未来へつなぐ陶芸 - 伝統工芸のチカラ 展

展覧会レビュー

会場エントランス

本展は、日本の工芸界を牽引する団体のひとつ「日本工芸会」の陶芸部会、活動50周年を記念する展覧会として企画されました。2022年以降、全国8つの美術館で開催する予定で、当館は東京会場として、その最初に開催されたものです。

展覧会は3つの章で構成され、各章に2つのコラムを設けて、日本工芸会陶芸部会の作家のみならず、日展系や無所属の作家なども含め137作家、139点の作品を紹介。近現代陶芸界を概観しつつ、現代陶芸の「今」に焦点を当てた内容で構築されました。

展示室入口、ポスターに使用した松井康成「練上嘯裂文大壺」が見える
第Ⅰ章「伝統工芸(陶芸)の確立」

第Ⅰ章「伝統工芸(陶芸)の確立」は日本工芸会陶芸部会の草創期に活躍した、物故の著名作家らの作品により、活動の歴史を回顧しました。

コラム1「伝統工芸(陶芸)と創作工芸(陶芸)」では、主要な美術団体「日展」の陶芸部門で活躍した板谷波山、六代清水六兵衛、楠部彌弌の作品を展覧。またコラム2「人間国宝(重要無形文化財保持者)の存在」は、第1回に認定された荒川豊蔵、富本憲吉らの作品により、人間国宝の意義を問うものです。

第Ⅱ章「伝統工芸(陶芸)のわざと美」
第Ⅱ章 大作がずらりと並ぶ

第Ⅱ章「伝統工芸(陶芸)のわざと美」では、日本工芸会が主催する「日本伝統工芸展」、「日本陶芸会展」の出品、受賞作家の中から、斬新で意欲的な作品群を展覧しました。

コラム3「産地と表現」は伝統ある産地ならではの素材に、新たな技法を導入した作家らの作品を並べ、コラム4「茶の湯のうつわ」では、現代の茶の湯に相応しい名品を、茶室をイメージした照明で演出しました。

第Ⅱ章 コラム4「茶の湯のうつわ」茶室をイメージした薄暗い空間に茶器が並ぶ
第Ⅲ章「未来へつなぐ伝統工芸(陶芸)」

第Ⅲ章「未来へつなぐ伝統工芸(陶芸)」は、陶芸界の重鎮から中堅、若手作家らによる「未来」「これから」を予感させる作品で章が構成されています。

コラム5「素材と表現」、コラム6「新たな技法とうつわのかたち」では、素材の応用や、新しい技術など、制作者の工夫により創作された作品を展覧。陶芸界の新たな可能性を感じていただいたことと思います。

第Ⅲ章 美術館では珍しい露出展示、色彩のグラデーションを意識した展示構成とした
第Ⅲ章 白磁の大作4点を比較展示して、素材、技法の違いを照明で表現

展示室の最後の部屋では、美術館での工芸展では珍しい、作品をガラスケースには入れない、露出での展示により、作品の迫力をじかにご覧いただく試みをいたしました。また、バラエティーに富んだ作品の器形や色彩、陶器、磁器などの素材感を感じていただけるよう、当館の技術を駆使した照明により、作品を華やかに演出してご好評をいただきました。

イベントレポート

オンラインギャラリートーク「展覧会のツボ

会期中、2回配信したオンラインギャラリートーク「展覧会のツボ」では、本展監修者の唐澤昌宏氏(国立工芸館館長)と担当学芸員により、出品作や展覧会の見どころをご紹介。出品作家を代表して前田昭博先生からビデオメッセージを頂戴いたしました。

公開日
3月1日(火)午前10時~3月7日(月)午前10時まで
2月4日(金)午前10時~2月7日(月)午前10時まで
出演
森谷美保(本展担当客員学芸員)
唐澤昌宏氏(本展監修者、国立工芸館館長)
ビデオメッセージ
前田昭博氏(陶芸家、日本工芸会陶芸部会長、人間国宝<重要無形文化財保持者>)