本展では、近代陶芸の巨匠、河井寬次郎の没後50年を記念して、河井寬次郎記念館所蔵作品を中心に、本邦初公開である山口大学所蔵作品などの陶芸や木彫、書、調度類などを展示し、寬次郎の仕事の全貌と深い精神世界を辿りました。さらに、パナソニックの創業者、松下幸之助が求めた寬次郎作品の他、幸之助が寬次郎に文化勲章を推薦した際に贈った当時の最新トランジスタラジオ「パナペット(R-8)」の同型品を特別出品しました。
展示は「土」「彫・デザイン」「言葉」、「学んだもの」「コレクション・遺愛品」「資料」で区分し、「土」のコーナーでは中国や朝鮮の古陶磁に倣った初期、民藝運動の影響を受けた用の美の中期、自由な造形世界を繰り広げた後期の三期の作風をご紹介しました。「彫・デザイン」では木彫作品やデザインした家具を紹介し幅広い造形表現をご観覧いただきました。
また今回展でもパナソニック商材を利用することで、鑑賞の一助となる工夫も凝らしました。エントランスではスペースプレーヤーで本展のイメージを伝える映像を投影し、「言葉」のコーナーでは座右の銘に河井寬次郎の言葉を挙げるほど寬次郎の作品やその生き方までも尊敬しているという俳優、井浦新氏による寬次郎の言葉の朗読を伴った映像を投影いたしました。視覚だけでなく聴覚にも訴える展示構成は多くの方に楽しんでいただけたようです。
近代陶芸の巨匠として知られる河井寬次郎ですが、今回の展覧会で陶芸家という枠にとらわれない表現者としての寬次郎像をお示しできたものと思います。