クールベと海 展―フランス近代 自然へのまなざし

展覧会のみどころ

1.クールベが描いた海に着目した本邦初の展覧会。
国内からクールベの「波」が集結するほか、フランスからも出品!

山に囲まれた小さな村で育ったクールベは後年、100点以上もの海の風景画を描きました。本展覧会は、国内外より11点のクールベの海を主題にした作品を集め一堂に展示する貴重な機会です。フランスからは、オルレアン美術館より、サロン出品作と同じ構図で描かれた《波》(1870年)が出品されます。

2. クールベの展覧会は、国内では9年ぶり。
海景画のほか、風景画や狩猟画も出品!

自然へのまなざしが大きく変化する19世紀フランス。レアリストを標榜するクールベは自然をどのように捉えたのでしょうか。クールベの生まれ故郷フランシュ=コンテ地方の切り立った山や森、そこに息づく動物たちを描いた作品から、クールベの自然へのまなざしを探ります。

3. 印象派を代表するモネやブーダンなどの作品も出品!
クールベと印象派とのつながりを紹介!

クールベは1860年代、モネやブーダンと交流し、ノルマンディーでともに絵画の制作をしています。本展では、モネが光の効果を試すように描いた南仏の海や、ブーダンが描いたリゾート地化したノルマンディーの浜辺の様子を併せて展示し、クールベと彼らの作品に見られる影響関係や、クールベの海景画の特異性を明らかにします。

第1章 クールベと自然―地方の独立

スイスとの国境に近い山間の地、フランシュ=コンテ地方オルナンに生まれ育ったクールベは、険しい断崖や小高い草原、洞窟の多い水源地、そして木陰の川などが特徴的なこの土地を繰り返し描いています。本章では、20歳でパリに上京してからも、頻繁に帰郷しては描き続けたこの土地の風景画を、19世紀フランスを代表する風景画家たちの作品とあわせて展観し、クールベの描く風景画の革新性に迫ります。

ギュスターヴ・クールベ 《フランシュ=コンテの谷、オルナン付近》 1865年頃 油彩・カンヴァス 茨城県近代美術館

第2章 クールベと動物―抗う野生

若い頃から大自然に囲まれて育ち、秋になると狩猟も楽しんだクールベにとって野生の動物は身近な存在でした。本章では、クールベが表現した、人間に狙われ、支配される動物や、自然の中に生息する動物の伸び伸びとした様子をご覧いただけます。同時代に活躍したバルビゾン派の画家たちが描く、田園情景の中の飼いならされた家畜との比較をお楽しみください。

ギュスターヴ・クールベ 《狩の獲物》 1856-62年頃 油彩・カンヴァス 個人蔵

第3章 クールベ以前の海―畏怖からピクチャレスクへ

自然へのまなざしが大きく変わる18世紀から19世紀にかけての西洋。海景画においても、それまで国の富を象徴する目的で描かれてきたものが、この時代には海そのものが鑑賞の対象として描かれるようになります。本章では、この自然へのまなざしの転換期に描かれた、畏怖と崇高の対象としてのドラマティックな海景画を紹介します。

ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー 《ディール》 1826年 メゾチント 郡山市立美術館

第4章 クールベと同時代の海―身近な存在として

19世紀、パリから沿岸部の主要都市への鉄道が次々と開通すると、それまで畏怖や崇高の対象として鑑賞されてきた海は、急速に人々にとって身近な存在となります。パリの中産階級の人々は、休日になると鉄道に乗って海岸へ出かけ、海辺での余暇を楽しみました。本章では、クールベと同時代に活躍したブーダンやモネ、カイユボットらが捉えた身近な存在としての海の情景を紹介します。

ウジェーヌ・ブーダン 《浜辺にて》 油彩・カンヴァス 個人蔵

第5章 クールベの海―「奇妙なもの」として

山間地で生まれ育ったクールベが初めて海を目にしたのは22歳の時。クールベはその時の海の印象を「奇妙なもの」と表現しています。それから20数年後の1865年から1869年にかけて、クールベは毎年のようにノルマンディーの海岸に出かけ、生涯に100点以上の海を主題にした作品を残します。本展覧会の最終章となる本章では、クールベが1865年以降に集中的に描いた海景画のうち、本展覧会のために集められた11点を一堂に展観します。

ギュスターヴ・クールベ 《波》 1869年 油彩・カンヴァス 愛媛県美術館