳らの名品をあわせて、絵画・図案集・工芸品など約80点を展覧します(会期中、一部展示替えをします)。古典と近代的発想を融合させ、美術と意匠の二つの分野を自在に往来した「近代琳派・神坂雪佳」の多彩な世界をお楽しみいただきます。
本展の監修も務める細見美術館より講師をお招きし、本展出品の雪佳作品のみどころや最新の研究などについてお話しいただきます。
*未就学児はご遠慮ください。
*展覧会観覧には、事前の日時指定予約が必要です。
神坂雪佳の図案集を出版してきた芸艸堂の協力により、摺りの実演見学後、参加者の皆さまに雪佳デザイン(『染織図案 海路』)のはがきを摺っていただきます。
*未就学児はご遠慮ください。
*展覧会観覧には、事前の日時指定予約が必要です。
ハローダイヤル(050-5541-8600)へお電話にてお申し込みください。
①イベント名 ②参加人数(一度に2名までお申し込みいただけます) ③氏名(全参加希望者) ④住所 ⑤電話番号を承るほか、簡単なアンケートにご協力いただきます。
期間限定:11月18日(金)午前10時~12月18日(日)午後6時まで
本展担当学芸員が、展覧会の見どころや作品をご紹介いたします。
パナソニック汐留美術館発行の展覧会図録を紹介します。お求めの方法は「図録のお申込み方法」をご覧ください。
販売を終了いたしました
2,200円(税込)
会期:2022年10月29日(土)〜12月18日(日)
発行:株式会社アートワン
縦220×横192㎜、192ページ
神坂雪佳(1866-1942)は、明治~昭和期に活躍した京都の図案家・画家。装飾芸術「琳派」を手本に、暮らしを彩るデザインを生み出したマルチアーティストです。20世紀初頭、押し寄せる西洋化の時代に、日本古来の装飾美に着目した創作活動にご注目ください。
珠玉の琳派コレクションで知られる京都・細見美術館監修のもと、歴代琳派の優品から、 “近代琳派”の名にふさわしい神坂雪佳の代表作まで、《狗児》や《金魚玉図》など人気作品を含む約80点により、雪佳の創作を一望します。
美術館の特別企画展としては、2003年「神坂雪佳―琳派の継承・近代デザインの先駆者」展(京都国立近代美術館ほか海外巡回)以来の本格的な展覧会です。特に本展は、東京の美術館でまとまって雪佳作品に触れられる大変貴重な機会となります。
江戸初期、京において新たな芸術が誕生しました。本阿弥光悦(1558-1637)と、俵屋宗達(生没年不詳)は、やまと絵を基調としながら、斬新な構図や明快な色彩、滲みや暈しをいかした「たらし込み*」などの豊かな表現により、平安時代の雅な美を新たな作風で再生しました。
約100年後に現れた尾形光琳(1658-1716)は、意匠性の高い作風で注目され、調度類のデザインも数多く手がけました。身の回りを彩る工芸品を通じて、「光琳模様」と呼ばれる意匠が普及していきます。陶磁史の分野で大きな足跡を残した弟・尾形乾山(1663-1743)は、琳派の意匠を用いた食器制作を行いました。
さらに江戸中後期に活動した酒井抱一(1761-1828)は、光琳様式を取り入れながらも写生的な繊細さと江戸らしい洒脱さを併せ持った画風を確立しました。現在「江戸琳派」と称される抱一の様式は、後継者の鈴木其一(1796-1858)をはじめ多くの門弟に受け継がれ、明治から昭和にかけ、近代の日本画にも大きな影響を及ぼしました。そうした中で、神坂雪佳は琳派作品を愛好し、収集・研究しており、自らの作風の礎としていきました。
本章では、「琳派誕生、そして開花」(17-18世紀、京都)、「光琳を継ぐもの」(18-19世紀、京都・大坂)、「江戸琳派の美」(18-19世紀、江戸)という構成のもと、京都・細見コレクションや神坂雪佳の旧蔵品を通じて、創始から雪佳へと至る琳派300年の精髄を辿ります。
*たらし込み=墨などを塗った場所が乾く前に、濃度の異なる墨や絵の具をたらし、滲み具合の偶発的な色彩や形態の効果を狙った描法で、琳派の画家たちが好んで用いた。
本章では、神坂雪佳が発表した主な図案集(デザインの素材集)を紹介します。
日本画を学ぶことから出発した神坂雪佳は、その後助言を受けて図案の道に進み、30代の頃には図案家として、京都の工芸界で重要な役割を担うようになりました。図案家・神坂雪佳を語る上で欠かせないのが、図案集の出版です。雪佳は自身の活動の前半期を中心に、精力的に図案集を手がけていきました。『染織図案 海路』(1902年刊)や『蝶千種』(1904年刊)のような実用性の高い意匠集のほか、絵画の作品集のように美しい『ちく佐』(1900-05年刊)や『百々世草』(1909-10年刊)は鑑賞用としても楽しまれてきました。特に『百々世草』は、色彩豊かで明快な雪佳様式の到達点を示す代表作とされています。
*作品保全の都合上、図案集は定期的にページめくりを行います。全会期中、『ちく佐』、『滑稽図案』、『百々世草』につきましては全てのページをご覧いただけるスライドを上映いたします。
図案の創作にあたり、神坂雪佳が拠り所としたのが「琳派」でした。空間を彩る調度類に優れたデザインを手がけた「琳派」を手本に、雪佳は染織、漆器、陶磁器のほか、室内装飾や造園に至るまで、実に多種多様なデザインを創作しました。本章では、雪佳が絵付をし実用化された調度品や漆芸、陶芸を中心とした共作をご覧いただきます。
図案家として多くの要職につき、多彩な活躍をする一方で、雪佳は絵を求められることも多かったといいます。主に活動の後半期に集中して描かれている作品群は、屏風、掛軸から、社寺の襖絵や能舞台の鏡板などの障壁画まで、さまざまな形態の画面に展開していきました。本展の最終章では、四季の草花、古典文学、動物などをテーマとした、ユニークな構図感覚とおおらかで品のある雪佳様式がみどころの、代表的絵画作品を紹介します。唯一無二の芸術よりも、むしろ誰もが共有できる美しさを求めた雪佳は、絵画作品においても奇抜さよりもおおらかで親しみやすい画風を築きました。琳派に傾倒し、日常を彩る美を大切にした神坂雪佳の姿勢は、絵画においても貫かれていました。