ヘレンド展― 皇妃エリザベートが愛したハンガリーの名窯 ―

展覧会レビュー

エントランスサイン

ヨーロッパの名窯のひとつヘレンドの190年のあゆみをたどる展覧会を開催致しました。 ヘレンドは、ハンガリーにおいて1826年に創設され、ハプスブルク皇帝の保護を受けて発展し、各国の王侯貴族が愛好した名窯として今日に至るまで高い評価を得る高級磁器窯です。本展では回顧展として時代ごとの名品を出品するとともに、シノワズリーをもう一つのテーマとして位置づけ、中国あるいは東洋の造形に着想源を求めて制作された作品が重点的に出品されました。ブダペスト国立工芸美術館のコレクションを中心に、世界初公開作品も含まれる全151点をご紹介するもので、当館では前期後期で一部入れ替えを行うことで全点を展示致しました。

作品の見どころは、繊細な絵付けや精巧な透かし彫り、彫塑飾りといった最高峰の技術よる装飾でした。「ウエールズ」文などのヘレンドを代表する蜂の巣のように細かな透かし彫りや、本物と見まごう可憐な花々の彫塑飾り、「ヴィクトリア」文に代表されるシノワズリーの個性的な文様など、一点一点の作品に施された装飾はいずれも目をみはるものでした。展示の最後と、当ビル1階のパナソニック リビング ショウルーム東京においては、現代のヘレンド磁器によるテーブルセッティングを設え、華やかで贅沢な食空間を作り上げました。

会場入り口と第1章 ヘレンド磁器製作所の黎明期―ヴィンツェ・シュテングルの製作所
第2章 1部 モール・フィシェル時代―全盛期
第2章 2部 モール・フィシェル時代―全盛期―東アジアから得た着想
第3章 1部 モール・フィシェルの息子たちの経営になるヘレンド磁器製作所
第3章 2部 モール・フィシェルの息子たちの経営になるヘレンド磁器製作所―東アジアから得た着想
第4章 イェネー・ファルカシュハージ・フィシェル時代―理想的な後継者
第5章 ジュラ・グルデンの時代―ふたつの世界大戦の間のヘレンド
第6章 国有化された磁器製作所(1948-1991年)
第7章 新たな挑戦―世紀転換期のヘレンド窯
ミュージアムでのテーブルセッティング (「牡丹」と「アポニー・グリーン」シリーズの4人用ティータイムセッティング)
ショウルームでのテーブルセッティング (「ヴィクトリア」シリーズのヴィクトリア・ブーケによる6人用ディナーセッティング)

イベントレポート

記念講演会「ヘレンド磁器とシノワズリーの系譜」

西洋におけるシノワズリーの系譜を、大変多くの図版による事例をもとに詳細にご紹介いただきました。また、ヘレンド磁器がその系譜にどのように関係しながら、独自の造形に至ったのか、文様の写しの変遷などを交えてわかりやすくご解説いただくとともに、現在のヘレンドの工房の様子もレポートしていただきました。

講師
出川哲朗氏(大阪市立東洋陶磁美術館館長、本展監修者)
日時
2018年2月18日(日)午後2時~午後3時30分
会場
パナソニック東京汐留ビル 5階ホール

講演会「ヘレンドとの出会い―テーブルコーディネイトの楽しみ」

ヘレンド磁器の歴史や本展出品作品の魅力をご解説いただくなかで、テーブルコーディネイトの歴史に関してもご教示くださいました。加えて、木村先生がこれまでに携わられた空間装飾の実例ご紹介を交え、おもてなしの際の心がけや、幅広く暮らしの空間を彩ることの豊かさについて、お話しいただきました

講師
木村ふみ氏(食環境プロデューサー、本展テーブルコーディネーター) 
日時
2018年1月20日(土)午後2時~午後3時30分
会場
パナソニック東京汐留ビル 5階ホール

ミニ講演会「ヘレンドを愉しむために―その特徴とティータイムの関係―」

講演会場に現代のヘレンドのティーカップやチョコレートカップなど、多種の作例を展示しながら、歴史、窯印の解説、カップの形の由来などヘレンド磁器をいっそう愉しむポイントを多数、塩谷先生からお話頂きました。途中、ゲストの森先生にバトンタッチして、ヘレンドの器を用いての美味しいお茶のアイディア、型にはまらない器の使い方やレシピのご紹介など、すぐに活用できるお洒落かつ実用的な工夫と方法を教えていただきました。

講師
塩谷博子氏(ヘレンド日本総代理店 星商事株式会社)
ゲスト
森由美子氏(日本紅茶協会認定 シニアティーインストラクター)
日時
2018年2月10日(土)午後1時~午後1時50分
会場
パナソニック東京汐留ビル 3階ホール